【前回のあらすじ!】
・(ミッシェルに中身なんて)ねーから!
・スレ山コナソ「FWF前に多数のバンドが活動休止…?妙だな…」
・蘭ちゃん「オレハオマエヲムッコロス!」
宇田川あこはライブを一体化の手段だと思っている。
複数人で音を合わせて演奏することで、一つの曲を生み出す。そして目の前の観客とも音で世界を同一化していき、同じ興奮と感情を共有できる場。そんな風に思っていた。
今だってそうだ。こうしてRoseliaのメンバーと音を合わせて演奏できるこの時間はあこにとって至福とも言える時間だ。少し前まではバンドが解散寸前まで行って碌に練習もできなかったからか、一層そう思えた。
「──今日はここまでにしましょう」
演奏を終え、友希那はそうメンバーに告げる。
「うん!いやぁ中々良くなってきたんじゃない?前までの不調が嘘みたいだよ!」
「そうですね。特に今井さんはここ最近上達が著しい。以前とは比較になりません。一時期引き篭もっていたのが嘘みたいですね」
「うっ、その節は誠に申し訳ございませんでした…」
「あの時のリサ姉何言っても部屋から出てこなかったもんねー」
「はい…、なのに今の上達具合…。何か良いことでもありましたか?」
「いやー、みんなが頑張ってるからアタシも気合い入れなきゃって思っただけだよ!」
「この調子ならライブにも間に合いそうだわ」
「確かCIRCLEでの箱ライブだったよね。前のライブよりも規模はでっかくなるから気合い入れないと!」
そしてその次はいよいよフェスへの切符へ繋がる選考コンテスト。Roseliaの目標達成につながる重要な一歩だ。言うならばCIRCLEでのライブはコンテストへの慣らしだった。
「そういえばあの人たちも出るのかな?」
「あの人たち?」
「アオハルだよ!あの2人だけの変だけど凄いバンドチーム!あれだけの実力ならこのライブにも参加しても全然おかしくないよ!」
「…確かにそうかもしれないけれど」
「残念だけれど次のライブにアオハルはエントリーしていないわ。別のコンテストに出るのか、それとも既にメンバーを募ってフェスの予選の切符を手に入れているか…」
「とにかく、今回はアオハルには会えないよ」
「えー…」
「その、あこちゃんはアオハルに会いたいんですか?」
「当たり前だよ!ドラムじゃないけどあんな凄い演奏する人たち見たことなかったもん!特にベースボーカルのハルカって人!凄いビカーってしてズドーンってしてた!一回で良いから話してみたい!」
「…あ、あこちゃんは怖くないの?もしかしたらまたあの怖い夢を見ちゃうかもしれないのに…」
燐子はあの夢のことがすっかりトラウマになってしまっていた。
紗夜がお勧めした動画を見始めてからは頻度は減って、日常行為に支障が出るレベルではなくなったものの、今でも時折見るあの幻影は彼女の恐怖を掻き立てている。
「…正直怖い。けどあこなんとなく思うんだ。あの人のことを知れればあこはもっと上達できるって」
あの時あこが見たものはその場を支配する圧倒的存在感。いずれバンド界の魔王となることを夢見ている彼女からすれば正に理想に近い存在と言っても良かった。
「だからあこはまた…!」
「やめなさい」
「! 紗夜さん…」
「仮にそのハルカがいたとしても下手に近づいてまた以前のような不調が起きてしまえば確実にライブ支障が出ます。リスクある行動は控えるべきです」
「…そうかもしれないですけど」
「紗夜の言う通りよ。確かに気になる気持ちはわかるけれど、それを理解するのはもう少し先でも良い。焦っても良い結果は生まれないわ」
「…でも、ちょっとだけでも」
「駄目です」
紗夜が即答する。
「あの」
「駄目です」
「先っぽだけでも」
「絶対駄目です」
「なんでそんなムキに」
「駄目なものは駄目です」
「わ、わかりました…」
紗夜の気迫に渋々納得する。
あこも協調性が無いわけではない。自分の勝手な行動でまたチームがあの時のような空気になることは避けたかった。
ちょっぴり微妙な空気になったところに燐子が改の言葉を差し込む。
「あ、あの、この後みんなでどこか食べに行きませんか…?今後の予定決めも兼ねて…」
「そうね、みんな行けそう?」
「ごめんなさい、私今日は行けません」
「? 紗夜今日何か用事あったっけ」
「いえ、そういうわけではないのですが、今日は家族の帰りが遅いので先に帰って夕飯を作らないと…」
「そう、分かったわ。話の内容はまた後日連絡するから」
「わかりました。では」
そう言って紗夜は荷物を持って、ライブハウスの一室を後にする。
紗夜が出た扉をメンバー4人は訝しむ表情で見る。
