仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第三十九話 「第三ラウンド開始」

海鳴市でハラオウン家が緊急事態の警鐘を鳴らしている時の次元空間。

時空管理局本局の一室では一人の女性と一人の男性が向かい合うかたちで座っていた。

テーブルの上には紅茶が二つ置かれていた。

まだ淹れたてなのか、紅茶からは湯気が立っていた。

「久しぶりだね。リンディ提督」

男性---ギル・グレアムが女性---リンディ・ハラオウンの顔をちらりと見てからどこか沈痛な表情をしていた。

「ええ」

リンディは静かに答える。

元々、リンディは本局に赴いた際にはグレアムと会うつもりはなかった。

アースラの武装追加による試験航行が本来の目的なのだから。

それに、息子や部下の前では顔には出さないがリンディとて人間である。

理屈ぬきでグレアムの顔を見ると、どうしてもとある人物のことが脳裏によぎってしまう。

「『闇の書』の事件、進展はどうだい?」

グレアムがリンディの指揮で捜査している事件の進捗状況を訊ねてきた。

他の局員が訊ねてくると「一進一退かしらね」などと軽口が言えるのだが、目の前にいる人物には軽はずみな事は言えない。

「中々難しいですが、上手くやります」

お宮入りにするつもりはないという意思表示だけをして、リンディは紅茶を口に含む。

「君は優秀だ。私の時のような失態はしないと信じているよ」

グレアムが自分の轍は踏んでほしくないという思いを込めた台詞をリンディは聞いていた。

(やはり、この話題に行き着いてしまうわね。まぁ仕方ないといえば仕方ないけど)

リンディは顔には出さないが、内では早くここから退散したいと考えていた。

「夫の葬儀のとき、申し上げましたがあれは提督の失態ではありません」

リンディは口につけた紅茶のカップを再びテーブルの上に置く。

「あんな事態を予測できる指揮官なんていませんから」

リンディは話題を打ち切るようにして、グレアムを元気付けるように微笑んでみせる。

グレアムの表情からは何を考えているかは読めなかった。

「失礼します」

リンディは先に応接室から出ると先程のグレアムとのやり取りを反芻しながら、本局に赴くまでの事を思い出していた。

 

フェイト・テスタロッサ及び高町なのは、アリサ・バニングス、月村すずかと合流するまでの間、リンディは『翠屋』にいた。

服装は制服ではなく、私服であるのはいうまでもないことだ。

高町夫妻と他愛のない世間話をしてから、アルバイト中の野上良太郎を呼んで自分の対面に座らせた。

「ごめんなさいね。お仕事中に」

「いいですよ。人が混んでくる時間にはまだなっていませんから」

良太郎はエプロンを外している。

「良太郎君、お客様の世間話の相手も大切なお仕事よ」

高町桃子が高町士郎が淹れたコーヒー二つをリンディと良太郎の前に置いた。

「「ありがとうございます」」

リンディと良太郎は同じタイミングで桃子に感謝の言葉を述べた。

「それで、僕に何か?」

「良太郎さんはグレアム提督に会った事があるのよね?」

「ええ、一度だけ。それがどうかしたんですか?」

リンディは良太郎の態度を見て、自分が世間話をしにきたわけではないのだと判断してくれたようだ。

「印象はどう思った?」

「え?」

「私やクロノの知り合いとかフェイトさんの保護監察官とかを抜いての良太郎さん個人の印象を知りたいの」

リンディはコーヒーにミルクと角砂糖を放り込んでいる。

「そうですね。穏やかでいい人だと思います。きっと色んな人に頼りにされているんじゃないかとも思っています。でも……」

「でも、何かしら?」

 

「それが犯罪を起こさない理由やイマジンの契約者にならない理由にはなりませんけどね」

 

良太郎はグレアムを『一人の人間』として見ていた。

(やっぱり、聞いておいて正解だったわ)

自分はなまじ近い間柄なので、そのような考えを持ってはいても敢えて排除していたといえば否定できない。

だからこそ『魔法』や『魔導師』というものに凝り固まった認識を持たない者の意見が欲しかったのだ。

「後は何か人が立ち入れさせないものがある、そのくらいですね」

良太郎は締めくくると、コーヒーに角砂糖とミルクを入れて口に入れた。

「リンディさん」

「何かしら?」

「少し相談してもいいですか?折角の機会だから訊ねておきたかったんです」

今度は良太郎から切り出した。

「フェイトちゃんが最近、僕を避けるんですけど何か心当たりありませんか?僕自身は恨みを買った憶えはないんですけど、どこかで恨みを買う理由があるのかもしれませんし……」

