仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第四十四話 「夜天の魔導書」

八神はやてが病院に搬送された時、そこにいる誰もが何が原因でそのようになったのかを瞬時に理解した。

『闇の書』の呪いが以前より進んでいる証明だ。

「大丈夫みたいね。よかったわ」

はやての担当医である石田医師が病室にいる全員を安心させるように明るい表情をしていた。

「はい、ありがとうございます」

はやても笑顔で返す。

「はぁ~、ホッとしましたぁ」

シャマルが胸をなでおろす。

「そやから胸と手が攣っただけやって言うたやん。もぉみんなして大事するんやからぁ」

はやてが杞憂だと言い張る。

「でも頭打ってましたし……」

シャマルは、はやての言い分を聞きながらも食い下がる。

「何かあっては大変ですから……」

シグナムもシャマル同様に食い下がっている。

「はやて!よかった……」

ベッドの側で身を案じてくれているヴィータをはやては撫でる。

「八神、寒かったりしないか?辛いなら寝ておいた方が……」

「大丈夫やよ。デネブちゃん」

心配げな事ばかり言ってくるデネブにはやては笑顔で『大丈夫』という思いを込めて返す。

「まぁ来てもらったついでに検査とかもしたいからもう少し、ゆっくりしていってね」

「はぁい」

石田医師の一言に、はやては一瞬だが「え!?」という表情を浮かべてしまった。

「さてとシグナムさん、シャマルさん、桜井君。ちょっと……」

「はい?」

「え?」

「………」

シグナムとシャマルは呼ばれたことにキョトンとした表情を浮かべており、侑斗は、はやて絡みだろうと予想が出来ていたため平静な表情を保っていた。

廊下まで連れられた侑斗、シグナム、シャマルは立ったままで石田医師の話を聞いていた。

「今回の検査では何の反応も出てはいませんが、攣っただけという事はないと思います」

石田医師は病室内とはうってかわって『医者』の表情をしていた。

「はい。かなりの痛がりようでしたから……」

シグナムは腕を組んだまま、小一時間前の事を思い出しながら答える。

「麻痺が拡がりはじめているのかもしれません。今までこういう兆候はなかったんですよね?」

石田医師は確認するかのようにして八神家の大人達に訊ねる。

「と、思うんですけど……。はやてちゃん、『痛い』とか『辛い』のとか隠しちゃいますから……」

シャマルは不安そうに告げ、シグナムは黙って首を縦に振る。

「発作がまた起きないとも限りません。用心のためにも少し入院をしてもらった方がいいですね。大丈夫でしょうか?」

石田医師が厳しい表情で三人に告げる。

シャマルは不安げな表情でシグナムと先程から一言も発さない侑斗を見る。

「……はい」

シグナムは両目を閉じて、石田医師の提案を呑む事にした。

侑斗も異議の言葉は出さなかった。

 

