仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第三十八話 「最も欲する携帯番号」

海鳴市の午後、ハラオウン家のリンディ・ハラオウンの私室。

和風好きのリンディの趣味がてんこ盛りの部屋である。

その中で私服姿のリンディはコタツに座って、ボードを打ち込みながら宙に浮いているディスプレイに映っている女性と会話をしていた。

『こっちのデータは以上よ。お役に立ってる?』

女性---レティ・ロウランが今回の事件に関する情報を提供してくれていた。

「ええ、ありがとう。助かるわ」

ひとしきり打ち込みが終えると、リンディはレティに感謝の言葉を述べる。

『ねぇ、今日はこっちに顔を出すんでしょ?』

「うん。アースラの件でね」

『時間合わせて食事でもしようか?あの子の話とかも聞きたいし』

リンディがレティの言葉に耳を傾けながら宙にディスプレイを出現させて、入力をする。

「あの子って?」

入力してからディスプレイをの一つをリンディは宙から消す。

『ほら、貴女が預かってる養子にしたいって言ってた子』

「ああ、フェイトさんね」

『そう、フェイトちゃん。元気でやってる?』

レティがフェイト・テスタロッサの近況を訊ねる。

「うん、事件につき合わせちゃって申し訳ないけど、仲良しの友達と一緒だし何だか楽しそうにやっているといえばやっているのだけれど……」

リンディは何かを思い出しているのか複雑な笑みを浮かべている。

『どうかしたの?』

「ねぇレティ」

リンディが真剣な表情をレティに向ける。

『何かしら?』

「貴女、初恋っていくつにした?」

『は?何よ唐突に……』

「私は十二、三の頃だったと思うわ」

『私もそのくらいだったかしらね。それがどうしたの?』

レティがリンディが意味もなくそのような事を訊ねてくるとは思えないので、真意を探ろうとしている。

「フェイトさんがね。今、真っ只中なのよ」

『フェイトちゃんが?あの子、まだ十歳にもなってないでしょ?』

レティは人差し指を顎に当てて、考える。

「成長なんて、私達が思ってるよりずっと早いものなのだとフェイトさんを見て思うようになったわ」

リンディは特製のお茶をすすっている。

『それで、相手は誰?』

レティは相手は大方見当はついているが、わざと焦らす。

「レティ、貴女わかってて言ってるでしょう?」

『さぁ?どうかしら』

ディスプレイに映っているレティは紅茶を口にしている。

リンディはレティが会話を楽しむためにわざとはぐらかしているは間違いないと確信している。

『彼、でしょう。ある意味厄介な人を好きになってしまったものね』

「でも、自然な成り行きではあるわね」

『そうね。でも、フェイトちゃんの想いが成就する事は……』

「……難しいわね」

リンディの表情が曇っている。その理由がわかっているからだ。

とても非情な理由を。

 

 

雨雲か雷雲かわからない黒い雲が蠢いている次元空間でデンと構えている時空管理局本局にある無限書庫。

室内は上も下も果てがあるのかわからないが、形状としては縦穴であり壁という壁は全て本棚になっている。

ただ、そこは未使用、未整理なためか飾り気のようなものはなく人の匂いのようなものがなかった。

(こんな巨大な施設を放置してるなんて……)

ユーノ・スクライアは無重力の空間を浮遊していた。

「無限書庫、名前どおり果てがないね」

ウラタロスが思案の素振りをしながら率直の感想を述べた。

「管理局の管理を受けている世界の全てを収められている超巨大データベース」

アリアも無重力に身体を委ねながらユーノとウラタロスに説明を始める。

「いくつもの歴史がまるごと詰まった、言うなれば世界の記憶を収めた場所」

無重力で逆さに向いているロッテが付け足すように言う。

「それがここ、無限書庫」

アリアが締めくくった。

「ねぇリーゼさん」

ウラタロスが、無重力の中を巧みに泳いでリーゼ姉妹の前に立つ。

「なに?」

ロッテが答えようとしている。

「何でここ、誰も使っていなかったの?ここ使えば、ある意味最大の権力者になれるよ?」

「そうですよね。リーゼさんの説明からして無限書庫のトップに立てばウラタロスさんのいうようになろうと思えばなれますからね」

ユーノもウラタロスと同じ疑問があった。

「ナイスな質問だねぇ」

ロッテが質問内容に満足していた。

「確かにここに来て、大まかに知ればそういう疑問が出てくるのは当たり前だよ。でもね、ここを見てほかに何か思うことない?」

アリアに指摘されてユーノとウラタロスは無限書庫を見回す。

「これだけ本がギッシリだと把握するのに時間かかりそうだね」

ウラタロスが果てがないとも思われる天井を見上げている。

「それだけじゃないですよ。この手の事はそれなりに緻密な作業ですから、前線を出てる武装局員ではほぼ戦力外通知が出ますね。魔法を使えない人達も作業効率を図るためと考えると同じ様に戦力外通知になりますね」

