【前回のあらすじ!】
・彩ちゃん「お願い♡」紗夜「はい♡」
・【悲報】ギスリアさん、ギターを寝取られる
・詩船さん、ライブが混沌に染まることを察する
退屈の極みを決めている人間がいる。今の私である。
いやー、超暇!紗夜ちゃんは部活でいないし、今日はバイトとかも無いし、実に暇なのだ!暇潰そうにも、ぶっちゃけ学校でやれる事はあらかたやり尽くした感がある。
この暇を楽しむっていうのもアリではあるんだけど…。あ、そうだこれ歌とかにできないかな。ワンチャン行けそうかも。
ひまーひまー極まる退屈決まらず就活!だらだらだらだら冷や汗ダラダラ、きまらずダラダラ、未練たらたら!イェイ!
ってあれ?あの部屋って部室だったっけ?私の記憶にはあそこは使われてない物置だったはずだけど…。紗夜ちゃんも許可が出てないから使うの禁止って言ってたし。
はっ!!わ、私のオモシロセンサーが強い妖気を感じている!父さん!これは一体!?
イマジナリー父さん(え、知らん何それ、怖)
よし!非常に面白そうなので特攻しに行こう!たのもー!
「はろーえぶりばでー!ここは使用許可が出てないぜ!風紀委員が見逃してもこの丸山彩が見逃さない!さぁ御用よ!」
「あら?」
「およ?」
そこにはちょこんと椅子に座った金髪の可愛らしい少女。そしてなんとその両脇に大量の黒服を着た人たちが所狭しと並んでいた。
おや、これは詰んだかな?幻聴かざわ…ざわ…なんてSEが聞こえてくる。
ふぅー、もちつけ。深呼吸だ。こういう時こそ冷静な判断が求められるのだ。そう、紗夜ちゃんを思い出そう。あの誠実さを今発揮する時!さぁ行くぞ!
「……すみませぇん!!借金は勘弁してくださぁい!」
「ええっ!?」
●●●
その日の放課後、紗夜はいつも通り彩のところに行こうと席を立った。が、しかし教室を見回しても彩の姿は何処にも見えない。
頭に疑問符を浮かべていると近くの生徒の話し声が聞こえてくる。どうやら彩は帰りの連絡が終わって早々に一目散に何処かへ走り去って行ってしまったようだ。
なまじ運動神経は良い彼女だ。ちょっと目を離した隙にどこかに行ってしまうということは良くある。仕方ないので近くにいた生徒に行き先を聞いてみる。
「…すみません、丸山さんがどこに行ったのか知ってますか?」
「え?丸山ちゃん?うーん、ちょっとわからないなぁ…」
「あ、私知ってるよ。丸山さんならさっき部活に行ったわ」
「はい?」
紗夜は目を丸くした。当然である。彩が部活に入ったなど初耳だからだ。
「え?丸山ちゃんって部活入ってなかったよね?」
「最近入ったらしいよ。なんか面白そうだからってみたいなこと言って」
「えーどこどこ?」
「えっと、確か…」
その部活の名前を聞いた瞬間に、紗夜は教室から飛び出していた。
ーーー
「こんちくわー!」
彩が元気よく入った部屋は若干殺風景な小さな個室だ。部屋の真ん中に置かれている折り畳みの長机の奥に座る生徒は彩の訪問に嬉しそうに顔を上げた。
「こんにちわ彩!来てくれたのね!うれしいわ!」
「そりゃ部員だから当然だよ!」
彩の言葉に心底嬉しそうに答えるのは、ここ『天文部』の部長である弦巻こころだ。
彼女は今年高等部になった生徒なのだが、新学期早々突如この天文部なる部活を立ち上げた校内でも彩に次いで有名な生徒である。無論、奇人という意味ででだ。
「さてさーて、今日は何しようかなー。この前は惑星を作ってみようの会だったよね」
「ええ!彩が作った木星、とっても大きかったわ!」
「唯のケーキだけどね!」
「とっても美味しかったわ!」
「また作りたいねー」
「じゃあ今から作りましょう!」
「いやいや、折角だからもっと別の試みをしてみよう。私たちは青春謳歌特権持ち高校生なのだ。より沢山の経験をしてみることが思い出の刺激になること違いなし!探せばもっと面白いこともある筈!」
「確かに!流石彩だわ!じゃあ何をしましょう?」
「うーん、そうだなー。前回は天文学部っぽい事をしてみようってことでああなったから、今回は一周回って天文学部とは関係ない事を…」
