仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第四十九話 「八神はやてを巡る二人の男」

桜井侑斗はただただ呆然と目に映る光景を見るしかなかった。

八神はやてが全くの別人になってしまったのだ。

はやてだった者---闇の書の意思(以後:闇意思)は天を見上げて涙を流している。

「また全てが終わってしまった……。一体幾度、このような悲しみを繰り返せばいいのだろう……」

その言葉はこの場にいる誰に向けられたのかはわからない。

独り言のようにも思える内容だ。

闇意思が顔を正面に向けてきた。

「八神……」

侑斗は、闇意思がどのような行動を取るのか様子を伺っている。

「我は闇の書。我が力の全てを……」

闇意思は右手を前に出してから天にかざす。

『デアボリックエミッション』

『闇の書』が電子音声で発すると、かざしている右手に掌サイズの黒い魔力球が練り上げられていく。

それはやがて、闇意思をも上回る大きさの巨大な魔力球となる。

黒い稲光を周囲に纏わせて禍々しく存在していた。

すぐに発射しないところからして準備に時間がかかると思われる。

(クソ!悪い予感しか考えられない!)

侑斗は拳を強く握り締める。

「桜井さーん!」

侑斗の元に二人の少女が寄ってきた。

仮面の男のクリスタルケージに閉じ込められていた高町なのはとフェイト・テスタロッサだ。

「高町にテスタロッサか」

「これは一体……」

フェイトは状況を把握するために侑斗に訊ねる。

「仮面の男達がシグナム達を殺したんだ……」

侑斗は端的に事実を伝えた。

『殺した』という言い方から侑斗はヴォルケンリッターをプログラムではなく、人間としてみている事が二人には伝わってきた。

「「………」」

二人とも何と言ったらいいのかわからない。

「そういえば良太郎は?良太郎もここにいたはずなのに……」

「あ、そういえば……。何処に行ったんですか?」

フェイトとなのははここにいたはずの野上良太郎を探す。

「あいつなら、あそこで気絶している」

侑斗は現在も気絶している良太郎の所在を二人に教える。

侑斗もまだ痛みが残っているのか首元を擦っている。

「とにかく野上のところまで行こう。あいつがまだ仕掛けない内にこっちは今後の作戦を練るぞ」

「はい!」

「うん!」

侑斗の案になのはとフェイトも力強く頷いた。

 

