仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第五十一話 「夢の戦い。現実の戦い。前編」

スターライトブレイカーが発射され、桜色の余波がドーム状に結界内を覆う後景を別の方角で避難していたユーノ・スクライアとアルフが見ていた。

「改めてみるとゾッとするね……」

アルフは心底食らわなくてよかったと思いながらも、主であるフェイト・テスタロッサの無事を祈らずにはいられなかった。

(なのは。なのは!大丈夫!?)

ユーノが必死な表情で念話で高町なのはに呼びかける。

(う、うん。何とか大丈夫。フェイトちゃんとモモタロスさん達で何とか防ぎきったよ……)

なのはが答えてくれた。

(それでねユーノ君。アリサちゃんとすずかちゃんが結界内に逃げ遅れてるんだ)

(わかった。エイミィさんに伝えるよ)

ユーノはなのはが何を言いたいのか理解できたので、すぐにアースラでバックアップをしてくれているエイミィ・リミエッタに要請した。

(ごめんねユーノ君。もう一つワガママ言っちゃうけど二人の方を守ってあげてくれないかな……)

なのはとしてみればエイミィによって転送されたアリサ・バニングスと月村すずかの安否が気がかりで仕方がない。

隣でアルフが主のフェイトと念話で自分となのはと同じ様なやり取りをしているのだろうと推測した。

(わかった。なのはも気をつけてね)

(うん)

ユーノは念話の回線を切った。

「アルフ、行こう」

「でもユーノ!」

アルフとしては主を放置していくのは抵抗がある。

「気がかりがあったら二人が思いっきり戦えないんだよ」

ユーノは平静を装いながらもアルフを諭しはじめる。

「最強形態といってもいい状態の電王となのはとフェイトの三人がかりの攻撃を簡単に受け切っているんだ。ハッキリ言って僕達は足手まといだよ。せめてできる事といえば、なのは達が思いっきり戦えるようにすることじゃないかな?」

「う……うん」

アルフとしてはそう言われると、言い返せない。

ユーノの拳はぷるぷる震えていた。

「ユーノ。アンタ……」

「……行こう。アルフ」

アルフが気付き、何かを言おうとしたがユーノは背を向けて夜空を駆けていた。

 

 

