仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第五十四話 「夜の終わり。旅の終わり。~集結~」

地球を見下ろしているかたちでアースラは佇んでいた。

モニターに映っている海鳴市を見ながら、表情は以前変わらず険しいままだった。

「『闇の書』の主、防衛プログラムと完全に分離しました」

アレックスが新しい情報を報告する。

「みんな、下の黒い淀みが暴走が始まる場所になる。クロノ君が着くまで無闇に近づいちゃダメだよ!」

エイミィ・リミエッタがキーボードを叩きながらも、前線で戦っている高町なのは達に警告する。

「あと、みんなに悪い報告があるんだ。良太郎君やモモタロス君達---電王が先の戦闘で戦闘不能になったんだ……」

エイミィ自身も信じられないという思いがあった。

あの電王が戦闘不能になったのだ。

幾多のイマジンを屠り、魔導師絡みの事件の解決にも一役買ったあの電王がだ。

「正直言えばかなりの痛手になるわね……。『力』でいう戦力でも『心』でいう戦力でもね」

リンディ・ハラオウンも手に握られているキーを見ながらも、電王の復帰を願った。

最悪の選択を取らないためにも、彼のいや彼等の力は必要不可欠なのだから。

 

 

「ハラオウンが来るまでの様子待ち、か……」

ゼロノスはゼロライナー・ドリルの屋根で胡坐をかいて防衛プログラムの動向をじっと見ていた。

「侑斗」

操縦していたデネブも屋根の上に上って来た。

「デネブ。お前操縦はいいのかよ?」

「停車しているなら操縦はいらないよ。それにいざとなれば自動で動くし」

デネブは自分が操縦しなくても心配要らないと言う。

「お前達。ハラオウンが来るまでの間、小休止といかないか?」

ゼロノスが空で浮揚しているなのは、フェイト・テスタロッサ、アルフ、ユーノ・スクライアに声をかけた。

デネブは自分がその間に何をするべきなのか理解したのか、ゼロライナー・ドリルを経由してゼロライナー・ナギナタへと移動した。

ゼロノスの言葉に一理あると感じたのか、魔導師サイドの四人は足をゼロライナーの上に下ろした。

デネブがバスケットを持って、また屋根に上って来た。

バスケットの中身はデネブキャンディーだった。

だが、誰もが遠慮してとろうとしない。

本来ならゼロノスは変身を解除して、率先して取りたいところのなのだがこれからの事を考えると変身解除は出来ない。

「遠慮するな。デネブキャンディーを食べるのは初めてってわけじゃないだろ?」

ゼロノスは促すが、それでも遠慮気味だ。

「侑斗さんは食べないんですか?」

ユーノが代表して訊ねる。

「俺は野上のように自由に解除できるわけじゃないんだ。パスで変身してるわけじゃないからな」

ゼロノスはゼロノスベルトのバンドに付いているカードケースを開けて、一枚のゼロノスカードを取り出す。

「コレは?」

ユーノはゼロノスカードを手にして、表と裏を凝視する。

なのは、フェイト、アルフも興味深そうに見ている。

緑のラインが走っている表と黄のラインが走っている裏があった。

「そいつで俺は変身している。一回の変身に一枚しか使えないから一度解除するとまた一枚使わなきゃいけないんだよ」

それは効率面で考えて、今変身を解除するのは得にはならないとそこにいる誰もが理解した。

ユーノはゼロノスカードをゼロノスに返す。

受け取ると、またカードケースに戻した。

「桜井さん。あの、良太郎達が戦闘不能になったみたいで……」

フェイトがいまだに信じられないといった表情をしながらもゼロノスに先程エイミィが報告した内容を告げた。

「そうか。だが死んだわけじゃないんだろ。だったらまた立つさ」

ゼロノスは特に心配した素振りもなく、サラリと言ってのける。

「立つってアンタ、良太郎は戦闘不能になったって言ってるじゃないか!?それでも戦うってのかい!?」

アルフがゼロノスの言葉に食ってかかる。

「何も無責任にそんな言い方をしているわけじゃない。あいつの、いやあいつ等の戦いを見てきたから言えるんだ」

今いる面子の中で電王の戦いを最も見ているとしたら、間違いなくゼロノスだ。

だからこそ自信を持って言える。

 