「…なんかさ、最近紗夜の様子変じゃない?」
「それは私も思いました。なんというか、前よりも生き生きとしてると言うか…」
「ギターの技術もリサに負けないくらいの速さで上達しているわ。練習に熱を入れていることは違いないのだけれど…」
「彼氏でもできたんですかね?」
その言葉に3人の顔が弾かれたようにあこのいる背後を振り向く。
「…彼氏。でもそんな話一回も聞いたことは…」
「普通言わないよ。自分だけの大切な人なんだもん。…うん、私だったら言わないかな」
「も、ももももしかして紗夜さんの言う家族ってそういう…!?」
「あ、飽くまであこの勝手な予想だよ!?もしかしたら本当にお母さんとかの為に帰っただけかもしれないし…!」
「でもその可能性があるっていうのも事実かなー…」
「…ちょ、ちょっと調べてみる?休みの日に紗夜さんの跡とかつけてみたりとかさ…」
「あこちゃんそれは…」
「…やめておきましょう。紗夜には紗夜の生活があるのよ。今のRoseliaはそこを侵害するほど縛るバンドじゃないわ」
あれから友希那はメンバーの自主性を尊重するようになった。なので彼氏を作ろうが練習によっぽどの影響が出ない限りは問題はない。むしろ良くなっているのならば、それを好意的に受け止めるべきだ。
「この話は終わりよ。仮に彼氏ができているとしてもそれは紗夜から話してくれるのを待つべきだわ」
そうして友希那の言葉でこの話題は打ち切られた。
●●●
「こんにちはーっと…」
紗夜にはああ言われたものの、やはり気になるのが子供のサガである。協調性?そんなものは捨てた。子供は自ら動いてナンボである。
あこは後日練習のない日に「アオハル」の2人を探すべく、ライブハウスSPACEに足を運んでいた。
(周りの人に知ってる人はいなかったし…、手掛かりがあるとすればやっぱりここだよね!)
SPACEはアオハルがライブを行った場所。2人に関する何らかの情報があるとあこは踏んだのだ。
今日はそれなりに人通りが良いようなので、誰かアオハルの情報を知っているか聞き込みをすることにした。あこは近くにいるギターケースを背負った男に話しかける。
「あの、すみません!」
「ん、なんだ」
「前にここでライブしてたアオハルってバンド知ってる?」
「…………」
「何か知ってたら教えて欲しいの!」
「……悪いが俺は何も知らん。じゃあ俺は急いでるから」
「えっ、ちょ、待って…!?」
あこの言葉を聞き終わる前に男はライブハウスから出て行ってしまった。聞き込み失敗である。
「…ふ、ふふ、失敗など当たり前!この程度では我を止めることはできない!」
一度失敗したからと言ってめげている場合ではない。まだ時間もたっぷりある。色んな人に聞いていけば良い。
あこは気合いを入れ直して、別の人に突撃しに行くのだった。
ー
「ぜっ、全滅、だとっ…!?」
あこはロビーの椅子に背から倒れる。
2時間ほど聞き込みを続けたが、得られためぼしい情報はゼロだった。
「…絶対何か知ってる筈なんだけどなぁ」
そう、聞いた人たちはアオハルのことを知らないわけではない様なのだ。ただ話したがらない、話したくない、かのような反応を見せる。それどころかアオハルと口に出すだけで嫌悪の目すら向けられる。おかげで口噂が広まってあこの聞き込みに答えてくれる人は皆無になっていた。
「むぅ、そう思う気持ちは、分からなくはないんだけど…」
何せ自分たちも少し前までアオハルの音に苦しめられていた。もしかすればアオハルはここでは嫌われているのかもしれない。
(でももう顔覚えられたから聞き込みはできない。どうしよう…)
「ちょっとアンタ」
「うぇ?」
自身の真上から声をかけられる。目線を上に向けてみるとそこにはパーカーを着た男まさりな印象を抱かせる女性がいた。
「アンタよね、さっきからアオハルのこと嗅ぎ回ってる奴ってのは」
「う、うぇ、ウェスタ!?」
ガールズバンド「LIQUID」のボーカル、ウェスタ。プロの世界で名を馳せている実力者が今宇田川あこの目の前にいた。驚きであこはその場から飛び起きる。
「ど、どうしてこんな所に…」
「どうしてもこうしても、このライブハウスはアタシたちが普段練習に使っている所よ。いて何か悪いのかしら」
「あ、いやそう言うわけじゃなくて…」
「はぁ、まぁ良いさ。それよりアンタ、アオハルを探してるんだってね」
「あっ、うん!何か知ってたら教えて欲しい、です!」
「…アンタ何にも知らないんだね。いや、ここにきて初めてならそうか」
「…?」
「…とりあえずこっち来て。落ち着けるところで話しましょう」