そこまで彩が言葉を発した瞬間、部室の引き戸が勢いよく開かれた。
開かれた扉を見るとそこには肩で息をしている紗夜がいた。
「はぁ、はぁ…!」
「あり?紗夜ちゃん、どうしたのそんな急いで。あっ!?もしかして私がお昼に紗夜ちゃんのお弁当の唐揚げを食べたのがバレた…!?」
「はぁ…!やっぱり丸山さんが食べたんですねあれ…!いやそれよりも…」
「じゃあ昨日のハンバーグを食べたのも!?」
「おかしいと思ったんですよ、三つ入れたのに二つも消えて!まぁもうそれは良いです、許します。それよりも私が聞きたいのは…」
「じゃあ一昨日のポテトも…」
「絶対に許しません制裁です」
「ウワーッ!!!許すって言った!許すって言った!!許すって言ったぁ!!!」
「お黙りなさい!!私がどれほどあのフライドポテトを楽しみにしていたと思ってるんですか…!初めて…初めて自分で作ったプライドポテトだったんですよ!?」
「紗夜ちゃんのハジメテ…奪っちゃった♡」
「遺言はご家族の方にしっかり伝えておきますね」
紗夜はノータイムで彩の顔面にアイアンクローを決めて、そのまま持ち上げる。明らかに人体から鳴ってはいけない音が鳴る。
「あだだだだだだだだ!!?やめて潰れる壊れる死んじゃう冥界の片道切符受け取っちゃうらめぇぇ!!」
「……何だか分からないけどすっごく愉快ね!」
ーーー
ーー
ー
「危うく潰れたトマトになるところだった…」
「余計なことをするからでしょう。今度ポテトを奢ってもらいますからね」
「ふぁーい…」
2人でポテトの山を探索することが決定したところで、紗夜は本題に入る。
「…それで、丸山さん。貴女いつの間に部活なんて入ったんですか?」
「え、3日前くらい?」
「…私入部届なんて受け取ってないのですが…」
紗夜は生徒会の一員だ。なので入部届の一通りの管理も彼女が行うことが多かったりする。何ならこっそり彩が出しても処分できるように目を光らせていたまである。
「だって紗夜ちゃん私が部活入ろうとすると止めるじゃん。だから別の生徒会の人に手渡しして受理させたんだよね」
「くっ…!」
紗夜は歯噛みする。完全に油断していた。
折角彼女を生徒会か弓道部に入れようと色々と画策していたというのに見事に台無しになってしまった。
これが普通の部活ならばまだ何とかなっただろう。そもそも丸山彩のノリについていける人物自体が希だからだ。しかし彼女が入ったのは丸山彩の再来とまで言われた稀代の奇人、弦巻こころが作り上げた部活だ。そんな彼女たち2人のシナジーはそれはもうとんでもないだろう。現にこころの彩に対する距離感は他の生徒とは比べものにならないほどに近い。
紗夜としてはあまり気分の良く無い光景だった。
「えっと、確か生徒会の人よね。彩とよく追いかけっこしている」
「…はい、氷川紗夜です」
「そう!やっぱり!いつも彩と楽しそうに追いかけっこをしているからよく覚えてるわ!」
「別に楽しくは無いのですが…」
「そうかしら?私にはとっても楽しそうに見えたけど」
「……そんなことは」
「無い無い無い、あり得ない。毎回鬼みたいな形相で追ってくるんだよ?顔にそのままシワが残るんじゃ無いかってくらい。そうなれば節分の時、鬼の仮面いらずだね!」
「何故鬼が反撃しないのか、理由を教えてあげましょうか?手を出せば相手が死ぬからですよ」
「ス、スミマセン…」
「ふふっ、やっぱりすごく仲良しね!ねぇ、紗夜!貴女天文部に入らない?きっと楽しくなるわ!」
「いえ、私はもう弓道部に所属しているので…」
「大丈夫よ!兼部すれば問題ないわ!!」
「確かに!」
「体力的に無理です!それに私は既に生徒会と兼部しているので校則でこれ以上部活には入れませんよ…」
「そういうことならなんとかするわ!黒服さーん!」
その瞬間、どこからともなく黒服サングラスを装備した謎の女性数名が現れた。
彼女たちは弦巻こころの身支度、お世話、おねだりと、何でもこなしてくれる人型パーフェクトマルチツール通称黒服さん。こころの意向であればどんな要望も叶えてくれる超優秀な人たちだぞ!