クライマックス電王はDソードを正眼に構えて、対面にいる三体のイマジンの出方を伺っていた。

まだ先程のダメージが抜け切っていない。

その証拠に身体全身から煙がぶすぶすとたっていた。

「いかに電王といえどダメージは蓄積されていますね。いい傾向です」

キリン型イマジン---ジラフイマジンが冷静に分析していた。

「だったらダーリンのためにもさっさとやっちゃいましょ!」

オネエな言葉を話すシマウマ型イマジン---ゼブライマジンがジャブとストレートを繰り出してファイティングポーズを取っていた。

「そう急くな。相手は幾多のイマジンを葬ってきた電王だぞ。今までの戦い方をしてもやられるのがオチだ」

ゴリラ型イマジン---ゴリライマジンが胸元でどんどんと両腕で叩きながら言う。

「では我々のやり方でいきましょう」

ジラフイマジンが先頭に立ち、中央にゴリライマジン、後衛にゼブライマジンという陣形を組んでいた。

「三匹まとめて串刺しにする手間が省けて助かったぜ!」

両手持ちを片手に替えて、Dソードをジラフイマジンの左肩---袈裟に向かって振り下ろす。

ぶぉんという音を立てて切りつける事に成功したかに見えた。

「いい一撃ですね。並みのイマジンならば確実にダメージを負わせることが出来たでしょう。だが……」

めり込んでいるオーラソードを肩を上げることで押し上げた。

「おわっ!?」

普段ならば踏ん張れるのだが、両足がふらついて後方へと退がってしまう。

「我等三体は……」

クライマックス電王と向き合っているのはジラフイマジンではなく、ゴリライマジンになっており右拳を大きく振り上げ、一直線に放つ。

「ごわあぁ!!」

クライマックス電王の顔面に直撃し、不意打ちに近いので防御も間に合わず後方へと吹っ飛ばされた。

足も地面から離れ、完全に浮遊していた。

ダダダダダダダダという音が聞こえてくる。

「倒せないわ……よぉ!!」

ゼブライマジンが走って、吹っ飛ばされているクライマックス電王に追いつき、右足を振りかぶってサッカーボールを蹴る様にして背中を蹴り上げた。

「ごふぅ!!」

クライマックス電王は本人の意思とは関係なく空中へと飛ばされていく。

ゼブライマジンはそれに追いつくように最寄のビルの壁を走り、そのままクライマックス電王に向かって跳躍する。

「ダーリンのためにも死んでもらうわよ!電王!!」

右肘を構えて、クライマックス電王の鳩尾に狙いをつけて叩き付けた。

「○×□△!!」

声にならない声をあげながら、地上へと落下した。

受身の態勢も痛みのせいでとることもできない。

ドォォォォォンという音が鳴り響くと、仰向けになっている電王を基点にして小規模なクレーターが出来上がっていた。

三体のイマジンがクレーターの外から見下ろしていた。

「本調子でないにしろ呆気なすぎますね……」

「いーじゃない。ダーリンの手を汚す必要もないわけなんだし」

「確実に葬ったという感触が今ひとつだ。油断するな」

ジラフイマジンが見下し、ゼブライマジンが自身の上司の手を汚すまでもないと喜び、ゴリライマジンが警戒をしていた。

「あの三匹め!好き勝手ぬかしやがってぇ!!」

クレーターの中心でモモボイスでクライマックス電王が叫んだ。

「センパイ。今の状態で言ってもただの負け惜しみだよ?」

右肩を揺らしながらウラボイスで言う。

「モモの字。言われっぱなしでええんか!?早よ立たんかい!!」

左肩が激しく揺れている。

「早く立て~!モモタロス!」

胸部も激しく揺れる。その度に背中が浮いたり地面に当たったりと微妙にダメージを受けていたりする。

「テメェ等に言われなくたって、アイツ等をバーベキューにするまで簡単にくたばりゃしねぇよぉぉぉ!!」

右膝に右手を置いて、ゆっくりとぐぐぐという音が聞こえてきそうな感じで立ち上がろうとする。

(相手は今までのイマジンみたいに力任せでは来ない。こっちも対策を考えないとさっきの二の舞になっちゃうよ)

深層意識の野上良太郎が先程の戦闘から得た事をクライマックス電王に告げる。

立ち上がったクライマックス電王は見下ろしている三体のイマジンを睨み返す。

「三体まとめて一度に片付けるか、一体ずつ各個撃破するかどちらかしかないね」

「しかも一体ずつ倒すにはさっきの技をさせへんためにも、それぞれをバラバラの位置にしとかなアカン」

「どれから倒す~?僕あのシマウマがいい!」

右肩、左肩、胸部の意見に耳を傾けている。

「小僧に一票だぜ!」

クライマックス電王は最初のターゲットを選ぶとDソードを左手に持ち替えて、右手をかざしてサインを送る。

デンバードⅡが命じられるようにして、走ってきた。

グリップの側にあるボタンを押すと、モード1からモード2へとスライド変形した。

デンバードⅡの上に乗っかると、反応するようにしてキュィィィィンという音が鳴り出す。

ゼブライマジンに向かって、デンバードⅡを加速させる。

弾丸のように真っ直ぐゼブライマジンに向かっていく。

デンバードⅡの前輪が触れて、ゼブライマジンを撥ね飛ばす。

「よくもやってくれたわね!」

ゼブライマジンが起き上がって、こちらを睨んでいる。

クライマックス電王は左手でくいっくいっと挑発する。

「来いよ?遊んでやるぜ」

言った直後にデンバードⅡを滑らせた。

「待ちなさい!!」

ゼブライマジンが単体で追いかけてきた。

こちらの思惑にまんまと乗ってくれたという事だ。

 

 

『なのはちゃん、フェイトちゃん。クロノ君から連絡。『闇の書』の主にはやてちゃんに投降と停止を呼びかけてって!』

アースラから現場をモニターしているエイミィ・リミエッタが現場にいるなのはとフェイトに今後の方針を告げた。

なのはとフェイトは首を縦に振る。

(はい!)