このままで終わるような連中ではないということを。

 

「だから不安そうな顔をするな。野上達を仲間だと思ってるんだったら信じてやれ」

ゼロノスは四人に告げると、再び防衛プログラムの動向を見張る事にした。

 

 

八神はやてと書物状態のリィンフォースが光に満ちた空間で浮揚していた。

一人と一冊は向かい合ってる状態になっていた。

「管理者権限発動」

『防衛プログラムの進行に割り込みをかけました。数分程度ですが暴走開始の遅延となります』

「うん。それだけあったら十分や」

リィンフォースの報告にはやては満足して首を縦に振る。

はやての周りにはよっつのリンカーコアが囲っている。

「リンカーコア送還。守護騎士システム破損修復」

はやての周りに浮いていたよっつのリンカーコアは輝きを増した。

 

 

闇意思が初起動したビルの屋上に四色のベルカ式の魔法陣が展開されていた。

緑色の魔法陣からシャマルが出現し、閉じていた両方の瞳を開いた。

白色の魔法陣からザフィーラが出現し、シャマル同様に瞳を開く。

紅色の魔法陣からヴィータが出現し、他の二人同様に瞳を開く。

そして紫色の魔法陣からシグナムが出現し、他の三人同様に閉じていた双眸を開いた。

 

 

「おいで。わたしの騎士達」

はやてはまるで子供を抱擁する母親のような穏やかな口調と雰囲気を漂わせていた。

はやてを包んでいた空間は海鳴市海上に出現し、その周りには守護騎士の四つの光が囲んでいた。

そして、その場にいる誰もが目を眩むほどの光が発した。

光が収まると白い魔法陣が展開しておりその上には四方向に守護騎士が佇み、その中央にはやてがいると思われる光がまるでこれから孵る卵のように存在していた。

「ヴィータちゃん!?」

「シグナム!?」

なのはとフェイトが馴染みのある守護騎士の名を叫ぶ。

「我等、夜天の主の元に集いし騎士」

シグナムが瞳を閉じたまま言う。

「主ある限り我等の魂、尽きる事なし」

続いてシャマルが目を閉じたまま言う。

「この身に命ある限り、我等は御身の下にある」

ザフィーラが告げる。

「我等が主。夜天の王。八神はやての名の下に!」

最後にヴィータが両目を開いて高らかに宣言した。

「リィンフォース。わたしの杖と甲冑を」

はやてがリィンフォースに向けて命じる。

『はい!』

はやての身体にリィンフォースと同じ黒がメインで金色の装飾がなされている服が纏われる。

そして、はやての前に杖が現れてしっかりと右手で握る。

その直後に、はやてとリィンフォースを包んでいた空間は亀裂を生じて砕け散る。

「はやてちゃん!」

なのはが呼び、はやては笑みで返す。

 

「夜天の魔導書よ。祝福の風リィンフォース。セーットアップ!!」

 

杖を天に掲げると、黒い光が走り出す。

はやてに戦闘する際の装備が装われていく。

髪の色も普段と違い、色素の薄い色となりと瞳の色も青色と変わって印象が変わってしまう。

リィンフォースが羽織っていた黒いベストは白色になっており、背中に広げていた黒い翼も四枚から六枚になっていた。

また白い帽子がはやての頭に被せられていた。

「はやて……」

ヴィータが両目を潤ませている。

はやては対して笑顔を向ける。

それは「怒ってへんで」という表れだった。

「すみません」

「あの……はやてちゃん、私達……」

シグナムが謝罪し、シャマルが何かを言おうとする。

「ええよ。みんなわかってる。リィンフォースが教えてくれた。そやけど細かい事は後や。今は……」

はやてが守護騎士達が何を言いたいのかは大体の見当は付いていた。

でも、それを責める気はない。

自分のためにやってくれた事なのだから。

だから自分が今言えることはひとつだ。

 

「おかえり。みんな」

 

