仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第二十八話 「ある人物を思い出して」

海鳴市での戦闘から退避して数分後。

守護騎士達が八神家に帰宅しても、八神はやて、桜井侑斗、デネブはいなかった。

「桜井やデネブがいる以上、主の身は安全か……」

はやてのボディーガード役になっていると思われる侑斗とデネブは腕っ節は強いので、変質者に襲われる心配はないとシグナムは考えている。

なお、彼女の身なりは騎士甲冑ではなく私服だ。

それは他の二人---ヴィータとシャマルも同じだ。

ザフィーラは人型から獣型になっている。

「はやてぇ……」

ヴィータは甘えた口調で主の名を呼ぶ。

「とにかく、はやてちゃんに連絡しましょう。約束を破ったもの、きちんと謝らないと……」

シャマルが受話器を手にして、ボタンを押し始めた。

発信先は、はやての携帯電話である。

しかし、出たのは持ち主ではなく侑斗だった。

「あ、侑斗君ですか?はやてちゃんは?」

 

月村邸で、はやての携帯電話に出ていた侑斗はシャマルと話していた。

声色からして、後悔と反省が混じっているように感じた。

「八神ならここにいる。代わるぞ。八神、シャマルからだ」

「うん。ありがとうな。侑斗さん」

はやては侑斗から携帯電話を受け取る。

「もしもし、はやてです。シャマルどうしたん?」

はやてはしっかりと聞いている。

その姿勢は侑斗から見ても『九歳の子供』ではなく、『八神家の主』だった。

外見年齢ならシャマルの方が上だが、人としての精神的な心持ちなら明らかにはやての方が上に思えた。

シャマルの声は聞こえないが、真相を悟らせないための言い訳を繕っているに違いない。

「はやてちゃんってご家族の方と電話している時って、すごく大人っぽく見えますよね?」

話し相手がほしかったのか、すずかは侑斗に声をかける。

「そうだな。家の中じゃ八神が一番しっかりしてるからな」

侑斗の表情は台詞に反して、浮かない感じだった。

「どうしたんですか?」

すずかは怪訝な表情になる。

「ん?あいつが九歳の子供でいられるのは、おまえと遊んでる時だけなのかなっと思ってな」

「八神は責任感が強いから、身内の事ばっかり心配してるんだ」

デネブも、はやての責任感の強さが自身を追い詰める事態を招くのではと危惧している。

「そうなんですか?」

すずかは自分の知らない、はやての一面を知った。

「これからも八神と友達でいてやってくれないか?俺もデネブもいつまでも八神といれるわけじゃないから」

侑斗はすずかに頭を下げて頼む。

デネブも釣られるようにして頭を下げていた。

「え、そ、そんな……。頼まれなくても、わたし……はやてちゃんとはずっと友達でいたいですから……大丈夫ですよ」

すずかは年上の男性と年齢不詳の怪人に頭を下げられて、あたふたするが自分の意見を侑斗とデネブに伝えた。

 

シグナムとヴィータとザフィーラはシャマルのアイコンタクトで冷蔵庫を開けて、覗いていた。

そこには夕飯のお鍋の具があって、『大盛りやで~。デザートは冷蔵庫!はやて』というメモ書きが貼られていた。

シグナムはシャマルを見る。

まだ申し訳ない声を出して、はやてと電話をしていた。

(私がやればどう頑張っても主に見抜かれるだろうな)

