まるやまっ!   作:わらしべいべー

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【前回のあらすじ!】
・彩「料理器展開…」
・日菜ちゃんカブトムシ説
・ヤベェ奴とやべぇ奴が遭遇した





ひな!

 

 

 

 

 

 あたしがおねーちゃんの違和感に気がついたのは半年くらい前からだ。

 

 ある日からボーッと何かを考えることが多くなった。特別珍しいことじゃないように思うけど、それが日常生活に影響が出るくらいにもなると心配になる。箸に白米を乗せたまま固まった時は流石にびっくりしたよ。

 携帯で何かを聞いていることも増えた。しかもすごく柔らかい表情で。気になったから教えてもらおうと思ったけど、全然教えてくれないし、携帯のパスワードもしょっちゅう変えてくるし、結局何聞いてるのか全然わかんないんだよね。

 一つわかることはおねーちゃんが何かに意識を割かれてるってことだけ。

 

「うーん…、気になる…」

 

 一体何がそこまでおねーちゃんの意識を持っていっているんだろう。気になる、羨ましい。あたしもそんなふうにおねーちゃんに想ってもらいたい。

 そんなことを考えてもガードの堅いおねーちゃんを突破できずに、時間は経って年を越した。

 

 明確な異変が現れたのはこの時期からだ。

 まずあたしを見る目が変わった。今までは忌々しいものを見るみたいに真っ赤に染まった目で見てたのに、今は無地だ。真っ白。まるであたしに対する興味関心がなくなったみたいに何の感情も持ち合わせてない視線を向けられることが多くなった。

 正直嫌悪の眼差しを向けられるよりもよっぽど堪えた。

 あたしって自分でも結構歪んでるって自覚があるんだよね。おねーちゃんに想われるなら嫌悪でも憎悪でも良い。頭の片隅に少しでもあたしがいればそれで良いって、そう思ってたのにな。

 あと外出も増えたかな。何もない日でも学校から帰るのが遅くなったり、休日に出かけることが多くなったり。

 この辺りからあたしはおねーちゃんの隣に誰かがいるってことを確信した。その誰かがおねーちゃんの心からあたしを消し去ったことも。

 

 新学期に入ってから、あたしは本格的に動き出した。

 おねーちゃんの人間関係を片っ端から洗い出して調べた。それこそちょっと法に抵触しそうなことをしようとしてまで。けど拍子抜けするくらいに望んだ答えはあっさり見つかった。

 

「丸山彩?」

 

「うん。アタシも燐子からの話づてで聞いただけだけど、その彩ちゃんって子と紗夜仲良いみたいなんだよねー」

 

「へぇ、例えばどんな感じ?」

 

「うーん、よく学校で追いかけっこしてるって話を聞くけど、あとはなんて言うかトンチキすぎて口では説明しづらいんだよね」

 

「ふーん…」

 

 それからあたしは気になってその彩ちゃんのことを調べ始めた。…んだけど、結論から言うとよくわからなかったんだよね。なんというか経歴がバラバラで一貫性がない。中学2年で花咲川に来るまであっちこっちに転校してたみたいだし、小学校の経歴に関しては丸ごと無いし。

 けど中学高校のテストも数学以外は平均点、特別賞を取ったみたいなものも無いし、学校でもトラブル以外は目立ったことはしてない。経歴見た感じちょっと変わった凡人っていうのがぱっと見の印象かなー。

 

「わかんないなー…」

 

 あれのどこにおねーちゃんの心を惹く程の魅力があるのか正直わからない。単純に人間性に惚れ込んだのか、まだあたしの知らない秘密でもあるのか。でもあたしの中ではおねーちゃんがああなった要因は別にあるという風に固まっていた。

 

「まぁ直接会ってみないとわかんないかなー」

 

 変な違和感も感じてた。何か重大なことを見落としてるみたいな嫌な感覚。

 でも資料上は大した脅威じゃ無いし、いつまでもあたしを押し出して居座られても困るしとっとと脅して退場してもらおう、なんて考えていた。

 