その言葉が引き金となってヴィータは我慢しきれなくなり、はやてに抱きついた。

「はやて!はやて!はやて!」

嗚咽を漏らしながら、名を叫び続ける。

はやては黙ってそれを受け止めながらも、ゼロノスとデネブを一瞥してからまたゼロノスを見た。

「侑斗さん……」

ゼロノスはゼロライナーを動かして、はやてのそばまで寄る。

「八神。よかった」

デネブが色々言いたいのだが、短くまとめた言葉を言う。

ゼロノスはただ黙って、右手をはやての頭の上において撫でる。

「ゆ、侑斗さん?」

「お前が何を言いたいのかはわかる。もし、本当に悪いって思ってるならこの一件が片付いたらメシ作れ。もちろん椎茸抜きでな」

「うん!了解や!」

ゼロノスは、はやての言いたい事を予測できていたので先に自分の要求を突きつけた。

はやてはそれを快諾した。

ゼロライナーの屋根の上に乗っていたなのはとフェイトもはやての側まで寄る。

「なのはちゃんとフェイトちゃんもごめんな。うちの子達が色々迷惑かけてもうて……」

はやてが二人に謝罪するが、なのはとフェイトは特に気にしている様子はなかった。

「すまない。折角のところを水を差して申し訳ないのだが」

先程到着したばかりのクロノ・ハラオウンがゆっくりと降下しながら割り込んだ。

「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。時間がないので簡潔に説明する。あそこの黒い淀み---『闇の書』の防衛プログラムがあと数分で暴走を開始する。僕等はそれを何らかの方法で停めないといけない……」

 

『ならば立ち話もどうかと思いますし、こちらでどうでしょうかぁ?』

 

クロノが次を言う前に、拡声器交じりの声が割り込んだ。

そして、こちらに線路を敷設しながら向かってきていた。

それはゼロライナーとは違い、白がメインの『時の列車』であるデンライナーだった。

 

デンライナーに入ったゼロノスを始めとする魔導師サイドの面々は食堂車に入るとそこには食堂車の座席で眠っている野上良太郎、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスがいた。

全員入ってきているのに、起きる素振りを見せない。

現在はコハナとナオミが看護に当たっていた。

そして、白いイマジンが優雅に食事を取っていた。仕種が貴族や王族のような雰囲気を漂わせているのだが、イマジンのためか笑いを誘ってしまう。

「初めましての方もいますし、一度お会いしている方々もいますが一応自己紹介させていただきます。私、デンライナーのオーナーでございます。以後お見知りおきを」

オーナーが挨拶を交わすと、最低限の礼儀として初対面の者達は軽く会釈した。

オーナーはそう言うと、ステッキを突きながら自分の指定席へと戻っていった。

「ナオミ君、ではなくデネブ君。皆様に飲み物をお願いできますか?」

「了解!」

オーナーの頼みをデネブは快諾した。

(ナイス判断!)

ゼロノスはオーナーの先程の判断に内心ではサムズアップしていた。

ナオミのコーヒーを飲んで戦闘離脱者を作るわけにはいかないとオーナーは考えての事だろう。

「えと、良太郎達は大丈夫なんですか?」

フェイトが容態をオーナーに訊ねる。

「ここへ担ぎ込んだ時はひどいものでしたが、流石に場数を踏んでいるだけあって回復力は並外れてますねぇ。それでも絶対安静なんですけどねぇ」

『絶対安静』と聞き、誰もが電王は戦線離脱かと思ってしまう。

「ま、良太郎君達のことですから目が覚めたらすぐに起き上がって戦闘に参加するでしょうねぇ」

ゼロノスと同じ事をオーナーは言う。

「ですからハナ君。苦労をかけますが皆さんのお話に参加しておいて下さいね」

オーナーはリュウタロスの額にタオルを置いたコハナに良太郎達に状況を説明するために参加するように勧めた。

「はい!」

コハナは現在も眠りについている良太郎達を一瞥してから魔導師サイドの輪に入った。

「停止のプランは現在二つある。一つは極めて強力な氷結魔法で停止させる。二つ目は軌道上に待機している艦船アースラの魔動砲『アルカンシェル』で消滅させる。これ以外に他にいい手はないか?」