「う……うん」

良太郎が意識を回復しながら、閉じていた両目を開くとそこには侑斗、なのは、フェイトの三人がいた。

「侑斗?なのはちゃんにフェイトちゃん?僕は一体……」

意識は回復したが状況は呑み込めていなかった。

「お前、寝すぎだ」

侑斗は呆れながら、良太郎の頭を叩く。

「八神さんは?それにシグナムさん達は?」

良太郎は一番知りたい情報を三人に訊く。

「桜井さんが言うにはその……ヴィータちゃん達は仮面の人に殺されて、はやてちゃんはその……」

なのはも自身が上手く状況をつかめていないためか説明する際の口調に自信がなく、弱弱しい。

「良太郎。はやての事なら見たほうが早いよ」

フェイトが手招きして、『ここからなら見える』というジェスチャーを取って良太郎に見せる。

覗くようなかたちで見てみると、そこには闇意思がいた。

すぐに覗く事をやめて、フェイト達に確認するように訊ねる。

「あれが八神さん?完全に別人になってるんだけど……」

「今はあんな姿だけど、身体は八神だからな……」

「迂闊に攻撃して、身体に直撃したら……」

「はやての身体が持たないかもしれない……」

こちら側にしてみれば、はやてを人質に取られたようなものである。

なのはやフェイトにしてみてもそうなる可能性があると判断してか、攻撃を躊躇するだろう。

四人はもう一度、闇意思の様子を覗き見る。

先程と同じ体勢で全く変更点はない。

「俺と野上は仮面の男を捕まえに行く。お前達はどうする?相手の手の内は全くわからないし、常識が通じる相手とも思えない。正直に言えば戦略的撤退はアリだが……」

侑斗は二人の少女魔導師はどのような判断をするのか訊ねる。

なのはとフェイトは顔を見合わせる。

「わたし、逃げません。どのくらいの事が出来るかわかりませんけど、はやてちゃんを助けるために全力を尽くしたいんです!」

「わたしも逃げない。良太郎やなのはが全てを懸けて、わたしを助けてくれたように今度はわたしがはやてを助けたい!」

二人とも撤退する意思はない。

侑斗は目を丸くしているが、自分にしてみればこの二人がこのように返答するのはわかっていた事だった。

「わかったよ二人とも。でも、一つだけ約束できる?」

了承する代わりに良太郎は二人の目線になるようにしゃがんで条件を呈示する。

二人は怪訝な表情を浮かべる。

「必ず生き残る事。約束できる?」

「「はい!」」

良太郎の条件にフェイトとなのはは真剣にそれで強い眼差しを持って返した。

それからフェイトの探索魔法を用いて、仮面の男を居場所を探り当ててともらい良太郎は侑斗と共に仮面の男がいるビルの屋上へと向かった。

 

 

宇宙旅行が目的なら間違いなく最高の絶景で地球を見下ろしている次元航行艦アースラ。

リンディ・ハラオウンが現在、海鳴市で起こっている出来事を真剣な表情でモニターを見ていた。

「クロノは?」

「既に行ってます!」

リンディの言葉にアレックスが即座に返した。

(今海鳴にいるメンバーでどのくらい持つかはわからないけど、頑張ってもらうしかないわね……)

完全に後手に回っている事に苛立ちを感じながらも、リンディは部下達に表に出さなかった。

 

 

現在は侑斗と二人並んで、目的のビルまで走っている。

その中でケータロスの着メロが鳴った。

良太郎はポケットから取り出しながら、通話状態にさせる。

走る事を中断しない。

「もしもし」

『オウ!俺だ!良太郎!』

「モモタロス、どうしたの?」

『そっちに赤チビ、来てねーか?コハナクソ女が妙だったって言うもんだからよぉ』

「妙?どういう事?」

『俺に喧嘩ふっかけてきたり、怪我も治ってねーのにどっか行っちまったんだよ。オマエ見てねーか?』

「ヴィータちゃんなら見たよ」

良太郎は速度を落としながら言う。

『何所にいたんだよ?』

「さっきまでは僕達と同じ場所にいたけど今はいないんだ……」

現場を目撃したわけではないので、上手く説明できない。

『もしかして、やられちまったのか?』

「……うん」

モモタロスは最悪の予想をぶつけてきた。嘘やごまかしが利くとも思えないので頷くしかなかった。

『で、良太郎。オマエ何所に行く気なんだよ?』

「仮面の男の場所がわかったから侑斗と向かっているところだよ」

『なら、俺達もそこに行くぜ!』

「わかった。デネブも一緒?」

『オウ。誰か捜してる見てーだったから拾った。今全員デンライナーに乗ってるぜ』

「わかった。侑斗にも伝えておくよ」

通話状態を切って、ケータロスをポケットの中にしまいこんだ。

「侑斗、デネブもみんなと一緒にデンライナーに乗ってこっちに向かってるって」

「そうか……」

良太郎の報告に隣で走っている侑斗は首を縦に振って頷く。

目的地のビルまで到着すると、非常階段を手すりを握って焦らずにしかし、できる限り速く上がる。

カンカンカンカンという音が響く。

「なぁ野上」

「なに?どうしたの?」

先頭で上っている侑斗が顔を向けることなく、良太郎に声をかける。

「俺達、『時の運行』を守るために別世界に来たんだよな?」

「珍しいね。僕にそんな事を聞くなんてさ」

侑斗は自分よりもはるかに『時の運行』の重要性を理解している。そんな彼がわざわざ確認するような事を訊ねるのは本当に珍しい事だ。

「いいから答えろ」

「そうだね。僕達は別世界の『時の運行』を守るために来てる。でもそれだけしてればいいってわけでもないでしょ?守りたいものがあるなら、それから逃げずに守るべきだと思うよ。少なくとも僕達には戦う力があるわけだしね」

