まるやまっ!   作:わらしべいべー

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【前回のあらすじ!】
・まじかる☆ゆうえんちでぇと
・過労死型変身系きぐるまー奥沢美咲
・一晩で搾り取られた(物理)女、丸山彩





ららいぶ!

 

 

 

 

 

 もうすぐ本番が始まろうとするCIRCLEでのライブ。最後の調整とリハーサルを済ませたRoseliaは本番を待つのみとなった。

 久しぶりの本番ライブに燐子は緊張した様子だ。

 

「うぅ…緊張する…」

 

「だ、大丈夫!あこたち前のライブよりずっと上手くなってるんだから、絶対成功するよ!」

 

「そうよ、本番を迎える前に気持ちで負けていてはいけないわ。特に燐子は技術はこのライブに出ている誰よりも秀でていると私は思っているわ。気の張りすぎでそれが発揮されないのは勿体無いわよ」

 

「そーだよ、燐子は凄いんだからもっと自信持って!」

 

「…二人ともありがとうございます。ちょっとだけ気持ちが楽になりました」

 

「よし!りんりんの調子も戻ったし…ククク、今日は我の闇の力を存分に振るってやろうぞ!」

 

 普段よりも一層張り切った様子のあこ。リサが意外そうな声を漏らす。

 

「そう言うあこは今日はやたら力入ってるね。久しぶりのライブで火がついた感じ?」

 

「それもあるけど今日はなんて言ったってあのハルカがあこたちのライブを観に来るんだよ!気合いしか入らないよ!」

 

「…ちょっと待ちなさい。それは本当かしら」

 

 聞き捨てならぬと言わんばかりに友希奈が声を上げる。

 

「うん!ハルカと友達の人が今日来るって言ってた。ハイパーフレンドなんだって!」

 

「……へぇーそうなんだー。それならアタシも気合い入れないとねー」

 

「ええ、彼女が来ていると言うのなら尚のこと、今回のライブは気を入れていかないといけないわ」

 

 Roseliaは一方的ながらハルカと因縁がある。そんな彼女がここに来ていると言うことは、またとないリベンジの機会だ。友希那の中で気力の炎が点火する。

 

「…あの、もう一回だけ通しで練習しませんか?本当は待ち時間だからダメかもしれないけど、まだ時間がありますし…」

 

「私は白金さんに賛成です。皆さんの言う彼女に見せるのならそれを想定してより完璧に仕上げるべきですので」

 

「ええ、そうしましょう。次は私たちがアオハルに目にもの見せる番よ」

 

 各々で楽器を手に取り始めたその時、突然控えの部屋の扉が開く。開いた扉の前には黒髪のショートに赤のメッシュが入った少女が立っていた。

 

「貴女は…」

 

「…」

 

 友希那は記憶の中を掘っていく。…思い出した。確か今回参加していたAfterglowのボーカルだ。以前のライブでも変に突っかかってきたのが印象的だった子。

 前回とは違い、彼女は何も言わずにこちらを見渡している。

 

「…あのー、何か御用ですか?」

 

 その問いに少女は完全無視する。リサは軽くショックを受けた。

 

「…久しぶりですね、友希那先輩」

 

「…何か用かしら。これから練習なのだけれど」

 

「別に、最近ライブで見てなかったので逃げたんじゃ無いかと心配になって」

 

「なんだとーッ!?」

 

「あこちゃん…!」

 

「落ち着いてください宇田川さん。…貴女はAfterglowの美竹蘭さんでしたよね。本番も近いと言うのに、こんなところで油を売っていてよろしいのですか?」

 

「問題無いですよ。そっちと違ってあたしらは準備バッチリなんで」

 

「そうですか、それは本番が楽しみですね」

 

「そうですね、あたしも貴女たちを踏み潰すのが楽しみですよ」

 

「…なんですって?」

 

 その蘭の言葉に反応したのは友希那だ。

 こう見えて友希那は案外短気だ。特に音楽に関してはここ1番の気の短さを発揮する。こうもわかりやすく挑発されれば尚更である。

 競り合う二人の視線に燐子は思わず後ずさる。

 

「そう、貴女がそう言うなら望み通り返り討ちにしてあげるわ」

 

「もしかして耳が遠いんですか?あたしは踏み潰すって言ったんですよ。耳がダメなのは音楽を扱う人間としては致命的ですよ」

 

「薔薇の棘に刺されて退散するのが目に見えるわね。泣き言を垂れても知らないわよ」

 

「へー、ならそっちもあたしらに焼かれる覚悟アリってことですね」

 

「ひえぇ…」

 

 二人の負けず嫌いな性格も相まってヒートアップしていく二人の口喧嘩。場の空気は最悪である。反りが合わないとは思っていたがまさかここでとは。紗夜は内心嘆息する。

 

