仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第三十三話 「侑斗とデネブ 八神さん家の事情を知る」

緑色が目立つ戦士---ゼロノスとアザラシがモチーフになっているイマジン---シールイマジンが互いの出方を窺っていた。

(仮面ライダーゼロノスか。悪くはないな)

ゼロノスは八神はやてが名付けてくれた自分の名に実は満更でもなかったりする。

Zサーベルを右下段に構えているゼロノス。

二本のサイを構えているシールイマジン。

互いにじりじりと距離を詰めている。

やがて二人を中心にして、冷たい風が吹く。

「「はあああああああ!!」」

互いに同時に駆け出して、間合いを詰め出した。

ゼロノスは右脇に構えてZサーベルを両手で持って上段に構えて振り下ろした。

シールイマジンはサイを構えて、ダメージを受けないようにZサーベルを器用に受け止めた。

正確にはサイの一番長い部分で防いだのではなく、二本のサイの短い部分と長い部分の間で引っ掛けたのだ。

「威力はあるかもしれんが、その厚さゆえに軌道が丸見えだぞ?」

シールイマジンがしてやったりという口ぶりで言う。

「ふん。言ってろ」

ゼロノスは一旦距離を置くようにして後方へと下がり、Zサーベルを正眼に構える。

(確かにこいつの言うとおり、この厚さでは軌道を読みにくくする乱撃は無理だ。だけどな、それだけで攻略したなんて思うなよ?)

Zサーベルは電王が使うDソードと違って、乱撃に適している武器ではない。

「今度はこちらから行くぞ!」

シールイマジンはサイを構えて針を刺すようにして繰り出す。

サイは鋭利な先端を持っているが、斬撃には適していない。そのため敵に致命的なダメージを与える方法としては『突き刺す』以外に方法はない。

その突きは素人ならば目で捉える前に串刺しにされてしまうだろう。

ガキンガキンガキンガキンとサイが防がれる音が鳴る。

ゼロノスが右手はグリップを握ったままで左手はZサーベルの先端に添えて、刃を縦ではなく横に構えて盾のようにして防いでいた。

「バーカ。コイツにはこういう使い方もあるんだよ!」

今度はゼロノスがしてやったりの声を出す。

「ぬううう」

シールイマジンが悔しそうな声を出す。

Zサーベルを正眼に構えなおしてから、一気に間合いを詰めた。

速度は先程よりも速い。

「おらああああああ!!」

上段から振り下ろされるZサーベルをシールイマジンはサイを×字に構えて受け止める。

シールイマジンの両脚がアスファルトの地にめり込む。

めり込んだアスファルトの部分は亀裂が走っている。

『引っ掛けて止める』という方法が出来ないところからすると、余裕がなかったと推測できる。

距離は開けずにZサーベルを振り上げてからもう一度、上段に振り下ろす。

ブォンという空を裂く音が鳴ってからガキンとサイで受け止める音が響く。

「ぐっ」

シールイマジンが苦悶の声を吐く。

Zサーベルとサイがカチカチカチという震えて生じる音が鳴っていた。

 

「おい!あのお化けアザラシ、じゃなかったイマジンって奴と戦っているのは何だよ!?」

デネブにおぶられているヴィータはゼロノスとシールイマジンの戦闘を見ながらおぶってくれているデネブに訊ねた。

「あれはゼロノスというんだ」

デネブは短く答えた。

「ゼロノス?あ、はやてとシャマルだ。なぁ、あっちまで運んでくれよ?」

「了解」

デネブはヴィータに命じられるままに、はやてとシャマルの元まで歩み寄った。

「はやてぇ!」

「ヴィータ!無事やったんやね。よかったぁ」

「うん。えーっと、おデブとあのイマジンって奴と戦っている奴が助けてくれたんだ」

ヴィータは事の詳細を素直に、はやてに打ち明けた。

嘘のつきようがないからだ。

「そうやったんか。ほんまにありがとうございます。おデブさん」

「デネブです」

「え?そうやったんですか。すいません。デネブさん」

はやては間違って名を呼んでしまったことを恥じて、デネブに謝罪した。

「それよりそっちの人は?」

デネブは気を失っていると思われるシャマルの様子を見る。

「イマジンに襲われて気を失ってしもうたんです。脈はあるから本人が眼を覚ますまでじっと待つしかないかもしれへんのです」

「うーん。すまないが降りてくれないか?」

デネブはヴィータに降りるように頼んでみる。

「ちぇー、わーったよ」

ヴィータは渋々デネブの背中から降りた。

そしてデネブはシャマルを背負う。

「さっきの子より重い」

シャマルが聞いたら涙目になって抗議しそうな事をデネブは吐く。

「デネブさん。シャマルが気失っててよかったですね」

「何で?」

「オマエ、デリカシーなさすぎだ……」

はやての言葉に理解できないデネブに、ヴィータは呆れた。

デネブの周りには女性がいないに等しいので、女性にとっては禁句となるようなものを知っているわけがない。

 

(ん?)

