仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第四十話 「修羅の片鱗 前編」

無限書庫から数十メートル離れている自動販売機前でユーノ・スクライアとウラタロスが休憩を取っていると、無限書庫の中にいたはずのロッテが出てきた。

「調査はボチボチ進んでる?」

ロッテがジュースを飲んでいるユーノに訊ねる。

「ええ、まあ……」

ユーノは曖昧に答える。

「私、ちょっと出てくるけど大丈夫?」

「どこかにお出かけ?お散歩?」

ウラタロスはロッテが猫が素体になっている事を知っているのでネタとしてからかう。

「まぁ……ね」

ロッテが一瞬だけ暗い表情をしている事をウラタロスは見逃さなかった。

「ウラタロスさん、どうしたんですか?」

ロッテの姿がなくなってもウラタロスは見つめたままだった。

「ちょっと手伝ってくれない?ユーノ」

「え?」

聞き返すより早く、ウラタロスはフリーエネルギー化してユーノの中に入り込んだ。

七三分けに分けて髪型にそのうちのひとつに青いメッシュが入り、どこから取り出したのかわからない伊達眼鏡をかける。

ウラタロスが憑依したユーノ(以後:Uユーノ)は伊達眼鏡をキリッときめてから歩き出す。

(ど、どこに行くんですか?)

深層意識のユーノがUユーノに訊ねる。

「アリバイの確認と身元調査さ」

そう言うと、Uユーノは時空管理局本局で勤務する局員を捜す事にした。

Uユーノが手に持っていたのはエイミィ・リミエッタが描いた仮面の戦士のモンタージュだった。

 

 

文化レベル0の砂漠世界。

砂漠で人が住めるかどうかというと、人は生活可能である。

ただし、そこに人類の『天敵』と呼ぶに相応しい相手がいない場合に限るが。

その『天敵』である砂竜を倒した後、フェイト・テスタロッサとシグナムは足を砂地につけて相棒であるデバイスを構えて対峙していた。

(この緊張感、良太郎やなのはと戦った時と同じだ……。気を抜けば確実にやられる!)

バルディッシュ・アサルトを構えてシグナムの出方をうかがうフェイトは頬に伝う汗を拭うことなく、眼前の相手の放つ気迫を受け止めている。

「預けた決着はできれば今しばらくは先にしたいが、速度はお前のほうが上だ。逃げられないなら戦うしかないだろう」

シグナムは冷静に分析して『戦闘』を選ぶ事にした。

「はい。わたしもそのつもりで来ました」

フェイトは真っ直ぐにシグナムを見て、告げる。

両者が同時に構えを取る。

両者が同時に間合いを詰めるようにして駆け出す。

振り上げたバルディッシュ・アサルトとレヴァンティンがぶつかり、火花が飛び散る。

すぐさま第二撃を繰り出すが、両者がスレスレでかわそうとするが実際にはバリアジャケットと騎士甲冑の『保護』がなければ互いの身体に触れていただろう。

すれちがいざまにバチバチバチと音を鳴らしている。

(次!)

フェイトは体勢を整えてからそのまま振り向かずに、次の攻撃を移した。

その動きはまさに疾風の如くだった。

 

シグナムが次の攻撃へと繰り出そうとするが、フェイトの姿は眼前にはなかった。

(いない?)

目では捉えられない速度で移動されては、自分がそれに対してできる対抗策はひとつしかない。

(速度に翻弄されるな。テスタロッサが次に出る行動は決まっている!)