「はーい、そこまでだよ〜蘭」

 

 その時、突然現れた少女が蘭を制止した。蘭は吐き捨てたような表情の後、大人しく引き下がる。

 

「友希那も、これ以上は不味いよ」

 

「…ええ、ごめんなさい。少し熱くなったわ」

 

「いやぁ〜、ごめんねウチの蘭が。最近変に気が立ってて喧嘩っ早くてさ〜。あ、私は青葉モカ。Afterglowのギターやってるよ〜、よろしくね〜」

 

 妙に抜けた口調でこちらに語りかけて来るモカ。どうやら普段は彼女が蘭のストッパー役を務めているらしい。

 

「…いえ、大丈夫です。こちらも失礼を」

 

「大丈夫だってそんな畏まらなくても〜。蘭はああ言ったけどこっちとしてはお互い楽しんでライブしたいんだ〜」

 

 まぁ、さっきの態度の手前難しいと思うけどね〜と、モカは苦笑いを浮かべる。

 

「あ、そうだ。あこちん…だっけ」

 

「…?」

 

「ライブ終わったらトモちんが話したいって言ってたよ〜」

 

「えっ!?」

 

「それじゃモカちゃんらはここいらで失礼しま〜す。迷惑かけました〜。ほら行くよ蘭」

 

「……フン」

 

「ちょ、ちょっと待って…!」

 

 その瞬間、唐突に勢い良く扉が開かれる。本日2度目の来訪者に全員の意識が扉へ向かう。

 まず目に入ったのは華やかな、というか眩しい衣装だった。この部屋自体もしっかり灯りがついているのに普通に眩しい。まるで衣服に蛍光塗料を塗りたくったかのようだ。そしてそこに装着された大量のペンライト。正に人工発光の完全体とも言えるその姿に全員が絶句する。

 そんな彼女らを他所にまるで丑の刻参りの如き様相をした少女は元気よく声を張り上げる。

 

「おっはろーー!地球誕生以来、いまだ発生したことのない空前絶後の超絶美少女!皆んな大好きハルカちゃん!応援装備で参上だぜーーッ!!イェア!」

 

 この場に黒髪、黒目のイかれた女が参上した。いや場の空気は既に惨状である。

 

『………』

 

「……あり?」

 

 彩は自分の登場が盛大に滑ったことを自覚した。だからか、己に向けられる二人の憤怒の視線に気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 

 す、滑ったーーーーっ!!

 

 やーっちゃった、やっちゃった!滑ってこけるどころか、そのままトリプルアクセル決めて顔面から地面に激突したくらいには最悪の空気だよこれ!

 っていうかせめて何か言って!なんで誰も何んも言ってくれないの!?紗夜ちゃん、その哀れみの目をやめて!傷口にドリルライナーだから!

 

「ハ、ハルカ…?」

 

 あ、あこちゃん!ちょっと私あこちゃんにまでそんな目向けられたら生きる気力無くしそうなんだけど!モウマヂムリ、リスカシヨ…。

 

(…大丈夫?丸山さん)

 

(もう無理、あたしゃ芸人失格ダヨ。引退しかねぇ)

 

(貴女いつから芸人になったのよ…。それよりしっかりして、丸山さんにはこの空気をどうにかする責任があるんだから)

 

(あい…)

 

 てか今気づいたけどRoseliaの皆んなめちゃんこ衣装お洒落じゃん!カワイイ!えー、誰作ったんだろ。

 

「うおっほん、やっほーあこちゃん!ひさ…じゃなくて、始めまして!皆んな大好き超越美少女ハルカちゃんだよー」

 

「は、ハルカだ!あこの名前知ってるの!?」

 

「勿の論だぜ!話はしーっかり超絶美人な彩ちゃんから聞いているからね!すっごいドラマーがいるって聞いて世界の果てからドビュンと一っ飛びさ!」

 

「わぁ、半分くらい信じてなかったけど本当に来てくれるなんて!やったー!」

 

 嘘…、私の信用値低すぎ…!?たった今私はあこちゃんの中でただの怪しいお姉さんになっている説が浮上。泣けるぜ。

 でもそれはそれとしてお目目輝かせてるのはかーわーいーいー。ふふ、実家の妹を思い出すぜ…。元気にしてるかなー。

 

「…ハルカ」

 

「あ、友希那ちゃん」

 

「私の名前も知っているのね」

 

「そ、そうだよー、彩ちゃんから聞いてたしー」

 

「…!彩と知り合いなの?」

 

「あーうん、友達だからねトモダチ、あははー」

 

「……」

 

 なんか紗夜ちゃんの無言の視線が突き刺さってるんですが。私何も悪いことしてないよね!?なんでそんなトゲトゲしたお目目で見てくるの!彩ちゃんこわーい!