外は夕方---青色から茜色へと切り替わっていた。

「入院!?」

はやては驚きを隠さなかった。

「そうなんです……」

シャマルが申し訳なさそうな表情で告げた。

はやてとヴィータは顔を見合わせてから不安げな表情を浮かべる。

「あ、でも……検査とか念のためとかですから……、心配ないですよ。ね?シグナム、侑斗君」

不安がらせないように両手を胸元にまで持っていき、取り繕う。

花瓶を持って水の入れ替えを行っているシグナムとパイプ椅子に座って窓の景色を眺めている侑斗に同意を求める。

「はい」

シグナムは即座に返して、花瓶を棚に置く。

「ああ」

侑斗は顔をはやてに向けてから答える。

「それはええねんけど……、あたしが入院したらみんなのご飯は誰が作るんや?」

「問題ない。デネブがやるから大丈夫だ」

はやてが抱える問題に侑斗が即座に回答した。

「八神の家の味は俺が護る!!」

デネブが両手を挙げて、『了解』のポーズを取る。

「それにシャマルにしてみても、いい試練になるんじゃないか?」

侑斗はシャマルをちらりと見てから、はやてに言う。

「それはそうかもしれへんけど……」

はやてはそれでも不安げな表情を変えようとはしない。

「まったく……、前にも言っただろ?あんまり考えてばかりだと老けるぞ?」

「ええっ!?それはちょっと嫌やなぁ……」

はやては両手で両頬を当てて、思い当たりがあるのか不安になる。

「はやて、毎日会いに来るよ。だから……大丈夫」

ヴィータは、はやてを元気付けるようにして宣言した。

「ヴィータはええ子やなぁ。せやけど毎日やのうてもええよ。やる事もないし、ヴィータ退屈やん」

「うぅ……」

はやてに撫でられながらも、ヴィータは核心を突かれて唸るしかなかった。

「ほんなら、わたしは三食昼寝つきの休暇をのんびり過ごすわ。デネブちゃん、みんなのご飯お願いな?これを機会にシャマルをビシビシしごいてもええで」

「了解!」

「デネブちゃん!?」

はやての言葉にデネブは首を縦に振って、両手を挙げる。

デネブにしごかれるかもしれないと思ったシャマルは不安げな表情を浮かべた。

はやては皆の温かい言葉を受けて、入院する事に頷いた。

ベッドに寝転がってから、大きく目を開く。

「あ!アカン!すずかちゃんがメールくれたりするかも……」

はやての不安要素はまだ残っていたようだ。

そんなはやてを見て、ヴィータは侑斗の裾を掴んでから訊ねる。

「侑斗、はやてはやっぱり老けるかも……」

「さっきは冗談交じりだったんだけど、俺もなんかそう思えてきた……」

ヴィータの言葉に侑斗はただただ頷くしかなく、側で聞いていたシグナムとシャマルも異議を唱えようとはしなかった。

「あぁ、私が連絡しておきますよ」

シャマルが役割を買って出た。

「うん。お願い」

はやてが少しだけ、起き上がってシャマルに頼んだ。

「では戻って着替えと本を持ってきます。本はアレでよろしいでしょうか?」

「うん。アレでええよ」

シグナムは、はやてが望む本を具体的な名称を言わずに訊ねると、はやては首を縦に振った。

八神家+2(侑斗とデネブ)は入院するためのお泊りセットを持ってくるために、病室を後にした。

一階へと通じるエスカレーターの前で侑斗は足を停めた。

「侑斗?」

デネブがキョトンとして、侑斗を見る。

「先に帰っててくれ。忘れ物をした」

踵を返して侑斗は、はやてがいる病室へと戻った。

 

病室に誰もいなくなると、はやての表情は歪んだ。

先程から胸を基点にして、襲い掛かるモノがあった。

何なのかはわからないし、ここまで顕著に出てきたのは今回が初めてかもしれない。

今までもこのような『攣り』はあったが、それは一瞬の出来事のようなもので足を攣った時のような何ともいえない一瞬にして襲い掛かってくる痛みではなかった。

「ぐっぅぅぅぅぅ」

胸元を押さえて、必死で声を出す事をこらえる。

必死でこらえているが、収まる兆しはない。

むしろ余計にひどくなろうとしている。

(痛い!苦しい!誰か……誰か助けてぇ!!)

理性は皆に迷惑をかけてはならないという強い意思が動くが、本能は痛みを表に曝け出そうとしていた。

だがその痛みは永久に続くものではない。

やがて徐々に収まろうとしていき、はやての身体全身から抵抗する力が抜けていく。

(アカン……。も一回、同じの来たら耐えられへん)

はやてはベッドの中へと沈んでいく。

「はあ……はあはあ……はあ……」

息を乱して、どこかぼんやりとした表情で天井を見上げる。

(みんながおらへんで、よかった……)

はやては安堵の息を吐く。

ドアを叩く音がした。

石田医師かそれとも看護婦だろうと、はやては踏んだ。

「どうぞぉ。開いてます」

ドアを開けて入ってきた人物を見て、はやては目を大きく開いた。

 

「こんな事だろうと思ったよ」

 

自分が痛みを我慢している事を見透かしたかのような台詞を吐いたのは侑斗だった。

「侑斗さん……」

はやては何故、ここに帰ったはずの侑斗がいるのか理解できなかった。

あの時自分は完璧ともいえる演技をこなしたはずだ。

現にシグナム、シャマル、ヴィータ、デネブはそれを信じ込んで病室を後にしたのだ。

侑斗はズカズカと病室に入り、パイプ椅子を手に持ってからはやての側に置いて座る。

彼から放たれている雰囲気はこの場を支配しており、はやてを沈黙させるには十分な力があった。

(侑斗さん。もしかして怒ってる?)