これが『戦闘』である以上、フェイトが自分に仕掛けてくるのはわかっている。

あの驚異的な速度が持続できるとは思えないので、あくまで移動を目的に使っていると考えていいだろう。

となれば攻撃に繰り出す時に必ず移動から攻撃に移る際に生じる間があるので、その間を読んで攻撃を受け止めてから自分は攻撃を繰り出せばいい。

背後から風と同化したかのように移動をしてきたフェイトがバルディッシュ・アサルトを振り上げていた。

「はぁっ!!」

ゆっくりとレヴァンティンを胸元まで持ち上げてから左手に握られている鞘に納剣してから受けの構えを取りながら、右にくるりと回りながらフェイトの攻撃を受け止める。

シグナムの左足が少しだけ下がり、砂煙が立つ。

そのままレヴァンティンを鞘から滑らせるようにして抜剣し、振りかぶってフェイトに叩き込む。

体格差があるので、フェイトはバルディッシュ・アサルトで受け止めるが後方へと砂煙を焚き上げながら大きく下がってしまう。

フェイトを見据えたまま、シグナムはレヴァンティンを下段に構える。

刀身の一部のカバーがスライドしてカートリッジを排出して、蒸気が噴出す。

『シュランゲフォルム』

「はああっ!!」

レヴァンティンが告げると同時に、シグナムは上段に構えて蛇のような竜のような刃がフェイトへと向かっていった。

 

「またアレが来る!?」

フェイトはシグナムがレヴァンティンを長剣から蛇腹剣へと切り替えると対策を考える。

シグナムの付近では螺旋状を描いており、空中から直接こちらに突っ込んでは来ずに先程の砂竜のように砂漠の中に潜ったりなど、こちらに軌道を悟らせない変則的な動きをしていた。

ドスンボスゥンなどという蛇腹剣が砂漠に潜ったり、出てきたり、その度に生じる砂煙が肉眼による視認を狂わせる。

(!!)

フェイトの身体を理屈ではなく、生存本能が全身を支配した。

蛇腹剣はフェイトを捉えてそのまま突っ込んでくるがフェイトは高く跳躍してかわし、受身を取って砂煙を利用して、シグナムに確認されないように砂漠の上に座り込む。

バルディッシュ・アサルトを立てる。

カバーがスライドしてバルディッシュ・アサルトが告げる。

『ロードカートリッジ。ハーケンフォーム』

先端が九十度に曲がり、黄金の鎌刃が出現する。

大きく振りかぶるようにして構える。

 

「ハーケンセイバー!!」

 

後はいつどのタイミングで発動させるかだ。

蛇腹剣は蛇のようにフェイトの周りを囲む。

頭上から先端が降ってくるか、以前の戦いのように絡みつくか、どちらにしても自分が黄金の鎌刃をシグナムに向けて放つより速いだろう。

右足を踏み込み、バルディッシュ・アサルトを振り下ろす。

黄金の鎌刃がバルディッシュ・アサルトから離れて、蛇腹剣の目を掻い潜ってシグナムへと向かっていった。

 

シュランゲフォルム状態のレヴァンティンを操りながらも、シグナムは眼前のフェイトの動きを逐一警戒していた。

(これまでテスタロッサの攻撃は何とか防いでいたが、こちらとしては決定打をまだ与えていない)

それは相手のフェイトも同じ事だ。

フェイトのいる位置から何かが飛んできた。

(仕掛けたな!)

その場で左足を軸にして右回転して、レヴァンティンを操る。

「はああっ!!」

連結刃が蛇のようにうねりを上げて、フェイトの周囲を囲っていた体をフェイトに向かっていく。

螺旋の大きさが小さくなり、やがては中にいるフェイトを潰すくらいに小さくなっていく。

やがて大きく砂煙が生じて、フェイトの姿が確認できなくなる。

(来たか……)

先程フェイトがこちらに投げつけた黄金の鎌刃が砂煙の中からシグナムまで飛んできた。

速度は一定であり道筋も一定。実弾のように飛距離によって弾道が落ちるというような事がないのが厄介だ。

ギリギリの所まで引き寄せてから、両脚に力を込めてその場で高く跳躍する。

地上から離れて数十メートル位になると、雨でもないのに自分の頭上が暗くなった。

「はああああああああああぁ!!」

その正体は黄金の鎌刃を出現させたバルディッシュ・アサルトを上段に構えていたフェイトだった。

(テスタロッサ!)