良太郎は冗談でそのような事を言ってはいないことがわかる。本気で言っているのだ。

(もしやとは思ってたけど、良太郎さんはクロノと同じかもしれないわね……)

考えや物の見方や物腰から良太郎は実子であるクロノ・ハラオウンより大人だと思っていたが、こういう部分では同等かもしれない。

(しかし、この事をフェイトさんに話したらショックを受けるかもしれないわねぇ)

リンディとしてみてもフェイトが良太郎に対して恋心を抱き、自覚している事は見てわかっていた。

ハラオウン家に住んでいる人間でこのことに気付いていないのは男性陣だけだ。

リンディとしては二人の関係に無闇につついたりするつもりもお節介を焼くつもりもない。

残酷な事だが、良太郎とフェイトの関係には限度があることをわかっているからだ。

(フェイトさんの想いを良太郎さんが応えたとしても、時間がそれを許してはくれないわね)

良太郎とフェイトが『別世界の者同士』ならばリンディもこのように考えたりはしない。

二人は『別世界の別時間の者同士』なのだから。

(仮にこの時間の良太郎さんと今のフェイトさんだったら……)

リンディはフェイトと九歳の良太郎が一緒にいるところを想像してみるが、どこかボケた感じがして上手く出来なかった。

(無意味な仮定はやめましょう。それよりも何と言ってあげたらいいかしらね……)

リンディは目の前で悩んでいる恋愛初心者の青年にどのような言葉を投げかけたらいいか悩む。

「良太郎さん。フェイトさんは今色々と悩んでいるのよ。でもその悩みはフェイトさん自身の手で解決しないといけないものなの。良太郎さんにできる事はいつも通りに接してあげてほしいの。フェイトさんが困ったらいつも通りに手を差し伸べてあげればいいと思うわ。できるかしら?」

「はい!」

「うん。それでこそ男の子よ♪」

良太郎の返事にリンディは満足げな笑みを浮かべていた。

 

(良太郎さんの言っていた通りかもしれないわね)

グレアムがいる応接室のドアを睨んでいた。

葬儀の時や、クロノ経由で会話をする事もあったが今感じたような雰囲気はなかった。

(葬儀からかなり経つから、人が変わるには十分な時間よね)

リンディは亡き夫の上官であるグレアムが良太郎の言うように『人を立ち入らせない何か』を抱えている事に確信を抱いていた。

だが、それが今回の『闇の書』事件とどう関係があるかまでには至らなかった。

 

時空管理局本局にある無限書庫。

ユーノ・スクライアとウラタロスは『闇の書』の調査に没頭していた。

といってもユーノが調査をしており、ウラタロスは調査済みの本を無重力空間とはいえ、縦に揃えながらリーゼ姉妹の監視をしていた。

「へえぇ。器用なもんだねぇ。それで中がわかるんだぁ」

ロッテが大量の本を抱えながら翡翠色の魔法陣の中央で禅を組んでいるユーノの行動に驚きの声を挙げている。

ユーノを囲むように宙に浮いている本はパラパラと自動で捲られていく。

ユーノはそれを目で見ているわけではない。

本の内容は全てユーノの脳内に送り込まれているのだ。

ハッキリ言って『神業』としかいいようがない。

「ええ。まぁ……」

ユーノの双眸の瞳が開かれる。

「あのぉ、リーゼロッテさん達は前回の『闇の書』の事件を知っているんですよね?」

会話を弾ませようとしたのかユーノが切り出した。

「うん。ほんの十一年前の事だからね」

「十一年か。長くもあり短くもあると考えさせられる数字だね」

ウラタロスが宙に散らばっている本をひとつにまとめながら洩らす。

「まね」

ロッテもウラタロス同様に十一年という年月をそのように感じているのだろう。

「それで、前の事件でクロノのお父さんが亡くなったっていうのは本当なんですか?」

ユーノは『闇の書』関連の本の内容を脳内に詰め込む過程で知った事を確認するかのようにロッテに訊ねる。

ロッテは両手で持っていた数冊の本を無重力に任せる事にした。

その表情は先程の驚きや初対面の時のような明るいものではなかった。

「本当だよ。私とアリアは父様と一緒だったからすぐ近くで見てた。封印したはずの『闇の書』の護送中のクライド君が、クロノのお父さんがね。護送艦と一緒に沈んでいく所を……」