なのはは念話の回線を開いて、エイミィに了承の返事を返した。

そして、二人は両目を閉じて闇意思に対して、念話の回線を開く。

(はやてちゃん。それに『闇の書』さん。停まってください!)

空中に佇んでいる闇意思に声をかけることにした。

(ヴィータちゃん達を傷つけたのは、わたし達じゃないんです!)

なのはは真実を打ち明けた。

実際、ヴィータとザフィーラが葬られる際には自分達はクリスタルケージの中に閉じ込められていたのだから。

(シグナム達とわたし達は……)

フェイトもなのはに続くように真相を打ち明けようとする。

「我が主は、この世界を自分の大切なものを奪った世界を悪い夢であってほしいと願った……」

闇意思がフェイトの言葉を遮るように淡々と告げた。

「我はただそれを叶えるのみ」

闇意思は瞳を閉じていた。

 

 

海鳴市の夜空の一部が歪み始め、空間が発生した。

緑の牛の頭が先頭車両になっている『時の列車』---ゼロライナーだ。

クロノ・ハラオウンと共に転送ポートで移動してもよかったのだが、融通が利くのはゼロライナーなので次元空間に呼び寄せて乗車してここまで来たというわけだ。

「ようやく戻ってきたな」

「でも八神が心配だ……」

一両目のモニターで海鳴市で起こっている全貌を見ている桜井侑斗とデネブはあのように変わってしまった八神はやてが気がかりだった。

「ん?あいつ……」

侑斗はモニターに映っている一人の少年に目を向けた。

隣には自分と同年代くらいでザフィーラの女性版がいた。

「デネブ。針路変更だ」

「了解!」

侑斗の指示にデネブはゼロライナーの進路を変更した。

敷設されている線路は変更された方向に向かっていった。

針路を変えたゼロライナーは一人の少年と一人のザフィーラ女性版の元へと向かっていき、二人の側で停車した。

「お前も魔導師だとは驚いたよ。スクライア」

一両目のドアを開いて、侑斗が空中で佇んでいるユーノに声をかけた。

「侑斗さん!?それにその乗っているモノって『時の列車』ですか!?」

ユーノも大きく目を開いて、目の前に映るものに驚愕の表情を浮かべている。

「ああ。色々とお前には説明してやりたいんだが時間がない。単刀直入に聞くが今はどういう状況になっているんだ?」

侑斗は真剣な表情でユーノに訊ねる。

「今は、なのはとフェイトが彼女に説得を試みているところです」

ユーノが闇意思を『彼女』と呼んだのは彼なりの気遣いだろうと侑斗は判断した。

「高町とテスタロッサが説得!?」

今度は侑斗が目を丸くしていた。

「アンタ、何でそんなに驚いてるんだい?」

アルフが怪訝な表情をしている。

「グレアムの使い魔が何に化けて八神を追い詰めたと思うんだ?」

侑斗とてその現場を直に見たわけではない。

泣き崩れるはやてと外見はそっくりだが、微妙に衣装が違い纏っている雰囲気が違うなのはとフェイトを見て自身が推測しただけだ。

「高町とテスタロッサに化けてたんだぞ」

侑斗の答えにユーノとアルフは驚愕の表情を浮かべるしかなかった。

「それじゃ今、なのはとフェイトが説得なんかしたら……」

「火に油を注ぐようなものだ」

ユーノの言葉に侑斗は結論を述べるしかない。

クロノ・ハラオウンが最善と思って考えた策が実は最悪の事態を招くなんて誰が想像できるだろう。

「侑斗さんはこれからどうするんですか?」

「八神のところに行く。あいつが外からの声を応じるかどうかはわからないがやるだけやってみる」

「なのはとフェイトじゃ無理って言ってたけど、アンタだったら上手くいくのかい?」

「わからない。だからやるだけやってみるって言ったんだ」

侑斗はユーノとアルフに背を向けた。

ゼロライナーのドアが自動で閉じた。

その直後、ゼロライナーは針路を戦場へと変えて車輪を回し始めた。

 

