仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第二十四話 「再戦」

海鳴市の夜は現在戦場と化していた。

今、この場にいる誰もが肌寒さよりも戦場独特のひりつく感覚が身体を支配していた。

(正直言って、イマジンがいなくてよかった……)

上下黒のバリアジャケットを纏っているクロノ・ハラオウンは相手が魔導師サイドの者達でよかったと内心ほっとしている。

彼はイマジンと戦い、ひとつの結論が出ていた。

魔導師ではイマジンと戦う事はできる。だが、勝つことはできないだろう。

それは技術面ではなく、単純な個人の戦闘能力の差といえばいいだろう。

小手先の技術が一切通じない相手。魔導師にとっては天敵といえる存在がイマジンだと。

クロノは愛用のS2Uを用いて、青色の魔法陣を展開して無数の矢を出現させていた。

「スティンガーブレード!!エクスキューションシフト!!」

高らかに叫ぶと、無数の矢が狙いを定めて軌道を修正する。

クロノは確認が終わると、S2Uを振り下ろす。

青色の矢はまるで流星のように、ヴィータとザフィーラに向かっていく。

ザフィーラがヴィータを守るようにして前に立ち、左手をかざして防御魔法を展開させる。

攻撃を防いだ事によって、爆煙が立つ。

「はあはあはあ。少しは通ったか……」

クロノは肩を上下にして、息を乱している。

手応えはあったと思う。正直、爆煙が晴れないことには何とも言えない事だが。

煙が晴れていくと、そこには青色の矢が左腕に三本ほど刺さってヴィータをかばっているザフィーラがいた。

 

「ザフィーラ!」

ヴィータは自分をかばってくれた盾の守護獣の安否を気遣う。

「気にするな……」

ザフィーラ(人型)は三本の青色の矢が刺さっている左腕に力を込める。

ビキビキビキと力を込める左腕から音が聞こえてくる。

「この程度でどうにかなるほど、ヤワじゃない!」

三本の矢は砕けて消滅した。

「上等!!」

ヴィータはザフィーラの返答に満足げな笑みを浮かべてから、上空にいるクロノを睨みつけた。

(赤鬼達がいないと思ったからラッキーだと思ったけど、管理局にも厄介なのがいるってワケか!)

グラーフアイゼンを握る手が自然に強くなっていた。

 

クロノは自分を睨んでいるヴィータを睨んでいた。

『武装局員配置終了。OK?クロノ君』

念話とは違う無線のようなものでハラオウン家で戦況をモニター越しに見ているエイミィ・リミエッタが連絡が入った。

『それから今、助っ人を転送したよ!』

エイミィは補足事項のように告げた。

「助っ人?」

周囲を見回すと、あるビルの屋上に私服姿の高町なのはとフェイト・テスタロッサがこちらを見上げていた。

その後ろには戦闘服姿のアルフ(人型)とユーノ・スクライア(人間)がいた。

「なのは!フェイト!」

クロノは四人の助っ人の内、主な二人の名を呼んだ。

 

 