シグナムの身体が生存本能の赴くままに動いた。

 

フェイトとシグナムが激戦を繰り広げている中、野上良太郎はエイミィのナビを聞きながら、歩を進めていた。

『その調子だよ。良太郎君』

「うん。何かどんどん砂煙とかが出てるから、間違いなくフェイトちゃん達がいるところに向かっているってのがわかるね」

良太郎はゴーグル越しに見える砂煙などが激戦を繰り広げている証明だと考えていた。

『ねぇ良太郎君』

「なに?エイミィさん」

エイミィの声色が普段の明るい感じになっていた。

『こんな時に聞くのも何だけどさ。良太郎君にとってフェイトちゃんはどういう存在なの?』

「え?」

トランシーバーから耳に入ってくる質問に対して、良太郎は聞き返す。

質問自体はされても構わない。だが、内容は問題ありだった。

「エイミィさん。僕達の会話ってその、傍受される事ってない?」

『なのはちゃんやフェイトちゃん、アルフに聞き取られる心配はないから安心して。だからこそ今訊ねられるんだけどね』

傍受される心配がないと聞いて良太郎はホッと胸をなでおろす。

「好きか嫌いかで訊ねられると、好きだよ。いい子だし、年齢とか性別とか関係なく信頼できるからね」

良太郎は自分がフェイトに対して抱いている想いを素直に打ち明けた。

『ふぅーん。そうなんだぁ』

「もしかして僕、変なこと言った?」

エイミィの声色からしてズレた答えを出してしまったのかと良太郎は思ってしまう。

『ううん。じゃあさ、女の子から好意をもたれてたら良太郎君としてはどう思ってるのかな?』

良太郎は足を止めずに、砂漠の地面を踏みながら歩いている。

「うーん。答えるに難しい質問だね」

『そう?』

「僕、モテた事とかないからさ。今ひとつ想像できないっていうのが本音なんだ」

『モテた事がない?嘘でしょ?』

エイミィは信じられないという声を上げる。

「本当だよ。学生時代に女の子の友達はいたけど、恋人はいなかったよ」

『へええ。意外だねぇ』

「そう?」

自分が『女性にモテている』と思われていることの方が不思議で仕方がない。

『肝心の答えは?』

「まぁ……いれば嬉しいかな……」

エイミィに急かされたので、良太郎は頬を人差し指で掻きながら短く答えた。

目的地まで歩む速度を速めた。

 

空中でアルフ(人型)とザフィーラ(人型)が拳を交えていた。

アルフが右正拳を繰り出すが、ザフィーラは左手で叩き落とす。

ザフィーラが右上段蹴りでアルフのこめかみを捉えるが、アルフは即座に反応して身を屈めてから間合いを詰めて下半身に力を込めて、タックルをけしかける。

「でええぃ!!」

「ぬぅ!!」

ザフィーラは全体重をかけて、吹き飛ばされる事を防ぐ。

「せりゃあああああ!!」

ザフィーラはアルフを掴んで持ち上げ、上体を反らして後方へと投げ飛ばした。

「なっ!?」

宙に浮きながらも、アルフは体勢を整えようと軌道を修正して無事に着地する。

(あたしの体当たりがそれなりに効いてたから、投げのキレが今ひとつだったんだねぇ)