 

「…ハルカ、私たちの音を聞いてくれるかしら」

 

「うん、だって今日はそのために来たんだから」

 

 その答えを聞くと友希那ちゃんは満足そうに笑った。あ、可愛い。いやー、やっぱクーデレは地球が生み出した財産だわ。これだけで金払って拝む価値ありだもん。

 そんなやりとりをしてたらいつの間にか時間が過ぎてたみたいでスタッフの人が部屋に入ってきた。

 

「あのー、そろそろ本番が始まるのでお客様は観客席に戻っていただけると…」

 

「はーい、んじゃ皆んな頑張ってね!」

 

「うん!絶対ハルカを痺れさせてやるんだから!」

 

 そうしてハルカは部屋を後にした。スタジオにはRoseliaの面々だけが残る。

 

「…あれ、そういえばAfterglowの人たちは?」

 

「ホントだ、いつの間に出ていったんだろ」

 

「…すみません、少しお手洗いに行っても大丈夫ですか」

 

「ええ、本番には遅れないようにね」

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

「丸山さん」

 

「あ、紗夜ちゃん」

 

「…いきなり部屋に来た時は肝が冷えたわ。正直いつバレるものかとヒヤヒヤしたわよ」

 

「ま、これで私の変装がパーペキであることが証明されたわけね!やはり私は多才!」

 

 因みに友希那もハルカ=彩だということに気がついていない。彼女も大概天然なのだ。

 

「それより私としては友希那さんといつから面識があるのかが気になるところなのですが」

 

「だからそんな目で見ないでよぉ、彩ちゃん塩をかけられたナメクジになっちゃう」

 

 …まぁ、それは後で問い詰めよう。私の預かり知らぬところでその毒牙を広げているのは恐怖でしかないが、そこが彼女の長所であり、魅力でもある。強くは言えない。今度の一緒に行く遊園地で勘弁してやろう。

 

「取り敢えずその服は取って会場に行ってください。周りに迷惑ですので」

 

「馬鹿な!?」

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 衣装の型靴を鳴らしながら黙々と2人は歩く。蘭のペースが早い様に感じるのはきっと気のせいでは無いだろう。

 

「…ねぇ蘭」

 

「……」

 

「あれってさ」

 

「分かってるわよ」

 

 何かを堪えている様な声で蘭は答える。まるで込み上げる感情を押さえ込んでいるようにその声は震えていた。

 

「じゃあなんで何も言わなかったの」

 

「…焦っても今回あいつはライブに出てない。今弾糾してもあたしらが滑稽なだけだよ」

 

「……大丈夫だよね蘭。私たちは──」

 

「ええ、大丈夫よモカ。あたしは何も忘れてない。何も消えていない。何も落としていない

 

「…皆んなには言うの?」

 

「まだ言わない。きっと本番に集中できない。特にひまりとつぐみはね」

 

 確かにそうかもしれない。特にひまりはあの日のことをずっと引き摺っている。今伝えるのは彼女の精神衛生上危険だろう。

 

 そうして目の前の扉を開く。中にはAfterglowの残りメンバーが揃っていた。

 

「遅いよ二人とも。もう本番始まっちゃうよ!」

 

「ごめんごめん〜、ちょっと油売っててさぁ」

 

「まぁ良いじゃん、蘭とモカが遅れるなんていつものことだ」

 

「私たちは準備バッチリだよ!」

 

 笑顔で出迎えてくれる3人。

 皆が皆、この笑顔の裏にある強い決意でバンドを続けている。全てはあいつを超えてあたしたちを証明する為に。

 

「…うん、じゃあ行こう。あたしたちの音を証明しに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ始まるかな…」

 

 美咲は腕時計を確認して、本番の時間がすぐに迫っていることを把握する。

 

「っていうか、やっぱ人が多い…」

 

 なんだかんだでこうして観客側に来るのは初めてだ。前々からあそこで応援するのは大変そうだとは思っていたが、まさかここまでとは。

 打ち付ける波のように人が押し寄せる。

 

「うわっ!あ、すみませんっ」

 

 誰かに当たって倒してしまった。慌てて美咲は倒れた人に駆け寄る。

 

「あー、うん大丈夫だよ。ちょっとこけただけだから」

 

「本当ですか?どこか怪我してたりとか…」

 

「いやいや本当大丈夫。それよりあたし先急いでるから、じゃあ」

 

「あっ」

 

 少女はそそくさと人混みの中に消えてしまった。

 

(ぶつかった私が悪いけど、なんかドライな子だったなー…)

 

「おーい」

 

「…?」

 

 目の前に現れるサングラスをかけた黒髪少女。見覚えのない容姿に美咲は一瞬混乱する。

 

「……もしかしなくても丸山先輩ですか?」

 

「あ、やっぱわかっちゃうかんじー?昨日ぶり!」

 