「………」

ユーノは両親を知らない。だから、『親』というものが子供を残して亡くなるということがどういうものなのかが今ひとつ理解できていない部分もある。

(やっぱり無念とか未練があったのかも……)

そのくらいしか想像できなかった。

「……どうやら僕達、またお家騒動じみた出来事に巻き込まれたみたいだよ。良太郎」

ウラタロスはユーノとアリアには聞こえないように溜め息混じりに呟いた。

「あ……。アリアさんがいない……」

ウラタロスはこの場にはいない双子の片割れを捜すために一度無限書庫に出る事にした。

ちなみにアリアはというと、クロノと一緒に強化武装をされたアースラを見てから廊下を歩きながら強化武装について本音に近い意見を出し合っていた。

 

 

ハラオウン家の別室に全員が集まっていた。

エイミィ・リミエッタがキーボードを叩いて、映像を展開させる。

映像にはシグナムとザフィーラ(人型)が映し出されていた。

「文化レベル0。人間の住んでいない砂漠の世界だね……」

「つまり、人間に攻撃する気がないからここに来たってことなの?」

コハナがエイミィに訊ねる。

「多分ね。相手の目的は『闇の書』のページ蒐集なんだから、リンカーコアさえ手に入れればそれでいいってことだよね」

エイミィの推測はその場にいる誰もが頷けるものだった。

現にヴォルケンリッターの襲撃対象は『リンカーコアを所持する者』となっている。

海鳴市でヴィータがなのはを襲ったのも襲撃対象に該当していただけにすぎない。

仮に海鳴市にリンカーコアを所有するなのはではなく名も知れない巨大生物がいた場合、間違いなくそれを狙っただろう。

「結界を張れる局員の集合まで最速で四十五分。うーん、まずいなぁ……」

キーボードを叩きながら、エイミィの表情は難色の色に染まっていく。

フェイトはアルフを抱きかかえたまま、映像を見ている。

そして、意を決したかのように、顔を見合わせて頷いた。

「エイミィ。わたしが行く」

「あたしもだ」

フェイトとアルフが静かに、しかし有無を言わさぬ迫力でエイミィに告げた。

その場にいる全員がフェイトとアルフを見る。

「うん、お願い。あと良太郎君」

エイミィが良太郎を見る。

「わかってる」

良太郎も首を縦に振る。

良太郎同伴と聞き、フェイトとしては気が気ではない。

「あ、フェイトちゃーん。先に言うけど却下だからねぇ」

エイミィが先読みして、フェイトの言葉を封じた。

「うう……」

フェイトはうめき声を上げるしかなかった。

 

良太郎としても、久々にフェイト達と行動する事になる。

緊張していないといえば嘘になる。

フェイトに避けられ、モモタロス達には喧嘩なんかしてはいないのに「仲直りしろ」と言われたりと、彼としては結構参っていたのだ。

彼にとっては初めてのことだからである。

(一人の女の子に避けられる事がこんなに辛いとは思わなかったよ……)

学生時代の女友達とは違う反応だから余計に混乱してしまうのだ。

「あ、良太郎君。コレ持っていって」

エイミィの声に良太郎は思考を中断させた。

エイミィが渡したのはトランシーバーだった。

形としてはハンズフリー・マイクだった。

良太郎はエイミィの指示に従いながら、装着していく。

「あと、コレも忘れないでね」

エイミィが渡したのはゴーグルだった。

「何コレ?」

「砂防止用のゴーグル。フェイトちゃんやアルフはバリアジャケットで砂漠とか劣悪な環境でも大丈夫だけど、良太郎君は電王にならない限りはただの人じゃない?だから……」

「ああ、なるほど。ありがとう。エイミィさん」

トランシーバーを装備した良太郎は更にゴーグルも装備する。

「「「「「「「「ぷっ!」」」」」」」」

その姿に誰もが口元を押さえた。

(絶対に似合ってないんだ……)