そんなことを思っていたりする。

シャマルがヴィータを呼んだ。

はやてがヴィータと話がしたいと申し出たようだ。

シャマルがゆっくりと中庭に出ていた。

見ているのが夜空に君臨している月だというのは後ろ姿を見てもすぐにわかる事だ。

シグナムも中庭に出て、シャマルの隣に立つ。

「寂しい思いをさせてしまったな」

はやての心中を察する台詞を発するたびに白い息が吹き出る。それだけ寒いという証拠だ。

「うん」

シャマルは首を縦に振る。

「それにしても、お前を助けた男は一体何者だ?」

「わからないわ。少なくとも当面の敵ではなさそうだけど……」

シャマルは自身の考えを素直に打ち明ける。その度に白い息が出ている。

「管理局の連中もこれでますます本腰を入れてくるだろうな。それに、ヴィータとザフィーラから聞いたが、結界の中でイマジンが一体紛れ込んだらしい」

「イマジンが!?」

シグナムの報告にシャマルは驚きを隠せなかった。

「管理局側と敵対したところを見ると、少なくとも我々の敵ではないと考えられるがな。相手がイマジンである以上、下手な推測は危険を招く事になる」

シグナムはイマジンを中立---敵もないが味方でもないとみなしている。

「それで、そのイマジンは?」

シャマルはイマジンの所在を訊ねる。

「ヴィータが言うには、電王が現れて倒したそうだ。イマジンを倒した電王を見てヴィータはこう思ったそうだ」

「どう思ったの?」

「漫才が出来るようなふざけた外見だが、戦闘力は折り紙つきだと。私と二人がかりで戦っても勝つ可能性は薄いそうだ」

「その電王ってデネブちゃんが言っていた、てんこ盛り?」

シャマルは以前にデネブから教えてもらった事を思い出しながら口に出す。

「シャマル、何だそのふざけた名称は?私達の最大の障害となるべく存在の電王が、そんなふざけた形態かと思うとやる気が削がれてならんぞ……」

「デネブちゃんが言ってたんだもん!私が考えたんじゃないもん!」

シグナムが呆れ表情でツッコミを入れてくるので、シャマルは涙目で精一杯抗議した。

「と、とにかく!あの砲撃で大分ページも減っちゃったし……」

「だが、あまり時間もない。一刻も早く主はやてを『闇の書』の真の所有者に……」

「そうね……」

シグナムの尤もな意見にシャマルは焦りの表情を隠さずに頷いた。

「シグナムー。はやてが代わってって」

今まで、はやてと対話していたヴィータが受話器を持って中庭にいるシグナムに声をかけた。

「ああ」

シグナムはヴィータから受話器を受け取る。

「もしもし、シグナムです」

 

 

チームデンライナー及びアースラチームは駐屯所であるハラオウン家に戻っていた。

キッチンで野上良太郎とコハナは人数分のコーヒーを淹れており、リビングにいるモモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスは買い溜めしていたと思われるお菓子を勝手に開けて食べていた。

ユーノ・スクライア(人間)は今回の戦いで一番肉体的にも精神的にもダメージを負っており、現在はソファでゆっくりと眠っている。

アルフ(人型)はその看病をしていた。

「カートリッジシステムは扱いが難しいの。本来ならその子達みたいに繊細なインテリジェントデバイスに組み込むようなモノじゃないんだけどね。本体はその危険も大きいし危ないって言ったんだけど……、その子達がどうしてもって……」

高町なのはとフェイト・テスタロッサはエイミィ・リミエッタの講義に真剣に耳を傾けている。

「よっぽど悔しかったんだね。自分がご主人様を守ってあげられなかった事とか、ご主人様の信頼に応え切れなかった事とか……」

エイミィはデバイスの気持ちを汲んで、二人に告げた。

なのはとフェイトは掌で収まっているデバイスを見ている。

「ありがとう。レイジングハート」

なのはが感極まった表情で礼を言う。

『オーライ』

赤珠状態のレイジングハート・エクセリオンは自身を光らせて答えた。

「バルディッシュ……」

フェイトもなのは同様、感極まった表情だ。

『イエッサー』

金色の三角形状態のバルディッシュ・アサルトが短く答えた。

「モードはそれぞれ三つずつ。レイジングハートは中距離射撃の『アクセル』と砲撃の『バスター』、フルドライブの『エクセリオン』モード。バルディッシュは汎用の『アサルト』、鎌の『ハーケン』、フルドライブは『ザンバー』フォーム。破損の危険があるからフルドライブはなるべく使わないように。特になのはちゃん」