ゼロノスはZサーベルを何度も振り下ろしながら受け止めているシールイマジンのサイに異変が起こっている事に感じた。

よく見ると、亀裂が生じていた。

(こいつ、まだ自分の武器がヤバくなってる事に気付いてないな)

あと二、三回同じ事を繰り返せば確実にサイは砕けるだろう。

「おらああああ!!」

両脚をどっしりと地に付け、腰に力を入れて先程よりも力を溜めてから、Zサーベルを振り下ろす。

ガキィンと激しい音が鳴り、シールイマジンの二本のサイの一部が欠片ほどの大きさだが地に落ちた。

「!!まさか!?」

シールイマジンが自分の武器の耐久力が落ちていることにようやく気付いた。

「遅ぇえよぉ!!」

ゼロノスはとどめといわんばかりに、Zサーベルを振り下ろした。

シールイマジンのサイは砕けて、地に刺さって消滅していった。

武器を破壊されて逃げ腰になろうとしているシールイマジンをゼロノスは逃がさない。

「逃がすか!」

Zサーベルを右脇に構えて、一気に間合いを詰める。

間合いを詰めてから両脚に力を入れて踏ん張って、Zサーベルを左切上

ひだりきりあげ

の軌道に沿って振り上げた。

「がわああああっ」

火花を飛び散らせて悲鳴を上げるが、これが致命傷ではない事はゼロノス自身が一番わかっている事だ。

「もう一発!!」

振り上げたZサーベルを下ろして構えを取らずに握っている手を上手く操って、逆袈裟に振り下ろした。

火花が収まり、斬撃箇所に煙が出ているシールイマジンにとっては追い討ちであり、立ち直る機会を完全に失ってしまう一撃だった。

「ぐわああああっ!!」

シールイマジンが斬撃箇所を手で押さえながら、後退しようとしていく。

ゼロノスはZサーベルのグリップを外す。巨大化していたゼロガッシャーは小型化して、グリップを上下逆にして差し込んで、Zサーベルの刃となっている部分を自分の方向にスライドさせて刃を弓型にするとフリーエネルギーで巨大化する。

ゼロガッシャーボウガンモード(以後:Zボウガン)へと切り替えた。

先端をシールイマジンに向けてZボウガンの引き金を絞る。金色のフリーエネルギーの矢が発射される。

狙いは両脚で、後退させないようにする。

更に二回ほど引き金を絞る。

二発、金色の矢が発射されて両脚に直撃し、シールイマジンは尻持ちをついてしまう。

ゼロノスはゼロノスベルトのバックル左上にあるフルチャージスイッチを押す。

『フルチャージ』

電子音声で発した直後にゼロノスカードを抜き出して、Zボウガンのガッシャースロットに差し込んだ。

フリーエネルギーがバチバチと溢れ出してゼロノスはZボウガンの照準をシールイマジンに向ける。

「おりゃああ!!」

駆け声と同時に、引き金を絞る。

通常よりも数倍の黄金の矢が発射されてシールイマジンに直撃し、許容量以上のフリーエネルギーに耐え切れずに爆発した。

シールイマジンがいた場所は爆煙が立ち込めていた。

Zボウガンのガッシャースロットからゼロノスカードを抜き取ると、左手に握られているゼロノスカードは溶けるようにして消滅した。

ゼロノスベルトを外すと、ゼロノスから桜井侑斗へと姿が戻った。

(これで一枚目か……)

侑斗は、はやてを見る。

(どうなるんだ……。カードを使った以上、この子が俺を憶えているわけがないからな)