モニュメントバレーを髣髴させる荒野---『時の空間』

デンライナーが線路を敷設と撤去を繰り返しながら、走行していた。

食堂車の中はいつものようにイマジン四体がバカ騒ぎをしているかとも思われたが、イマジン達は円陣を組んで、何かを話していた。

「おい、どう見てもおかしくねぇか?」

モモタロスがある人物が今までと違う事を見抜いていた。

「センパイもそう思う?実は僕もなんだよ」

ウラタロスもモモタロスに同意する。

「まぁ。あんな態度取ったの初めてやからなぁ。お前等がおかしいと思うんも無理ないわなぁ」

キンタロスが親指で首を捻ってから腕を組んで考える。

「良太郎、どうしちゃったんだろ?みんなでお話が終わったら急に溜息ばっかりついてるよ」

リュウタロスはチラチラと件の人物を見ながら言う。

彼等が話している人物とはチームデンライナーの中心人物である野上良太郎のことだ。

彼は外の景色を眺めながら、溜息をついていた。

普段の彼からはあまり考えられない事だろう。

「やっぱ良太郎、おかしいわよね?」

「そうですねぇ。あんな良太郎ちゃん見るの初めてです~」

イマジン達以外にも良太郎の異変に気付いた者達もいた。

コハナとナオミだ。

「はぁ」

良太郎は溜息をついてしまう。

「おい、良太郎どうしたんだよ?さっきから溜め息ばっかりじゃねぇか?」

モモタロスがストレートに訊ねてきた。

「うん。実はね……。昨日の夕方辺りからフェイトちゃんに避けられてるんだよ。挨拶はしてくれるんだけど、何か素っ気無くてね……」

「「「「「「え?」」」」」」

オーナーを除く四体と二人が目を開いて、大声ではないが声を出した。

「フェイトが良太郎を避けてる?どういうこった?」

モモタロスが見る限り良太郎とフェイトは強い信頼関係を持っている。ちょっとやちょっとで崩れる事はないと思えるくらい強いものを。

「フェイトが避けるってことは良太郎が何かヘマしたいう事になるわな」

キンタロスが腕を組んでから言う。

「良太郎、ヘマしたの?」

リュウタロスが訊ねてくるが、良太郎は首を横に振る。

「そんな覚えないんだけどなぁ」

良太郎は天井を見上げて心当たりを探っているが、出てこない。

「良太郎、フェイトちゃんの様子に気付いた事はない?」

今まで黙っていたウラタロスが口を開き、良太郎に避け始めたフェイトの行動をもう一度思い出すように促す。

「気付いた事?そういえば、挨拶とかでも僕と目が合うとすぐに逸らすんだよ。後はその時、顔が赤かったと思うんだ」

「「それってもしかして……」」

コハナとナオミがフェイトが良太郎を避ける理由に勘付いたが、唇に人差し指を立てているオーナーが視界に入り、事情を察して口をつぐんでしまう。

「もしかして、フェイトは病気なんじゃねぇのか?」

「顔が赤いか……。風邪かもしれへんな」

「だったらお薬必要なんじゃないの?」

モモタロス、キンタロス、リュウタロスはフェイトを病気と思い込んでいる。

「いや、みんな。フェイトちゃんは病気といえば病気なんだけどね。その……薬では治らないと思うよ。というより、アレを処方するための薬なんて薬局には絶対にないからね」

ウラタロスは病気談義で盛り上がっている三体のイマジンに注意をするが、三体は右から左へと聞き流されていたりすることに気付くのはそれから数分後の事である。

 

 

ビルの屋上になのはとフェイト、そして更に別のビルにユーノとアルフが転送された。

風が吹き、そこにいる者達の髪がなびいている。

「あいつ等……」

クロノが喜びの声を上げたのに対して、ヴィータは苦虫を潰したような表情になっていた。

「レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

なのはとフェイトは手に収まっているデバイスの名を呼んでから天に掲げる。

「「セーットアップ!!」」

光の柱が二人を包むようにして下り、二人は地から足が離れていく。

なのはには桜色の帯のようなものが、フェイトには金色の帯のようなものが身体に纏っていく。

「え?こ、これって……」

「今までと違う?」

驚きの声を上げながらもデバイス達の作業は継続中だ。

『二人とも、落ち着いて聞いてね。レイジングハートとバルディッシュは新しいシステムを積んでるの』

エイミィが今までとは違うデバイスの反応に戸惑っている二人に落ち着くようにナビゲートする。

「新しいシステム?」

セットアップ中のなのはがエイミィに訊ね返す。

『この子達が望んだの。この子達の意思で、自分の想いで!』

二人は同時に天に掲げているデバイスを見てしまう。

『呼んであげて!その子達の新しい名前を!』

 

「レイジングハート・エクセリオン!!」

「バルディッシュ・アサルト!!」

 

二人が新しくなったデバイスの名を叫ぶ。掌に乗っていた二つは今まで以上の輝きを放ちだした。

光に包まれ、二人は私服姿からバリアジャケット姿へと切り替り、地に足を着けた。

「あいつらのデバイス……。あれってまさか……」

ヴィータの声が耳に入ったような気がした。

両目を閉じていたフェイトは目を開き、デバイスモードのバルディッシュ・アサルトを前方へと向ける。

『カートリッジセット!』

バルディッシュ・アサルトの音声と同時にカバーが引かれてリボルバーが左に一回動き、カバーが元に戻る。

なのはもまた、両目を開いて同じ様にレイジングハートを前方へと向ける

『アクセルモード。スタンバイレディ!』

レイジングハート・エクセリオンは球体部分が光った。

二人は同時にデバイスを構える。

戦闘態勢が完了した。

 