プランを呈示したクロノとしても『最善』とは思っていないようだ。

「『闇の書』の主とその守護騎士達に聞きたい」

こうなると『餅は餅屋』の理屈になってしまう。

はやて率いる守護騎士達こそが現在最も『闇の書』に関して精通しているとみるのは不自然な事ではなかった。

「えーっと、最初のは多分難しいと思います。主のない防衛プログラムは魔力の塊みたいなものですから……」

シャマルがおずおずと挙手をしながら、プラン1を却下した。

「凍結させてもコアがある限り、再生機能は停まらん」

シグナムがシャマルの発言に付け足す。

「アルカンシェルも絶対ダメ!!こんなとこでアルカンシェル撃ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!」

ヴィータが両手で×のジェスチャーをとりながら、プラン2を却下した。

彼女の言うように、防衛プログラムを消滅させるために海鳴市の一部を塵にするというのは本末転倒としか言いようがない。

「そ、そんなに凄いの?」

なのはがヴィータの発言に驚きの表情を隠さず、隣にいるユーノに訊ねた。

「発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら、反動消滅を起こさせる魔動砲って言ったら大体わかる?」

「?」

なのはは首を傾げる。

大人が聞いたって「わかるか!」と言いたくなる内容なのだから仕方がないといえば仕方がない。

「つまり、目標物はもちろん百数十キロにある物も跡形もなく消滅してしまうものなんだよ」

ユーノは今度は単純に話した。いくら、なのはが聡明でも魔法関連に関する知識ではまだまだ若葉マークだという事はユーノは失念していた。

「あの、わたしもそれ反対!」

なのはが前に出て、クロノに反対を申し立てる。

「同じく、絶対反対!」

フェイトも同じ様に前に出て、反対を申し出た。

「僕も艦長も出来る限りなら使いたくないよ。払う代償が大きすぎるからね。でも、本格的に暴走が始まったら被害がそれよりはるかに大きくなる」

「暴走が始まると、触れたものを侵食して無限に広がっていくから……」

ユーノ自身はクロノのプランに問題があることも理解した上で言う。

「街ひとつで世界の脅威がなくなるなら安い取引だけどな……」

「侑斗!?」

ゼロノスの発言にデネブは思わず、声を荒げてしまう。

「だけど俺もそれに賛同する気はない。それで解決したってここにいる誰もが喜ぶとも思えないしな」

「侑斗!」

ゼロノスの回答にデネブは喜びの声を挙げる。

『はいはーい!みんな、暴走臨界点まで十五分切ったよ!退避するならお早めに!』

エイミィがデンライナー食堂車にいる全員に報告した。

「何かないか?」

クロノがもう一度守護騎士達に訊ねる。

「すまない。あまり役に立てそうにない」

「暴走に立ち合った経験は我等にも殆どないのだ」

シグナムが謝罪し、ザフィーラがその理由を告げる。

「でも、何とか止めないと……。はやてちゃんのお家がなくなっちゃうのは嫌ですし……」

シャマルは焦りの表情を浮かべながら言う。

クロノはその証言に思わず苦笑してしまう。

「失礼。そういうレベルの話ではないんだが彼等ならそのくらいで片付けてしまいそうだ」

クロノの言う彼等とは現在眠っている彼等だ。

「戦闘地点をもっと沖合いに出来れば……」

「海でも空間歪曲の被害が出る」

ユーノの案にシグナムがダメ出しをしてしまう。

「あー、何かゴチャゴチャ鬱陶しいな!みんなでズバッとぶっ飛ばしちゃうわけにはいかないの!?」

アルフが腕を組んで痺れを切らしたのか荒げながら最も単純なプランを告げる。

「ア、アルフ。コレはそんなに単純な話じゃ……」

ユーノがアルフを窘める。

「あ……。でもさ、良太郎達なら変に考えずに目の前のヤツをズバッと倒れるまで倒すだろうなぁと思ってさ」

「確かにそうだね。良太郎さん達なら相手が倒れるまで諦めずに戦うだろうね」

アルフの意見にユーノも思わず良太郎達ならどうするだろうと考えてしまう。