 何と昨日会ったばかりの丸山彩が目の前にいた。彼女にライブのことは伝えてないはずなのだが、偶然とは恐ろしいものである。

 

「…黒髪なんて随分大胆なイメチェンですね」

 

「ヅラだけどね。それよりもここで会ったも何かの縁!一緒にライブみようぜー」

 

「まぁ良いですけど…。それにしても先輩もライブ来てたんですね」

 

「私のマイフレンドが出るんだー。凄いでしょ!」

 

「なんで先輩の方が自信ありげなんですか」

 

「そりゃあ、私が育てたも同然だからね!高尾山の天狗にもなるのもだよ」

 

「なぜ高尾山…」

 

 そしてライブが始まり、プログラムは滞りなく進んでいく。

 やはりアマチュアや新人のバンドが多く参加しているだけに、曲のクオリティなどは美咲が普段聴いているものとはどうしても劣る。だが会場に籠る熱気に当てられると、気分も自然と高揚するものだ。小さくはにかみながらも美咲はライブを楽しんでいた。

 

「…観る側も結構楽しいですね」

 

「でしょー?私なんか興奮しすぎて思わず乱入とかしそうだよ!」

 

「やめてくださいね?」

 

 彼女の性格なら本当にしてしまいそうなのが怖いところだ。正直彼女の演奏を聴いてみたいと言う欲求もあるが、ひとまずの我慢を決め込む。

 そんなこんなで楽しんでいると、残りバンドは僅かとなっていた。

 

 次はRoselia。彩の友人が所属しているらしく、一推しのバンドらしい。実際冷たく簡潔なボーカル挨拶とは裏腹に、強く心に響くような歌声を披露してくれた。第一曲が始まった瞬間に、ドンッという物理的な衝撃がはっきりと伝わって来た。これまで聞いたバンドとはまさに段違いの上手さ。彩が気にいるのも納得だった。

 

「ヒュー!良いよ紗夜ちゃーーーん!!最高にさよってるよーーー!!!」

 

「すっご…!ていうかボーカルの人息継ぎいつやってんの…」

 

 まるで恐ろしく細やかな技巧で造られた繊細な造形作品を視界一面見せられているかのように、彼女たちの歌に、技巧に、姿に、釘付けになる。

 

 単純な実力で魅せる。紆余曲折あったが、Roseliaはバンドとして実力主義で生きていくことを選んだ。見る視点が変わっても、フェスで優勝したいと言う気持ちは何も変わらなかったから。

 ギターとベースの残響が響き、最後の曲も終わった。

 

「はぁーっ、凄かった…」

 

「見て見て美咲ちゃん、汗ベットベト!」

 

「あはは…、私もです」

 

 残りのライブはあと二つとなった。Afterglowと、RUN RUNだ。特にこのRUN RUNはかなりプロの中でも上澄と称されているらしいので、美咲は内心期待を膨らませる。

 すると、次のバンドグループであるAfterglowが入場してきた。ボーカルは静かにマイクを構えると、淡々と言葉を落とし始めた。

 

「…どうも、Afterglowです。今日はあたしたちの名前と歌を脳に刻み込んで、帰ってください」

 

 簡潔。だがこれ以上ない宣誓。

 ボーカルの瞳がギラリと煌めく。

 

 マイクを握り締めて数瞬後、彼女たちの音がステージを埋め尽くす。

 

「うわっ…!」

 

 熱い音楽だ。誰にも負けない、誰にも屈しないとでも言わんばかりの凄まじい力強さ。特にボーカルが良い。曲全体の圧を底上げしている。このライブという場を抜きにしても技量、個性共に素晴らしいものだ。それこそ今のRoseliaに何ら引けを取らない。

 

「…?」

 

 違和感。

 喉に魚の小骨が引っかかったかの様なつんざく感覚を彩は感じ取る。ほんの、ほんの僅かだが音同士が噛み合ってないのだ。それは音楽としてギア超える表面的な部分ではなく、もっと根本の耳には通らない部分の齟齬。

 しかし当然それはこのライブで目立つことはなく、観客の大半は気付かずに終わり、次の曲へと進む。

 

「ーー♪」

 

 抜けない違和感。まるで不協和音だ。音は全て力強く正確、何より美麗で統合されている。にもかかわらずこのようなことが起こるのは、メンバー間の息が合ってないからなのだろうか。

 以前はこんなことはなかった。息が合わさった素晴らしい演奏だったと思っている。もしかすればメンバー間で何かトラブルでもあったのかもしれない。

 

(…ま、それはあのバンドの問題だよね!それに美咲ちゃんも楽しそうだし別にいっか!)