抱えられた腹部を擦りながら、こちらに向き直っているザフィーラを見据える。

「やああああああぁ!!」

ザフィーラが一気に間合いを詰め、振りかぶって右正拳を放つ。

アルフが両腕をクロスして、受け止める。

「ぐぅっ!!」

単純な馬力では自分よりも向こうに分がある。

アルフの両脚が空中とはいえ、ズルズルと下がる。

クロスしたまま、前へと進んでザフィーラの拳を払いのけた直後に後方へと宙返りをしながら右足を胸部付近に狙いをつけて蹴り出した。

「!!」

危険を感じたザフィーラは、アルフの右足を受け止めようとはせずに必要最小限の動きと選択した後方へと半歩後退した。

ザフィーラの前髪がアルフの蹴りによって生じた風でふわっとなびく。

「ちぇっ。折角当たるかと思ったのにさぁ」

アルフは台詞とは裏腹に、特に気落ちしている様子はない。

「見せ技は所詮見せ技だ」

「バレてたってわけかい……」

ザフィーラの尤もな意見にアルフは両肩をすくめていた。

サマーソルトキックは相手にダメージを与えるというよりは相手に威嚇する目的として用いられている。

だが、沈着冷静を地で貫いているような相手には全く意味がない技である。

両者共に、ゆっくりと間合いを空けていく。

(接近戦でやり合ってもラチがあかないからねぇ。ここらで一発決めますかぁ!!)

ある一定の距離まで間合いが開くと両者はその場で停まる。

アルフが振りかぶりながら、全力の速度で突っ込んでいく。

ザフィーラもそれに負けないくらいの速度で応じようとしている。

アルフが右に、ザフィーラが左に上体を振りかぶる。

「「はああああああああ!!」」

右正拳と左正拳が同時に繰り出された。

だが、両者ともに拳が一瞬ぶつかってすぐさま、一直線に進んで相手に向き直った。

「はあ……はあ……はあ……」

「はあ……はあ……」

アルフもザフィーラも両肩を上下に揺らして息を整えようとしている。

「アンタも使い魔---守護獣ならさぁ!ご主人様の間違いを正そうとしなくていいのかよぉ!?」

アルフ自身、過去に犯してしまった事だ。

だからこそ、この手の事で『罪の意識』を感じるのは自分一人でいい。

ザフィーラが引き返せるのかどうかはわからないが、それでも打診するだけの価値はあると踏んだ。

「『闇の書』の蒐集は我等が意思。我等が主は我等の蒐集については何もご存知ではない」

「何だって!?そりゃあ一体……」

アルフは我が耳を疑った。

ページ蒐集は守護騎士達が独断でやっているのだと。

主は今もページ蒐集の事実を知らないのだと。

(命令じゃなくて、自分の意思なんてさ……。くそっ!これじゃ説得が余計に難しくなるじゃないか!)

予測が外れ、それが自分が考えている以上の難解だと知るとアルフは毒づいた。

 

「主のためであれば血に染まる事も厭わず。我と同じ守護の獣よ、お前もまたそうではないのか?」

 

ザフィーラは言いたい事を言い終えたというような感じで構えを取る。

「そうだよ……。でも、だけどさぁ!」

アルフはザフィーラの一言がなまじ正鵠を射ているので、言い返そうにもまともな言葉が出てこなかった。

 

 

ヴィータは右手にグラーフアイゼン、左手に『闇の書』を抱えて砂漠世界とは違う次元世界を飛行していた。

三つほど巨大な星が見える空は青々として緑は茂っており、都会らしい文明は一切なく保養地として過ごすには快適な場所ともいえるだろう。

(こーいう所ではやてとゆっくり過ごせたらいいよなー)

ヴィータが蒐集対象を捜しながらも、ちょっとした理想を思い浮かべるがすぐに現実に戻って厳しい表情を取っていた。

(ヴィータちゃん。シャマルだけど……)

シャマルが突如、念話の回線を開いてきた。

(何だよ?言っとくけど蒐集はまだしてねーぞ。見つからねーんだよ)

ヴィータはどこか不貞腐れた感じで素直に報告する。

(それ中断してもらってもいいかしら?)

(何でだよ?)

(シグナム達の所がちょっと……)

(シグナム達が?)