「は、はい!」
ー
案内されたのはライブハウスのスタジオだった。安易的な機材がまばらに並べられている。
「あれ、他のメンバーは…」
「今日は個人練習で来てるのよ。…一応知り合いが1人一緒に来てるけど今は昼飯買いに行ってる」
ウェスタは適当に二つパイプ椅子を持ってくると、あこに座るように催促した。
「んでアンタ名前は?」
「え、あ、宇田川あこです!Roseliaのドラムやってます!」
目の前にいるのはプロであり、友希那が目標の一つとして見据えているバンドのリーダー。つい敬語を口走ってしまう。
「Roselia…ああ、あの噂の歌姫が組んだバンドか」
「友希那さんのこと知ってるんですか!?」
「この辺りじゃ有名だからな」
そう言ってウェスタは持ってきたパイプ椅子に腰掛ける。
「さて、アオハルについてだったか。…まぁ、アンタの目的はハルカの方だと思うけどね」
「なんで分かったんですか!?」
「これまで何人もハルカ目的で訪ねてきてる奴がいるからな。会いたいやら歌が聴きたいやらスカウトしたいやら、正直頭が痛くなるよ」
「……」
「んでだ、アンタはどうしてハルカを探してるんだ。唯のファンってクチなら追い出すぞ。そういうのは辟易してんだ」
ウェスタはプロのバンドマンだ。その業界で生き残ってきただけに、それなりのツテも存在する。一度舞台に現れてから一切姿を見せないハルカとアオイの行方を探して、ウェスタを頼りにしてくる人は多いのだ。
ただでさえ鋭い彼女の眼光が容赦なくあこに突き刺さる。反射的に体が強張ってしまう。しかし、あこはこんな所で身を引く訳にはいかない。彼女にもやるべきことがあるのだから。
「あっ、あこは、ハルカと話がしたいんです!どうやったらあんな音を出せるのか…!それが知りたくて!」
「アンタの専門はドラムだった筈だけれど」
「専門外でも得られるものはあります!」
「…アンタは何も分かってないわね」
「…え」
「ここの奴らに聞き漁ったなら分かってるでしょう。ハルカは決してここの奴らに好かれている存在じゃない。むしろ恐れられている。どうしてかわかる?」
「……夢に出てくるから?」
「あー、まぁそれもある。けどアタシはそれはあくまで副次効果だって思ってる」
「副次効果って…何のですか?」
「これはアタシの勝手な推測だけど……自分の世界を奪われた影響かもってアタシは思ってる」
「自分の世界…」
「音楽してる奴なら必ず持ち得る自分の世界。要は演奏する時に構築するイメージさ。アンタも心当たりあるでしょ、テーマパークにいるみたいな楽しく愉快な音にしたいとか、激流みたいに激しく強い音にしたいとか、音楽に限らず何かを作る上での自分の理想とか願望がさ。ハルカはそれを無理矢理奪い取っちまうのさ。おかげでアタシらも一ヶ月近くまともに活動できなかった」
そう言われてあこの脳裏に浮き出したのは、自分たちがスランプに陥った時の記憶。
あの時の自分たちはまるで今まで作り出してきた音を忘れてしまったかのように、演奏することができなかった。思えばあれは自分の中の音のイメージが消失してしまったからなのだろう。紗夜が勧めてくれた動画のおかげである程度調子が戻ったが、あれがなければ今も自分は不調の淵を彷徨っていただろう。
「アイツの強すぎる光は他人の世界を焼いて奪う。それもあってハルカはこのライブハウスじゃ触れちゃいけない毒物扱いよ。名前すらタブーだわ」
「……」
「オーナー曰くライブ以前にもアイツが原因で音楽人生を絶たれた奴も大勢いるらしいしね。噂じゃハルカと一緒に演奏した奴が顔中から血を出して病院送りにされたとか」
ま、アタシは戻ってきたの最近だから眉唾物な噂だけどね、と手に持っていたドリンクを飲む。
「アタシからは関わらないことをお勧めするわ。…ハルカは何でかライブをすること自体は消極的だし今回のフェスにも出ないと思う。忘れるなら今のうちよ」
「……そんな」
できるわけがない。そんな逃げるような真似を。
宇田川あこは魔王になりたい。バンド界を震え上がらせるほどに、その名を知らぬ者がいないほどに、偉大で凄く、カッコイイ大魔王に。
彼女は、ハルカはそんな理想の自分になるための大事な何かを知っている。そんな気がするのだ。彼女のことを知れば自分はもっと大きく前に進めるかも知れない。Roseliaの中でも1人停滞感を感じている現状、絶対にここで退くわけにはいかった。
「……はぁ、そんな目で見ないでよ」
そうウェスタはため息を落とす。それはどこか諦めたかのような態度だった。