そう訊ねたいのだが、それすら言わせてもらえない。

「八神」

侑斗は腕組みをしてから、はやてを見る。

はやてにしてみたら、まさに『蛇に睨まれた蛙』状態だ。

「な、なに?侑斗さん……」

おそるおそる口を開く。

「お前、いい加減にしろよ?」

侑斗は、はやてを見据えている。

その眼差しは既に他界している父親が自分を叱責する時のものに似ていた。

「……ごめんなさい」

はやては、頭を下げて素直に謝罪した。

「俺の思い過ごしであってほしいと思ったんだが、シャマルの言ってた通りだな。辛い事や痛い事を抱え込んでしまうって」

「シャマルが!?もしかして……」

はやては侑斗の他にも自分の先程の様子が『演技』だと見抜いているのではと思ってしまう。

「いや、俺以外は多分気付いてないだろう。お前の頑固さと根性には本当に頭が下がるよ」

「それ褒めてんの?もしかして貶してんの?どっちや?」

はやてが寝たまま、侑斗に顔を向けて訊ねてくる。目つきは先程より鋭いが迫力は感じない。

「両方だよ」

侑斗はしれっと言い放つ。

それからしばらく沈黙が病室の場を支配する。

「お前、ヴォルケンリッター

あいつ等

に自分の弱さを見せるのがそんなに嫌か?」

沈黙を破ったのは侑斗だった。

「侑斗さん?」

はやては侑斗の質問の意図が読み取れない。

「いやな、お前の態度見てるとそんな風に思ってしまってな……」

侑斗の言葉に、はやてはキョトンとしてしまう。

「わたし、そんな風に見えんの?」

自分としてはそのようなつもりはないのだが、侑斗から見たらそのように見えているのだろう。

「俺はそういう風に見えるがな」

侑斗は腕組みをする。

「その……、嫌とかそういうわけじゃないんよ。ただ何ていうんかなぁ……。どうしたらええんかがわからへんのや……」

はやては視線をソワソワさせながら、侑斗に打ち明ける。

『闇の書』の主となって以降、はやては『保護者』であろうとするためか他人に甘えるという事に対して、後ろめたさのようなものを感じていた。

『お願い』をする事はあっても『ワガママ』を言う事は殆どなくなった。

両親が健在だった頃は結構言っていたのだが。

「そうか……」

侑斗は茶化しもせずに聞いていた。

何のアドバイスもないが、はやてにはただ聞いてくれるだけの姿勢が嬉しかった。

「さてとそろそろ帰るか」

侑斗は席を立ち、病室を出ようとする。

「ヴィータじゃないが時間に余裕ができれば見舞いに来る。だから寂しがるなよ?」

侑斗はからかいが混じった口調で、はやてに言う。

「もぉ!侑斗さん、またそういう意地悪言うてぇ!」

はやては頬を赤くしながら抗議する。

「あ……」

侑斗の背中が自分から遠ざかっていくと、ふと自分の右手が侑斗に向かって伸びていた。

意識しての事ではない。無意識レベルの事だ。

「侑斗さん」

「ん、どうした?八神」

「ええとぉ……もう少しだけここに居ってくれへん?」

はやてが侑斗を申し訳なさそうにしながらもチラチラ見ている。

顔を赤くしながらも不安の色も浮かび上がろうとしている。

侑斗は黙って先程座っていたパイプ椅子に座る。

「わたしが眠るまで居ってな」

はやては侑斗にそう告げると、両目を閉じる。

その表情から『不安』はなく『安心』で満たされていた。

「おやすみ。八神」

侑斗が優しい表情を浮かべて言ってくれたのだと、はやては想像しながら寝息を立てた。

 

 

「良太郎さんが怒ったんですか?」

無限書庫の無重力に身を任せるかたちで浮遊しながらも『闇の書』について調査を中段したユーノ・スクライアは隣で散乱している本の一冊に目を通しているウラタロスの言葉を聞き、疑いの眼差しを向けていた。