ヴィータと念話とはいえ、シャマルと会話を進めながらも飛行速度を緩めてはいない。

(うん、砂漠で交戦してるの。テスタロッサちゃんとその守護獣の子、あと一応警戒しておいた方がいいのが……)

(仮面ライダー電王が来てるって事か……)

シャマルが言おうとした事をヴィータが先に言った。

(うん。一応警戒した方がいいって言ったのは彼はまだ誰とも接触していないからなの。何をしでかすかわからないって部分も含めて一応って言ったの)

(シャマル。シグナム達が射る世界にいる電王ってのは何人だよ?赤鬼達---イマジンは?)

(ううん。侑斗君が言っていた野上良太郎君だけよ)

良太郎一人でも電王になって戦う事は出来る。

事実、シグナムに一対一で勝っているのだから。

(どっちにしても長引くとマズイよな。助けに行くか……)

ヴィータが今後の行動を決断し、視点を前へと移したときだ。

「!」

ヴィータは急ブレーキをかけて停止する。

前方に白いバリアジャケットを纏った高町なのはがいた。

(ヴィータちゃん。どうしたの!?)

(鬱陶しいのが来やがった。例の白いヤツ……)

ヴィータはここに来ているのが、なのはだけでないと推測して下方を見る。

岩山の頂にモモタロス、キンタロス、リュウタロスがいた。

それぞれ専用の武器を携えていた。

(あと、赤鬼に金クマに紫ドラゴンもいやがる……)

 

「高町あろまとバカイマジン達!!」

 

「なのはだってばぁ!!な・の・は!」

なのはが両手を振って、あたふたしながら訂正を求める。

「誰がバカイマジンだ!このエビフライ頭!!」

「モモの字がそう言われるのはしゃあないけど、俺まで含むなんてどういうこっちゃ!」

「バカはモモタロスだけだもん!」

岩山にいるイマジン三体も、ヴィータに抗議をした。

「うっせーな!!お前等出てくるたんびにバカな事しかしてねーだろうがぁ!!」

ヴィータはイマジン三体を睨みつけるとある意味、正鵠を射た。

次になのはを見る。

レイジングハート・エクセリオンを下げたままで構えようとはしない。

「ヴィータちゃん。やっぱりお話聞かせてもらうわけにはいかない?もしかしたらだけど手伝える事とかあるかもしれないよ?」

なのはは穏やかな表情でこちら側の事情を聞き出そうとしている。

強制ではなく、こちらが話すのを待っているようだ。

(はやて?)

一瞬だが、主である八神はやてが見えた。

(まさか……な……)

ヴィータは両目を吊り上げる。

「うるせぇ!!管理局の人間の言う事なんか信用できるか!!」

精一杯怒鳴り散らす。

なのはは臆することなく、ヴィータを見据えている。

「わたし、管理局の人じゃないもの。民間協力者」

両手を広げる。まるで、全ての事情を知っても呑み込むかのように。

(『闇の書』の蒐集は魔導師一人につき一回。つまり、コイツを倒してもページ蒐集はできねぇんだよなぁ)

ハッキリ言えばメリットは何もない。むしろ魔力や体力そして時間を使ってしまうため、デメリットしかない。

右手に握られているグラーフアイゼンを一瞥する。

(カートリッジの無駄遣いも避けてぇしなぁ)

「ヴィータちゃん」

なのはが切なる願いを込めた表情で名を呼ぶ。

ヴィータはなのはを睨んで次なる行動に移る事にした。

 

「ぶっ倒すのはまた今度だああぁぁ!!」

 