ゼロノスカードの効力が別世界で解消される事は推測だが、まずないだろう。

『時間』という概念が存在し『時の空間』が存在している以上、『記憶』も存在しているのだから別世界とて例外ではないと考えるのが普通だろう。

「侑斗……」

「デネブ、その人は?」

シャマルをおぶっているデネブが侑斗の側まで歩み寄る。

「多分、イマジンが襲った人達の身内だと思う」

デネブも確信を持っていないので、言葉に篭っている力は弱い。

「あ、あの……」

侑斗の背後から声がした。

「ん?何だよ」

侑斗は声のする方向に身体を向ける。

声の主は、はやてだった。

「さっきも言いましたけど、本当にありがとぉございます!ほら、ヴィータも」

「う、うん。どうもありがと……」

はやては深々と頭を下げ、ヴィータは仕方なしという感じで頭を下げていた。

侑斗は眼をパチパチと瞬きしてから、はやてとヴィータを見る。

(記憶は消されているはずなのにな……)

『忘れられる』事に慣れているというのも変な感じだが、侑斗にしてみれば今までにないものた。

桜井が消滅している以上、ゼロノスカードの消費代価になっているのは『侑斗に関する記憶』だ。

縁もゆかりもなく、出会って間もない人間がゼロノスカードを使用しても自分を憶えているはずが本来ならばない。

(まぁ。運がよかったのかもしれないな……)

だが、情報収集をするには今の状況はありがたいといえばありがたいので侑斗は、それ以上は考えないようにした。

「礼はいい。早速で悪いんだが、イマジンに狙われる理由はあるのか?」

侑斗は質問するが、はやては首をかしげて疑問符を浮かべている。

「あのぉ、デネブさんも言ってましたけどイマジンって何ですか?」

はやてが質問で返してきた。

「さっきの怪人みたいなもの、で納得してはくれないよな?」

侑斗も自分の知りうる限りのイマジンの情報を他者に教えたりのだが、一、二分で片付く事ではないのでなるたけ、さっきの説明で納得してもらいたかったりする。

「はぁ……まぁ……できれば詳しく教えてもらいたいんですけどぉ。わたし狙われましたし……」

聞き方によっては立派な権利主張だ。

(普通なら関わりあいたくないって感じで避けるんだけどな)

侑斗の経験上、契約者であれ契約の執行対象であれイマジンと関わりたくないというのが人間の常だと思っている。

そのことを否定する気はない。誰だって『触らぬ神に祟りなし』こそが世を渡る上で一番安全な道だからだ。

むしろ眼前の少女は、大人でも中々持ち得ない『強さ』を持っているため、称賛に値するだろう。

「わかった。少々恐ろしい話になるぞ?覚悟は出来てるんだな?」

侑斗は念を押すように、はやてに訊ねる。

「はい」

はやては短く、しかし強い意思を持って返事をした。

「いい返事だ。さて話といきたいのだが……」

侑斗は周囲を見回す。

人はいないが、これから話す内容としてはそぐわない場所だ。

「どないしたんです?」

「侑斗がこれから話す事は、とても深刻な話なんだ……」

シャマルをおぶっているデネブが、はやてに告げる。

「そうなんですか?それやったらとにかく、ウチに来ません?立ち話で済みそうにないんやろうし……」

はやては侑斗とデネブに八神家へと迎え入れる事にした。

 

侑斗とデネブは八神家へと入ると、早速先程のイマジンに関しての説明から始まった。

リビングには家主のはやてを筆頭に、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラもそれぞれのポジションにいた。

細かくいうなら、はやて、ヴィータ、シャマルはソファに座って、シグナムは腕を組んで立っており、ザフィーラは床に伏していた。

(警戒して当たり前……か。一回助けて信用を得るなんて小ずるい悪党なら誰でも使う常套手段だからな)

はやてを除く全員の瞳の色に警戒の色が混じっている事を侑斗は見逃さなかった。

デネブはオロオロしている。向けられる視線に耐えられないのだろう。

侑斗としては彼女達が向けてくる視線はある意味、仕方のないものだから仕方ないと思っている。

自分が眼前の者達と同じ立場でも同じ様にするだろう。

だから責める気はない。

「あのぉ……すんません。この子らが怖い顔して、ええと……お名前なんでしたっけ?」

「ああ、そうか。悪い、名乗ってなかったな。桜井侑斗だ」

「デネブです。初めまして」

侑斗はソファに座って名乗り、デネブは立ち上がって一礼するとどこから取り出したのかバスケットの中からデネブキャンディーを、八神家全員に配っていく。

デネブキャンディーを受け取った八神家の方々は全員目を丸くしていた。

この時警戒の色はなくなっていたりする。

侑斗もデネブキャンディーを受け取って、袋を開いて口の中に放り込む。

「食べないのか?美味いぞ」

釣られるようにして、八神家もデネブキャンディーを口の中に入れた。

「「「「「美味い!!」」」」」

大きく眼を開いて、デネブキャンディーの味を称賛した。

(このままじゃ、話が進みそうにないな)