 

夜空に佇んでいる闇意思を見上げながら、地上にいるなのはとフェイトは説得を試みていた。

「主には穏やかな夢の内で永久の眠りを……」

闇意思は胸元に右手を当てて、はやての現状らしき事を告げる。

「そして、愛する騎士達を奪った者達には……」

閉じていた両目を闇意思は開き、胸元に当てていた右手を前にかざす。

 

「永久の闇を!」

 

足元に三角形の形状をした黒い魔法陣が展開された。

(完全に聞く耳を持ってくれない。あの口振りからして、はやては生きているとは思うけど……)

フェイトは闇意思を睨みながらも、『永久の眠り』という言葉が引っかかっていた。

(『眠り』といってもただ寝ていると考えるのは楽観的すぎるかな……)

『眠り』という表現には、『生』と『死』での捉え方がある。

『生』とはフェイトが考えている『睡眠』だ。つまり、自発的に起きるか外部の干渉で目覚める可能性がある。

逆に『死』とは『永眠』の事を差す。死者はいくら叩き起こしても決して起きない。

「『闇の書』さん!」

なのはが闇意思に行動を思いとどまるように、力いっぱい叫ぶ。

 

「……お前もその名で私を呼ぶのだな」

 

対して闇意思は一瞬だけ寂しげな表情を浮かべてから、なのはに対して落胆のこもった台詞を吐いた。

「!!」

なのはは自分が大きな失敗をしてしまった事に気付いてしまった。

意思ある者の名前を間違えるなど、説得をする上では一番してはならない事だ。

もしかしたら、本来の名を間違えずに続けた場合上手くいったかもしれない。

だが、それらは全て先程の発言でなくなってしまった。

日常生活なら『九歳の少女の失敗』として笑って済まされるかもしれないが、今のなのはは『民間協力者の魔導師』であるため大きなミスといってもいいだろう。

地面が割れ、茶色の巨大な生物の尻尾やら触手のようなものが出現した。

尻尾らしきものは天に昇りながら、ビルをぶち抜く。

触手がウネウネと動き出して、なのはとフェイトの虚を衝くようにして向かっていき複雑に纏わりつきながら二人の自由を奪った。

闇意思は左手に浮いている『闇の書』のページを開いた。

(フェイトちゃん……。ごめんね。わたしのミスで……)

(なのは。今はそんなことよりもこの状況をどうにかしないと……)

なのはとフェイトは念話の回線を開き、動きを封じられながらも対策を練る事にした。

 

 

「待ちなさーい!!」

海鳴道路をゼブライマジンは車さえも撥ね飛ばすような勢いで両脚の力を十二分に駆使して、駆けていた。

「あのオカマ野郎。一匹できやがったぜ」

ゼブライマジンのはるか前方をデンバードⅡを駆って先行しているクライマックス電王は後ろを向いて、モモボイスを発しながら作戦通りに事が運んでいる事を確信した。

「そろそろUターンだね」

右肩が揺れ、ウラボイスを発してからデンバードⅡをスケボーのようにして、百八十度向きを変えてターンする。

「おっしゃああ!!特攻や!!」

「行け行けぇぇぇぇ!!」

左肩と胸部が揺れて、キンボイスを発してからリュウボイスを発して、デンバードⅡは向かってくるゼブライマジンへと突っ込んでいく。

「食らえ!オカマ野郎ぉぉぉぉぉ!!」

デンバードⅡの速度を更に上昇させて、ゼブライマジンへと向かっていく。

「こ、こんなの無理よぉぉぉぉ!?」

断末魔の悲鳴にしては間抜けだが、ゼブライマジンはデンバードⅡの突進を避ける事も出来ずに直撃して

右斜めへと吹き飛んでビルに直撃した。

バカァンとビルの壁に穴が開いた。

(かなり飛んだね……)