そう言う同時に足元に紅色の魔法陣を展開させて、左掌から紅色の光球を出現させる。

キュイイイインという音を光球が奏でている。

グラーフアイゼンを上段に振りかぶる。

『アイゼンゲホイル』

電子音声で発すると同時に、ヴィータは右手を紅色の光球に向けて勢いよく振り下ろす。

グラーフアイゼンの頭部が紅色の光球に直撃する。

ヴィータを中心に円形に紅色の光と衝撃がはしる。

衝撃によって、地上の緑が突風に煽られている。

自分は球状のバリアを張っていたので光で視界を奪われる心配はないし、轟音によって耳を狂わされる心配もない。

なのはが両目を閉じて、両耳を両手で押さえているのが見える。

「脱出!」

ヴィータは全力で、なのはから更に間合いを開ける事に成功した。

「よし、ここまで離せば攻撃もこねぇ」

グラーアイゼンを振って、足元に紅色の魔法陣を展開する。

「転送……ん?」

ヴィータは距離を開けて、なのはを見るがこちらに間合いを詰める事はしない。

レイジングハート・エクセリオンをこちらに向けていた。

「ま、まさか!?撃つつもりか!?この距離から!?」

いくらなんでもそれはないとヴィータは高を括りたかった。

 

ヴィータが繰り出した魔法によって一時的に視界と聴力を狂わされたなのはだが、次第に回復した。

『マスター。撃ちましょう』

レイジングハート・エクセリオンが主に反撃の一手を促す。

「うん!」

なのはも意を決して首を縦に振る。

なのははレイジングハート・エクセリオンを変形させる。

先端がシャープな形状となり、その両端から桜色の翼が展開される。

『バスターモード。ドライブイグニッション』

レイジングハート・エクセリオンが珠部分を明滅させながら告げる。

狙撃銃のスコープのような視界で、なのははヴィータを捉える。

「行くよ!久しぶりの長距離砲撃!」

『ロードカートリッジ』

レイジングハート・エクセリオンは二回カバーをスライドしてカートリッジを二個排出させる。

足元に巨大な桜色の魔法陣が展開される。

レイジングハート・エクセリオンの先端から桜色の環状魔法陣が二つ出現する。

更になのはの持つ杖部分の前に一つ、そして後ろに一つと計四つが出現した。

(うん!いける!)

桜色の光球が構築されて、魔力を収束して肥大していく。

『ディバインバスター・エクステンション』

発射準備は整っている。後はただ一声挙げるのみだ。

「ディバイイイイイイイン」

桜色の光球が一時的に縮小してから更に巨大化し、水色の光球が同時に出現してそれは三角形を描いていた。

今から放たれる魔力砲が曲折しないための補正の役割を担っているのかもしれない。

 

「バスタアアアアアアアアア!!」

 

ドォンともブォンともいう轟音を響かせながら桜色の大きな光が一直線にヴィータへと向かっていった。

空中で巨大な爆発音が鳴り響き、爆煙が立つ。

レイジングハート・エクセリオンの一部がスライドして、排熱処理のために蒸気が発する。

なのはは放っても表情は明るくなかった。

『直撃ですね』

「ちょっと……やりすぎた?」

なのははもう少し加減した方がよかったのではと思いだした。

『いいんじゃないでしょうか』

レイジングハート・エクセリオンは気にする事はないと言う。

立ち込める爆煙が晴れていくと、ヴィータ以外ヴィータより大柄なシルエットがあった。

「あ……」

仮面の戦士だった。

 

ヴィータは無傷だった。

本来ならば直撃してまっ逆様に落下していたのだから。

自分を助けてくれたのは以前、海鳴市での戦闘の際にも現れた仮面の戦士だった。

「アンタは?」

自分を助けてくれたからといって、味方とは限らない。

「逃げろ。『闇の書』を完成させるんだ」

仮面の戦士は短く告げた。

『闇の書』の完成を促してくれるのだから、とりあえず味方と判断した。

グラーフアイゼンを剣のように前に構えて、紅色の魔法陣を展開させる。

仮面の戦士がなのはに向けて、何かを放ったが自分はそれを最後まで確認する事は出来なかった。

 

 