 同時期、りさちーが学校に来なくなった。

 最初は風邪かなって思ったけど二週間も来なかったら流石に心配になる。友希那ちゃんに聞いたらRoselia自体の活動が止まってるみたい。

 

 おんなじバンドチームの千聖ちゃんも変わった。

 低迷してからはバンド活動には消極的だったのに、急に事務所を取り仕切るようになって、パスパレを盛り返そうとし始めた。ぶっちゃけ無理だと思うんだけど、千聖ちゃん何期待してるんだろ?新メンバーでも入れるのかな?まぁ、どうでも良いけど。

 

 そんなことよりも1番深刻だったのはおねーちゃんだ。

 

「…ねぇ、おねーちゃん」

 

「……」

 

「おねーちゃん!」

 

「………」

 

「聞いてるのおねーちゃん!」

 

「…………あぁ、日菜ね。どうしたの」

 

「………ギリッ」

 

 以前までの症状が更にひどくなった。

 もうあたしが何を言っても、どんな憎まれ口を叩いても何の反応も無くしちゃってた。まるでいないかのように、無関心な態度。

 

 許せない。もう我慢の限界だ。

 おねーちゃんをこんな風にした奴を見つけてズタズタにしてやらないと気が済まない。感じたこともないドス黒い怒りが胸に湧き出てくる。

 

 吹っ切れたあたしは、丸山彩のところに行くことにした。

 まずはあいつを探し出して2度とおねーちゃんに関われないようにする。別に直接的な原因とは違ってても良い。違ったら違ったでまた虱潰しに探せば良い。取り敢えずまずは手頃なやつから関係を切らせないとあたしの気が済まない。家なら経歴を調べた時に知っている。そう思って丸山彩の自宅に行ったんだけれど…

 

「ごめんね、あの子は今家にいないの」

 

「そっか、どこに行ったのかも分かんない?」

 

「……ええ、私にはもう、あの子がどこに居るのかも分からないわ」

 

 なんか含みがある気がしたけどまぁ良いや。

 それにしても親にも分かんないってどんな奔放な性格してるんだろう。気がしれないや。

 

 結局その日は丸山彩を見つけられなかった。結構街中走り回ったんだけど影も形も見つからなかった。目立ったピンクの髪らしいからすぐ見つかると思ったんだけどな。

 

 なら次は学校に直接いくしかないよね。そう思って授業を放り出してあたしはおねーちゃんの学校に足を運んだ。

 

 またしても見つからなかった。なんでも丸山彩は部活の課外活動だとか言って、部員と一緒に朝っぱらから街に繰り出したのだとか。しかもおねーちゃんを連れて。

 

「…ムカつく」

 

 だったら登校時間に待ち伏せだ。あたしは朝早くから花咲川の校門角で出待ちをして、丸山彩を捕まえることにした。あ、おねーちゃんがいる!持ち物検査してるんだー。かっこいいな…。丸山彩はおねーちゃんと一緒にいることが多いみたいだし、これなら捕まえられそう!

 

 見つからなかった。丸山彩はバイクに乗った暴走族みたいなのに追いかけられて、友人を抱えながら校門の塀を乗り越えて学校に入ったらしい。何でそうなったの…。

 

「なんでッ…」

 

 ふー、よし逆に考えよう。丸山彩はおねーちゃんとよくいる。なら逆におねーちゃんを見ていたらいつか丸山彩が来る。これならいけるね。あ、噂をすれば来た!隣に別の人もいるけど関係ない。よし早速捕m

 

 失敗した。あとちょっとだったのによくわからない黒服の人たちに邪魔されて、校門前まで放り出された。何であんなのが学校にいるの!?意味わかんないんだけど!