深層意識の良太郎が率直な感想を述べた。

「それで倒れるタマならあんな大口叩くとも思えないね」

ウラボイスで相手がまだ死んでいないことを予想する。

「来たで」

キンボイスで警告する。

「あれ?何か凄い勢いで来てるんだけ---」

リュウボイスで迫り来るモノを言おうとする前に、クライマックス電王は後方へと吹っ飛んだ。

デンバードⅡは主がいないために、モード1へと自動変形する。

ドコォォンという音が立ってビルに突っ込み、視界を奪うようにして破壊されたコンクリートの粉が宙を舞う。

「あのオカマ野郎!とんでもねぇ速さじゃねぇか!?」

クライマックス電王は自分をビルに吹っ飛ばした原因であるゼブライマジンを睨みながら起き上がっていた。

「あのイマジン。『速さ』だけなら間違いなく僕達より上だね」

ウラボイスで冷静に相手を分析する。

「カメの字の言うとおりやな。しかもあのイマジン。走ったりする『速さ』だけやない。あらゆる『速さ』が桁外れやで」

あらゆる速さ。つまり拳を繰り出す速度、蹴りを繰り出す速度。攻撃を見切って対処する速度。標的を捉える速度などのことだ。

「どうすんのー?僕達あんなミサイルみたいな速さ出ないよー」

リュウボイスでぼやく。

(モモタロス。ひとつ確かめたい事があるんだ)

「何をだよ?良太郎」

(次にあのイマジンが突進してきたら、軽くでいいから手か足を出してほしいんだ)

「攻撃じゃねぇのかよ?」

(うん。攻撃じゃなくていいから、軽く出してくれればいいから)

深層意識の良太郎がクライマックス電王に打診する。

「わーったよ。それで何かわかるんだったら後でちゃんと教えろよ?」

(わかってる)

クライマックス電王はゼブライマジンの前に立つ。

「さすがにタフね。ダーリンが警戒するだけの事はあるわね」

「ダーリン?」

ウラボイスで訊ねるが、ゼブライマジンは答えない。

その代わりに、腕立て伏せに近い態勢になる。

「答えないわよ。その代わり、コレをプレゼントしてあげる……」

ゼブライマジンの両脚に力が入る。

「わ!!」

カタパルトから射出されるような加速力でクライマックス電王へと向かっていく。

Dソードを左手に持ち替えて、右手で払いのけるような仕種を取る。

ゼブライマジンのタックルをかわすように思えたのだがクライマックス電王が後方へと飛ばされた。

先程開けられた穴にもう一度突っ込もうとするが、バック転の要領で回転して流れを強引に止めた。

それでも完全に勢いを殺しきれていないので、両脚がズザザザッと後方へと退がるが、コンクリートの粉を撒き散らしながら、ようやく停止した。

「オイ良太郎。今ので何かわかったのかよ?」

(間違いないね。あのイマジン、速い事に間違いないけど弾丸クラスじゃないよ)

良太郎が自信を持って告げた。

「どういう事?」

(弾丸というのはね。ほんのちょっとの衝撃でも弾道が変わってしまう事があるんだよ。でも、触れても僕達が吹っ飛んだだけで、イマジンの軌道には変化はなかったでしょ)

ウラボイスで尋ねてきたので、良太郎は解説を始める。

「つまりあいつの速さは弾丸よりは遅いいうことやな?」

(そう捉えていいと思うよ)

キンボイスで納得しようとしているので、良太郎は肯定する。

「あいつ、またおんなじ構えとったよ!今度は反撃してもいいの!?」

(もちろん。弾丸クラスじゃないにしても何発も食らってたら僕達でも無事にはすまないからね。思いっきり反撃してもいいよ)

リュウボイスでゼブライマジンがまた先程と同じ構えを取った事を告げると同時に反撃してもいいのかと訊ねる。

それに対して良太郎は二つ返事で了承した。

クライマックス電王は指を絡ませてバキボキッと音を鳴らしてから右足を高く上げて地を踏む。左足を高く上げて地を踏むという四股を踏んでから相撲取りのような前傾姿勢になる。