フェイトはシグナムの頭上を捉え、バルディッシュ・アサルトを両手で握って振り下ろした。

確実にダメージを与える事に成功したと思った。

だが、現実には黄金の鎌刃はシグナムには届いていなかった。

「鞘!?」

シグナムは左手に握られていた紫色の魔力で覆った鞘で受け止めていたのだ。

自分にとって絶好の好機を完全に逃してしまった。

「うおおおおおお!!」

シグナムは間合いを開けず、そのまま右上段蹴りをこめかみに向けて放つ。

地上に向けて吹き飛ばされるが、蹴りは左掌から放つ魔力で防ぐ事は出来た。

バルディッシュ・アサルトが黄金の矢を一発、シグナムに向けて放つ。

避けきれる距離ではない、良くて防御。直撃は高確率といったところだろう。

空中で爆発が生じ、フェイトは宙で上手く軌道を修正して着地する。

『アサルトフォーム』

バルディッシュ・アサルトは自らの形態を変える。

その直後にズドォンという地上にむけて落下するような音がフェイトの耳に入った。

砂煙が立ち、その正体が何なのかは考えるまでもないことだ。

シグナムなのだから。

『シュベルトフォルム』

シグナムが立ち上がり、蛇腹剣状態だったレヴァンティンを長剣に戻す。

(次!)

バルディッシュ・アサルトがカートリッジロードすると、フェイトの左手首に黄金の環状魔法陣が巻かれて、掌には黄金の光球が出現する。

シグナムもレヴァンティンを納剣してからカートリッジロードしていることはわかった。

レヴァンティンからカートリッジが排出されたのだから。

フェイトの足元に黄金の魔法陣が展開され、フェイトと同等の大きさの環状魔法陣が一つとそれより少し小さい環状魔法陣が出現した。

掌で構築されている金色の魔力球がバチバチと音を鳴らす。

「プラズマ……」

フェイトが発動魔法名を告げながら眼前のシグナムを見る。

レヴァンティンを両手で持って上段に構えてから足元に紫色の魔法陣を展開させてから、紫色の波がうねりを上げている。

「飛竜……」

そうフェイトの耳に入ってきた。

 

「スマッシャアアアアアアアア!!」

 

左手を前にかざすと、黄金の環状魔法陣が出現して左掌に乗っていた雷を帯びた黄金の魔力球は巨大化して一筋の光となって、掌から放たれた。

ズドォォォンという轟音を響かせながら、シグナムへと向かっていった。

 

シグナムはレヴァンティンを上段に構えて、迎撃態勢を整っていた。

後はタイミングを見計らって、この一撃を振り下ろすのみ。

跳躍してから同時にレヴァンティンを鞘から走らせて抜剣する。

刀身は長剣ではなく蛇腹剣状態で紫色の魔力が帯びていた。

 

「一閃!!」

 

蛇のようにうねりを上げているレヴァンティンを砂地に叩きつける。

紫色の波が砂地を一直線に走っていく。

向かう先はフェイトが放った黄金の魔力砲だ。

黄金の魔力砲と紫色の波がぶつかって、金色を帯びた紫色の竜巻が発生する。

そのまま何かが起こるかとも思われたが、その場で回転し互いの魔力と魔力が反発しあって相殺して爆発した。

爆発した場で爆煙が立つ。

先に場を空へと移すために飛行する。

フェイトが後を追うようにして、こちらに向かってきた。

「「はあああああああああああ!!」」

レヴァンティンをカートリッジロードする。

ガシュンという音を立ててカートリッジが排出される。

ガシャンという音がフェイト側から聞こえてきた。

バルディッシュ・アサルトがカートリッジロードする。

両デバイスがぶつかり、魔力光が発生した。

 