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

『ご来場のお客様にお知らせいたします。プログラム最後のガールズバンドRUN RUNのライブですが、予期せぬトラブルにより、ライブが取り行えないため、もうしばらくお待ちください』

 

 告知用のアナウンスが鳴る。トラブルでもあったのか突然の延期宣言。Afterglowのライブの興奮冷めぬ中、観客は少しばかりの不満をこぼす。

 美咲個人としては良いクールタイムだと汗を拭いながらため息を落とす。

 

「ふぅー。だってさ、丸山先輩」

 

「えー、何だよそれー。ちょー退屈じゃんー」

 

 言うまでもないだろうが彩は待つことが苦手だ。特に昂った中でのラストスパートの待ったは彩にとってはこの上なくストレスだった。

 

「…よし、私ちょっと裏方で紗夜ちゃんたちの様子見てくるー」

 

「え、そんな簡単に入れるものなんですか?」

 

「当然!私くらいになると顔パスよ!」

 

「へぇ、凄いですね」

 

 当然嘘である。この女勝手にスタジオ裏に侵入して紗夜と会おうと画策していやがるのだ。

 そもそも普通はこんな緊急時に裏方へ出入りなどできるはずもないのだが、ライブ終わりでハイになってる今の美咲にそこまでの考えが及ぶことはなかった。

 

「じゃ、行ってくるねー」

 

「すぐ戻ってきてくださいよー」

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 さてさて紗夜ちゃんどーこかなっと。今回は無許可で入るからね。私だとバレてはいけない。なのでこの昨日買ったミッシェルのお面が役に立つと言うわけなのだ!

 って、なんかさっきからスタッフの方々が騒がしいね。ライブ遅延で忙しいのだろうか。

 

 っと、裏方前に敵兵2体発見!このままでは侵入できないでござる!くっ、まさか門番を配置していたなんてね…!この丸山、早速のピンチ!

 …でもなんか警備してるってわけでもなさそう。なんか深刻そうな顔で話してるし。…まさか、トイレでも混んでたのかな。確かに今大人気両店並みに行列が連なったたけど。でも確かスタッフ専用お手洗いとかあったよね。

 ははーん、さては彼女たち新入りだなぁ?スタッフ用のお手洗いがわからないんだ!仕方ない、この超親切で美少女な私がお手洗いの一つや二つ教えてしんぜようでは無いか!!

 

「へいへーい、スタッフさんたちぃ!スタッフ用のお手洗いならそこをまっすぐ行った突き当たりの右にあるぜ!」

 

「え、誰…?」

 

「か、仮面をつけた不審者…!」

 

「あれ違った?」

 

 どうやら私は推理を間違えたらしい。まぁ美少女には間違いの一つや二つつきものだよね!ドジっ子属性も魅力の一つなのだから!

 

「ここからはスタッフ専用通路だから回れ右してねお嬢さんー」

 

「まぁまぁ!ちょっとお話ししたくてさ!なんか悩んでるみたいだし!」

 

「はぁ…」

 

「私の名前は青春仮面!チミたちの悩み、この私めが解決してしんぜよう」

 

「はいはい、親御さんのことろに帰りましょーねっと」

 

「ウワーッ、離せー!!この変態ー!不審者ー!」

 

「……不審者は貴女よ。それより貴女…」

 

 まままままずいノーネ!このままだと紗夜ちゃん到達への道のりが途絶えてしまう!なにより見逃せない!このトラブルの匂い!スタッフさんが慌てるくらいの出来事!あまりに面白いことになりそうな気配!スルーするーなどできぬ!!

 

「ほ、ほら困ってるみたいじゃん!全然バンドの人来なくてさ!」

 

「それと貴女は関係ないでしょう。ほら行くわよ」

 

「ウワーッ‼︎」

 

「ま、まぁまぁ先輩。ちょっと落ち着きましょう?無理矢理返してもちょっと可哀想ですし…」

 

 お、おぉ、天使。天使がおるで…!優しい抱擁が私を包む…!なんと心地よい、彼女は私の母になるかもしれなかった女性だった…!?

 

「ふいー、ありがとう大天使コーハイ」

 

「どういたしまして…って何その名前!?」

 

 この門番2人なんと驚くことに今回のライブを仕切るメインスタッフだったらしい。ま、まさか大ボスが目の前にいたとは…。まぁ最近のRPGでもラスボスが初っ端に出てくるのはあるあるだからね。仕方ないね。

 で、そのボス2人曰くなんでも最後のトリを飾るライブをするバンドの、えーっと、らんらんるー?みたいなバンドグループがまだ来てないせいで、ライブができないみたいな話らしい。

 

「彼女たち結構な問題児で、ライブに遅れてくることもしょっちゅうなんだけど今回は特に…」

 

「実力は本物なだけに惜しいのよね彼女たち。あの素行の悪ささえなかったらって何回思ったことか…」

 

「うわー酷いねそれは」

 

「今回は電車の遅延に巻き込まれたって話なんだけど、それにしたってもっと早くいってほしかったと言うか…、そもそも本当かわからないって言うか…」

 

「遅延にしても結構重篤らしくてね。仮に車で来ても今から30分はかかる距離よ」

 

 えーっ!それは困る!1時間も待ってられない!!そんなに待ってたら退屈お化けになって死んじゃう!