皆の反応からして、そう断言できた。

「あの……、我慢しなくてもいいよ。その、笑いたかったら笑ってもいいから」

良太郎としては下手にこらえられるよりは盛大に笑われた方がまだ気が楽だった。

「「「「だぁーはっはっはっはっは!!」」」」

お言葉に甘えてといわんばかりにモモタロス、キンタロス、リュウタロス、アルフが口を思いっきり開いていた。

なのはもフェイトも口元を必死で押さえていた。

やはり、人の痴態をダシにして大声で笑い飛ばす事に躊躇いがあるのかもしれない。

「ぷぷっ。はいはい皆!そろそろ行くよ!」

エイミィが両手をパンパンと叩いて、盛り上がりつつある場を強引に閉めた。

それから数秒後に良太郎、フェイト、アルフはシグナムとザフィーラがいる世界へと転送された。

 

 

砂漠世界でシグナムはこの世界に生息している巨大生物---砂竜と戦闘を繰り広げていた。

状況としてはシグナムの方が不利となっていた。

「はあ……はあはあ……はあ……」

レヴァンティンを正眼に構えたシグナムは両肩を上下に揺らしていた。

砂竜が巨体を縦横無尽に駆使して、シグナムの背後を押さえている。

その度に砂煙が舞う。

(巨体で力があり、知恵も回るか……)

逃げ場を失ったと判断したシグナムは砂竜を睨みつける。

「ヴィータがてこずるわけだな……。少々厄介な相手だ……」

力だけの相手ならばヴィータでどうとでもなる。

だが聡明な相手ならば一気に不利になる。

猪突猛進がライフスタイルであるヴィータは高度な駆け引きや搦め手にはてんで弱いのだ。

シグナムはカートリッジを二つ取り出して、レヴァンティンに装填しようとする。

「ギャオオオオオオオオオォ」

背後からの砂竜の咆哮が聞こえ、背後を向くと正面にいたはずの頭部が自分の背後へと回っていた。

(不覚!砂の中を移動したか……)

「っ!?」

間合いを取るために上空へと移動するが砂竜の攻撃の方が速く、シグナムは砂竜が繰り出した無数の触手に捕らえられてしまった。

身体中に強靭な縄を縛られたかのようにして身動きが出来ない。

「しまった!?」

砂竜がゆっくりと近づいていく。

その行動は「今日のエサだぁ」とでも言いたげであり、捕食対象者に焦りの気持ちを抱かせるには十分なものだった。

「ぐっ……」

エサにされてしまうと、悟った時だ。

「グキャオオオオオオン!!」

黄金の剣が砂竜の身体に突き刺さった。

そして黄金の剣は無数に、雨のように降り注いでから一本一本がバチバチバチと雷を発生させていく。

(これは……まさか……)

触手に巻かれた身体は解放され、シグナムは自分の推測が間違っていなければ黄金の剣を降らせた者は一人しかいないのだから。

(テスタロッサ……)

シグナムが見据える先には金色の魔法陣を足元に展開させたフェイトがいた。

 

フェイトはバルディッシュ・アサルトに命じて『サンダーブレイド』を発動させた。

空から無数の黄金の剣がシグナムを捕獲している砂竜に向かって次々と突き刺さっていく。

フェイトはその場でくるりとターンしてから、左手に巻かれている環状魔法陣を展開させて、標的である砂竜に向けてかざす。

「ブレイク!!」

フェイトが告げると同時に、黄金の剣はその出力を最大限まで高めていき爆発した。

突き刺さった剣はすべて誘爆していき、砂煙を撒き散らす。

砂竜はその巨体をぴくぴくとしながら、ぐったりと横に倒れていった。

砂煙を上げながら、その巨体はずぶずぶずぶずぶと砂の中へと埋まっていった。

『フェイトちゃん!助けてどうするの!捕まえるんだよ!』

エイミィが通信で注意してきた。

「あ、ごめんなさい。つい……」

フェイトは素直に謝罪する。

(助けなかったら、シグナムを捕まえるどころか食べられちゃってるような……)