「…ま、そこまで覚悟据わってるなら止めないけどさ。話したきゃ話せば良いさ。アイツ自身性格は悪いってわけじゃない。アンタさえ良ければ話は通しといてやるよ」
「ほ、ホントです──」
「ちょっと」
その声はここにはいなかった第三者。部屋の入り口に立っている数人の少女のうち1人から発せられたものだった。
ウェスタはその顔ぶれに見覚えがあった。彼女たちはこのライブハウスで練習、活動をしているガールズバンドだ。あの時のライブにも出ていて、それなりに歴や実力もある。しかしどうしたことか、全員が顰めた面をしている。
「…何か用?この部屋には借用時間終了まで絶対入ってくるなってオーナーに言われてた筈だけれど」
「…現役プロはお偉くて羨ましいわね。それより話聞いてたわよ。その子さ、あのハルカに会いにきたんでしょ?前の奴らみたいに」
「だったらなんだ」
「それで何人目なのかしらね。ハルカ目的でこのライブハウスに来たやつは」
態とらしく少女は言う。
「来たやつは揃いも揃ってアオハルの話ばっかり。あのライブで活躍したやつはあいつらだけじゃ無いって言うのに…」
「嫌味言いに来ただけなら帰れ。こっちは取込み中なのよ」
「うるさい。…あのライブはね、私たちフリーのバンドが事務所からスカウトを受けられる大きな機会だったのよ!それをアオハルが全部持って行った挙句、全部断ってる。許せるはずない…!私たちもあの日のために努力していたのに!声すら掛けられないなんて!!」
ライブの次の日、SPACEは人で溢れかえっていた。アオハルの音を聴きたい者、スカウトしたい者で。
そう全員だ。全員がアオハルのみを目当てに来ていた。それ一つを求める姿は亡者の様で、他のバンドは歯牙にも掛けられなかったのだ。無論、「LIQUID」も。
「負けた理由を他人のせいにするな。スカウトを受けられなかったのは、アンタらの実力不足だ」
「ふざけないで!アイツらさえ、アオハルさえいなかったらきっとアタシたちだって日の目を見ていた!あんな…あんなヘラヘラした奴らに全部取られて…!貴女は悔しくないの!?」
「そ、そうだよ…!あたしなんて、ライブに来てた彼氏がライブ以来おかしくなっちゃって…!ずっと部屋に引き篭もる様になっちゃったんだよ!?」
「私も家族が…」
「私もずっと夢に…」
「私も…」
メンバーが一人また一人と不幸の風呂敷を広げていく。困惑しているあこを横目にウェスタは息をつく。
「アンタらさぁ、バンド舐めてんの?」
「はっ…?」
その一言に空気が張り詰める。バンドグループの5人は一斉に言葉を切られる。
「別にさ、音楽をするなら勝手にすれば良いさ。チームを組もうが、好きな楽器を使おうが、それで良い。けどな、ライブの舞台に立つ以上はきちんと覚悟持ってやんねーといけないんだよ」
彼女たちは何も言えないままウェスタは言葉を続ける。
「複数のバンドが演奏する以上、絶対に上手い下手の優劣ってのは出るもんなんだよ。そこに私情だの努力だの関係ない、結果が全てだ。言ったでしょ、アンタらの実力不足なのよ」
「…で、でも私の彼氏が…」
「アオハルが悪いことをしたか?アイツらは自分たちの音楽を全力で表現しただけだ。悪いことなんて一個も無いんだよ。悔しいなら自分たちの音で見返してみろ」
ウェスタの言葉に少女は黙り込んでしまう。
「他人のせいにするな。現状を嘆く気持ちはわかる。けどな、それは誰かのせいじゃ無い。アイツの、ハルカの生み出した音の結果だ。音に罪悪があると思うか?アタシらはハルカの音に負けたんだよ」
或いはハルカ自身が彼女たちの破滅を願って歌ったのなら彼女たちの恨みも尤もだが、そんな可能性は0%どころかマイナスである。
「…ハルカは言った。アタシたちから全てを奪うって。んでその通りになった。けどそれを取り返せるかはアタシたち次第だ」
奪われたものは取り返すしかない。必死に足掻くしかないのだ。少なくともウェスタはそうして自分たちの音を取り戻した。
「…アンタらに今できることは必死こいて練習することだけよ。無駄でも、手応えなんてなくても、やり続けるしかないんだよ」
「………ッ」
「それかまたハルカに会えば案外なんとかなるかも知れないわよ」
「 誰があんな奴に!!!」
「あっ、待ってよリーダー!」
そう吐き捨てると、少女は仲間と共に部屋から出ていった。ピリついた空気の残穢が残る中、あこは恐る恐る声を出す。
「……あ、あの」
「悪いな、嫌なもの見せて。前まではあんなふうに噛み付く奴じゃなかったんだけど…」
「だ、大丈夫です」
あのライブ以来、このSPACE内は、主に二つのグループに分かれていた。ハルカに心酔する者と、反抗する者だ。