 スタッフさんは紗夜ちゃんたちにもう一回ライブやらせて時間稼ぎたいらしいんだけど、流石に1時間は厳しいと。最悪罵倒覚悟でトリ無しでライブを切り上げることも視野に入れてるらしい。確かにこれは大問題だな!

 

「はいはーい!それなら私に良い考えがありまーす!」

 

「…まぁ一応聞くわ」

 

「私を使えば良い!」

 

「…はい?」

 

「そのバンドさんが来るまでの前座として私が時間稼ぎするってコト!」

 

「え、ええ!?何いってるの!?無理だよ音楽の経験もないのに…!」

 

「…いえ、経験はあるみたいよ彼女」

 

「えっ?」

 

「見ただけでわかるその指の硬さ。肉角の位置。ギターだけじゃないわね。複数の楽器を扱える人間の手」

 

 スタッフさん凄え…。歴戦の猛者かよ。しかしスカウター内蔵人間だったとは。へへ、オラワクワクしてきたぞ!

 

「で、でもそうだとしても厳しいことには違いないですよ!」

 

「そうね、彼女の言い方だと30分たった1人でこなすことになるということ。そんなことができるのはそれこそプロよ」

 

 へーそうなんだ。じゃあ私準備してくるね。備品の楽器一個借りるぜー。

 

「ちよ、ちょちょちょちょっと待ってぇ!?ダメだよそんなの!」

 

「えーい離すのだ大天使コーハイ!会場が私を待っているるるる…!!」

 

「……貴女、名前は?」

 

「青春仮面!!」

 

「真面目に答えなさい」

 

「ヒェッ、は、ハルカでぇす…」

 

「……ウデは信用して良いのね?」

 

「もうバーッチリ任せてよ!」

 

「30分持つのね?」

 

「モーマンタイ!のーぷろぐれむ!一切合切!」

 

「……わかった。許可するわ。オーナーには私から話を通しておく」

 

「せ、先輩!?」

 

「ラッキー!んじゃ楽器借りるねー!」

 

「ええ、好きなものを持っていってちょうだい。舞台に上がる時間は後で連絡するわ」

 

 イェーイ!なんか急に気前よくなったね!よくわかんないけどラッキー!

 よし、そんな優しい貴女は今日から大天使センパイーだ!よろしく頼むぜ!

 

 

 

 

 

 ーー

 

 

 

 

 

 

「先輩!どういうつもりですか!あんな見ず知らずの観客の子1人に任せるなんて!」

 

「……どの道このままだと観客の不満は爆発する。正直藁にも縋りたい思いだったからね。一応最低限実力は保証できているし、表に出て演奏すること自体に問題はないわ」

 

「でもそれなら今いる他のバンドのメンバーの方に頼めば良いじゃないですか!」

 

「そうね。そうかもしれないわね」

 

「じゃあ今からでも彼女たちに…」

 

「私は!!」

 

「!!」

 

 突然発された大きな声に後輩は思わず言葉を止める。普段冷静な先輩がこんなふうに声を荒げることは珍しかった。

 

「……さっき彼女の手に触った時、震えたわ。一体どれほど楽器を触っていればあんなふうになれるのか、あんな積み重ね方ができるのか」

 

「知ってるでしょ?私が元バンドマンなこと。分かっちゃうのよ、どれくらい彼女が上手いのか」

 

「私は見たいの。彼女の音楽が、彼女の作り上げる世界が…!」

 

「私情を優先したと軽蔑すれば良いわ…!でもそれでも私は見たくなったの!聞きたくなったのよ!この仕事に携わるものとしてね!」

 

 歪な笑顔を浮かべる先輩に後輩は何も言うことができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 時は少しだけ遡る。

 出番が終わり、舞台裏でゆっくりプロの演奏を見ようとした折に起きたトラブル。友希那たちRoseliaは一旦待機室から出てステージが見える観客席に移動していた。

 

「いやー、良かったね今日の演奏!今までで最高の出来だったんじゃない!?」

 

「う、うん。何だか今回は練習以上にみんなと一体になれた感覚がして、その、とっても気持ちよかったです…!」

 

「これならハルカも絶対喜んでくれる!」

 

「驕らないで。私たちはまだまだ発展途上。この程度で喜んでいたらまだまだよ」

 

「う、ご、ごめんなさい…」

 

「まぁまぁ友希那。今日くらいいいじゃん。今日が1番上手く演奏できたのも事実でしょ?今くらい素直に喜ぼうよ」

 

「…はぁ。そうね、成長したという意味では確かに違いないわ」

 