「更に激しくなってる!」

良太郎がゴーグル越しなのに片目を閉じながら、吹き荒ぶ風とその中に混じってくる砂の脅威に臆することなく進んでいた。

『それだけ、目的地に近づいているって事だよ』

「数字で表すと、どのくらい?」

目的地に近づいているとはいえ、具体的なもので表現してもらわないと精神的に参ってしまう。

『数字で表すと三百メートルくらいかな』

エイミィが教えてくれた。

「え?そんなものなの?」

『もっとあると思ってた?』

「うん。確認するけど方角はこれでいいの?」

『間違い……』

良太郎の耳にガガピーというような雑音が入ってきた。

「エイミィさん?エイミィさん!」

良太郎は何度も駐屯地にいるエイミィに交信を試みるが、何の反応もない。

「とにかく、フェイトちゃん達に合流しないと」

良太郎は歩を先程より速く進めた。

ザッザッザッという音を立てながら。

 

フェイトとシグナムが空中で互いのデバイスをぶつけ合っていた。

バチバチバチという音を立てながら、両者の足は砂地に着く。

同じタイミングで振り向く。

シグナムの左手から甲冑が避けて血が流れ出して、砂地に落ちていた。

「はあ……はあはあ…はあ……」

両肩を上下に揺らしてからフェイトを睨みながらもフェイトを睨んでいる。

(ここに来て尚速い……。眼で追えない攻撃が増えてきた……。早目に決めないとまずいな……)

中段にレヴァンティンと鞘を構える。

フェイトの左足からも血が流れていた。

バルディッシュ・アサルトを両手に持って構えていたが、両肩を上下に揺らしていた。

「はあはあ……はあ…はあ…はあ……」

(強い!クロスレンジもミドルレンジも圧倒されっぱなしだ……。今はスピードでごまかしてるだけ……。まともに食らったら叩き潰される!)

バルディッシュ・アサルトをハーケンフォームにして上段に構える。

(シュツルムファルケン。当てられるか……)

フェイトを睨みながら、一か八かの賭けに出ようとするシグナム。

(ソニックフォーム。やるしかないかな……)

フェイトもまた一か八かの賭けに出ようとしていた。

両者の足が同時に砂地から離れて、何度目かのぶつかりあいになろうとした。

 

エイミィのナビゲーションを頼りにしていた良太郎だが、何故か途絶えてしまいひたすら真っ直ぐに砂地を踏みしていた。

(そろそろ三百メートル歩いたと思うけど……)

感覚なので正直アテにはならない。

いい加減、見渡す限り同じ風景というものにうんざりしてきた頃だ。

 

「うわあああああああああぁ!!」

 

フェイトの声が耳に入った。

このような悲鳴じみた声は平時ではありえない。

シグナムかザフィーラにやられたのだと思い、良太郎は歩きから走りへと切り替える。

ザッザッザッという音を鳴らしながら、走る。

(何だろ?凄く嫌な予感がする!)

胸の中で怒るざわつきが杞憂であってほしいと良太郎は願う。

やっと人が良太郎の視界に入った。

(え?)

良太郎の双眸の眼に入っていたのは、仮面の戦士に胸元を貫かれているフェイトとそれを睨んでいるシグナムだった。

シグナムを一瞥してから、もう一度フェイトを見る。

見るも痛々しい苦悶の表情を浮かべていた。

それは夢ではなかった。

フェイトの胸元を仮面の戦士が貫いていた。

身体全身の体温が一瞬冷えたような感じがして、すぐにまた上昇した。

命を懸けた戦いは何度も経験している。

そんな時でも今のような状態にはならなかった。

いや、一度だけあった。

桜井侑斗を消失させたイマジンに対してだ。

あの時もこのような自分では抑えきれない何かが噴出そうとしていた。

あれからさらに修羅場を潜り、イマジン達と特訓をしていく上で何となくだがわかってきた。

そして、仮面の戦士を見る。

開いていた手は拳にして、両目に力が篭る。

今ならわかる。

自分は仮面の戦士に対して、こう抱いているのだ。

 

絶対に許さない、と。




次回予告

第四十一話 「修羅の片鱗 後編」
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