「……そうだな」

侑斗は良太郎の言葉に納得して迷いを吹っ切ったかのように階段を上る速度を更に上げた。

屋上にたどり着くと、そこには二人の仮面の男が何やら打ち合わせをしていた。

二人に気付かれないように非常階段をしゃがんで様子を伺う。

仮面Aが何やらカードのような物を取り出して、仮面Bが青色の魔法陣を展開していた。

「……かな。あの二人」

「……直前まで持ってほしいものだな」

一仕事終えた仮面Aと仮面Bがなにやら今後の打ち合わせをしていた。

「行くか?」

「そうだね。行こう!」

侑斗が出方を良太郎に伺うが、無防備に近い状態のあの二人を見て今が機だと狙って飛び出して全力で仮面の男達に向かっていく。

「野上良太郎!?」

「もう片方の男も!?目が醒めたのか!?」

表情には出ていないが、二人が狼狽しているのは間違いなかった。

その直後に仮面二人の周囲に魔力光が出現する。

水色の魔法陣が二人の足元に出現し、そこから水色の魔力で構築された縄が飛び出して二人に絡み付いて縛り付ける。

「魔法!?」

「一体誰が!?」

突然仮面二人を拘束した魔法に良太郎は目を丸くし、侑斗は発動者を捜すために周囲を見回す。

「ストラグルバインド。相手を拘束しつつ強化魔法を無効化する……」

もがく仮面二人を見下ろしながら、黒いバリアジャケットに身を包んだ少年---クロノ・ハラオウンがゆっくりと空中から地上へと着陸しようとしていた。

「あまり使いどころのない魔法だけど、こういう時には役に立つ」

両手持ちしていたS2Uを右手のみで持って器用に回転させてから、地に着ける。

すると仮面二人にまた魔力光が発生し、身を包む。

「変身魔法も強制的に解除するからね」

クロノは静かに告げた直後に仮面二人の姿は別の姿になっていく。

仮面をかぶったリーゼ姉妹だった。

被っていた仮面が落ちて、地に転がる。

「これがこいつ等の正体ってわけか」

正体を知った侑斗は足元に転がった仮面を拾い上げて真っ二つに割ってから放り捨てる。

「偶然とはいえ、二人が彼女達の注意をひきつけてくれたおかげで思ったよりも簡単に仕掛ける事が出来たよ。助かった」

クロノが良太郎と侑斗に感謝の言葉を述べた。

「野上。知り合いか?」

「クロノ・ハラオウン、時空管理局の魔導師で執務官。クロノ、こっちは……」

「桜井侑斗。こいつと同業者と思ってくれればいい」

良太郎が紹介を終える前に、侑斗が自己紹介を簡潔にクロノにした。

侑斗とクロノは互いに目を合わせ、軽く頭を下げてからリーゼ姉妹を見る。

「驚かないところをみると、疑っていたんだな?」

「まぁね。グレアムさんと初めて会った時から何か絡んできそうな感じはしていたからね。そしたらリーゼさん達が加入して仮面の男の出現に駐屯地設備のクラッキング。全部を偶然にするにはあまりに乱暴すぎるからね」

「言われてみれば確かにそうだ。偶然で片付けるにはあまりに出来すぎているな」

良太郎の説明にクロノは納得した。

「あいつ等、やっと来たみたいだな……」

侑斗は空を見上げている。

良太郎とクロノも釣られるように見上げると、聞き覚えのあるミュージックフォーンを鳴らしながらデンライナーがこちらに向かって宙に線路を敷設・撤去の工程を繰り返していた。