なのは、フェイト、はやては様々な証言を耳にしながら、最善の策を考えようとする。

三人の頭の中で、情報を整理する。

防衛プログラムを倒す方法として『最善』なのは『アルカンシェル』を使うこと。

ただし海鳴市海上で使えば被害は甚大になる。

ならば海鳴市海上でなく、それに『アルカンシェル』を用いても何の問題のない場所が必要になる。

そんな都合のいい場所はというと。

「「「あ!」」」

三人は同時に閃いた。

「クロノ君。アルカンシェルってどこでも撃てるの?」

「どこでもって例えば?」

クロノはなのは質問の意図が理解できていない。

「今、アースラのいる場所」

フェイトが続くようにして告げる。

「軌道上、宇宙空間で」

はやてが締めくくった。

『管理局のテクノロジー。舐めてもらっちゃ困りますなぁ。撃てますよぉ!宇宙空間だろうとどこだろうと!』

エイミィが即答した。

「おい!?ちょっと待て!君等まさか……」

クロノはようやく三人の考えを理解した。

三人同時に頷いた。

 

 

エイミィによって転移させられたアリサ・バニングスと月村すずかはここからでも黒いドーム状の何かの動向を見張っていた。

「光、収まった……」

「うん。海にまだ黒いのがあるけど」

アリサとすずかは自分達で理解できる範囲で事態を把握しようとしていた。

「一体何なの?このままずっと続いたりしないよね?」

「何となくなんだけど、大丈夫な気がする」

「?」

「きっと戦ってくれているから……」

すずかは先程のなのはやフェイト、そして電王の事を思い浮かべているのだろう。

「なのはとフェイト、あと仮面ライダーが?」

アリサの言葉にすずかは首を縦に振る。

「すずかに真顔で言われると、何かそんな気になってしまうのが怖いわ」

「アリサちゃん?」

「あーもう!ワケわかんなーい!!」

アリサは照れ隠しにその場で暴れ始め、すずかが止めに入った。

 

 

宇宙空間のアースラでも先程の三人の提案は伝わっていた。

「なんとまぁ、相変わらずすごいというか何というか……」

リンディも苦笑を浮かべるしかなかった。

自身に思いつかなかったし、突拍子もないことだからだ。

「計算上では実現可能っていうのが、また怖いですね……」

キーボードを叩きながら、エイミィも苦笑するしかなかった。

「クロノ君。こっちの準備はOK。暴走臨界点まで後十分!」

エイミィが臨界点のカウントをデンライナーにいるクロノに告げた。

 

 

デンライナーの中ではクロノが防衛プログラムに対しての説明が行っていた。

「実に個人能力頼りでギャンブル性の高いプランなのだが、まぁやってみる価値はある」

「防衛プログラムは魔力と物理の複合四層式。まずはそれを破る!」

クロノに続くようにはやてが、第一段階を口にした。

「バリアを抜いたら本体に向かって、わたし達の一斉砲撃でコアを露出!」

フェイトが第二段階を告げる。

「そしたらユーノ君達の強制転移魔法でアースラの前に転送!」

なのはが最終段階を告げながら夜空を見上げていた。

彼女が見ているものは夜空ではなく、その更に上にある宇宙空間のアースラである。

そして、誰からともなくデンライナーを出て戦地へと向かっていく。

最後に出ようとしたフェイトがドアの前で停まる。

「フェイトちゃん?」

先に出ていたなのははその行動に訝しげな表情を浮かべる。

フェイトは食堂車に戻ると、ナオミやコハナも訝しげな表情を浮かべる中で眠っている良太郎の前に立つ。

バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム)をテーブルにもたれさせてから、良太郎の右手を両手で握る。

しかし、握り返してくる事はない。

「良太郎。行ってくるね」

短く告げると握っていた手を離し、バルディッシュ・アサルトを持って食堂車を出て、デンライナーを出た。

デンライナーはその後、戦地から数キロ離れたところまで空に線路を敷設して走り出した。

 