騎士甲冑姿のシグナムは海鳴の一部をドーム状に覆っている結界を見下ろしていた。

「強装型の捕獲結界。ヴィータ達は閉じ込められたか……」

状況を把握するかのように呟く。

『行動の選択を』

シグナムの右手に握られているレヴァンティンが主に促している。

「レヴァンティン。お前の主はここで退くような騎士だったか?」

『否』

レヴァンティンを握る力が強くなる。

「そうだレヴァンティン。私達は今までもずっとこうしてきた!」

シグナムは自身と相棒に言い聞かせるようにして、レヴァンティンを上段に構える仕種を取りながら、流れるように右斜め下へと降ろしていく。

円型の魔法陣が三角形を象って、大きな紫色の魔法陣となり、展開される。

レヴァンティンの峰部分の一部がスライドして、カートリッジを排出する。

下ろしていた相棒をシグナムは右斜めへとゆっくりと持ち上げていく。

レヴァンティンの剣先が紅蓮の炎に包まれていく。

鋭い目つきはさらに鋭さを増し、戦場へと飛び込んでいった。

(野上がいないことを望む。何故かはわからないが、今会えば剣を振る自信がないからな)

 

フェイトとなのははヴィータとザフィーラを見上げていた。

「わたし達は貴女達と戦いに来たわけじゃない。まずは話を聞かせて」

二人に話し合いを切り出したのはフェイトだ。

「『闇の書』の完成を目指している理由を!」

なのはが話し合いの主題となる単語を二人に向けて言う。

「あのさぁ。ベルカのことわざにこういうのがあるんだよ」

ヴィータは腕を組んで、なのはとフェイトを胡散臭そうに見下ろしていた。

ザフィーラは何か悪い予感を感じたのかヴィータを見る。

 

「和平の使者なら槍は持たない」

 

ヴィータから告げられた言葉にフェイトとなのはは目を丸くしてから顔を見合わせる。

だが、わからないものはわからないので互いに首を傾げる始末だ。

「話し合いをしようってんのに、武器を持ってやってくるヤツがいるか?バカって意味だよ!バーカ!」

グラーフアイゼンで二人を指しながら、ヴィータは悪意を込めて言い張る。

なのはは意味を知って、ガクッとする。

そして、眼前の少女がかつて自分にしてきた事を思い出す。

「いきなり有無を言わさずに襲いかかってきた子がそれを言う!?」

そして、自分の本音をぶつけた。

「それにそれはことわざではなく、小話のオチだ」

腕を組んで黙って聞いていたザフィーラが表情一つ変えずにさらりとツッコミを入れた。

「うっせぇ!いいんだよ!細かい事は……」

ヴィータが自分の痴態をごまかすようにしてオーバーなリアクションを取る。

(あの子、モモタロスさん達がいなくてよかったね)

なのはとの念話の回線を開いたのはユーノだった。

(いたら絶対に今ので、笑いのネタにしようとしてたよね)

日常を共に過ごしているだけあってモモタロス達の行動パターンが、なのはとユーノには見え始めていたりする。

「どうしたの?なのは」

横にいるフェイトが一人で頷いているなのはの様子が気になったので声をかけてきた。

「ふえ?ええとね。モモタロスさん達がいたら、あの子笑いのネタにされてるなあってユーノ君と話してたの」

「確かに、モモタロス達ならやりそうだよね」

フェイトも付き合いは長くはないが、あのイマジン達ならそのくらいはやりそうだと自信を持って言える。

「お前等ぁ!さっきから何話してるんだよ!?無視するなぁ!」

置いてけぼりを食らったと感じたヴィータはなのはとフェイトに大声で怒鳴る。

その直後に、紫色の稲妻がなのはとフェイトが建っているビルの向かいに落ちた。

そこにいる誰もがそれに目を向ける。

稲妻は消えて、落雷した場所には爆煙が立ちこめる。

爆煙が晴れていくと、そこにはシグナムがいた。

「シグナム……」

フェイトは思わず声を上げてしまう。

以前に自分が戦い、完敗した相手でありライナー電王に敗北した相手だ。

シグナムがゆっくりと立ち上がる。

そして、こちらを見ていた。

 