「センパイ達の証言だと信憑性は今ひとつと感じるんだけど、ハナさんとアルフさんが言ってることだからね。信じられる証言だと思うよ」

ウラタロスはユーノがそのように猜疑心を込めた台詞を吐くのも予測の範疇内だったらしく、特に気分を害してはいない。

「それでもあの良太郎さんがですよ……」

ユーノからみても野上良太郎が感情に身を任せて力を奮う姿は浮かばなかった。

「まぁ無理もないと思うよ。僕達の中でその良太郎を見たのって誰もいないしね」

「でもどうしてウラタロスさんやモモタロスさん達はその話を信じたんですか?」

ユーノは根拠を問う。

「うーん。嘘吐いてもメリットないじゃない?」

嘘を吐く事に誇りのような物を抱いているウラタロスは他者が何故、嘘を吐くのかという理由がわかるようだ。

「メリット、ですか?」

「うん。嘘を吐くって事は吐いた人間が、なにがしかのかたちで『得』を得るわけだからね。今回の事じゃ『良太郎が怒った』なんて事をアルフさんとハナさんがわざわざ僕達に向かって嘘を吐いても『得』を得るとはとても思えないからね」

ウラタロスの講釈にユーノは耳を傾ける。

ユーノとしてはウラタロスはモモタロス達の中で一番の知能派だと思っている。

そんな彼の冷静な分析はあながち間違っていないだろうとユーノは考える。

「あのぉ、怒った良太郎さんってどんな感じなんですか?」

「ユーノは確か、二回目に百科事典の関係者とやり合った後はハラオウン家にいたよね?」

「ええ。というよりどこかに移動しようにも動けなかったですけどね……」

「だったら見てるじゃない?怒った良太郎」

「もしかして、あの時ですか?」

ユーノは記憶の引き出しから引っ張り出して、その時の事を思い出す。

「……シャレになりませんね」

思い出したのかユーノは顔を青ざめていた。

「まぁね。僕が知る限りでこの世で怒らせたり、最悪の場合キレさせたらヤバいと感じるのは良太郎だろうね」

「キレた良太郎さんですか……。想像つきませんよ」

「僕も見たことないしね。ん?リーゼさんが来たよ」

ウラタロスの視線にはこちらに向かっているリーゼ姉妹の片割れが来た。

「アリアさんですね。じゃあ昼休みはこれにて終わり、ですね」

ユーノとウラタロスは中断していた作業を続行させる事にした。

 

ウラタロスは後からやってきたアリアと共にユーノのしている事に感嘆の表情を浮かべるしかなかった。

魔導師といってもピンからキリまで魔法をぶっ放すだけが能ではないと改めて考えさせられる。

自分が本を一冊とパラパラと捲るのが関の山なのに対して、ユーノは数冊の本を無重力で浮かして独りでにページが捲られていく。

別の棚から分厚い本が独りでに出てくる。

それはユーノの元までいき、開いていく。

アリアもユーノと同様の事をしているが、ページを捲る速度は遥かに遅い。

「ここの人達がバカでない限りはユーノの就職先は決まったようなもんかなぁ……」

呟きながらページを捲っていく。

宙にモニターが出現する。

映像にはクロノ・ハラオウン、エイミィ・リミエッタ、ロッテが映っていた。

「エイミィさん。何かご用?」

ウラタロスが代表して口を開いた。

『作業はどう?捗ってる?』

「見ての通りだよ。ユーノ、エイミィさんとクロイノとロッテさんが見に来てるよ」

ウラタロスがモニターに映るようにするために、移動する。

両目を閉じて、脳内に情報を叩き込んでいるユーノは右目をうっすらと開いて確認するとまた閉じた。

「ここまででわかった事を報告するよ。まず『闇の書』ってのは本来の名前じゃない。古い資料によれば正式名称は『夜天の魔導書』、本来の目的は各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して研究するために作られた主と共に旅する魔導書。破壊の力を奮うようになったのは歴代の持ち主の誰かがプログラムを改変したからだと思う……」

「いるんだねぇ。どこの世界にも時代にもロクでもないことするヤツ……」

ウラタロスは報告を聞きながら、『闇の書』が天災ではなく人災によるものだと結論付けた。

「ロストロギアを使って無闇やたらに莫大な力を得ようとする輩は今も昔もいるってことね」

アリアもウラタロスと同じ意見を出していた。

「その改変のせいで『旅をする機能』と『破損したデータを自動修復する機能』が暴走しているんだ」

ユーノが報告を続ける。

『『転生』と『無限再生』はそれが原因か……』

『古代魔法ならそのくらいはアリかもね……』

クロノとアリアが報告を聞きながら思い浮かんだ事を口に出す。

「一番ひどいのは持ち主に対する『性質』の変化。一定期間の蒐集がないと持ち主自身の魔力や資質を侵蝕しはじめるし、完成したら持ち主の魔力を際限なく使わせる。無差別破壊のためにね」