二人まとめて説明していたエイミィが、急になのはを名指しした。

「あ、はい?」

急に名指しされたので、どこか緊張のない声をなのはは出してしまう。

「フレーム強化をするまで、エクセリオンモードは起動させないでね」

「はい」

エイミィの忠告を聞き入れて、なのはは真剣な表情でレイジングハート・エクセリオンを凝視した。

「パワーアップできたんだぁ。凄いや!エイミィちゃん!」

スナック菓子を食べていたリュウタロスは二人のデバイスをパワーアップさせたのはエイミィだと思っている。

「あー、素直に喜びたいんだけど私じゃないんだなぁ」

エイミィはリュウタロスに苦笑いを浮かべながら、否定する。

「じゃあ、誰なんや?」

バリボリとスナック菓子を食べているキンタロスがデバイスを強化した人間の名を訊ねる。

「私の後輩でマリーって子が担当したんだよ」

マリー---フルネームはマリエル・アテンザといい、時空管理局本局メンテナンススタッフの一人である。

「名前もしくは愛称からして女の子だねぇ」

スティックチョコを食べながらウラタロスが目をきらりと光らせて推測した。

「よくわかるね。正解だよ、ウラタロス君」

褒めながらエイミィは、ウラタロスが手にしているスティックチョコを一本取って口の中に入れる。

「でもよぉ、クロイノの姉ちゃん」

モモタロスは食べ終わったスナック菓子をゴミ箱の中に放り込み、冷蔵庫の中に置いてあったプリンを手に取ってエイミィに声をかける。

「モモタロス君。誤解してるかもしれないけど、私クロノ君とは姉弟じゃないよ」

「固ぇこと言うなよクロイノの姉ちゃん。なのはに釘刺したって事はよ、なのはの杖は完全じゃねぇって事か?」

エイミィが訂正するが、モモタロスはそれを右から左へと流していた。

「そうだね。完成度を%でいえば八十五%くらいかなぁ」

八割五分なら不良ではないが、完全とも言いがたい数字だ。

「フルドライブ以外ならば問題ないんだけどね」

エイミィが付け足す。

それはなのはに「アクセルとバスターで戦え」と言っているようなものだ。

いつ『エクセリオンモード』が必要になってくるかもわからないので早めに解決したい問題でもある。

「そういえば、ユーノやなのはちゃんを襲ったイマジンは何なんだろ?ユーノは今までとは違うって言ったけど……」

良太郎は淹れたコーヒーを各々に渡していく。

「でも、唯一その情報を知っているユーノはまだ眠ってるし……」

コハナはソファで眠っているユーノに目を向ける。

「正直、これが一番の意外な結果だがな……」

リビングのソファでリンディ・ハラオウンと話していたクロノ・ハラオウンがユーノに目を向ける。

「イマジンと一人で対峙した事で何かを悟ったのかもしれないわね……」

リンディがユーノの心境の変化を推測する。

「悟った?何をですか?」

クロノはリンディに更に訊ねる。

「一対一で対峙するまではクロノとの打ち合わせどおりに『逃げる』事を選んだのでしょうけど、想像と現実で違いが生じたのでしょうね」

『仮想敵』としてのイマジンと『現実』のイマジンでは違いが生じるのは当然といえば当然だろう。

「仮装と現実での違い、それは誰もが持つ『意』と呼べるのものの有無よ」

リンディは経験によるものか、ユーノが何故打ち合わせと違う行動を取ったのかを語った。

「?」

なのははピンと来ない顔をしているが、良太郎やイマジン四体、フェイト、アルフは理解できたようだ。

「良太郎さん、『意』って何なんですか?」

なのはは渡されたコーヒーを一口飲んでから、良太郎に訊ねた。

良太郎を選んだのは難しくなく、理解しやすく教えてくれると思ったからだろう。

「敵意や殺意って言葉はわかる?」

良太郎はなのはの理解力を確認する。

「はい」

「『意』っていうのはね、心の中の思いの事なんだよ。敵意や殺意もその中に含まれてるんだ。その気になればそういうものを相手にぶつけて怯ませる事が出来るってのは、なのはちゃんも体験済みじゃないかな?」