 

 結局あたしの考えた作戦は悉くに全部失敗した。

 

「何で見つかんないのー…」

 

「どうしたのヒナ。悩み?」

 

「悩みも悩みだよ。結構深刻な」

 

「へぇー、それって最近授業抜け出してるのと関係ある感じ?理由は知らないけどサボりはダメだよ」

 

「2週間も家に引き篭もってたリサちーにだけは言われたくないかな」

 

「い、いやーあの時はご迷惑を…」

 

 無事復学を果たしたリサちー。結局引き篭もってた理由は謎のままだけど、今はいいや。

 

「それにしてもさ、リサちー何か雰囲気変わった?」

 

「そう?」

 

 どこか落ち着いたというか、達観するようになったというか。変に大人びたんだよね。良い変化には違いないんだろうけど、なーんか違和感。

 

「アタシも色々あったってことだよー」

 

「ふーん」

 

 ……なんて言えば良いのかな。すごい変な感じ。

 リサちーの事もあるけど、それだけじゃなくて、何だかあたしの周り全体で変なことが起きている気がする。今はあたしの生活に直接干渉してくるようなものじゃないけど、このままじゃ取り返しのつかないことになるかもしれないような、嫌な予感。

 

(…相変わらずおねーちゃんはあんな調子だし、リサちーも何か変。そういえば友希那ちゃんも妙にイヤフォンをつけてることが多くなった気がする)

 

 結局その日は気味の悪い感覚が拭えないまま1日が終わった。

 

「はぁ、何だか最近るんっ♪て来ないことばっかり」

 

 あたしは部屋のベッドに寝転がって漠然と天井を見上げる。真っ白な天井を見てるとぼんやりと思考を奪われる感覚になる。

 ふと、懐の携帯が揺れる。

 

「……あーまた来てる」

 

 千聖ちゃんからの連絡だ。最近の千聖ちゃんはすっかり口うるさくなってしまった。なんであんな半ば終わってるバンドグループを必死に立て直そうとするのかなー。理解できないや。

 しかも友達紹介したいって、なにそれ。こっちはそれどころじゃないんだけど。

 

 忘れていたイライラが戻ってきて、眉を寄せながら携帯をしまう。

 とにかく丸山彩だ。まずあいつを見つけ出さないと話が進まない。明日もあいつの家に行って探してみよう。

 

 

 

 ー

 

 

 

「……なんで見つかんないんだろう」

 

 丸山彩の家は誰もいなくて留守だった。その後も色々聞き込みとかしながら1日奔走したけど結局影も形も見当たらなかった。

 

「はぁー、動きすぎてお腹減っちゃった…」

 

 そういえば今日は朝から何も食べていない。流石に空腹感を紛らわせなくなってきた。どこかで買い食いでもしようかな。

 

「んー、美味しいねこれ!」

 

「それなー。見た目も画面映えするし、同い年が作ったなんて思えないよねー」

 

「…?」

 

 なんだろあれ、クレープ?すごく美味しそう。あ、今るんっ♪て来た。凄い久々。ちょっと気になる。

 

 よく周りを見たらみんなおんなじようなスイーツ食べてる。この辺りに売ってるのかな。

 まぁお腹が減っては戦はできぬだしね!そうと決まれば早速そのクレープ屋さんに、

 

「おーい紗夜ちゃーん!丸山ダーイブ!」

 

「わぁっ!?」

 

 え、うわっ、なに!?

 うげっ!?アスファルトの感触!久しぶり!

 

「いたた…何なの急にー…」

 

 思いっきり地面にこけたんだけど…。誰なの本当にもー!タダでさえイライラしてるのにこんな時にさー!

 

「……」

 

 仰向いた先で目の前の人と目が合う。綺麗なルビーの瞳だ。カーテンのようにあたしを覆うピンクの髪が頬に掛かる。

 見覚えがある。いや見覚えしかない面。探し当てるために何度も写真を確認して覚えた顔。

 

「いや誰」

 

 丸山彩じゃん。

 

「…それこっちのセリフなんだけど」

 

 動揺と怒りを悟られないようにそう言葉を溢す。それが今できる精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が沈みかけているカフェテリア。

 学生が来ることの多いこの羽沢珈琲店はちょうどこの時間帯には客足が落ち着く頃合いだ。なのでそこで働く店員たちも少し一服できるちょっとした憩いの時間なのだが、そんな空気を叩き割るように2人の魔王は店の席に君臨していた。

 

「………」

 

「………」

 