「や、やっぱりそうですよね!なら早速ハルカに聞きにいきましょう!」

 

 それで凄かったって言ってもらうんだ!とテンションが天井破り気味のあこをリサは落ち着かせる。

 そんな時、顔を俯かせている紗夜が目に入る。

 

「あれ。紗夜、どうしたの?」

 

「…え、あ、いえ…、何でもありません。少し気分がハイになっていた反動が来てただけです」

 

「確かに今日の氷川先輩のギターキレッキレだったもんね!こう、音が輝いてるみたいですごく一緒に演奏してて気持ちよかったです!」

 

「…ありがとう、宇田川さん」

 

 Roseliaは完全にキレを取り戻した。今回の演奏も皆の言う通り今までで最高のものだっただろう。かつてない一体感は清々しさを感じさせた。

 そう、そのはずなのだ。満足しているはずなのだ。にも関わらず、この胸に空いた喪失感は一体何なのだ。まだ自分は満ち足りていないとでも言うのだろうか。

 かつての自分が求めていた完全な形の仲間たちがいると言うのに、何かが足りない。そう思えてしまうのは一体何故──、

 

「それにしても最後でライブ遅延だなんて…。珍しいこともあるわね」

 

「RUN RUN。実力は確かと聞きますけど、噂に聞いた通りの問題児ぶりですね」

 

「時間通りに来ないといけないのはマナーなのにね!」

 

「そうね、プロとしてあるまじき行為よ」

 

 すると友希那たちの向かい側から見知った顔の人たちが現れる。Afterglowだ。彼女たちも同様に観客席に来ていたらしい。

 

「さっきぶりですね友希那先輩」

 

「ええ。演奏、良かったわよ。よく洗練されてた」

 

「そっちこそ、そこそこ良かったですよ」

 

「……そこそこ?」

 

「ちょ、ちょっと蘭!ごめんね友希那先輩!ちょっと今ピリピリしてて…」

 

 前に出てきたのはAfterglowのリーダーである上原ひまりだ。慌てて彼女は蘭を下がらせる。

 

「…いえ、別に良いわ。美竹さんからそういった感想が出てくるのならそれは私たちの技術が至らなかっただけのこと」

 

 美竹蘭が音楽のことで嫌味を言ってくるような性格では無いことは理解している。仮に本当にそうだったとすれば性根まで腐った証。見限るだけだ。

 そんな一触即発の爆弾を処理した後の空気の中、あこは蘭の隣にいるモカに話しかけた。

 

「…ねぇ、おねーちゃんは?」

 

「え、トモちん〜?……そういえばいつの間にかいないなぁ。蘭知ってる〜?」

 

「スタジオに用事あるってさっき行ったわよ」

 

「だってさ〜。ごめんね」

 

「…うん、大丈夫だよ。ありがとう」

 

 明らかに落ち気なあこ。宇田川巴はあこの姉であり、Afterglowのドラムを担当している。

 巴はあこにライブが終わったあと話があると言っていた。姉から話があると言ってくれたのは久しぶりだった。それだけにまるで避けられるようにいなくなられるのはショックだった。

 

「ま、大丈夫だよ〜。何か話たいことがあるのは本当みたいだし、気長に待とうよ」

 

「………うん」

 

 

 

 ー

 

 

 

 

「羽沢さん」

 

「あ、こんにちは氷川先輩!」

 

 紗夜が話しかけたのは、いつも通っている珈琲店で働いている羽沢つぐみだ。彼女もまたAfterglowのメンバーである。

 以前店であったいざこざの時のことを謝りつつ、話題を進める。

 

「それにしてもライブすごく良かったです!少し前まで活動を辞めてた時は心配でしたけど、そんなの関係ないくらいすごい演奏でした!」

 

「羽沢さんこそ、前よりも技術が洗練されていましたよ。以前より指の動きがスムーズになってました」

 

「わっ、凄いですね!それみんなにも言われたんですよ!すごく上手になったって!紗夜さんはギターを使ってますけど、キーボードのこともわかるんですか?」

 

「…まぁ、友人が弾いているのをよく見るので。素人知識程度なら」

 

「確かに、白金先輩凄い上手ですもんね!やっぱりあそこまで綺麗に弾けるのは正直憧れちゃうなぁ…」

 

「今の羽沢さんなら直ぐに追いつけますよ」

 

「あはは、ありがとうございます」

 

 絆らかな笑顔で嬉しそうに言うつぐみ。

 実際紗夜も驚いた。以前の箱ライブで聴いた時とは比べ物にならないほどにレベルアップしていたのだから。Roseliaのキーボードに追いつける話も案外本音で言っていたりもする。

 …そう、素晴らしい成長具合だった。だからこそ、解せない部分もある。

 

「その、唐突ですが、とても不躾なことを聞くけれど良いですか?」

 