良太郎の言葉に、なのははヴィータとの初戦を思い出す。

あの時、自分があそこまでダメージを受けたのはヴィータが放つ殺意に呑まれたからだ。

「は、はい。じゃあ、ユーノ君がイマジンと戦ったのは……」

なのははようやく意味を理解し、ユーノが何故イマジンと戦う事を選んだのか理解し始めた。

「イマジンが放った殺意に呑まれて、『逃げる』という選択肢を消されたのよ。それにユーノ君が初めてなんじゃないかしら」

リンディが結論付けると同時に、あることに気付いた。

「何がですか?」

クロノは訊ねてばかりだが、知ったかぶりをするよりはマシと思っているので恥とは思っていない。

「一対一でイマジンと対峙した魔導師って」

「言われてみればそうかも……」

リンディの言葉に頷いたのはフェイトだった。

「僕達もイマジンと戦闘を経験した事はありますが、そのときは複数でしたからね」

クロノも半年前にイマジンと戦闘をした事がある。

なのは、フェイト、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスも含めた合計六人がかりだ。

「うん?……あれ、僕寝てたんだ」

ソファから寝息ではなく、ハッキリとした声が聞こえてきた。

寝ていたユーノが目を開けて起き上がっていた。

「ユーノ君!」

なのはが喜びの顔で名を呼ぶ。

「もう大丈夫なのかい?」

「立つのはまだ無理だけど、ソファに座って話すくらいなら出来るよ」

アルフが容態を訊ね、ユーノは冷静に自身の容態を打ち明けた。

「良太郎さん、あのイマジンの事について話さなければならないことがあるんです」

「あの時に言おうとしてた事だね?うん、何かわかったの?」

良太郎の言葉にユーノは首を縦に振る。

「あのイマジンは僕と戦う前にハッキリと言ったんです。契約者はいないって、あと目的は『闇の書』の完成と」

ユーノの言葉に、その場にいる誰もが目を丸くしていた。

「良太郎君。イマジンって契約者がいないと身体保てないんじゃなかったっけ?」

エイミィが尤もな事を訊ねてくる。

少なくとも、魔導師サイドの面々においてのイマジンの見識は契約者とイマジンはワンセットになっているのだろう。

「まぁ普通はね。例外もあるんだよ」

「例外?」

聞き返すエイミィに良太郎は首を縦に振って続ける。

「うん。そういった契約者を持たずに実体化しているイマジン。『はぐれイマジン』がね」

「はぐれイマジン?」

名称としては悪くはないが、魔導師サイドにとっては十分に脅威ともいえるものだ。

「僕はもちろんの事、イマジンであるモモタロス達もきちんと理解してるわけじゃないからね……」

人間が自身の生体構造を百%熟知しているかというと、必ずしも「はい」といえないのが現実であるように、イマジンが自身のことを百%熟知しているかと訊ねられて「はい」と答えられなくても何ら不思議な事ではないのだ。

「ユーノ、そのイマジンは仲間がいるようなことは言ってなかった?」

良太郎は今回倒したイマジンが首謀者とは思っていない。

「ある方の命で来たって言ってました」

ユーノはテイパーイマジンが言った事を思い出して、口にした。

「ある方かぁ。それじゃあ、首謀者がどっちか判別できないね」

ウラタロスの言葉にチームデンライナー一同は頷く。

「首謀者がどっちかってどういう意味なの?」

リンディが疑問を抱く。

「イマジンかもしれねぇし、人間かもしれねぇってことだよ。クロイノの母ちゃん」

モモタロスが過去に『時の運行』を乱した犯人を思い出して大まかに打ち明ける。

「ハナ。人間がその、『時の運行』を乱すなんてあるの?」

「うん。モモの言うように『時の運行』を乱そうとした人間はいたわよ。ハッキリ言えばイマジンよりずっと性質が悪いわね。知能犯な上に狡猾、その上強いんだから」

いつもは良太郎に訊ねてくるフェイトが自分に訊ねてくる事に面食らったが、コハナは答えた。

「俺らが倒したイマジン以外にも、あの百科事典を完成させようとするイマジンが出てくるかもしらんなぁ」

キンタロスは腕組をしながら、首謀者は部下的イマジンを複数連れていると考えている。

「『闇の書』の完成と、『時間の破壊』は繋がりがあると考えた方がいいのかもしれないね」

良太郎の言葉にチームデンライナーの面々は頷く。

「イマジンも『闇の書』の完成を望んでいるという事がわかっただけでも、大きな収穫よ。後はあの人達の目的よねぇ」

リンディはソファに座って、コーヒーを飲んでからある連中の事を思い出す。

「あの人達ってだーれ?クロイノのママさん」

「守護騎士達のことだ」

リンディの代わりにクロノがリュウタロスの問いに答えた。

「確かに腑に落ちませんね。彼等はまるで自分の意思で『闇の書』の完成を目指しているようにも感じますし……」

クロノの言葉はその場にいる誰もが耳を疑うに十分なものだった。

「ん?それって何かおかしいの?」

代表するかのように切り出したのは窓際で腕組をしてたアルフだった。

「『闇の書』ってのも要はジュエルシードみたくすっごい力が欲しい人が集めるモンなんでしょ?だったらその力を欲しい人のためにあいつ等が頑張るってのも、おかしくないと思うんだけど」