 流れる空気は最悪と言って良いだろう。

 一方はアルカイックスマイルを崩さず佇んでいる白鷺千聖。一方はまるで狂犬のような目つきで千聖を睨んでいる氷川紗夜。この2人が来店した瞬間に店の空気は極寒と化した。触れる者皆細切れにせんとばかりの殺傷力を放つ2人。近づくだけで危険だと心の中のブザーが掻き鳴らされる。幸いなのはあの2人以外に客はいないことだろうか。

 しかし2人をもてなす店員はそうもいかない。

 

「あっ、あの、あのの…、こ、珈琲とショートケーキですっ…」

 

「ええ、ありがとう。そこに置いといてちょうだい」

 

「……」

 

「しっ、失礼しましゅ!」

 

 逃げるようにその場を後にするつぐみ。

 客の対応としては失礼に当たるだろう。しかし責めることはできない。寧ろ内容物を一切溢さずに2人に運び切った彼女を讃えるべきだろう。彼女は勇敢だった。

 

 つぐみを見送った千聖は紗夜に向き直る。2人の間に暫しの沈黙が流れる。

 珈琲を一口つけた後、千聖は静かに口を開く。

 

「私は、彩ちゃんを愛してるわ」

 

 獰猛さを増す視線を無視して千聖は続ける。

 

「薄紅色の瞳、桃色の髪、幼稚な子供らしさ、時折発する大人らしい色気、甘い美声。あの子の全てを私は愛しているわ」

 

 手に持ったフォークでケーキの苺を突く。

 

「私の手元に一生置いておきたいくらいには」

 

「…ッ!!」

 

 ガタリと机が揺れる。椅子から立ち上がった紗夜の目には明確な敵意がある。

 

「ふふ、そう荒立たないで。私に出し抜かれたことに対して怒りを感じる気持ちはわかるけど、ここはお店よ」

 

「……」

 

 何も言わず紗夜は席に戻る。

 

「それで、貴女はどうなの?氷川紗夜さん」

 

「1番彩ちゃんの近くにいて、1番関わってきた貴女は、あの子のことをどう思っているのか。是非教えて欲しいわ」

 

 挑発的な視線と物言い。こちらを探っているのだろうか。冷静さを保とうと努めるが、あの時見た光景が脳裏に浮かんで脳味噌が沸騰するような気持ちになる。

 

 2人を見つけたのはたまたまだった。

 Roseliaの練習を終えての帰宅途中、偶然彩たち4人を見つけたのだ。声をかけようと思ったが、彩が普段どんなふうに過ごしているのかが気になり、魔が刺して、こっそり後を尾けた。その結果見たものがあのやりとり。

 会話こそ聞こえなかったが、明らかに目の前の女は彩を奪う気だった。一線を越えようとしていた。許せない。許せない。怒りで頭がおかしくなりそうだ。

 

「どうしたのかしら。もしかして言いようの無い関係だったりする?だとしたらごめんなさいね。手を出したりして」

 

「ッ!!」

 

 …ダメだ。このままでは相手にペースを持っていかれる。

 切り替えろ。いつも彩と練習をしている場面を思い出せ。たとえ相手が明確な敵だったとしても彼女と1番一緒にいたのは私だ。冷静に、冷静に考えろ。あの時の場面を冷静に…

 

「……あぁ、丸山さんにフラれたんですね」

 

「………あ?」

 

「彼女は他人に靡くような性格はしてませんからね。けど諦めきれないから他の関わりのある人を牽制しておこう、みたいな感じでしょうか。考え方が卑しいですね」

 

「……」

 

「先ほどの問いの答えですが、ええ、私個人としてはとても好ましく思っていますよ。少なくとも貴女よりかは純粋にね、白鷺千聖さん」

 

 グチャッ

 

 千聖のフォークがショートケーキを貫いた。雑に刺したせいで苺は醜く裂け、クリームと生地が皿周りに飛び散った。

 うっすらと見えるマゼンタの瞳はドス黒い感情が見え隠れしているように思える。成程、これが彼女の本性か。

 