彼女たちは反抗派だった。なまじ実力があるだけに、それをあっさりと上回ったアオハルのことが心底気に入らないのだろう。認めないだけのプライドなど、唯の贅肉に過ぎないと言うのに。
「……アンタも今日は帰りな。どの道ハルカはこのライブハウスにはいない。常連ってわけでもないしな」
「えっ」
「…また後日話してやるから帰りな」
「…うん」
ーーー
「……なんだかすごいの見ちゃったな」
ハルカが原因でこのライブハウスで起きているトラブル。ハルカがこれを知ればどうするのだろうか。悲しむだろうか。あんなに楽しそうに歌っていたのに、あんなに幸せな歌だったのに、こんな不和に繋がるなんて、あこには考えられなかった。
「…」
音は人を動かす。
あこは湊友希那の歌に惹かれてRoseliaに加入した。それは友希那の歌に心を動かされたからに他ならなく、言い換えれば音楽の力で引力の様に引きつけられたということ。Roseliaのメンバーは皆そんな感じだ。湊友希那の歌の力に引き寄せられ、結成されたバンド、それがRoselia。
しかし最近は違うことを考える様になった。
それは音楽が人を不幸にし得る可能性。アオハルの演奏を聴いてRoseliaは不調になった。一歩間違えれば瓦解していたかもしれない。そして今日ハルカの演奏が原因で嘆いている人がいる光景を見て、嫌な未来を幻視してしまう。
今後Roseliaがさらに有名になって、名声を獲得した時、そこから蹴落とされたであろう誰かに「お前らのせいだ」と言われることが恐ろしくてたまらなかった。きっと友希那は自己責任だと切って捨てるかも知れない。あこもそう思う。そう思うが、自分たちの演奏で不幸になる人が出てきてしまったという事実が、指に刺さった木屑の様に心に残り続けるだろう。
そんな想像があこに顔を前に向ける気力をなくさせていた。曲がり角にいる人にも気づかず。
「いたっ!」
「うぼぁっ!」
人にぶつかり思わず尻餅をつく。バラバラとぶつかった相手が持っていたであろう荷物が無情にも床に散乱する。
「あわわっ、ごめんなさいっ」
「………」
相手は頭から血を流して微動だにしなかった。
「ひ、ヒイィィィーーーッ!!?」
顔を真っ青にしながらも、あこは倒れた血だらけ少女に駆け寄る。
どうにかしようと動くが、直視しきれない現実にパニックになって何をどうしたら良いのかを見失う。とにかく何かしようと呼びかけ、ゆさぶる。
「ねぇ!ねぇ!?大丈夫!?生きてるよね!?」
返事が無い唯の屍のようだ。
あこはここで本当にまずい事態になったことを察する。
「…あ、あはは…、友希那さんごめんなさい。あこ、犯罪者になっちゃった…」
このまま自分はどうなるのだろう。警察に連行されてしまうのだろうか。きっと友達や家族に大変な迷惑がかかるだろう。そうなれば勿論Roseliaの皆とも会えなくなる。
「ううっ、嫌だよぉ…!お別れしたく無いよぉ…!友希那さんたちともっと演奏したいよぉ…!」
しかし後悔しても遅い。既に目の前には自分が作り上げた人の肉が転がっているのだから。
あこは完全にこの現状を諦観する。
(…どうしよう、まずは救急車かな。あ、自首もしなきゃだし警察からかも…)
絶望に項垂れている中、携帯電話を取り出す。
人を致してしまった以上、言い逃れできるはずもない。そうして最後に殺してしまった女性にごめんなさいを言おうと倒れている桃色の髪の少女を見る。目が合った。
「……」
「……」
「……ぇ」
「ハイジョージ☆」
「ぎゃあぁぁぁぁ!!?死体がしゃべったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
ー
「もう、死体なんて超失礼だね!私怒っちゃうよ!プンプン!」
「ご、ごめんなさい…」
「うんいいよ!」
「えっと、その、だ、大丈夫なの?頭から血が出てたけど…」
「あぁ、アレ買ってきたトマトジュースだから大丈夫。ぶつかって溢しちゃってさ」
「そ、そうなんだ…。よかったぁ…」
「まさか本当に死んだと思った?アレで人間死ぬなら現代スポーツは殺人だぜ!」
「そ、それは慌てて…」
「それよりさ!貴女Roseliaでしょ!ドラム叩いてたちっちゃい子!」
「え、うん……いや、その通りだ!Roseliaのメンバーにして世界で2番目のドラマー!宇田川あことは我のことだ!!」
「おーかっちょいー!」
お年頃ポーズを決めるあこにパチパチと拍手を送る。どうやら桃髪少女のお気に召したらしい。
「よしなら次は私よ!」
ぴょんと前に飛び出して、しっかりとした仁王立ちをする。