アルフに続くようにして、コーヒーを飲んでいた良太郎も気になったことを切り出した。

「それにクロノの言い方だと、あの人達が自分の意思で行動している事自体がおかしいって聞こえるんだけど」

アルフと良太郎の意見を聞いてから、ハラオウン親子は顔を見合わせてから何故自分達がそのような疑問を抱いているのかをクロノが説明しだした。

「まず第一に、『闇の書』の力はジュエルシードのように自由の制御の利くものじゃないんだ」

リンディが続ける。

「完成前も完成後も純粋な破壊にしか使えない。少なくともそれ以外に使われたという記録は一度もないわ」

つまり、どう転んでも『害』しかないということだ。

完成後も完成前も同じ結果しかもたらさないなら、完成させるメリットはゼロだろう。

「ああ、そっかぁ」

アルフは納得した。

クロノはチームデンライナー、なのは、フェイト、ユーノを見回してから口を開きだした。

「それからもう一つ。あの騎士達、『闇の書』の守護者の性質だ。彼等は人間でも使い魔でもない」

その言葉に、リンディ以外の誰もが大きく目を開いて驚いていた。

「『闇の書』に合わせて魔法技術で作られた擬似人格。主の命令を受けて行動するただそれだけのプログラムにすぎないんだが……」

特異な過程を得て、生を受けた存在という事になる。

「事実を突きつけられても、あの人達が人じゃないって言われてもピンと来ないんだけど……」

良太郎はシグナムやヴィータのことを思い出しながら言う。

「僕が疑問を持った理由も納得してもらえただろ?」

クロノの言葉に良太郎は首を縦に振った。

 

ヴォルケンリッターが人間ではないと聞いたとき、フェイトの胸の中で何かがざわめいた。

(あの人達もなんだ……)

自分は正規な手段で誕生したわけではない。

ある意味では神様にケンカを吹っかけるような行為で誕生した。

科学技術の粋で誕生したのだから。

「あの……使い魔でも人間でもない擬似生命っていうと、わたしみたいな……」

両手を胸元で合わせて、その表情は不安を表してフェイトは口を開いた。

 

「違う!!」

 

突然の大声がその場にいる誰もの思考を停止させた。

大声を発したのは良太郎だ。

「りょ、良太郎?」

フェイトは金縛りを受けたかのように動けなくなってしまう。

良太郎が放つ雰囲気に誰もが何も言えなくなっていた。

「それ以上は絶対に言っちゃいけない。いいね?」

フェイトの側まで歩み寄り、しゃがんで目を合わせてそう告げた。

フェイトとしては良太郎を『一人の男性』と意識してから初めて間近で顔を見たと思う。

「え……あ……うん。その……ごめんなさい」

とにかく謝るしか出来なかった。

叱られた事と胸の高鳴りとが入り混じって生じた結果だった。

良太郎は立ち上がって周囲を見回していた。

魔導師サイドの面々は目を丸くしていた。

「……すいません。外に出て頭を冷やしてきます」

良太郎はムキになってしまった事を反省するために、外へと出て行った。

(あ……)

フェイトは良太郎の右拳に目がいった。

震えていたのだ。

それだけで、良太郎はかなり本気で怒っていたのだと推測する事が出来た。

「今のって良太郎君だよね?」

エイミィが確認するかのようにモモタロスに訊ねる。

「ああ、みりゃわかんだろ」

モモタロスは「何言ってんだよ?」という感じで答える。

「彼が怒る所を見るのは初めてだが、その、怖いな」

「そうね。でも、フェイトさんには十分効果があったみたいね。フェイトさん、良太郎さんの言うとおりよ。貴女は生まれ方が特殊なだけで命を持って生まれた人間でしょ」

「検査の結果でも、ちゃんと出てただろ?変な事を言うもんじゃない」

ハラオウン親子もきつめの口調でフェイトに言う。

「……はい。ごめんなさい」

フェイトは二人にも謝罪した。

「センパイ、良太郎のところに行くの?」

ウラタロスが外に出ようとしていたモモタロスに声をかけた。

「おう。オメェ等、ちゃんと話聞いとけよ?」

モモタロスも外へと出て行った。

 




次回予告

第二十九話 「現在 過去」
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