ユーノの冷静な分析にアリアとロッテは首を縦に振る。

「その通り、それに無限書庫を有効に利用しようと考えていた奴はいたけど、踏み込んで調べものしようなんて考えていた奴はいなかったからねぇ。踏み込んでもこの状況を前にしたら答えは決まってくるものでしょ?」

ロッテの言葉にウラタロスも首を縦に振る。

「もうひとつ言っておくけど、こうやって本棚に本が並んでいるけど中身は殆ど未整理のままだよ」

アリアが注意事項として告げてきた。

「ええ!?コレ全然、手をつけてないって事!?」

ウラタロスは周囲を見回しながら、信じられないという声を上げてしまう。

「ここでの調べものは大変だよぉ」

ロッテもこれから起こる事がわかっているのか、どこか同情的だ。

「過去の歴史の調査は、僕等の部族の専門ですから……。検索魔法も用意してきましたし、大丈夫です」

覚悟を決めているユーノに、リーゼ姉妹の下手な心配は意味はなかった。

「さて、始めますか。ユーノ」

「はい!」

ウラタロスの声を合図にユーノは調査へとかかりだした。

 

 

聖祥学園では現在、休み時間となっていた。

生徒が友人同士で雑談をする事が出来る貴重な時間だ。

その中には彼女達四人も例外なく含まれている。

フェイトは一冊のカタログを見て、呆然としていた。

携帯電話を初めて見た時、高町なのはに「管理外世界のデバイス?変身するための道具?」と訊ねた。

その言葉をなのはが聞いた時、苦笑いを浮かべながら「魔法の使用の補助機能はないし、良太郎さんみたいにベルトに装着しても変身は出来ないよ」と答えてくれた。

フェイトは、なのはの携帯電話を触らせてもらったことが何度かあるし、なのはや野上良太郎が巧みに操っているのを見ては「いいなぁ」と思っていたりしていた。

(しかし、こんなにたくさんあるなんて思わなかった……)

カタログに視線を向けながら、そのような感想が出た。

「まぁ最近はどれも似たような機能ばっかりだし……、見た目で選んでいいんじゃない?」

唯一着席しているアリサ・バニングスが、自分の基準を薦めた。

「でも、やっぱメール性能のいいやつがいいよね」

アリサの隣で立っているなのはも自分の基準をもらした。

「カメラが綺麗だと色々楽しいんだよ」

月村すずかも自信の基準を告げた。

携帯電話を初購入するフェイトはそれらの意見を記憶の中に入れていく。

「でもやっぱ、色とデザインが大事でしょ」

「操作性も大事だよ」

「外部メモリ付いてると、色々便利だよ」

アリサ、なのは、すずかが『薦め』から『主張』になりだしていた。

(うん。これかな)

フェイトはカタログを開きっぱなしにしていた。

黒い外装で白い内装の『CMDXⅡ NF226D』という携帯電話のページだ。

 

学校が終了して、仲良し四人組とリンディは携帯電話ショップに訪れていた。

フェイトとリンディは受付兼レジで携帯電話を購入していた。

「ありがとうございましたぁ」

男性店員がスマイルでフェイトとリンディにお決まりの定型句を述べた。

「はい、どうも」

リンディもまた、軽く返事で返した。

「フェイトさん、はい」

紙袋に入った携帯電話をフェイトに渡す。

「ありがとうございます。リンディ提督」

フェイトは照れながらもリンディに礼を言う。

リンディにしてみれば余所余所しいと感じてしまい、まだ自分に対して完全に開ききってはいないと考えてしまい、少し寂しかった。

フェイトは、なのは、アリサ、すずかの元で携帯電話の番号を見せる。

そして、番号とメールアドレスを交換し合っていた。

「フェイトはこれで良太郎さんとも携帯でお話できるのよね?」

アリサの一言に、フェイトは心臓がどくんと高鳴った。

「え、あ、うん。そうだね……」

フェイトは悟られないようにはぐらかす。

(多分、良太郎は教えてくれないよね……)