デンライナーが停車するとモモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、デネブが降車した。

「みんな……」

良太郎は降車した面子を見て、安心感を得る。

「侑斗!八神が突然いなくなって!」

デネブが慌てて侑斗の元まで走り寄って事態を説明した。

「落ち着けデネブ!八神の事は直に見たから粗方の事はわかってる……」

侑斗はデネブを落ち着かせる。

「こんな魔法、教えてなかったんだけどな……」

アリアが縛られながらもクロノを睨んでいる。

ロッテはクロノを睨んでから、一瞬だけ良太郎を見たが全身を震わせて目を逸らす。

「一人でも精進しろと教えたのは君達だろ……」

クロノは顔を上げてはいるが、辛そうな声を出していた。

「クロイノ。コイツ等どうすんだよ?」

モモタロスがリーゼ姉妹の処遇をクロノに訊ねる。

「本局に連れて行く。グレアム提督にも聞きたいことがあるからね」

「提督さんに聞きたいことって何?もしかして今回の動機でも聞くつもり?」

ウラタロスはクロノがギル・グレアムに訊ねる内容を予測する。

「動機やったら今更訊ねんでも大体はわかっとるんやろ?クロイノ」

キンタロスの台詞にクロノは首を縦に振る。

「大体はね」

「ねぇ。このネコさん達って、なのはちゃんやフェイトちゃんをいじめたんだよね?やっていーい?」

リュウタロスはいつものような明るい声ではなく低い声でリュウボルバーを構えて、リーゼ姉妹に銃口を向けていた。

「待ってくれリュウタロス。そんな事したら君を捕まえなければいかなくなる」

「ちぇー」

クロノの言葉にリュウボルバーを引っ込めるリュウタロス。

単純に『捕まる』という言葉に反応しただけの行動だろう。

「良太郎。桜井侑斗。貴方達はどうする?」

「僕はフェイトちゃん達と合流するよ」

「戦うのか?イマジンや貴方が戦ってきた魔導師達とはまるで違うぞ」

「あの子達が勇気を振り絞ってるんだ。僕達だけ隠れるってわけにはいかないじゃない」

良太郎は笑みを浮かべてから、すぐさまフェイト達がいる方向に視線を向ける。

「アイツ等においしーとこ持っていかせるわけにもいかねぇからな」

両掌をパンパンと鳴らしながら、戦闘意思を剥き出しにするモモタロス。

「女の子二人が前線に立って、僕達が後ろで胡坐かいて待機なんてカッコ悪すぎでしょ」

お決まりのポーズを取って参加表明するウラタロス。

「子供だけに危ない思いはさせへんで!」

親指で首を捻ってから腕を組むキンタロス。

「行こう!なのはちゃん達助けに!」

リュウタロスも首を縦に振ってから、格好だけだがリュウボルバーを構える。

「わかった。彼女達の事は僕に任せてくれ」

クロノが良太郎達の覚悟を聞き、リーゼ姉妹を本局に転送しようとする。

「待ってくれ。ハラオウン」

転送しようとするクロノを侑斗が止めた。

「ん?何か?」

「俺とデネブも同行させてくれ」

「侑斗?」

侑斗の申し出にクロノとデネブは目を丸くする。

「貴方は良太郎達と違って『協力者』ではなく、僕達側からすれば『容疑者』扱いになるぞ。その場合、貴方を拘束しろという僕の上司が命じた場合、僕は貴方を拘束しなければならなくなる。それでもいいか?」

「ああ、わかった。その条件を呑んでやる」

「ありがとう。ハラオウン」

侑斗とデネブはクロノの条件を呑む事にした。

「野上、八神を頼むぞ。俺達も後から必ず向かう」

「わかった。最善を尽くすよ」

良太郎がそのように返した直後に、侑斗、デネブ、クロノ、リーゼ姉妹の姿が消えた。

 