「嵐あるところに私有り!お祭り騒ぎに私有り!花咲川のディザスターこと、丸山彩とは私のことだ!」
シャキンと自信ありげにポーズを決める。
「……だ、ダサい」
「え"ーーっ!?徹夜して考えたポーズなのに!流石にダサいことは無いでしょ!」
「ダサいよ!ダサダサのダサだよ!何その構え!ワカメじゃん!」
「違うよメカブだよ!」
「どっちも一緒だよ!ダサさが!」
「全然違う!全くこれだから素人は…」
「な、なんだとー!?少なくとも決めポーズはあこの方がカッコいいもん!素人はそっちだよ!」
「はぁー!?そこまで言うなら上等じゃ!ショーブだショーブ!」
「受けて立つ!お前みたいな変な奴に負けるか!!」
ーーー
「…何やってんだアンタら」
連れが帰ってくる気配がなく、気になって部屋の外まで探しにきたウェスタ。
連れはすぐに見つかった。何故か先ほどまで話していた宇田川あこと共にちょっと常識とは言い難い姿勢をとりながらだが。
「あっ、ウェスタさん良いところに!」
「グッタイだウェスタちゃん!唐突な問い!どっちが凄い!?」
「いやその前に状況を説明しろ」
「今私とこのあこちゃんは譲り難い勝負をしている!」
「どっちがよりカッコいいポーズをとれるか!」
「相手の心をへし折れば勝ちだよ!」
「今はあこが優勢!」
「はぁー?寝言は寝て言いやがりませ!私が勝ってるに決まっとろーが!」
「あこだよ!」
「私じゃ!」
「「さぁどっち!!」」
「喧嘩両成敗の引き分けだバカ共が!!!」
「「ぎゃあッ!?」」
ー
「酷いよウェスタちゃーん」
「五月蝿い、そもそも廊下であんなことやるな。迷惑でしょうが」
「そこはまぁそう言う彫像とでも思ってもらうのが吉だよ」
「吉じゃねーよ凶だよ。いやアンタの場合は狂か」
「あ、あの…、その人ウェスタさんの知り合いなんですか?」
「…あー、ほらさっき言ってた連れよ。全く、帰りが遅いから心配して来てみれば、アホかアンタは」
「心配してるれたの?キャーウレシー!今をときめくバンドマンに心配されちゃった!夢女子になっちゃう!」
「……」
「イタイイタイ!やめてー!お餅になっちゃう!あんこかけちゃわないでー!あ、でも私はきな粉の方が好みだからそっちでお願いします!」
「変な人ですね!」
「変の範疇を超えて狂気だけれどね」
外国のネットミームの如く支離滅裂なことを口走る彩。しかしこれが彼女の常なので、ウェスタはもう慣れたものである。
「それでそれで?どうしてあこちゃんはここに来たの?Roseliaは別のライブハウスで練習してるって聞いたけど。ハッ、もしかして、SPACEに宣戦布告…!?」
「違うわ馬鹿。…その子はハルカに会いに来たそうよ。態々探しにここに来たってわけ」
「ハルカ………へぇー、ほぉー、ふぁーん」
「な、なに?」
「…よし!じゃあ私が話つけといてあげる!確かRoseliaって来週ライブあったでしょ?そこにハルカちゃんが行くようにさ!」
「えっ、ホント!?」
「ホントもホント!私実はハルカちゃんとはハイパーフレンドなんだよね!それくらいジュースを買うくらいインスタントだぜ!」
「やった!…ククッ、褒めて遣わすぞ丸山彩!」
「ははーっ」
先程まで啀み合っていたと言うのに、2人はあっさりと打ち解けた。それは果たしてあこが能天気すぎるのか、彩が阿保すぎるのか、ウェスタは考えを放棄した。別に考えなくても良いことだ。
「ほら、話は終わったか?終わったらアンタはもう帰んな。アイツらに会ったらまたややこしいことになるわよ」
「うん!ウェスタさんも彩も今日はありがとう!」
「何で私だけ呼び捨てなんだー?年上だぞ我ー」
ーーー
「…はぁ、本当アンタ変なことしか起こさないわよね」
「変なことって何よ。あこちゃんとバトってただけじゃん」
「…今日1日だけで氷川の奴の苦労を身に染みてるよ」
丸山彩に行く先行く先で暴風の如く振り回される。一つの行動で無数のトラブルとツッコミどころを生み出す彼女は正直手に追うので精一杯だ。
しかし彼女の時間をもらっているのは此方なのだ。相応のリターンももらっている以上、強く文句は言えない。
「さっ、ご飯食べよーぜ。色々買って来たし!」
「……食べたら続きやるわよ」
「うんいーよ!」
ウェスタは彩と一緒に個人練習をしている。ウェスタが頼み込んだのだ。驚くほどあっさり許可してもらえたが。
丸山彩の音は引力だ。少なくとも共にセッションをする時に感じるものはそれに近い。まるで存在そのものに引き寄せられるような不可視のエネルギー。マトモにやれば光に近づきすぎて焼殺されるだろう。