「不躾…?良いですけど…」

 

「最近バンド間で仲が悪かったりしないかしら。喧嘩があったりとか…」

 

「えっ………と、全然ありませんね!いつも通り仲良しAfterglowです!どうしてそんなことを?」

 

「いえ、最近ウチでも似たようなことがあったので、羽沢さんのところは大丈夫かなと思っただけです」

 

「えっ、大丈夫だったんですか!?」

 

「はい、一応解決しました。心配いりませんよ」

 

「良かったぁ…。すごく良い演奏だったからもう聞けなくなるかもって心配しちゃった」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

 聞いていて音が噛み合っていないような気がしたが、どうやら気のせいだったらしい。みたところメンバーに特別変わった様子もないし、何より同じメンバーのつぐみが言うのならば間違いないだろう。

 しかしそれにしてもライブの方が心配だ。もうかれこれもう30分は待っている。相当混み合ったトラブルらしいが、これでは観客の不満もピークだろう。自分たちが時間を稼ぐために演奏に出ることも視野に入れるべきかもしれない。そう考え、友希那に話しかけようとした時、再びアナウンスが鳴った。

 

『ご来場の観客の皆様にお知らせいたします。最終プログラムのバンドチームRUN RUNのライブですが、現在トラブルにより当バンドの到着の見込みはまだ立っておりません』

 

 ざわざわと観客たちが騒ぐ。中には文句や罵詈雑言も聞こえてきて、やはり相当ストレスが溜まっていると見受けられる。

 それも当然で、プロの演奏を聴きにきたのにこんなところで待ちぼうけを受けるなど、ストレッサー以外の何者でもなかった。

 

『つきましては、急遽プログラムを変更いたしまして、ご用意いたしました個人バンドマンによるミニライブをお楽しみいただきたいと思います』

 

 ざわざわと先ほどよりも困惑の喧騒が強くなる中、紗夜は1人思案する。

 ミニライブ…、しかも個人。

 今日のライブ、自分たち以外に参加者はいなかったはずだ。いやそもそもたった1人で箱ライブとは言え、この不満に溢れた観客が目の前のステージに立つなど紗夜ですら億劫になる。

 

 …そう言えばさっきから彩を見ない。待機室に乗り込んでくるくらいはするものかと思っていたが、今に至るまで姿すら見せない。

 

(ライブ………個人?)

 

 凄まじく嫌な予感がする。例えるならば背中に冷えた胡瓜を突っ込まれたかのような底冷えするような気付き。

 

(まさか…、まさか…!)

 

 その時、目の前のステージの中心にスポットライトが照った。四つの光はステージのど真ん中にいる黒を際立たせている。

 黒の髪、黒の衣装、黒のキーボード。そしてなぜか着用しているミッシェルの仮面。少女はそのままキーボードについているマイクを取り、息を大きく吸った。

 

『みーんなーー!!こーんにーちわーー!!』

 

 大音量の声が会場全体を貫く。

 

『私はミッシェル仮面!ミッシェルランドの精霊、ミッシェルが生み出した第二の化身!または使者!みんなを絶対幸福王国マルヤマランドにお連れするため、ここに参上したぜ!!』

 

 唖然。

 この場にいる全員が何も言うことができなかった。いやどう言い表せば良いのかがわからなかった。

 イェーイと1人騒ぐ少女。観客全員が彼女1人が作り出した世界に完全に置いていかれていた。

 

『…ん?あ、スタッフさんどしたの?…え?仮面は口が見えないからナシ?そんなー』

 

 集まった数人のスタッフに注意されながらミッシェル仮面は渋々仮面を外す。

 中から現れたのは美麗な少女だった。黒髪黒目の美少女。少女はどこからか取り出したミッシェルの柄が施されたサングラスを着用して、快活な笑みで叫んだ。

 

『──私は時によって姿を変える者!時にハルカ!時にミッシェル仮面!そして今の私はぁ、ミッシェル柄のサングラスを布教する者!ミッシェルグラスだぁーーーーッ!!!』

 

 もう意味不明である。

 彼女の展開する世界に全くついて行くことができない。一体あの少女の目には何が見えていると言うのだろうか。文句や野次を飛ばす気力すらない。

 

『今日の私のお仕事は、みんなをマンゾクさせること!そう!マンゾク!幸せいっぱいマンゾク!私がここにきたからには幸福は忘れられぬと知れぃ!』

 

 ガチャリとマイクをスタンドに戻し、キーボードの鍵盤を流すように鳴らす。その動きには圧倒的な自信と確信に満ちていた。

 幾人が気付く、──今から爆ぜると。

 

『んじゃ、いっくよ☆』

 

 瞬間、観客全員を光が貫いた。

 

 

 







転生彩ちゃんのヒミツ⑯:実は他人には意外と薄情だったりする。

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