フェイトがこのように考えに行き着いてしまうには根拠が二つある。

一つは自分のここ数日間の態度だろう。露骨に避けているのだから、いくら良太郎でも呆れて教えてはくれないと考えている。

もう一つは良太郎が未来人だからだ。タイムパラドックスの恐れとなるものはなるべく避けるようにするだろう。

携帯電話の番号やメールアドレス、そして写真などは過去に残した場合タイムパラドックスが起こる原因としては十分すぎるからだ。

「フェイトちゃん、どうしたの?」

すずかが表情を曇りつつあるフェイトを心配する。

「え?ううん、何でもないよ」

フェイトは考えを強引に打ち切って、アリサやすずかと会話をしていた。

「フェイトちゃん……」

なのはだけが、フェイトが抱えている悩みを理解していた。

 

カラスが鳴き夕焼けの光が眼に染みる時間帯となっている海鳴市の『翠屋』

特にイマジンが出現したような事もないので、良太郎とウラタロスを除くイマジン三体とコハナはアルバイトをしていた。

平日の夕方なので、学校帰りの学生や営業で外回りをしているOLやサラリーマンが席に着いていた。

お持ち帰りする者もいれば、店内で飲食する者もいるので色々だ。

良太郎、モモタロス、リュウタロス、コハナは厨房で皿洗いをしていた。

「ほいコレ」

モモタロスが濡れた皿を拭き係である良太郎に渡す。

良太郎は受け取って、渇いた布巾で拭く。

「はい、ハナちゃん」

リュウタロスがコハナに皿を渡し、コハナは皿を拭く。

良太郎とコハナが拭き終えた皿はどんどんと重なっていく。

ある程度まで積まれると、良太郎が食器棚へとしまっていく。

「カミさん。倉庫の荷物整理は終わったでぇ」

厨房にいなかったキンタロスが裏口から入ってきた。

「あらぁ、ありがとうキンタロスさん。重かったでしょ?」

高町桃子がねぎらいの言葉を書ける。

「荷物持ちは得意やで」

キンタロスが親指で首を捻ってから、胸を張って腕を組む。

「つーかよ、オメェが皿拭きしたら残骸だらけになっちまうだろーが」

モモタロスの一言はある意味的を得たことだった。

「クマちゃん。馬鹿力だもんねー」

リュウタロスも正直な事を言う。

「桃子さんの人選は的確よね」

コハナは的確に人を使う桃子の手腕に感心していた。

「これで粗方メドがついたからゆっくりできるね」

良太郎が蛇口を閉めた。

ぴちゃんと水滴が流し台に落ちた。

良太郎達は裏口へと出た。

「ウラ、ちゃんとやっているかしら?」

コハナが時空管理局本局で行動しているウラタロスを心配する。

「捕まってダシ取られるようなヘマはしねぇよ」

モモタロスが安心させるような台詞を言う。

「あの広い建物の中のどっかにおるいうても、雲掴むようなもんやで」

キンタロスとしてもウラタロスがどれだけ口達者でもイラストだけで捜すのは至難の業だという。

「良太郎が言ってたおじさんも怪しいんでしょ?カメちゃんに頼んで調べないの?」

リュウタロスが以前、良太郎が怪しいと言っていた人物の事を良太郎に訊ねる。

「正直に言えば、僕が怪しいと思っているだけだからね。根拠はないんだよ」

良太郎個人がそう感じている事なので、ウラタロスに更に雲を掴むような労力をさせるわけにはいかない。

「どっちにしても、カメとユーノの連絡待ちだよな?」

「うん」

自分の予想が外れてほしいと良太郎は心底願っていた。

 

 

無限書庫でユーノ、ウラタロス、リーゼ姉妹は『闇の書』に関する文献を探っていたが思ったよりも難航していた。

「はあ……はあ……はあ……」

ユーノは息を乱して両肩を揺らしていた。

検索魔法を駆使しても、無限書庫の未整理状況は予想以上にひどいものだった。

「ユーノ。一日も早く調べたいってのはわかるけど、無理しちゃダメだよ?」

本棚でユーノの指示とおりに動いていたウラタロスが側まで寄る。

「大丈夫です……。もう少しで『闇の書』の事が記されている文献まで辿りつけるんですから」

ユーノが額に流れる汗を拭って、真っ直ぐな瞳をウラタロスに向ける。

「良太郎やボクちゃん(侑斗の事)みたいな眼をしてるね」

ウラタロス的にはついつい余計なお節介をしてしまう眼だ。

「スクライアの人間でなきゃ、無限書庫は使いこなせそうにないねぇ」

ロッテがユーノの巧みな本棚整理に感心する。

「今までユーノの部族に依頼したことなんてなかったの?」

ウラタロスがアリアに訊ねる。

「そうだね。スクライア族は一箇所に留まらないからね。スカウトするのも至難だしね」

「ふぅん」

ウラタロスは納得してから、ユーノを見てからリーゼ姉妹を見る。

(僕達に怪しい素振りを見せるほど、抜けてるわけじゃない……か)