しかしそんな彼女と音を交わすからこそ得られるものもある。彼女が持つものは気持ちの問題や精神論ではなく、単純な実力と力。そしてその力の中にある何か。ウェスタはそれが自分が先に進む上で絶対に必要なものと確信した。だからあこがここに来た理由も彼女には理解できた。行き詰まり、一度どん底に落ちかけて、それがもう嫌だから彼女に期待してハルカに会いに来た。もしかすれば丸山彩は自分たちの知らない何かを知っているかもしれない。そんな期待を胸に秘めて。
『LIQUID』はNo. 1を取るために、ウェスタが初期メンバー3人で結成したバンドだ。何かで1番になりたい。そんな思いを持った学生が集まった集団。そうして紆余曲折ありつつも、死に物狂いで努力して、プロの領域まで足を踏み入れ、今ではその世界で戦い抜けるほどの実力を手にした。しかし時折現れるのだ。目の前の化け物のような突き抜けた才能を持った存在が。今までの努力を嘲笑うような実力を持った奴が。
だから逆に掠め取ってやるのだ。自分たちより力量が上回っている存在が現れるからこそ、まだ上にいけると思わせてくれる。まだ死に物狂いになれる。それが果てすら到底見えないものだとしても。
(…目標は見えないくらいが丁度良いからね)
「〜♪」
一時とはいえ自分から音を奪ったのだ。ならば、技術の一つくらいは奪い返されても、文句は言えないだろう。今度はメンバー全員で押しかけて、とことん付き合ってもらおう。
(それが私たちを狂わせた、こいつの責任の取らせ方だ)
●●●
衣を纏った塊を油の中に入れる。じゅわっと油の弾ける音が聞こえて、重厚かつ清涼な香りが鼻腔を突いた。揚げ上がったことを確認して、中から取り出し、皿の上にトマトとキャベツと一緒に盛り上げる。
…とりあえずこれでいいかしら。
前の家だと時々しかしてなかった料理も随分手についてきた。丸山さんが教えてくれたおかげでもあるけれど、我ながら今回は上手くできたと思う。後は彼女の帰りを待つだけだ。
ふと窓から外を見るとすっかり空は赤焼け色になっていた。
…こんなにも落ち着いた気持ちで家事をこなすのは久方ぶりだ。理由はこの家が安心できる場所というのもあるけど、何よりやり甲斐がある。家事をして、料理を作って、頑張って喜んでくれる人がいる。それが何よりも私の気持ちを昂らせた。
「ただいま〜」
そんな物思いにふけていると、早速件の王妃様が帰って来た。一旦作業を中断する。
「お帰りなさい、丸山さん」
私は笑顔で丸山さんを出迎える。いつも通りの笑顔で彼女は玄関を通って来た。
「あっ!この匂いは、コロッケだな!?やったー!今日はご馳走だい!」
「ちょっと丸山さん、靴ぐらいちゃんと揃えなさい!あとでもちゃんと手も洗って!」
「あ、ごめーん」
「全く…」
一緒に住んで分かったことだが丸山さんは結構ズボラだ。これまでの交友である程度察していたが、まさか玄関で寝たり、1日3食天ぷらで済ませるとは思わなかった。彼女は家でも自由らしい。
そうして私は彼女の意味不明な生活習慣を改善すべく、こうして家事を率先して行なっている。
そんな私は丸山さんを何とか諌めて料理の乗った丸机の前に座らせる。
「いっただっきまーす!」
「はいどうぞ」
「うおぉ!美味い!美味すぎる!私は今人間蒸気機関車よ!」
「そんな急いで食べたら胃もたれするわよ」
「大丈夫、私胃は頑丈だから」
そんなこんなで山のように積まれたコロッケは数分で彼女の胃袋に収まってしまった。
「はぁ、美味しかった!また上手になったんじゃない?凄いよこれなら料理番組でも覇権獲得間違いなし!」
「お粗末さまです。…大袈裟よ。まだ丸山さんの方が上手だわ」
長年一人暮らしをしているだけあって丸山さんの料理は美味しい。私にとっての母の味というやつだ。
「それで、今日は何をしてきたんですか?」
「ウェスタちゃんと一緒に練習!」
「……ウェスタさんと?」
「ま、軽くセッションしただなんだけどね」
「……どうしてセッションを」
「なんか私にしか頼めない〜って言ってきてさ。FWFに出るらしいからそれまでレベル上げの為にしばらくお願いしたいってさ」
「……」
仮にもプロがバンド歴の短い丸山さんに直接お願いするなんて…。ウェスタさんから見れば決して気分の良い存在ではないはずなのに。…実力の向上のためなら恥も捨てられるところは友希那さんとよく似ているのかもしれない。
「ウェスタちゃんプロなだけあって歌すごい上手でさー。デュエットめっちゃ楽しかったんだよね!」
「………」
一瞬だけ食事を運ぶ箸が止まる。そうですか、楽しかったんですか…。