捕縛対象をを捕食されてしまったら元も子もないとフェイトは考えてしまう。

「礼は言わんぞ。テスタロッサ」

シグナムが短く言ってから、フェイトを睨みつける。

「……お邪魔でしたか?」

フェイトは余計なことをしてしまったのかと感じておずおずと訊ねる。

「蒐集対象を潰されてしまった……」

シグナムがレヴァンティンに何かをしているが、フェイトにはそれがカートリッジを装填しているのだと推測できた。

 

「まぁ、悪い人の邪魔をするのがわたしの仕事ですし……」

「そうか……、悪人だったな。私は……」

 

フェイトの言葉にシグナムはどこか自虐的に答えた。

レヴァンティンのカートリッジが装填完了し、排熱処理をする時に生じる蒸気がフェイトには見えた。

 

ザフィーラは空から降り注ぐ雷を見て、乱入者が来たと判断した。

(奴等か……)

誰が来たのか推測する必要もない。

「ご主人様が気になるのかい?」

自分をからかうかのような女性の声がした。

後ろを振り向くと、アルフ(人型)がいた。

「お前か……」

本当に推測する必要がなかった。

「ご主人様は一対一。こっちも同じだ」

ザフィーラは構える。

「シグナムは我等の将であるが、主ではない」

「アンタの主は『闇の書』の主、ていうわけだね?」

アルフも応じるかのようにして構えた。

 

『そこから三キロ先にフェイトちゃん達がいるから頑張って』

「うん、わかった。エイミィさんもナビよろしくね」

『まっかせといて!』

良太郎はエイミィのナビゲーションを受けながら、砂の大地に足を着けて歩いていた。

砂煙が舞うが、ゴーグルのおかげで視界は失われずに済んでいた。

しかし、砂煙が舞うたびに砂が口の中に入ってしまうので、現在は両手で口元を押さえてなるべく速めに歩いている。

しかも地面が土でなく砂なので、通常の路面を走るのと違い倍以上の体力を使う。

そのため、無駄に体力を消費しないためにも全力疾走はしていない。

何かが起こった際にヘロヘロ状態では情けなさすぎるからだ。

「完全にはぐれちゃった時はどうしようかと思ったけど、これなら何とかなりそうだ」

良太郎はフェイトやアルフとは若干距離が離れた場所へと転送されていた。

エイミィが言うには本来なら有り得ないことだという。

奇跡という確率で起こった不幸としかいいようがないらしい。

良太郎としても慣れた事なので、大して動じることなくエイミィに指示を仰いで現在に至るわけだ。

「とにかく、行こう」

良太郎は更に前へ一歩ずつ進み始めた。

 

 

「うんその調子だよ。良太郎君」

エイミィが砂漠世界ではぐれている良太郎をナビゲートしながらも、更なる事態の変化がないかをモニターを見ながら確認していた。

『EMERGENCY』と映し出された。

画面が切り替わると、そこには『闇の書』を抱えたヴィータが飛行していた。

「もう一箇所!?本命はこっち?なのはちゃん!モモタロス君達も行ける!?」

エイミィの言葉になのは、モモタロス、キンタロス、リュウタロスはというと。

「はい!」

なのはは勢いよく、首を縦に振る。

「おっしゃぁ!行くぜぇ!」

モモタロスが指の骨を鳴らす。

「いっちょやったるかぁ!」

キンタロスが両頬を叩いて気合を入れる。

「へへっ楽しみぃ!」

リュウタロスがその場でステップを踏む。

「あ、モモ。コレ!」

コハナはパスを一つモモタロスに放り投げた。

「おい、コレって……」

「必要に応じてみんなで使い分けてってオーナーが」

三体はパスを見る。電王になれるのは一体だけだ。

状況に応じて使わなければ、なのはの足を引っ張る事は間違いない。

「何で一個なんだよ。人数分よこせよなぁ。オッサン、チャーハンの食いすぎで数数えられなくなったんじゃねぇのかぁ?」

「モモの字。それはないで。まぁ一個しかないんやから状況に応じて使えばいいんやしなぁ」

「取り合いはナシだよね?」

この話し合いの一分後に、イマジン三体は良太郎と同じ装備をして、なのはと共に転送した。

なのはは転送の間、涙目になって口を両手で押さえていた事は言うまでもない。




次回予告

第四十話 「修羅の片鱗 前編」
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