「沸点が低いですね」

 

「貴女に言われたくは無いわ」

 

 互いの視線が突き刺さる。

 一層張り詰めた空気が辺りを支配し、店内は無音となる。カウンターから覗いているつぐみは既に半泣きだ。

 

「…やめましょう、無意味だわ」

 

「……」

 

「ここで争っても彩ちゃんが手に入るわけじゃ無い。体力の無駄ね」

 

 そう言い千聖は崩れたケーキを口に含む。生地とクリームの甘さとイチゴの甘酸っぱさが口内に広がる。

 

「そう、お互いもっと効率的にリソースを割くべきだと思うのだけれど、どうかしら?」

 

「…どう、とは」

 

「無駄に啀み合うのはやめましょう、ということよ。こんな風に会うたびに睨み合っても疲れるだけだし」

 

 どの口が言うのだろうか。

 さっきから思っていたが、この女なかなかに腹が黒い。表向きは繕ってはいるが、内は野心の塊。ああ、全く彼女はまた厄介な人を引き寄せてしまったものだ。

 

「ええ、良いですよ。貴女が2度と丸山さんに近づかないと確約してくれるのなら」

 

「……随分強気ね。私がそれにはいと答えるとでも?」

 

「してくださるとありがたいですね」

 

(…妥協のつもりは無し、と)

 

「…さて、お話は以上ですか?」

 

「ええ、これ以上話しても建設的にはならなさそうだし、この辺りでやめておくわ」

 

 それが賢明だろう。私もこれ以上感情を抑えられる自信が無い。少しでも気を緩めれば今すぐにでもこの女の喉笛を噛みちぎってしまいそうだから。

 

「ふふ、怖いわね。お代は置いておくわ」

 

「ええ、どうも」

 

 いつの間にか綺麗に完食された皿の前に丁度の代金が置かれる。

 

「ああ、それと最後に」

 

 取り出した携帯を片手に小さくほくそ笑む。

 

「貴女の妹さん、今彩ちゃんとデート中らしいわよ」

 

「…………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、こんなところで日菜ちゃんに会えるなんてビックリだよ!超越ラッキー!」

 

「………」

 

「あ、そうだ千聖ちゃんに送っとこー。はいマーガリーっと」

 

 パシャリと日菜ちゃんとイケてるツーショットを撮る。おおー、我ながら中々の映え度。これは即送信だね!"日菜ちゃんGETだぜ"っと。

 

「…あれ、日菜ちゃん食が進んでないけどお腹減ってなかった?」

 

「そんなんじゃない」

 

「そう?なら良いや」

 

 なーんか、聞いてた話と結構違うような気がする。普段からめちゃんこ元気いっぱい民らしいのだが、今の日菜ちゃんは正に仏頂面の鉄仮面!無表情でずっとこっちを見てるんだけど!顔に穴が開いてまうで!

 これでは一緒にファミレス夕飯食べて仲良く大作戦が無に帰してしまう!いやだい!アタイは日菜ちゃんと仲良くなりたいんだい!

 

 やはり例の家族問題(未確定)のせいだろうか。よしならこの私がバッチリ相談に乗ってやるぜ!丸山相談所開店!

 

「日菜ちゃーん、最近悩みとかあるー?」

 

「無いよそんなの」

 

 後即閉店。ってなわけあるかーい!

 

「えー、ほんとかにゃー?日菜ちゃんのバンドメンバーから最近鏡の前でおっぱっぴーしてるって目撃証言が多数寄せられてるんだけど(大嘘)」

 

「…はぁ?」

 

「そんな奇行をするには理由がある筈!そんな訳で日菜ちゃんのお悩みがあるなら聞いてあげるぜ!」

 

 うわ凄い嫌悪感丸出しの顔してる。前世含めても今までで1番じゃないかな。…あれ、もしかして私日菜ちゃんに嫌われてる?

 

「…貴女って噂以上に馬鹿なんだね」

 

「はい?」

 

 なんか急にディスられたんですけど。丸山ちゃんは5のダメージを受けた!

