俺がパーティーを辞めさせられた理由が特殊すぎるんだが。 作:ガラクタ山のヌシ
宿屋で寝泊まりして、荷造りをしていた。
武器と防具の手入れよし。
サイフよし。
魔力…よし。
荷物袋に穴は…空いてないな、よし。
「さて、今日はどこに行こっかなぁ〜…」
どうせ暇人だし、この際色々と珍しい経験をしてみるってのもアリっちゃあアリだなぁ〜。
「ゼニスさぁ〜ん!!お客様がお見えですよ〜!!」
「あっ、は〜い!!今行きます〜!!」
むっ?どうやら思わぬ来客が来たようだ。
レイサムさんの言う刻限まではまだ普通に猶予はあるはずだけど…。
そんなことを思いながら、宿屋の受付に向かうと…。
「おっす〜ゼニスっちゃ〜ん」
「ひ…姫殿下!?」
ゆったりとしたローブからチラリと見えるあのシンプル且つ歴史の重みを感じさせる籠手は…正直見間違えようもない。
「冒険者やめたらしいなぁ〜、探したんだぞ〜?」
最近流行りの刺繍の入った黒いローブのフードを外してそう言う彼女は、想像した通りの人物だった。ちくせう。
血のように真っ赤な髪を邪魔にならないようにショートボブにして、翡翠の瞳をニヤリと細めて不敵に微笑むのは拳の王家の姫殿下…フィスティア様だ。
彼女の王家は元々、古代王国の武芸者集団の長を務めた一族であり、その影響もあってか自衛のために幼い頃より厳しい鍛錬を積んで来たらしく、多分彼女と互角に渡り合えるのは上位冒険者の中でも更に一握りだろう。
かつて魔王軍がこの国に攻め寄せて来た時も、彼女らのご先祖は一丸となり拳で抵抗して、何度となく危機を乗り越えて来たとか…。
「いやぁ〜、実はついこないだ、国が運営してる採掘場から岩盤に突き刺さった籠手が見つかってさぁ〜。ウチの武芸者連中やら冒険者達に頼んで、色々と手を尽くしたんだけど…誰一人として引き抜けなくってねぇ〜…」
へらへらと笑いながらそんなことを言う姫殿下。
顔がいい分タチが悪いな全く…。
「っていうか、どんだけ深く突き刺さってんですかソレ…」
「ああ〜…ソレなんだけど、ウチの国の文献にも何も記載されて無くってさ〜…」
「あ、そうなんスか…」
っていうか、岩盤って…どんな馬鹿力だよ。
多分岩盤に突き刺さってたってことは、もう先端部分は錆びてたりしてそうだし…。
下手したらポッキリ逝きそうなら、そりゃあ誰にも引き抜けんでしょ。
歴史的に重要なものだったりしたらほぼ間違い無く首が飛びそうだから慎重にやらざるを得ないだろうし…こわぁ〜…。
「ま、ともあれ…だ。冒険者やめて暇なんだろ?ちょっとツラかしてや」
「あの…拒否権は…」
「オウ別に逃げてもいいけど、アタシが捕まえたら新技の実験台な」
ポキポキと指を鳴らしながら笑顔でそう言う姫殿下。
目が…目が笑ってないッ…!!
「あっハイ…」
権力と言うか、拳力というか…。
色々と強い人が直接来るとか、厄介なことこの上ないんだよなぁ〜。
って言うか、この人オレがパーティーにいた時も何かにつけて絡んで来て…。
アレか?支援魔法で何とか耐久したのがいけなかったのか?
チクショウ。相手が姫殿下じゃなかったら寝癖がなかなか治らない呪いの一つでもかけてやるとこだよまったく…。
姫殿下…年齢は10代後半くらい。
主人公くんのことは壊れないおもちゃを見る目で見ている。
また、気に入った相手には超ドSな人。