闇意思は空中でこちらの様子を伺っていると思われる二人の少女に狙いをつけた。

「デアボリックエミッション……」

闇意思が発すると、かざしている右手に肥大している黒光りの魔力球が収縮していく。

「あっ!」

「空間攻撃……」

その手口を見て推測するフェイト。

「闇に染まれ……」

闇意思が呟くと同時に収縮した魔力球はその場を侵食するようにしてじわーっと広がっていく。

なのはが危険を察知し、フェイトの前に立って右手を前にかざす。

『ラウンドシールド』

レイジングハート・エクセリオンが電子音声を発すると、なのはのかざした右手に桜色の魔法陣が展開される。

飲み込むように襲い掛かってくる黒い空間が桜色の魔法陣にぶつかる。

「くっううう!!」

なのはが精一杯踏ん張る。

「なのは、頑張って!」

フェイトの現在の状態では防御力は皆無なので下手に動く事も出来ないので、サポートに回る事も出来ない。

黒い稲光が二人の横を走る。

バチバチバチという音が二人の耳に入る。

飲み込まれながらも、なのはは防ぐ事をやめない。

解いたところで自分達に利があるとは思えないからだ。

二人を呑み込んだ魔力球は更に肥大し、土星の環のような黒い環が魔力球を囲っておりまるで一つの小さな天体のような姿を象っていた。

黒い魔力球が完全に消滅すると、そこになのはとフェイトの二人の姿はなかった。

(隠れたか……)

表情を変えることなく、最善の策と思って取ったと思われる行動を闇意思は予測した。

 

闇意思がいるビルから少し離れたビル---仮面二人がいると探知したビルに二人は移動していた。

そこには、チームデンライナーのみがいた。

侑斗もデネブも仮面二人の姿はなかった。

「一筋縄でいく相手じゃないね……」

良太郎もこの位置からあの小さな天体を目にしているので、威力はわからないが今まで自身が戦った相手とは明らかに攻撃方法が違うと感想をもらした。

「痛ぅ……」

なのはが右手を押さえていた。

「なのは、ごめんね。大丈夫?」

フェイトが感謝と同時に謝罪をする。

「うん。大丈夫」

「あの子、広域攻撃型だね。避けるのは難しいかな……。バルディッシュ!」

仕掛けられた一手でフェイトは相手の戦闘スタイルを推測する。

『イエッサー』

バルディッシュ・アサルトがフェイトの命に従い、バリアジャケットを普段のスタイルに戻した。

「広域攻撃ってのは一回の攻撃で多数にダメージを与える事が出来ることでいいのかい?」

ウラタロスが自身の解釈をフェイトに確認する。

「そうだね。わかりやすいし、それで十分通じるよ」

フェイトが満足して頷いていた。

「みなさーん!!」

「おーい!!」

こちらに向かって、声を上げながらユーノ・スクライア(人間)とアルフ(人型)が飛行でこちらに寄ってきてからビルに着陸した。

「フェレット君とワンちゃん。戦いに来たの?」

リュウタロスの質問に二人は首を縦に振った。

「数で何とかなるって相手じゃねーいなぁ。何たって一回で何人もぶちのめせるなんてよぉ。俺達にとってフルチャージしてやっとの事を当たり前のようにポンポン出しやがるんだからなぁ」

モモタロスは相手の攻撃方法が自分達と極めて相性がよくないと思っている。

「相手は間違いなく空も飛んでくるから俺等がそれぞれ変身したり、良太郎に憑いて戦うっていういつもの方法も使えんもんなぁ」

キンタロスが戦闘のスタイルもかなり限定されると告げる。

「空を飛んで戦うとなると、デンバードⅡの出番になるよね。アレって一人乗りだからてんこ盛りか良太郎のスタイルで戦うかしかなくなってくるよね」

ウラタロスがキンタロスの内容を発展させながら冷静に分析する。

「てんこ盛りで行こう。短期決戦になるか長期戦になるかはわからないけど、今の僕達の中で一番強い状態だからね」

良太郎は自身のライナーフォームではなく、イマジン四体が表面に出易いクライマックスフォームを選択した。

「そうと決まりゃ、早速やるぜ!テメェ等ぁ!!」

モモタロスの一声にウラタロス、キンタロス、リュウタロスはそれぞれ返事する。

良太郎はケータロス装着型のデンオウベルトを出現させて、カチリと腰に巻く。

ズボンのポケットからパスを取り出す。

「変身!」

ターミナルバックルにセタッチする。

『クライマックスフォーム』

デンオウベルトが発すると同時に、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスはそれぞれ実体からエネルギー体へとなって、それぞれの電仮面の姿へとなって宙に存在して、デンレールが通常のプラットフォームより多く施されているプラット電王の周りを浮いている。