 

「何か狙いあってと思ったから大人しく着いてきたけど、何も無いんだったら言いたいことだけ言って帰るよ」

 

「んーなになに?」

 

「あたしのおねーちゃん、知ってるでしょ?」

 

「…あー、もしかして紗夜ちゃん?」

 

「そうそう。言いたいことってそれでねー。金輪際おねーちゃんに関わらないでほしいんだ」

 

「え、嫌だけど」

 

 何言ってるんだこのおませは。

 

「……はぁ」

 

「んー?…うごっ!?」

 

 急に押し倒された!てか首締まってる締まってる!

 

「関わんないでって言ってるの。あたしは貴女にお願いしてるんじゃ無い。命令してるの」

 

「むぐぐッ…!」

 

「さっさとはいって言って。ナイフで首元掻っ捌くよ」

 

 いや怖すぎィ!!

 え、この子本当に紗夜ちゃんの妹?凶暴すぎない!?目が完全にイッちゃってるんだけど!というか足で関節完全に決められてて右腕超痛いんですけど!ちょ、助けてヘルプミー!

 

「誰も来ないと思うよ。この席店員からも他のお客さんからも死角だし。それより早く答えてよ。たかだか人1人に会えなくなるくらいじゃん。自分の命より全然安いと思うんだけど」

 

 いやそれよりも離して!まともに話せない!というか息ができない!

 

「ほら早く。本当に首切るよ」

 

「ぐぎぎ…!」

 

 まずいでおじゃる!このままでは本当に第二の人生が閉幕してしまう!うおぉ、どうするどうするどうする!?

 

 その時、矢木(イマジナリー)に電流走る。

 

矢木「逆に考えるんだ、彩。殺されちゃっても良いさ、と」

 

 そうか!そうだよなとっつぁん!引いてダメなら押してみろだ!

 

 

「……しょ、食用ナイフってね、見ての通り、あんまり切れ味良く無いんだ」

 

「……?」

 

「包丁とか、調理器具に比べたら、本当に切れ味悪い。だから、人体切るのは、結構苦労するんだよね」

 

 私は日菜ちゃんの腕を掴んで、自分の首に押し当てて、引いた。ツプリ、と皮膚と血管が切れ、血が浮き出る。

 

「…ッ!!?」

 

「ほら、引きなよ。私の命を獲れるよ」

 

 あ、ちょっと力弱まった。よし押し返せ!

 

「!」

 

 ぷはぁ、ようやく十分な呼吸が取れる!死ぬかと思った!というか本当に誰にも見つかってない。えー凄。

 っていうか日菜ちゃん見てると超イライラするんだけど。すっごい久しぶりな感覚。鏡見てるみたい。

 

「やっぱり」

 

「?」

 

「やっぱりオマエのせいだ」

 

「What?」

 

「オマエのせいでおねーちゃんは変わっちゃったんだ」

 

「…はあ??」

 

「オマエのせいでおねーちゃんはあたしを見てくれなくなった!」

 

「異議あり!事実無根じゃー!ショーコはあんのかショーコは!」

 

「オマエしかいないからに決まってるじゃん。最近のおねーちゃんはずっと貴女ばっかり構ってたことは知ってるの。バンドに入ったのも最近になってだし、だから消去法でオマエしかいないの、丸山彩」

 

 えー、そんなん知らんがな。

 

「……これが最後だよ。おねーちゃんの前から消えて」

 

「だから嫌」

 

「だったらもう良いよ、はいって言うまで痛めつけて…」

 

「あ、あのー、お客様…」

 

「!」

 

 あ、店員さん。流石にあれだけ騒げば気づかれるよねー。すっごい気まずい空気だし、私の首の怪我もあるし、訝しんでる感じかな?取り敢えず大事になるのは不味いよね。

 

「あー大丈夫ブイ!ちょっと戯れてただけ!心配されるようなことは特別ナッシングだぜ!」

 

「そ、そうですか…。そちらのお客様も…」

 

「……うん大丈夫だよー、何でもない。ちょっと遊んでただけ」

 

「そ、そうですか。あまり店内でそういうことは控えていただくと…」

 