侑斗は口の中に入っているデネブキャンディーをガリガリと音を立てて噛み砕いてからゴクリと飲み込んだ。

「そろそろ話したてもいいか?お前を襲ったのはイマジンという怪人だ」

まず、おさらいのようにはやてに襲い掛かった怪人の名称を言った。

「俺の世界にいた頃は割と一つの目的だったんだけど、多分別世界では目的は色々だろうな。契約者の望みならどんな手を使ってでも望みをかなえるってのがイマジンのやり方だ」

侑斗がいた世界のイマジンの目的は過去の時間に遡って過去で転々と逃げている桜井の抹殺である。

契約者の望みを叶えるという行為もいわばそのための過程でしかない。

「それでは、主はやてになにがしかの恨みを持つ輩がイマジンと契約して襲わせたのか?」

デネブキャンディーを食べ終えたシグナムが侑斗に訊ねる。

「恨みがあるならな」

「あるならってどういうことですか?」

侑斗のどっちつかずの言葉にシャマルは疑問符を浮かべる。

「あくまで可能性だ。狙った動機は恨み以外にもあるってことだ。何か狙われるようなものを持ってたりするか?」

侑斗の問いに、はやてはもしかしたらというような表情をする。

ヴォルケンリッターは何か思い当たる事があるような表情をしている。

(妙だな。こいつ等、主従関係だと考えられるけど何かズレみたいなものがあるな)

侑斗はふと八神家全員の顔を見回してそのように感じた。

「もしかしたら、コレかもしれません」

はやては太ももの上においてある『闇の書』を見せた。

「コレは?」

侑斗は『闇の書』を手にしてから訊ねる。

「『闇の書』って言います」

「……そうか」

物騒な名前だなと言ってしまいそうになったが、口をつぐんだ。

(何の変哲もない分厚い本だな……)

侑斗は『闇の書』を隈なく見回すが、わからなかった。

骨董価値のある本かもしれないと推測するが、それも安直なものなので納得できるものではない。

「悪かったな。返すよ」

侑斗は『闇の書』をはやてに返して、ソファから立ち上がる。

「デネブ」

「了解」

隣で座っていたデネブも立ち上がる。

「待ってください。どこ行くんですか?」

はやてが一人と一体の行動を訊ねる。

「これからしばらくは海鳴で生活するからな。どこか住める場所でも捜そうかと……」

侑斗の言葉にデネブはうんうんと首を縦に振る。

「住むとこないんですか?」

「ない!」

はやての質問にデネブが答えた。

「胸張って言うな」

侑斗がデネブの後頭部を叩く。

 

はやては自分達を助けてくれた恩人二人が宿無しと知ると、思考が働き出した。

(ここで返したら、わたしの面目がたたへん。命助けてもろてるのに何の恩も返さへんなんて八神はやての名がすたる!!)

はやては使命感じみた答えを導き出した。

「あのお、桜井さん。デネブさん」

一人と一体に声をかける。

「しばらく海鳴にいるんでしたら、八神家に住みません?」

はやてはそう申し出た。

「「は?」」

侑斗とデネブはいきなりの申し出に間が抜けた声が出た。

「はやてちゃん?」

「主はやて、何を!?」

「はやて、こいつ等も住まわせるのか!?」

シャマル、シグナム、ヴィータは、はやてにしてみれば当然の反応をした。

「そうや。この人等は、わたし等を助けてくれたんやで?恩も返さんと二人を帰すなんてのは人として間違っとると思うんよ?」

はやての言葉にシャマル、シグナム、ヴィータは言い返せなくなる。

「俺達は自分達のやるべき事をやっただけだ。気にする事はない」

「そこまで気にしなくても……」

侑斗とデネブの言葉に、はやてはというと。

「受けた恩を必ず返すんが、八神家の家訓や」

はやてが毅然とした態度で言う。

「侑斗、どうしよう?」

「このままじゃ進みそうにないし、厚意に甘えるしかないな」

侑斗は、はやての申し出に乗る事にした。

「じゃあ、しばらく世話になる」

「よろしくお願いします」

侑斗とデネブは頭を下げた。

「こちらこそよろしくお願いします」

はやても返すようにして、頭を下げる。

(主はやて)

(どうしたん?シグナム。やっぱり反対か?)