ヴィータとザフィーラに先制で攻撃を仕掛けたクロノはユーノとアルフがいるビルへと移動していた。

「良太郎達はまだみたいだな……」

クロノは周囲を見回しながら、隣にいるユーノに言う。

「うん。イマジンもいないってのがせめてもの幸いだよ」

ユーノも海鳴市で立て続けに出現しているイマジンの事はモモタロス達経由で知っている。

そして、魔導師達

自分達

がイマジンと戦っても勝算がゼロに等しいこともだ。

「正直言ってイマジンの力は、あたし達より上だからねぇ」

アルフもわかっていた。厄介なのは眼前の敵ではなく、神出鬼没のイマジンだということを。

「二人とも見てみなよ。なのはとフェイトが何かやらかそうとしてるよ」

アルフがユーノとクロノになのはとフェイトの動向を見るように促した。

彼女達の性格をそれなりに知っているので、三人は次にどのような台詞が飛んでくるかは凡その見当はついていた。

 

 

『時の空間』を線路を敷設と撤去という工程を繰り返しながら、デンライナーは走っていた。

「オーナー、どうして急に口止めしたんですか?」

「そうですよ~。フェイトちゃんは明らかに良太郎ちゃんに……」

コハナとナオミが指定席で旗付きチャーハンを食べているオーナーに問い詰める。

チャーハンを掬うオーナーのスプーンが停まる。

「実はですねぇ。以前ウラタロス君が面白半分で言っていた事を憶えていますか?」

オーナーの台詞にコハナとナオミは頑張って、記憶の片隅に眠っている記憶を引っ張り出そうとする。

「ウラが言っていた事ですか?」

「ウラちゃんがですかぁ?」

ウラタロスは性格上、事件がらみでない限りは常に面白半分な事を言ってるので中々思い出せない。

「良太郎君の奥さん、つまり、幸太郎君のお婆さんになる人についてですよ」

オーナーは話を進めるために強引に話題を切り出した。

「ああ、確かオーナーはその人を知ってる感じでしたよね?」

「一体、誰なんですか~?」

女性二人の瞳は今まで以上に輝きを増している。

オーナーとしてみても、少々圧されていた。

「教えてあげたいのは山々なのですが、ヒントだけお教えしましょう。今回の良太郎君とフェイトさんのギクシャクした関係はそう長くは持ちませんよ。そして、それはいずれ未来にも繋がるためのステップなのですよ」

オーナーはまたも右手に握られているスプーンでチャーハンを掬って口の中に放り込んだ。

ちなみに良太郎は外の景色を眺めており、イマジン四体はダーツゲームをして遊んでいた。

『時の空間』の一部が歪み、現実世界へと通ずる穴へとデンライナーは入っていった。

 

 

海鳴市の強装結界の中では張り詰めた空気がその中を支配していた。

「ユーノ君!クロノ君!手出さないでね。わたし、あの子と一対一だから!」

なのはは後ろにいる少年二人に高らかに宣言する。

その宣言に最初に反応したのはこれからなのはと戦う相手であるヴィータだ。

「くっ!」

その表情は苦々しいものだ。なるたけ戦闘は避けたかったというのが彼女の本音だろう。

(なのは、本気なんだね?)

ユーノは念話の回線を開いて、なのはの意思を確認する。

(うん!)

なのはは即答する。意思が固い証明だ。

(わかった)

ユーノはなのはの意思を尊重して、念話の回線を閉じた。

フェイトもまた、自分の使い魔に念話で交信していた。

(アルフ、わたしもシグナム(彼女)シグナムと……)

(ああ、わかったよ。あたしもヤロウにちょいと話がある……)

フェイトはアルフが交信を続けながらも、ザフィーラを見上げるようにして睨んでいる事が容易に想像できた。

 

お相手が決まった三人を見てから、クロノは隣にいるユーノに念話の回線を開く。

(ユーノ、それなら丁度いい。僕と君で手分けして『闇の書』の主を捜すんだ)

アイコンタクトを取る。

(『闇の書』の?)