「うん、ごめんなさい。…じゃあ私先に帰るから。お金置いていくね」

 

「うん、またねー!」

 

 日菜ちゃんは丁度の代金を置いて、立ち去り様に滅茶苦茶冷たい目で一瞥して店を出て行った。だから怖すぎ。

 

 あ、日菜ちゃん結構ご飯残してる。ラッキーラッキー!お金も置いてくれたし一緒に食べちゃおーっと。

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

「けぷっ、ごちそうさまっと」

 

「丸山さんっ!!」

 

「あ、紗夜ちゃん。今度は本物だ!奇遇ー」

 

「…1人ですか?」

 

「うん、あ!そうそう、さっき日菜ちゃんに会ったんだよ!ほら、いつも話してた紗夜ちゃんの妹!もう帰っちゃったけど」

 

「………そうですか。何も、されませんでしたか?」

 

「あー…」

 

 流石に妹さんに脅されたなどと言うにはかなり口が憚られる。彩は適当にお茶を濁すことにした。

 

「特別何も。一緒にご飯食べてただけだよ。あ、もしかして叡智なこと想像しちゃったー?もうっ!紗夜太さんのムッツリ!」

 

「……なら、良いです」

 

 紗夜の視線は彩の首元を見る。うっすら残る五指のアザと切り傷。何かがあったことは明白だ。思わずギターケースのベルトを握りしめる。

 

「…丸山さん、折角ですし一緒に帰りましょう」

 

「ん、いいよ!」

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 

 恐れていたことが起きてしまった。

 

 丸山さんと日菜の邂逅。あれほど警戒していたのに、出会ってしまった。

 暫くはバンドや丸山さんのことに集中していたこともあって、日菜の注意がおろそかになっていた。今後は気をつけなければ。

 

「…あの、日菜と何を話していたんですか?」

 

「んぇ?え、えーっと、最近のことかなー…?ほら日菜ちゃんのバンドメンバーと会ったし、そのこととか!」

 

 嘘だ。視線が上に飛んだ。確実に何かを隠している。

 

「…そうですか。……その、丸山さんは日菜を見て何か思うことはありましたか?面白いとか、一緒にいてて楽しいとか…」

 

「うん、面白い子って思ったよ!また会ってお話ししたいぜ!」

 

「……………」

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

「…そういえば今日はもう遅いですが、親御さんは心配しないんですか?」

 

「んー、大丈夫だよ。私一人暮らしだし」

 

「……初耳なんですが」

 

「あれ、言ったことなかったっけ?マンション借りて暮らしてるんだよ。私は立派な独り立ちデビューを果たしているのだ!」

 

 道理でやけにバイトを掛け持ちしている訳だ。しかしそうと言うのなら都合が良い。

 弦巻さん、戸山さん、白鷺さん、そして日菜。徐々に彼女に惹かれた人たちが集まってきている。しかも今回に至っては掠め取られそうにまでなった。…いつまでも自分に言い訳をしながら燻る時期はもう終えるべきだろう。

 

「……丸山さん」

 

「なにー?」

 

「今から、丸山さんの家にお邪魔しても良いですか?色々、話したいことがあるので」

 

「えっホント!?ウチ来るの!いいよいいよ全然いいよ!やったぜ、また紗夜ちゃんのデレベルが上がった!」

 

 白鷺さんには感謝しないといけない。おかげで私は、本当の意味で自分に正直になれたのだから。

 

 楽しそうにステップを踏む彼女の後ろ姿を眺めながら、私は踏ん切りをつけた。

 

 

 

 








Q.動物に例えるなら?

紗夜ちゃん:いっぬ
千聖ちゃん:ふぉっくす
日菜ちゃん:CAT
友希那ちゃん:タカ!
リサちゃん:鶏
こころちゃん:プーさん
彩ちゃん:該当なし


転生彩ちゃんのヒミツ⑪:前世の彩ちゃんは黒髪ロングの大和撫子!どちゃくそ美麗だったけど、性格のせいで全て台無しになっていた残念美人だったぞ!


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