デンライナーを出た全員はそれぞれの準備をしていた。

その中で、はやてはなのは、フェイト、ゼロノスが他の面々と違って汚れたりしているのが目に入った。

「あ、なのはちゃん、フェイトちゃん、侑斗さん。シャマル」

はやてが何を望んでいるのか、呼ばれたシャマルは理解していた。

「はい。皆さんの治療ですね」

シャマルは笑顔で応じた。

「クラールヴィント。本領発揮よ」

そう言うと、シャマルは唇を右人差し指にはまっている指輪に当てる。

「静かな風よ。癒しの恵みを運んで」

シャマルの足元に緑色の魔法陣が展開され、緑の魔力の粒子が噴出す。

なのは、フェイト、ゼロノスの汚れや傷といった類が消えていった。

「湖の騎士シャマルと風のリング、クラールヴィント。癒しと補助が本領です」

シャマルは笑顔で自己の能力を紹介した。

「今の魔法。野上達にかけることもできたんじゃないのか?」

ゼロノスの率直な質問にシャマルは首を横に振る。

「良太郎君達がすぐに戦地に向かう事を望んでるならかけない方がいいわ。治癒魔法といっても生命の自然治癒力を促すものだから、今の状態でかけると確実に復帰は出来なくなるの」

「そうか……」

シャマルの説明にゼロノスは納得した。

「すごいです!」

「ありがとうございます!シャマルさん」

シャマルの能力に純粋に感心するフェイトと、回復してくれた事になのはは礼を述べた。

「あたし達はサポート班だ。あのウザいバリケードを何とかするよ」

「ああ」

「うん!」

アルフを筆頭に、ザフィーラとユーノも頷く。

『俺達もそっちに混ざるぞ』

そう拡声器越しでゼロノスがゼロライナーを操縦しながら、三人の側まで寄った。

「桜井。お前の力なら……」

『俺が空飛べないって事を忘れてるだろ。ザフィーラ』

ザフィーラがある事を失念しているのではないかと思い、先に告げる。

「ではゼロライナーで?」

ユーノが確認のためにゼロライナーでサポートに回るのかと訊ねる。

『ああ』

「でも、どうやってやるんだい?まさか特攻?」

アルフがゼロライナーを用いてのサポート手段を想像してゼロノスに告げてみる。

『それはすぐにわかる』

ゼロノスはそれ以上は言わなかった。

 

黒いドーム状の周りにタコの足やら得体の知れない尻尾のようなものが海中から出現し始めていた。

 

デンライナーの食堂車は先程とは打って変わってガランとしていた。

一度にアレだけの人数が入ってくることはそうそうないので普段当たり前のように感じる人数でも寂しく感じるものがあった。

「ん……。あれ?ここは……」

良太郎はまだ節々痛む身体をゆっくりと起こしながら、瞬きをしていた。

「よぉ、起きたか。良太郎」

先に起きていたモモタロスが軽く手を挙げる。

「僕達全員、気を失ってたらしいよ」

ウラタロスが準備体操をしながら教えてくれる。

「三匹目のイマジンを倒してからは全く憶えとらんなぁ」

「クマちゃん!痛いよ!」

キンタロスはリュウタロスとともに柔軟体操をしていた。

 

「やっと起きたか皆の者。主を待たせるとは何事!!」

 