 

「さぁ。来やがれ」

 

闘争心をむき出しにして、クライマックス電王はゼブライマジンを睨む。

対峙している二人を中心にその場の空気が歪んでいるようにも見えた。

ゼブライマジンとクライマックス電王の足が同時に地を蹴った。

風に限りなく近い者と風になろうとする者がぶつかる。

「ぬうぅ!!」

「があっ!!」

双方共に後方へと吹っ飛ぶ。

両者共に宙で回転しながら見事に着地する。

「なーんかよぉ、最初に食らったヤツ、二回目に食らったヤツに比べると明らかに威力落ちてねぇか?」

胸元を押さえながらダメージを数値で表すならば明らかに先程の二回より低いと言うクライマックス電王。

「もしかしてさ、あいつのタックルって動いてないモノには強いんじゃない?」

「それにあいつ、全然起き上がらへんで」

「さっきのがダメージになったのかなー?」

(ウラタロスが言うように、僕達ってあのイマジンの攻撃を静止状態で食らってたから凄いダメージを与えられるイマジンなんだと思ってたけど違うのかもしれないね)

ゼブライマジンが起き上がる気配はないので、Dソードが転がっている場所まで移動して拾い上げる。

今度はなくさないように地面に突き刺す。

コンクリートの粉が宙を舞うと、人影ならぬイマジン影があった。

「よくもやってくれたわね……」

ゼブライマジンの姿がハッキリしており、拳をプルプル震わせていた。

「だったらもう一回来いよ?自慢のタックルでよ?」

右手でくいくいっと挑発していた。

「オカマだけにカマーンってかぁ?」

モモボイスでくだらないダジャレまで言う。

「調子に乗ってんじゃないわよぉぉぉぉ!!」

ゼブライマジンはスタンディングスタートで突進する。

「意味ねぇんだよぉ!!」

クライマックス電王も遅れて地を蹴る。

その間に右手を広げて、ゼブライマジンの頭部に狙いをつけて繰り出す。

「つっかまえーたぁ♪」

クライマックス電王の繰り出した右手はしっかりとゼブライマジンの頭部を掴んでいた。

指に力を込める事も忘れない。

「いだだだだだだだ。痛いじゃないの!?」

「だったら放してみろよ?」

クライマックス電王の挑発に乗るように、ゼブライマジンは両手を駆使して剥がそうとするが一向に剥がれない。

(君の最大の長所は最大の弱点も生み出しているんだ。『速さ』に特化しているってことは裏を返せばそれ以外は平均以下って事にもなるからね)