ユーノはクロノの意図がわからない。

(連中は『闇の書』を持っていない。恐らくもう一人の仲間か、主かがどこかにいる。僕は結界の外を捜す。君は中を頼む)

(わかった)

ユーノはクロノの案に頷いた。

(それと、くれぐれも言っておくがイマジンと出くわしても戦おうなんて考えるな。逃亡しても恥ずべき事ではない)

(ああ、わかってる……)

ユーノはクロノの言っている事が正しいと思いながらも、自身に戦う力がないということを嫌でも突きつけられたような感じがして複雑だった。

その証拠に拳が震えていたのだから。

 

『マスター、カートリッジロードを命じてください』

レイジングハート・エクセリオンが赤い珠を光らせて、主に指示を仰いだ。

「うん!」

レイジングハート・エクセリオンを天に掲げてから振り下ろす。

「レイジングハート!カートリッジロード!!」

『ロードカートリッジ!』

レイジングハート・エクセリオンのカートリッジ部分がガシャリという音を立てた。

杖の先端カバーがスライドして、カートリッジが装填されると同時に蒸気が噴出す。

『マスター』

バルディッシュ・アサルトも主に促す

「わたしもだね。バルディッシュ」

口数はレイジングハート・エクセリオンに比べて圧倒的に少ないがフェイトには何が言いたいのかすぐに理解できた。

バルディッシュ・アサルトを下ろす。

「バルディッシュ、カートリッジロード!」

『ロードカートリッジ!』

杖の先端カバーがスライドして、リボルバー拳銃のシリンダーが剥きだしになる。

シリンダーが数回転してから、カバーが元の位置に戻っていく。

同時に蒸気が噴出された。

「デバイスを強化したな。気をつけろ。ヴィータ」

ザフィーラが冷静に状況を把握してから頭に血が上りやすいヴィータに釘を刺す。

「言われなくても!」

ヴィータは怒鳴り返す。

シグナムは無言でレヴァンティンを八双の構えにする。

それから数秒後、無数の光が海鳴の夜空を駆けた。

 

シグナムが結界に強引に乱入した時、実を言うとシグナム以外にも乱入者がいた。

それがこの光球である。

光球はやがて、二足歩行の動物の姿を取る。

バク型のイマジン---テイパーイマジンだ。

目的は時空管理局の妨害、つまりヴォルケンリッターの援護というかたちになる。

ただし、姿をさらしてはならないという厄介な制約付だが。

「管理局の連中の邪魔をすればいいと言われたが、誰から狩ろうか……」

白が目立つ服を着た少女、あれは『闇の書』の守護騎士と戦っている。

黒が目立つ服を着た少女、あれも『闇の書』の守護騎士と戦っている。

獣の耳と尻尾を持った少女、あれも『闇の書』の守護獣と戦っている。

「ならば、あいつだな……」

翡翠色の魔力光を持って、どこか民族衣装のような戦闘服を着ている少年。相手はいない。

テイパーイマジンはまた光球となり、少年の元へと飛んでいった。

 