プラット電王に赤色が目立ち、胸部にターンブレストが施されているオーラアーマーが装着されると、それぞれの電仮面が所定の位置へと装着されていく。

右肩に電仮面ロッド、左肩に電仮面アックス、胸部に電仮面ガンが装着されていく。

そして、頭部に電仮面ソードが装着されてクライマックスフォーム用に電仮面が更に展開された。

「俺達!参上!!」

モモボイスを発して、ソード電王お決まりポーズを取ってクライマックス電王がその地に立った。

「小僧!」

「わかってるって!」

クライマックス電王が電仮面ガンに向けて指示すると、リュウボイスを発して右手で何がしかのサインを送ると、デンバードⅡがモード2で自動で空を走ってきて、クライマックス電王の側でモード1に戻る。

風が吹き、それがただの風ではないとそこにいる誰もが感じた。

「前と同じ閉じ込める結界だ!」

アルフがいち早く皆に告げる。

「わたし達を狙ってるんだ……」

「今クロノが解決法を探しています。援護も向かってるみたいですけど何分時間が……」

「それまで、わたし達で何とかするしかないか……」

「うん!」

フェイト、ユーノ、アルフが状況を整理して今後の方針を打ち立てた。

「おい、なのは。何ボーっとしてんだよ?」

クライマックス電王がモモボイスを発しながら、一言も発しないなのはの肩に手を置く。

「ふえ?あ、すみません……」

なのはは我に返って謝罪する。

「百科事典の持ち主の子の事を考えてたの?」

ウラボイスでなのはが呆けていた理由を訊ねる。

右肩が風で煽られているわけでもないのに揺れていた。

「……はい」

なのはは素直に首を縦に振る。

「気持ちはわからんでもないで。でもまずは自分の身を守る事が大事やで」

キンボイスで諭す。左肩が揺れていた。

「そう……ですよね」

なのはは無理にでも現状を受け入れようとする。

下手な躊躇は自分はおろか仲間を犠牲にするかもしれないからだ。

「頑張って友達助けようよ。なのはちゃん!」

最後にリュウボイスで発破をかけた。その度に胸部が上下していた。

「うん!」

なのはの瞳に先程よりも更に強い意思が宿っていた。

「さぁて、始めっぞ。オメェ等ぁ!!」

デンガッシャーをDソードに連結させて、デンバードⅡをモード2に変形させてからクライマックス電王は乗っかった。

魔導師四人もクライマックス電王と同じ方向を睨んでいた。

 

 

時空管理局本局の塵一つ埃一つない廊下を侑斗、デネブ、クロノがS2Uを構えてリーゼ姉妹を連れて歩いていた。

デネブが物珍しそうに周囲を見回していた。

「あんまりキョロキョロするなよ」

侑斗としても状況が今でないなら、ゆっくりと見学したかったのだが今はそういうわけにはいかない。

「ごめん」

デネブは注意されてすぐに止めた。

「桜井侑斗。提督と会う前にひとつだけ約束してほしい事がある」

「何だよ?」

隣で歩いているクロノが見上げるかたちで侑斗を見ていた。

「貴方がこれから何をやらかそうが一回は見なかったことにする。でも、それ以後は見逃すわけにはいかない。約束できるか?」

「……わかった。でも何でわざわざ俺にそんなことを言うんだ?」

「貴方の怒りは僕や提督では理解できないものだろう。恐らく『闇の書』の主やその守護騎士を『身内』や『家族』として見たのは貴方達が初めてだろうからな……」

「………」

ドアがピシュンという音を立てて開くと、そこにはギル・グレアムが座っていた。

「来たか……」

グレアムが予期していたかのような口調で来訪者達を迎え入れた。

(こいつが八神の『あしながおじさん』で八神の人生を閉じようとした張本人か……)