「何ですってぇ!?」

ゼブライマジンが自身の長所---自尊心を傷つけられてクライマックス電王をにらむ。

「良太郎の言うとおりだぜ。その証拠にテメェ、さっきから全然俺の手を振り解けてねぇじゃねぇかぁ?」

更に指に力を入れる。

「いだだだだだだだだだぁ!!」

ゼブライマジンが更に悲鳴を上げる。

掴んでいた手を放して、左腕を大きく振りかぶってフックを放つ。

ゼブライマジンのこめかみ辺りに直撃し、左へと吹っ飛ばす。

ズザァァァァという音を立てながら、地を滑っていく。

「私の顔を掴むだけでなく、傷までつけるなんて許さないわ。絶対に許さないわよぉ!!」

ゼブライマジンがすぐに起き上がって、クライマックス電王に向かっていく。

タックルではなく、ただ走って間合いを詰めているのだ。

詰めると同時にゼブライマジンは拳を繰り出す。

右ストレートを繰り出すが、ゼブライマジンの速度に順応し始めたクライマックス電王は難なく首を右に傾けて避ける。

中央に戻そうとするが、狙ったかのように左拳が顔面に飛んでくるが左手を開いて受け止めた。

パシンという音が鳴り響く。

「そ、そんな……。私のパンチが受け止められるなんて……」

ゼブライマジンは驚愕と恐怖を混ぜたかのような表情をしていた。

クライマックス電王が突き飛ばしながら、拳を払う。

「これで終わりだぜ!オカマ野郎!!」

ケータロスのチャージ&アップスイッチを押してから、パスを二回セタッチする。

『チャージ&アップ』

電子音声を発すると、クライマックス電王のフリーエネルギーは胸部の電仮面ガンに収束されていく。

フリーエネルギーのチャージが完了すると、電仮面ガンがカパっと上に開く。

無数のオーラエネルギーで構築されたミサイルが発射され、ゼブライマジンに向かっていく。

ババババババァンとミサイルが向かっていく。

ゼブライマジンが迎撃、もしくは回避行動を取ろうとする頃には既に遅くミサイルは全弾狙いをつけて飛んできていた。

「そ、そそそそんなぁぁぁぁ!!ダーリィィィィン!!」

最期まで誰かの事を想いながら、ゼブライマジンは原形を留めずに爆発した。

目の前で立つ爆煙を見ていた。

「残り二匹か……」

(この煙で残り二体も本腰を入れてくるだろうね)

「だな」

煙を見てから、クライマックス電王はデンバードⅡがある場所まで戻ってからモード2へと切り替えてその場から離れた。

 

 

闇意思が出現させた触手に自由を奪われたなのはとフェイトは念話を開いて対策を練っていた。

(フェイトちゃん。この触手思ったよりも頑丈だよ……)

(引きちぎろうとしたら、その間に新しい触手が生えてくるかもしれない。だから解くならちぎるんじゃなくて一瞬で消滅させないと!)

(何かあるの?)

(あるけど、タイミングはわたしに任せてもらっていい?その直後に攻撃に移るよ。なるべく悟られたくないから顔には出さないんでほしいんだ)

(うん。わかった!)

闇意思が触手の力を強めた。

「あぐぅ!」

「ぐうぅ!」

縛る力が急に強くなったので、なのはとフェイトが苦悶の表情を浮かべる。

「……それでもいい。私は主の願いをかなえるだけだ」

闇意思は誰に聞いてもらいたいわけでもなく、独り言のように呟く。

「願いをかなえるだけ?そんな願いではやてちゃんは本当に喜ぶと思ってるの!?」

なのはが苦悶の表情を浮かべながらも闇意思の台詞に反駁する。

「心を閉ざして、何も考えずに主の願いを叶えるだけの道具でいて貴女はそれでいいの!?」

なのはの叫びは本来ならば闇意思の心に突き刺さるものかもしれない。

だが、今の闇意思には届かない。

それは、なのはが闇意思にとって蔑称である『闇の書』と呼んでしまったからだ。

誰とて蔑称で説得されても心動くはずがない。

 

「我は魔導書。ただの道具だ」

 

闇意思が自身の存在価値を声に出す。

彼女の両目にうっすらと涙が浮かび上がる。

それは闇意思の良心が表に出たものなのかもしれない。

『理屈』と『感情』が伴っていない状態になっているといってもいいだろう。

「だけど言葉は使えるでしょ!心があるでしょ!そうでなきゃおかしいよ。本当に心がないなら泣いたりなんかしないよ!!」

なのはが目元を潤ませながら、闇意思にあらん限りの気持ちをぶつける。

「お前達に理解してもらおうとは思っていない。それにこの涙は我が主の涙。私は道具だ。悲しみなどない」

頬を伝う涙を拭おうとせず、闇意思はなのはとフェイトに明確な拒絶を表示する。

闇意思が両目を閉じていた。

(今だ!)