報告しながらもユーノはアリアの周囲を囲っている本を取り上げるようにして自分の方へと移動させていく。

ウラタロスは口笛を吹いて、驚く。

「だから、これまでの主は完成してすぐに……」

ユーノの言いたい事はそこにいる誰もがわかった。

生存報告が調査しても出てこないのだから、そういう事なのだろう。

言って場の雰囲気を暗くする必要もないので誰も言わないのだ。

『停止や封印方法についての資料は?』

クロノが最も欲するネタを催促してきた。

「それは今調べてる。だけど完成前の停止はハッキリ言って難しい」

ユーノの目は宙に浮いている本の文字を追っていた。

『何故?』

「『闇の書』が真の主であると認識した人間でないと、システムへの管理者権限が使用できない。つまりプログラムの停止や改変が出来ないんだ。無理に外部から操作しようとすれば主を吸収して転生してしまうシステムも組み込まれている……」

クロノの疑問にユーノは作業を停めずに、答えていく。

「そうなんだよねぇ。だから『闇の書』の永久封印は不可能って言われてる」

アリアが締めくくった。

『元は健全な資料本が何というかまぁ……』

映像に映っているロッテが片目を閉じて、呆れていた。

『『闇の書』、『夜天の魔導書』もかわいそうに……』

エイミィが同情を込めて言う。彼女の言うように『夜天の魔導書』もバカな主にさえ出くわさなければ『闇の書』なんて呼ばれずに済んだのだから、ある意味では被害者だろう。

『調査は以上か?』

「現時点ではね。まだ色々調べてる。でもさすが『無限書庫』、調べれば本当に出てくるよ」

ユーノは果てがないとも思われる天井を見上げて感心していた。

「というより、私としては君の方が凄い!すっごい捜索能力!」

アリアが作業を中断して、ユーノに賞賛の言葉を送る。

ユーノもめったに人に褒められないためか、照れていた。

『すまんが、もう少しだけ頼む』

「うん。わかった」

「あ、クロイノ。海鳴に戻るんだったら、なのはちゃんに差し入れ持ってきてって言っておいて。もらえばユーノの作業能率上がるから」

モニターが消える間際でウラタロスが催促した。

『わかった。伝えておこう』

その間にリーゼ姉妹がやり取りをしていたが、恐らく交替のことだろうとウラタロスは踏んだ。

 

『無限書庫』の面々とのやり取りを終えたクロノ達は別のことに取り組もうとしていた。

「エイミィ。仮面の男の映像を」

「はいな」

深刻な表情をしたクロノとは対照的にエイミィは陽気な声でキーボードを叩く。

モニターには砂漠世界での仮面の男が映し出される。

「何か考え事?」

ロッテはクロノが何を考えているのかわからない。

「まぁね」

モニターには様々な角度での仮面の男が映し出されていく。

「この人の能力も凄いというか……、結構ありえない気がするんだよねぇ」

驚嘆の言葉を述べながらもエイミィの手は休んではいない。

モニターには砂漠の世界と森林の世界が映し出されている。両方とも仮面の男が出没した世界だ。

「この二つの世界、最速で転移しても二十分はかかりそうな距離なんだけど……。なのはちゃんの新型バスターの直撃防御、長距離バインドを決めてそれからわずか九分後にはフェイトちゃんに気付かれずに後ろから忍び寄っての一撃」

エイミィが仮面の男の現在明らかにされている能力を分析し始めた。

「かなりの使い手って事になるねぇ」

ロッテも能力を聞く限りではそのような感想しか出なかった。

「そうだな。僕でも無理だ。ロッテはどうだ?」

クロノは潔く白旗宣言をしてから、仮にも師と呼べるロッテに訊ねる。

「あ~、無理無理。あたし長距離魔法とか苦手だしぃ」

苦笑いを浮かべながら左手で手を振りながら白旗宣言をする。

「ねぇクロノ君」

「何だ?エイミィ」

席に着いているエイミィは見上げるかたちでクロノを見る。

「仮面の男は砂漠世界でフェイトちゃんに一撃決めた後、良太郎君と戦ったんだよね?」

「多分ね」

「ロッテ、どうしたんだ?」

クロノは右手が小刻みに震えているロッテの様子をうかがう。

「え、ああ。な、何でもないよ」

ロッテの右手の震えは左手で押さえつけても止まる気配はなかった。

 




次回予告

第四十五話 「チームゼロライナーとの遭遇」
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