グレアムを一瞥してから、侑斗とクロノは向かいのソファに座る。

デネブは着席せずに立ったままだ。

リーゼ姉妹はグレアムの背後に移動していた。

「リーゼ達の行動は貴方の指示ですね?グレアム提督」

わざわざ聞くほどの事でもないが、クロノは確認のために訊ねる。

「違う!クロノ」

「私達の独断だ!父様には関係ない」

ロッテとアリアがあくまで自分達が勝手にしたと言い張る。

「あんたはどう思ってるんだ?グレアム」

侑斗はリーゼ姉妹の言葉を流し、吹き荒れる感情を必死で押し殺しながらもグレアムの言葉を待つ。

「ロッテ、アリア。もういいんだよ」

グレアムは観念したのか、潔かった。

「クロノもそちらの人も粗方のことは掴んでいる。違うかい?」

クロノは黙ってしまう。

「俺が知ってる事は野上が教えてくれた事だけだ。『闇の書』の封印方法なんかは正直門外だから殆ど知らない」

侑斗がグレアム関連で知っているのは良太郎が提供した情報の範囲まででしかない。

良太郎が『闇の書』の封印方法などを調べたわけではないので情報が入手できなかったのだ。

「十一年前の『闇の書』事件以降、提督は独自に『闇の書』の転生先を調べていましたね……」

クロノが淡々と告げる。

「そして発見した。『闇の書』のありかと現在の主を」

宙にモニターが出現して、『闇の書』と八神はやてが映し出されていた。

「それが八神ってわけか……」

侑斗の言葉にクロノは首を縦に振る。

「しかし、完成前の『闇の書』と主を押さえてもあまり意味がない……」

「何故だ?」

侑斗にしてみても疑問に感じていた事だ。

『闇の書』の所在と主が判明しているのにすぐに攻めないのはどう考えてもおかしい。

泳がせる事で何か理由があるのではないかと勘繰ってしまう。

「主を捕らえようと『闇の書』を破壊しようとすぐに転生してしまう『転生機能』があるからね」

「つまり、普通の方法でやっていては永遠に追いかけっこしなきゃいけなくなるってワケだな?」

クロノの解説を聞いた侑斗は納得しながら独自の解釈を述べ、グレアムが弱弱しくその解釈に首を振る。

「だから監視をしながら『闇の書』の完成を待った……」

グレアムもリーゼ姉妹も何も言わない。

「あんた達。その様子からすると封印方法ってやつを見つけたんだな?」

侑斗はグレアムに鋭い眼差しを向ける。

「両親に死なれ、身体を悪くしていたあの子を見て心が痛んだが運命だとも思った……」

グレアムがモニターに映っているはやてを見ながら、呟く。

「運命、だって?」

侑斗の眉がピクリと動き、彼の纏っている雰囲気が変わりつつあった。

「孤独な子であればそれだけ悲しむ人は少なくなる……」

「少なくなる、だって?」

侑斗の両手がプルプルと震えていた。

「彼女の父親の友人と偽って生活援助をしていたのも提督だという事はわかっています」

クロノは、はやてとヴォルケンリッターが写っている写真をグレアムに見せた。

「永遠の眠りにつく前くらいはせめて幸せにしてやりたかった。偽善だな……」

「!!」

グレアムが言った直後に、侑斗はソファから立ち上がって右拳をグレアムの左頬に食らわせていた。

勢いは殺されず、グレアムはソファごと後ろへ倒れてしまった。

「はあはあはあ……はあはあ……はあ……」

「侑斗!!」

「父様!」

「あんた!いきなり何するんだ!?」

アリアがソファとグレアムを起こそうとし、ロッテが侑斗を睨んでいた。

「……黙れ」

侑斗は負けじと睨み返す。

デネブはいきなりの行動であたふたするしかなかった。

それだけでロッテは金縛りを食らったかのように動けなくなってしまう。

「早く起きろよ。あんたには言いたい事があるんだからな」

侑斗は立ったまま、グレアムを急かす。

グレアムは立ち上がって、口から出ている血を拭わずに侑斗を見ている。

「運命って言ったよな?それはあんたの運命であって八神じゃない。だから八神が巻き込まれる理由はない」