最近自分は思いの他独占欲が強いことを知った。彼女が他の人と仲睦まじくしている話を聞くだけで私の中に黒い嫉妬が現れる。時には彼女を監禁しようなどという人権を無視した非常識的なことにすら思考が飛んでしまうほどだ。
「そういえばさ、紗夜ちゃん私に敬語使わなくなったよね。ここに住む前はガチガチに他人姿勢だったのに」
「…まぁ、もう他人というわけじゃ無いし、家にいる時ぐらいは…」
「その割にはまだ私のことは丸山さん呼びなんだねー」
「うっ、それは…」
ごもっともだが、正直なことを言うとまだそこまで距離を縮められる勇気が無い。
自宅に乗り込んだ挙句住み着いて何を今さらと思うかもしれないが、それとこれとは話が違う。仮に丸山さんを呼び捨て名前呼びしてしまおうものなら私のヒットポイントは瞬時に0になることだろう。以前と比べて丸山さんとの時間は圧倒的にあるのだ。ゆっくり慣れていくしか無い。
「まぁ、最近の紗夜ちゃんは積極性がカンストしてらっしゃるからね。ふふ、私のメンタルケアは完璧だったわけだ!あ、食器洗っといたよー」
「ありがとう。こっちもお風呂沸かしておいたわ」
「てんきゅー。さ、お風呂沸くまでテレビ見ようぜ!テレビ!…えっと、リモコンどこだっけ…」
そう言って机の下を探し始める丸山さん。本当に楽器の管理以外は杜撰なんだから…
「テレビの下の棚にしまっているわよ」
「あっ、さんきゅ!いやー紗夜ちゃんが居てくれると助かるなー」
「丸山さんの私生活がだらしな過ぎるだけよ」
彼女がリモコンの電源を入れると、流行りのクイズ番組が映る。
すると丸山さんは押し入れから手頃の楽器の入ったケースと手入れ用具の入った箱を持ち出した。そうしてケースから手入れ用具を一通り取り出した後、私の膝の上に腰を置いた。
「…丸山さん?」
「うーん、ジャストフィット。あ、痛かったら言ってね」
「…いえ、大丈夫よ」
丸山さんは楽器の手入れをしながらテレビの画面を見る。まったりと、その背中を預けてくれている。
そんなじんわりとした幸せを受けながら、私は彼女の手入れの邪魔にならないように腰のあたりを両手で抱いた。
「とうちゅうかそう…?どんな漢字だったっけ…」
「冬虫夏草よ。主に昆虫に寄生する菌糸類。今でも薬として使われることもあるのよ」
「へー、流石紗夜ちゃん。物知り!」
日菜に勝とうと躍起になっていた時に色々していたせいで余計な、とは言わないが妙に埃かぶるような知識が私の頭には多かったりする。
「丸山さん、お風呂の後にセッションしましょう」
「ん、いいよ。今回は何使って欲しい?」
「じゃあ……ドラムで」
「おけー。紗夜ちゃん入ってる間に準備しとくね」
「ええ、お願いね」
この家で私は生まれ変わった。
今までの私とは訣別して、新しい自分を歩んでいく。それはきっと以前までよりもずっと、素晴らしいものになるだろう。
「うーーーん、この問題わかんない…。紗夜ちゃんわかる?」
「ええ、この問題はね…」
だって、こんなにも愛おしくて優しい彼女が隣にいるのだから。
●●●
「あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“ッ!!!!!」
怒りに任せてその場にあるものを投げる。おねーちゃんとお揃いだった水色の目覚まし時計。部屋の壁に激突して、少しの中身をぶちまける。
それでもあたしの怒りは冷める気配がない。
数日前、おねーちゃんが消えた。
おねーちゃんが帰ってこなかった次の朝、書き置きの一つもなしに、部屋から一切の私物が消えた。その日以来おねーちゃんは一度も家に帰って来ていない。
あのクズ親はおねーちゃんのことなんか気にも留めてないから捜索届けの一つも出しやしない。勿論あたしは探したけど、知ってる場所にはどこにもいなかった。
「なんでッ…!なんでぇ…!!」
訳がわからなかった。
どうして家を出たの?どうして何も言ってくれなかったの?どうしてあたしも連れて行ってくれなかったの?どうして、どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!
…そんなの決まってる
アイツだ
アイツのせいだ
やっぱりあの時に徹底的にやっておくべきだった!!
あたしからおねーちゃんを奪うなんて!!絶対に許せない!!
罰だ。罰を受けさせてやる。
あたしのおねーちゃんを奪った報いを。
絶対に。絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に!!!
「───待ってて、すぐに連れ戻してあげるから。おねーちゃん」