フェイトはこの状態を機と狙った。

「バリアジャケット・パージ!」

『ソニックフォーム』

フェイトが命令を発し、バルディッシュ・アサルトがガシャンとカートリッジロードをするとなのはを巻き込んで黄金の光が発生した。

二人の身体に絡みついていた触手は消滅し、なのはとソニックフォームスタイルのフェイトは自由になっていた。

「悲しみなどない?そんな言葉、そんな悲しい顔で言ったって誰が信じるもんか!」

フェイトも自身のことのように悲しげな表情になっている。

「貴女にも心があるんだよ!悲しいって言っていいんだよ!」

続くように、なのはが更に闇意思にぶつける。

「貴女のマスターは、はやてちゃんはきっと応えてくれる。優しい子だよ」

「だから、はやてを解放して。武装を解いて。お願い!」

二人の言葉に闇意思は沈黙していた。

闇意思が答える前に、周辺に異変が起こり出した。

激しい揺れを起こす地震が起き、地面の一部を等間隔で打ち破り、マグマの柱が出現したのだ。

これには、なのはとフェイトも驚きの表情を隠せない。

「早いな。もう崩壊が始まったか……」

闇意思にはこの異常な自然現象が起きる事をわかっていたかのよう口振りで言う。

「私も直に意識をなくす。そうなればすぐに暴走が始まる」

右掌を見ながら呟く。

「意識があるうちに、主の望みを叶えたい」

闇意思の想いを汲むかのように、『闇の書』が輝きだしてから、右手をかざす。

その直後になのはとフェイトを囲むようにして、無数の赤い刃が出現する。

赤い刃は導火線の短い時限爆弾のように輝きだす。

「闇に沈め……」

闇意思の言葉が起爆スイッチになったかのように赤い刃は一斉に爆発した。

確認のために見てみる。

爆煙が立ちこめ、なのはとフェイトの姿は見えない。

煙が晴れると、地面にクレーターが出来ただけでそこに二人の姿はなかった。

逃げ場所となるなら、空しかないので視点を変える。

空には、なのはを抱えて避難しているフェイトの姿があった。

「この……駄々っ子ぉ!」

フェイトはバルディッシュ・アサルトを大きく振りかぶって中腰になる。

手甲、足甲に展開されている黄金の翼がバシュンと唸りを上げる。

「言う事を……」

両脚に力を溜めてから、空を地面を蹴るようにして駆ける。

「聞けええええええええ!!」

風を感じ、風と共になるような感覚でフェイトは闇意思に向かっていく。

闇意思は突進するフェイトに何の警戒もせずに、左手に浮遊している『闇の書』の角度を百八十度変えた。

「お前も我が内で眠るといい」

フェイトには聞こえない声で呟く。

「はあああああああああ!!」

バルディッシュ・アサルトを速度を殺さずに、流れるようにして振り下ろす。

ガキィンという音がフェイトの耳に入る。

闇意思が『闇の書』をかざして、黒い魔法陣を展開していたのだ。

「!?」

フェイトの身体に異変が生じ始めた。

全身が黄金に輝き、力が抜けていくような感覚に襲われ始めていたのだ。

「フェイトちゃん!!」

なのはの叫びにもフェイトは反応しない。

やがてフェイトは光の粒子となって、その姿を消してしまった。

『吸収』

『闇の書』は短く告げると、自身を閉じた。

 

「全ては安らかな眠りの地……」

 

闇意思は静かに告げ、なのはは目の前で起こったことをハッキリと認識するのに多少の時間がかかるようにも思えた。

だが、なのはは思った以上に早く事態を認識する。

空から見たこともない物体がこちらに寄ってきているからだ。

空中に線路を敷設し、撤去しながら走ってくる緑と黒が目立つ二両編成の列車だった。

「デンライナー?じゃない。でも『時の列車』だよね……」

『時の列車』はなのはの横に停車すると、一両目のドアが開いた。

「無事か?高町」

「よかった。でもテスタロッサは?」

『時の列車』---ゼロライナーから出てきたのは侑斗とデネブだった。

「桜井さん。デネブさん」

助けが来たのだとなのはは安堵の息を漏らすのもつかの間。

 

「来たか。仮面ライダーゼロノス」

 

闇意思の言葉がなのはの耳に入った。

「ふええええええええええ!!」

なのはが驚きの声をあげるが、侑斗とデネブは驚きの声を聞き流して闇意思を見ていた。




次回予告

第五十二話 「夢の戦い。現実の戦い。後編」
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