聞き覚えのある声でありモモタロス、ウラタロス、キンタロスは露骨に嫌な顔をしていた。

リュウタロスは喜色の表情を浮かべており、良太郎はそんな後景を苦笑いを浮かべるしかなかった。

そこには魔導師サイドの面々が打ち合わせをしていたにも関わらず、ナオミが作った料理を黙々と食べていた白いイマジンがいた。

「さ、寝よう」

「そうだね。まだちょっと疲れがあるみたいだし」

「そやな。寝よ寝よ」

モモタロス、ウラタロス、キンタロスはまた座席で眠りの姿勢に就こうとしていた。

「こ、コラ!何をしている!お前達!!」

白いイマジン---ジークが三体のイマジンに対して声を荒げる。

「トリさん。久しぶりー」

「もしかして助っ人に?」

優雅に元気溌剌炭酸飲料をワイングラスで飲んでいるジークに、リュウタロスと良太郎は普段どおりに接する。

「その通りだ。助っ人として呼ばれた。ありがたーく思え」

相変わらずの尊大な口調だなぁと良太郎は思ってしまう。

「助っ人って言ったって、そんなに役に立った例はないじゃない……」

枕や濡れタオルなどを片付けているコハナがボソリと呟く。

「おお、姫!」

ジークがコハナの側に寄ろうとするが、モモタロスが足を引っ掛けて前のめりに倒し、後頭部を叩いて沈黙させた。

「テメェは大人しく手羽でも食ってる夢でも見てろ!」

状況が状況なので、ジークのマイペースぶりに付き合う気はないというのが食堂車にいる全員の総意だ。

「それでハナさん。みんなはどうしたの?」

コハナにしてみれば良太郎がこのように訊ねてくるのは想定内なので、ここで打ち合わせした内容を全て話した。

「そっか。今から倒すのは海に浮いてるあの何ていったらいいかわからないのだね」

「防衛プログラムってみんな呼んでたわね」

呼称するならそれしかないと、コハナは名前を知らない良太郎に教えた。

「俺達が戦うとしても、最後はアルカリ電池で止めを刺すんだよな?」

「ええ。あと、アルカンシェルよ」

モモタロスが説明を聞いて確認するようにコハナに訊ねる。コハナはモモタロスの間違いを指摘して、訂正した。

「あの大きさの物を魔法なり僕達の力で倒すってのは可能かもしれないけど、無事ではすまなくなるね」

ウラタロスがデンライナーの窓から防衛プログラムを見ながら言う。

「デカブツにはデカい大砲でってワケやな」

キンタロスも防衛プログラムを見ながら率直な感想を述べる。

「僕達はどうするの?」

リュウタロスが自身の役割を良太郎に訊ねる。

ひととおり説明を受けても、自分達にできる部分が見えてこないのだろう。

「今から行ったら多分だけど複合四層のバリアは破った後だと思うから、集中攻撃のときに参加するのがベストかな」

良太郎は現在地から目的地までの距離が離れている事を考慮して、そのような予測を立てた。

「で、どうやって目的地まで行くんだよ?て……」

モモタロスは良太郎の顔を見て、背筋に悪寒が走った。

「良太郎。まさかアレをやるつもりじゃねぇよな?」

モモタロスが嘘であってほしいと思いながら訊ねる。

「アレで行くつもりだけど」

良太郎はあっさりと肯定した。

その言葉にウラタロスとキンタロスも良太郎に詰め寄る。

「良太郎!悪い事は言わないからさ。アレはよそう!」

「後生や。良太郎、アレだけは堪忍してくれ!!」

思いっきり取り乱している二体を見て、リュウタロスは怪訝な表情をしている。

「カメちゃんもクマちゃんも何でアレがいやなの?アレ、強いじゃん!空も飛べるしー」

リュウタロスも良太郎が言う『アレ』の事は理解しているが、反応は三体とは逆だった。

「騒がしいぞ。静かにせんか。家臣一同」

「うるせぇ!」

沈黙していたジークが起き上がるが、モモタロスが後頭部を叩く。

「前は偶然でなったけど今回は確信を持って変身するんだ。それにジークがいなかったからさっきまではてんこ盛りを選ぶしかなかったけど、あの場にジークがいたら間違いなく選んでたよ」

良太郎は本気だ。

それは反対派であるイマジン三体にもヒシヒシと伝わっていた。

戦闘能力や行動可能範囲などを考えると、間違いなくトップクラスだ。

だがクライマックスフォームよりも許容量が小さくなるという欠点があるのだ。

「しゃーねぇ。やるか……」

「やりますか……」

「やるしかあらへんな……」

覚悟を決めたのか反対派の三体も折れてくれた。

「どうやら決まったようですねぇ」

今まで黙って聞いていたオーナーが口を開いた。

「良太郎君。『闇の書』事件もいよいよ大詰めです。でも油断をしてはいけませんよ。ここが終着駅というわけではありませんからねぇ」

「はい!」

オーナーの意味ありげな一言に良太郎は返事する。

良太郎はズボンのポケットからパスを取り出し、強く握り締めていた。

 




次回予告

           幾多の想いを胸に。

           いくつもの経験を糧に。

           頼りになる(?)助っ人を連れて。

           電王は最強を超えた最強となる。
           
               報いるために。
               守るために。

            共に過ごした者達に応える為に。

               今、再び降臨する。

  第五十五話 「夜の終わり。旅の終わり。~降臨!蒼翼の電王~」
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