グレアムの胸を抉るような一言だ。

「悲しむ人は少ないって言ったよな?ゼロじゃないだろ。俺が知る限り八神が死んで悲しむ人間は五人以上いる」

さらに抉る一言を放つ侑斗。

グレアムは何も言わない。正確には言い返せないのだろう。

「永遠の眠りにつく前くらいはせめて幸せにしてやりたかったって言ったよな?どこが幸せなんだよ!あいつ完全に絶望の中じゃないか!!」

「………」

グレアムは完全に言い返せなくなった。

「で、『闇の書』の封印方法ってのはどうやるんだよ?八神の人生に強引にピリオドを打たせるんだ。褒められた方法じゃないんだろ?」

「封印の方法は『闇の書』を主ごと凍結させて次元の狭間か凍結世界へ閉じ込める。そんなところだろう」

クロノがグレアムが立てたプランを推測して打ち明けた。

どちらのプランも、主であるはやてを犠牲にする事前提なので褒められたものではない。

「その方法を用いれば『闇の書』の転生機能は働かない……」

グレアムの一言にクロノはやりきれない表情をしていた。

「これまでだって『闇の書』の主をアルカンシェルで蒸発させてきたりしたんだ!それと何も変わらない!」

「クロノ、今からでも遅くはない。私達を解放して。凍結がかけられるのは暴走が始まる瞬間の数分だけなんだ」

ロッテとアリアが前線に出ようとする。

「それじゃ今までと何一つ変わらない。あんた達が行けば八神が死ぬとわかってる以上、俺とデネブが黙っていかせると思ってるのか?」

侑斗は凄み、デネブは両指を拳銃のようにしてリーゼ姉妹に向ける。

「彼の言うとおりだ。それにまだその時点で八神はやては永久凍結をされるような犯罪者ではない。違法だ」

クロノは取り乱すことなく、リーゼ姉妹に告げる。

「そのせいでそんな決まりのせいで悲劇は繰り返されてんだ!クライド君だってあんたのお父さんだってそれで……」

「ロッテ」

グレアムがロッテを窘める。

「死んだ人間を引き合いに出すなよ。それにハラオウンの父親がらみであんた達が今回の事をしたのならそれは筋違いだ。復讐する権利があるのはあんた達じゃない。それが出来るのはハラオウンだけさ。でもそのハラオウンが復讐する意思がない以上、あんた達にできる事は何もない」

侑斗はそう告げてから背を向けて部屋を出ようとする。

デネブも頭を下げてから、侑斗についていく。

「行くのか?」

「ああ」

クロノの問いに侑斗は短く答える。

それから侑斗はグレアムを一瞥する。

「グレアム。あんたは八神が『闇の書』と共に一生を終えることが運命だと思ってるかもしれないが、俺は八神が『闇の書』の運命を変えることがあいつの運命じゃないかと思ってる」

最後にそのように告げると、侑斗は部屋を出た。

クロノは後姿を見送るとソファから立ち上がり、窓際へと移動する。

「法の他にも提督のプランには問題があります。凍結の解除はそう難しくはないはずです。何所に隠そうとどんなに守ろうと、いつかは誰かが手にして使おうとする。怒りや悲しみ、欲望や切望、その願いが導いてしまう。封じられた力へと……」

クロノは淡々と告げる。

グレアムは一言も反論しない所からすると、心当たりがあるのだろう。

「現場が気になりますので失礼します」

クロノは部屋を出ようとする。

「アリア、デュランダルを彼に」

「父様?」

「私達にもうチャンスはないよ。それにこれ以上私達が出張れば間違いなく先程の彼が潰しにかかるだろう」

侑斗に殴られた痛みを思い出したのか頬を押さえているグレアムの言い分を聞きながら、アリアはクロノに白がメインカラーとなっているカードを渡した。

 

「どう使うかは君に任せる。『氷結の杖』デュランダルを」

 

クロノは凝視しながらグレアムから手にした。




次回予告


第五十話 「黒い宴」
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