それから一時間後。

粗方の本棚整理が終えたユーノは翡翠色の魔法陣を展開して中央に座って禅を組むような姿勢を取る。

「その姿勢は?」

ウラタロスはユーノが取る姿勢に何か意味があるのか訊ねる。

「一冊一冊、目を通したのではそれこそ埒があきません。一気にいきます」

ユーノの意思が通じるかのように宙で開かれている数十冊の本はパラパラとページが捲れていく。

「すごいねぇ。なのはちゃんやフェイトちゃんでは出来そうにないね」

一度に数十冊の情報が脳内に入り込んで、的確に必要な情報を選出するというのは緻密な作業と強靭な精神力が必要になる。

前線向きであるなのはやフェイトに向かない作業だろう。

「それじゃ、始めます」

ユーノは双方の瞳を閉じて、全神経を集中させていることがウラタロスにも理解できた。

 

 

「たっだいまー」

外出していたエイミィ・リミエッタが買い物袋を持って、ハラオウン家へと戻ってくると、そこにはなのはやフェイトはもちろんのこと、『翠屋』でアルバイトをしていた良太郎、モモタロス、キンタロス、リュウタロス、コハナもいた。

「おかえり。エイミィさん」

「おう、邪魔してるぜ」

良太郎とモモタロスが軽く手を上げてリビングに入ってきたエイミィを迎える。

キンタロスはソファに座って新聞を読んでおり、リュウタロスはアルフ(子犬)とじゃれあっていた。

コハナはテレビを見ていた。

「あ、みんなも来てたんだぁ」

エイミィはなのはやモモタロス達を見てからキッチンに買い物袋を置く。

女性陣がキッチンへと移動するかたちとなり、男性陣(この場合イマジンも含む)はリビングに強制的にいなければならない状態へとなっていた。

買い物袋からエイミィはカボチャを取り出して、フェイトに渡す。

なのはは冷蔵庫を開けて、野菜を入れられるようにスペースを確保しようとしている。

「艦長。もう本局に出かけちゃった?」

そしてネギ、パプリカを置いていく。

「うん。アースラの武装追加が済んだから試験航行だって。アレックス達と」

フェイトがリンディから伝えられている事をそのまま話した。

「武装っていうとアルカンシェルか……。あんな物騒なもの、最後まで使わなきゃいいんだけど」

エイミィは心当たりのある事を口に出してから、表情を暗くする。

「クロノ君もいないですし、戻るまではエイミィさんが指揮代行だそうですよ」

なのはもリンディに伝えられた事をそのまま伝えた。

「責任重大だぁ」

アルフが生肉を口に銜えながらからかう。

「重大だぁ」

リュウタロスもアルフに便乗してからかう。

「それもまた物騒な……。まぁとはいえ、そうそう非常事態なんて起こるわけが……」

エイミィがフェイトが持っているカボチャを右手で掴んで冷蔵庫の中へと持っていこうとした時だ。

ハラオウン家全体が赤く光りだし、宙に『EMERGENCY』と表示されていた。

「非常事態が起きてもたな……」

キンタロスが新聞から眼を離して呟いた。

誰が最初なのかはわからないが、そこにいる誰もがある一人と一体を見ていた。

良太郎とモモタロスがその場にいる誰もに見られていた。

「な、なに?」

「なんだよ?」

一人と一体は、何故見られているのか自ずと見当は付いていたが、あえて否定する事にした。

 

「「言っておくけど僕(俺)のせいじゃないからね(な)!」」

 

「でもなぁ……」

「良太郎とモモタロスだし……」

「そうそう起きないってエイミィさんが言った直後に起こるんだからさぁ」

良太郎とモモタロスの不幸の女神に愛され度を知っているキンタロス、リュウタロス、コハナは妙な確信を持って見ていた。

 

「「だから僕(俺)のせいじゃない(ねぇ)って!」」

 

良太郎とモモタロスはもう一度、身の潔白を明かすように叫んだ。

だが、誰にも信じてもらえなかったのは言うまでもないことだ。




次回予告

第三十九話 「第三ラウンド開始」
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