金色の光と紫色の光が×(バツ)の字を描きながら上昇していった。

そのたびにバシンともガキンともいう音が鳴り響く。

そして、ビルがなくなり完全な空となるとぶつかっては離れて、またぶつかるという行為を繰り返していた。

「「はああああああああぁ!!」」

金色の光---フェイトと紫色の光---シグナムが同じタイミングでバルディッシュ・アサルトとレヴァンティンを振り下ろす。

ガキンとぶつかり、互いの力が均衡になっているのか両者のデバイスがカタカタと震えている。

フェイトの瞳に映るのはシグナムのみ。

シグナムの瞳に映るのもフェイトしかない。

鍔迫り合い状態からの進展がないと両者は判断し、後方へと距離を置く。

『プラズマランサー』

バルディッシュ・アサルトが発すると同時に、フェイトの足元に金色の魔法陣が展開される。

フェイトの前方に八つの雷を帯びた金色の目玉のようなものが出現する。

「プラズマランサー、ファイア!」

八つの金色の目玉が(やじり)のようなかたちになってシグナムに向かって飛んでいく。

紅蓮の炎を纏ったレヴァンティンで飛んでくる鏃を分散させるシグナム。

鏃は様々な方向へと飛び散る。だが、一つとして形は崩れていない。

「ターン!!」

フェイトが左手で合図を取ると、鏃は先端を切り替える。

そして、また標的に向かって発射される。

シグナムは周囲を見回して、逃げ道は上しかないと判断すると迷わず上昇する。

鏃は一点にぶつかるが、爆発せずにバラけて上にいるシグナムに更に狙いをつけて飛んでいく。

上昇する中で、シグナムはレヴァンティンの名を呼ぶ。

レヴァンティンは主の意思を汲み取ったかのように、スライドさせてカートリッジを排出させる。

金色の鏃の速度は更に増す。

剣先に炎を纏ったレヴァンティンを持ったシグナムは上昇する事をやめて、その場で停まる。

「でえええええええい!!」

そして横一文字に薙ぎ払った。

八本の金色の鏃はその一撃で全て消滅する。

「!!」

その隙を狙うかのようにしてフェイトが距離を詰めて、バルディッシュ・アサルトを振り下ろそうとしていた。

『サイズフォーム』

バルディッシュ・アサルトはもう一度、スライドさせると、金色の鎌刃が出現した。

『シュランゲフォルム』

レヴァンティンの刃がまるで獣の尻尾のようにか、鞭のようにしなる形へと姿を変えていく。

そして紫色と金色の爆発が起こり、空中で爆煙が立つ。

フェイトとシグナムは後方へと退がる。

しかし、構えは解かない。

「っ!」

フェイトは一瞬だが表情を歪めた。

左腕に傷が二箇所できていた。

「ぅ!」

シグナムも同様に一瞬だが表情を歪めていたのだ。

胸元に切り傷ができていたからだ。

両者共に痛み分けというところだろう。

「強いな。テスタロッサ」

シグナムはそう告げると、レヴァンティンをシュランゲフォルムから、

『シュベルトフォルム』

と元の片刃の長剣へと戻す。

「それにバルディッシュ!」

シグナムはレヴァンティンを構えながらもフェイトと相棒のデバイスを称賛する。

「貴女とレヴァンティンも」

フェイトもまた、眼前の騎士と相棒のデバイスを称賛する。

「この身になさぬことがなければ心躍る戦いのはずだったが、仲間達と我が主のため今はそうも言ってられん」

シグナムは左手にレヴァンティンを納める鞘を出現させて、レヴァンティンを納刀する。

フェイトはシグナムが何かを繰り出すかと警戒しながら聞いている。

バルディッシュ・アサルトを構え続ける。

 

「殺さずに済ませる自信がない。この身の未熟を許してくれるか?」

 

シグナムはそう言うと同時に、足元に紫色の魔法陣を展開させ抜刀する構えを取る。

 

「構いません。勝つのは、わたしですから」

 

フェイトも決意を込めた瞳をシグナムに向けた。

互いに笑みを浮かべていた。

『好敵手』と呼べる存在に出逢えたのだから。

「ところでテスタロッサ、一つ訊ねたい事がある」

抜刀の構えのまま、シグナムは口を開く。

「何ですか?シグナム」

フェイトもバルディッシュ・アサルトを構えたまま問いに答えようとする。

「野上は一緒ではないのか?」

「え?」

その直後、フェイトの心臓が高鳴った。

どくんどくんどくんと鼓動が激しくなる。

空いた左手で胸元を押さえる。

(ど、どうしよう。この音、誰にも聞かれてないよね?で、でも……ど、どうしてシグナムが良太郎のことを、わたしに訊ねてくるんだろ?)

途端に顔がカーッと赤くなっていく感じがわかる。

何だかいてもたってもいられないという感じがする。

 

「ど、どうしてそこで良太郎の名前がでてくるんですか!?」

 

フェイトが顔を真っ赤にしてシグナムに叫んだ。

シグナムは目を丸くする。

フェイトの突然の叫び声もそうだが、彼女の言うように何故自分は良太郎の事を訊ねたのだろう。

「言われてみれば確かに……」

シグナムはそう返すしかなかった。

どくんとシグナムの心臓が高鳴った。




次回予告


第二十五話 「絶体絶命」
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