シグナムがはやてに念話の回線を開いていた。

(いえ、貴女がお決めになった事ですから異存はありません。ただ、滞在の条件としてあの者達の素性を明かす事を進言いたします)

(素性?桜井さんやデネブさんの何を聞くん?)

側から見ると、はやてとシグナムの表情は変わらない。

(私の勘で申し訳ありませんが、あの二人は只者ではありません。もしかしたら魔導師かもしれません)

(魔導師?シグナム違ゃうよ。桜井さんは魔導師じゃなくて仮面ライダーゼロノスやで)

(仮面ライダー?確か主はやてが愛読していた本の中でそのような名がありましたが、まさか……)

(うん。でも本の中の仮面ライダーとは別物やで。本の仮面ライダーは確か黒いイメージで書かれとったけど、桜井さんは緑色がメインやったし……)

(そうですか……)

(でもそれでシグナムやみんなが納得してくれるんやったら聞いてみるで?)

(でもそれは……)

(ええからええから)

はやては一方的に告げてから、念話の回線を切った。

「あのぉ。住んでええと言いましたけど、いくつか聞いてええですか?」

はやてはシグナムの代わりに切り出した。

この台詞はヴォルケンリッターの意思も含まれている。

「何だ?イマジンの事は教えたが……」

「違ゃいます。違ゃいます。聞きたいのは桜井さんとデネブさんの事です」

はやては両手を振って、否定のジェスチャーをする。

「俺達の事?」

侑斗とデネブは顔を見合わせる。

(やっぱりアカンかな……)

はやてにしてもダメ押しのようなものだ。成功する可能性は低い方だ。

「イマジンの事を話してる以上、俺達の事は避けて通れないからな。わかった。言うよ」

侑斗はソファに座る。

デネブは侑斗の隣に立っている。

「まず俺達はお前達からいえば別の世界の住人だ」

「「「へ?」」」

はやて、シャマル、ヴィータは侑斗の言葉に抜けたような声が出た。

 

「正確にはこの時間から十年後の時間の別世界から来たんだ」

侑斗の言葉に誰もが眼を丸くする。

(無理もないよな。別世界から来たなんておいそれと信じるわけないもんな)

言った当人でさえそのように考えているのだから無条件で信じるわけがないと思う。

「どうやって来たのだ?」

腕を組んでいるシグナムが訊ねる。

「『時の列車』に乗ってやってきた。こいつはSF的な言い方で言えばタイムマシンだ」

「はやて、タイムマシンって何?」

ヴィータは聞きなれない単語をはやてに訊ねる。

「タイムマシンってのは簡単に言えば、現在を起点にして未来や過去に行ったり出来るマシンの事やね。でもタイムマシンで別世界に来るなんて不可能やと思いますけど」

「オマエ等、本当は違う方法で来たんじゃねーのか?」

はやての説明を聞き、ヴィータは訝しげな表情で侑斗とデネブを見る。

「タイムマシンで別世界に行くなんて事は不可能だ。だけどな裏技というか離れ技でここに来たんだ」

「離れ技、ですか?」

シャマルが侑斗の言葉を反復する。

「離れ技言いましたけど、具体的にはどうやってです?」

「俺達の世界とお前達の世界に共通するものって何だと思う?」

はやての問いに侑斗は謎かけのような問いで返した。

「質問に質問で返すなよ!」

ヴィータが怒るが、侑斗はどこ吹く風だ。

「タイムマシンで別世界から来たゆうことは、『時間』ですか?」

はやての回答に侑斗は首を縦に振る。

「『時間』という概念が存在する以上、『時の空間』も存在する。後は俺の世界の『時の空間』とお前達の世界の『時の空間』を繋ぐ橋が架かっていればタイムマシンでも別世界に行けるって事だ」

「あのぉ、『時の空間』って何ですか?」

シャマルがおずおずと手を挙げて、訊ねてきた。

「『時の列車』が走るための空間だと思ってくれればいい」

侑斗も詳しく知っているわけではないので、理解できる範囲で説明した。

「簡単には信じられないと思うけど、俺も侑斗も嘘は言ってない。信じてほしい」

デネブはそう言って頭を深々と下げた。

「これが嘘やったら凝りすぎやし、わたし等に言う必要はあらへんしね。まあ、わたしもちょっと不思議な体験は経験してるしね」

はやては侑斗の話を信じてくれるようだ。

「次に聞きたいのは、主はやてやヴィータ、シャマルを助けた桜井の姿の事だ。主は仮面ライダーと呼んでいるが、どういう経緯で変身できるんだ?」

シグナムの質問を聞きながら、侑斗はジャケットのポケットから黒いケースを取り出して、テーブルの上に置いた。

「コイツが俺がゼロノスに変身するための道具だ」

はやてはテーブルの上に置いてあるケースを手にして、中身を取り出す。

ケースには数枚カードが入っており、表面が緑色で裏面が黄色のラインが彩られていた。

「このカードをベルトに差し込んだりして仮面ライダーに変身するんやね?」

「ゼロノスなんだけどな」

はやての問いに侑斗は答えながらも『仮面ライダー』でなく『ゼロノス』だと訂正する。

「なぁなぁ。じゃあ変身してみてくれよ」

ヴィータが変身するようにせがむ。

「「………」」

侑斗とデネブの表情が曇った。

「何か不都合でも?」

「それは……」

シャマルの問いに侑斗は閉じていた唇を動かそうとする。

「侑斗。俺が言う」

デネブが侑斗の役割を買って出た。

「侑斗がゼロノスに変身するたびに、侑斗はあるものを代価として支払わなければならないんだ」

デネブの声色は今までよりも重かった。

 

「デネブ、そこから先は俺が言う。俺は変身をするたびに記憶を支払うんだ」

 

「記憶、ですか?」

「貴方が記憶を失っていくって事ですか?」

はやては侑斗の言葉に眼を大きく開き、シャマルは侑斗が記憶喪失になるという解釈を得て確認を取ろうとする。

「いや、俺が記憶喪失になるんじゃなくて俺に関する記憶をお前達が忘れていくんだ」

侑斗が語り終えると、ゼロノスカードを手にしていたヴィータはテーブルの上に置いた。

まるで、呪いのアイテムのように。

「最後に桜井。デネブは何者だ?どう見ても人間ではないが……」

シグナムが最後といって質問をした。

侑斗にしてみればこの回答ほど頭を悩ませるものはない。

何せ、イマジンと戦うイマジンなのだから。

イマジンの知識を得たばかりの者達にそこまで高度な理解を要求するのは酷だろう。

「デネブはイマジンだ」

その回答に八神家の者達は目を丸くしてからもう一度、デネブを見ていた。

(多分、俺が話したイマジンとデネブを比べてるんだろうな)

「桜井さん。デネブさんは本当にイマジンなんですか?」

はやてが確認するように聞いてきた。

「それは間違いない。デネブはイマジンだ」

「あたし等を襲った奴とは全然違うよな。こうやって見たらぜーんぜん怖くねーし」

「そうよねぇ。とても悪いことするようには見えないわよね」

侑斗の回答にヴィータとシャマルはシールイマジンと比較して感想を漏らした。

「人間に善人と悪人がいるんだ。イマジンにだってデネブみたいな奴もいれば、お前達を襲ったイマジンもいるんだよ」

侑斗の言葉は八神家にしてみれば説得力のあるものだった。

それは見てきたか体験したかでしか習得できない凄みだからだ。

「すいません桜井さん。言いにくい事まで聞いてしもうて」

はやては謝罪を込めて頭を下げた。

「しばらく厄介になるんだ。居候になる人間の事を聞くのはある意味当然だ。気にするな」

侑斗は、気にしていない表情ではやてを元気付けた。

 

 

はやてが乗っている車椅子を押しながら侑斗は独り言のように言った。

「本当に運がよかったよな。完全に八方塞がりだったしな」

侑斗は自分の素性は話したが、目的は話していない。

「どないしたん?侑斗さん」

「ん?ああ、ちょっとここに来た時の事を思い出してな」

「ヴォルケンリッター

あの子等

もすぐに打ち解けてくれて本当によかったわぁ」

「お前の教育がよかったんだろ?きっと」

そうでなければ二ヶ月近くで今のような良好な関係は築けないだろう。

「そ、そうなんかな。何か照れるわ……」

はやてが褒められた事に頬を赤くして照れている。

侑斗とデネブは、そんなはやてを見ながら笑みを浮かべるがすぐに真剣な表情になる。

(八神の教育がよかったからこそ、ヴォルケンリッター

あいつ等

はあんな事をしでかしているんだろうな。俺にはヴォルケンリッターを責める気にはなれない。自分を犠牲にしてでも何かを守る。痛いほど理解できるからな)

侑斗は八神家の居候になってから数日後のことを思い出そうとしていた。




次回予告

第三十四話 「侑斗とデネブ 八神さん家の裏事情を知る」
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