「この学校で1番偉い人と話して三つ以上兼部できるようにお願いして欲しいの」
「畏まりましたこころ様」
「やったぜ!これで紗夜ちゃんも晴れて天文学部だよ!」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!!勝手に校則を変えようとしないでください!!」
紗夜の必死の抵抗で何とか校則の改変は阻止された。
弦巻こころは超大富豪の家の一人娘である。その財力はこの世にある願望の大半は叶ってしまう程だ。そんな恐ろしい力がまるで自販機でジュースを買うような軽さでぶん回されるのだ。たまったものではない。
「あっそうだ!紗夜ちゃん。今日って部活あったっけ?」
「今日は休みですが…」
「よし、じゃあ紗夜ちゃんも一緒にやろう!部活に入れないならちょっと体験入部ってことで!」
「とっても良いわ!人数は多い方が良いもの!」
「よし、じゃあ早速準備だ!」
「ちょっと話を…!そもそもこの後バンドの練習が…!」
「それまでには終わらせる!すぐできるとっておきなのを今思いついた!」
「さすが彩だわ!必要なものがあったら言って!黒服さんに頼んで用意してもらうわ!」
「おけまる!」
「ああああ!もう!!」
どうやら紗夜は宇宙人の巣に入り込んでしまったらしい。もはや脱出は不可能と悟った紗夜は半ばヤケクソになりながら黒服たちに連行されていった。
ーーー
「いやー、楽しかった!」
「死ぬかと思いました…」
部活動という名を冠しただけの奇行を行った2人+αは案の定、その場に居合わせた先生にテンプレ説教を受け、解放されたのち帰路に着いていた。尚、こころは権力制裁を恐れた先生方に見逃された。
「またやりたいね!惑星バンジー!」
「もう2度とごめんですよ!落ちる瞬間今世を放棄しましたからね!というかあんな設備どこから持ってきたんですか!?」
「こころちゃん超金持ちだからね。頼んだらなんでもあの黒服さんが準備してくれるんだって」
「なんて無茶苦茶な…」
妄想を現実にしてしまうほどの財力とは…。あの手の奇人には1番持たせてはいけないものなのではないだろうか。
いずれにせよ、今後天文学部を訪ねるときは色々と心の準備をしなければならない。あの災厄のディザスターコンビを相手するには相応の覚悟が必要である。
「そういえば弦巻さんはどこに行ったのでしょう。用事があると言ってましたが…」
「あー、こころちゃんバンドやってるの。多分それの練習に行ってる」
「そうなんですね。少し意外です」
「…あ、紗夜ちゃんライブハウスあっちだったよね?じゃあここでお別れだね。ライブの練習頑張ってね。また明日ー」
「……あの、丸山さん」
「ん、なに?」
「その…今日、お時間空いていますか…?」
「ん?うん、今日は1日暇だけど」
「その…、公民館に行きませんか?どうしても夜遅くにはなってしまいますが…」
「……」
彩は目を丸くして紗夜の方を見ている。彩にしては珍しく素で驚いていた。そして少しずつ満面の笑みになっていく。
「うん!行く行く行く!!やった!紗夜ちゃんからのお誘いゲット!これは大きな進歩だね!」
「……ふふっ」
笑顔で飛び跳ねる彩を見て思わず笑みが溢れた。
既にRoseliaのライブには二週間を切っている。この時期になってくるとライブに向けて本格的に詰めていかなければならない。そのため必然的にプライベートの時間を削らざるを得ない。
なのでライブ前に一緒に残れる機会は恐らくこれが最後になるだろう。どうせ一週間は碌に教室以外では会えないし、天文部のトンチキ活動でさらに機会は減る。これくらいの贅沢はしたいと思っていた。
…と、まぁ色々と御託を並べたが、要するに紗夜はこころに嫉妬しているのだ。
真面目な性格のせいで中途半端にしか外に出せない独占欲が表出した結果がこれである。しかしそれでも自分から踏み出せただけ彩の言う通り進歩なのかもしれない。
「じゃあ練習終わったら連絡してね!待ってるから!」
「…ええ」
ーーー
ふふっ、楽しい!楽しいわ!特に最近は最高に!
理由は明快!彩のおかげ!初対面にいきなり土下座をしてきた時は驚いたけど、話してみたらとっても楽しい人だったわ!しかも他の人と違って私と一緒に部活を全力で楽しんでくれるから、見てるこっちも笑顔になっちゃう!おかげで最近は学校に行くのが特に楽しみだし、楽しみすぎて夜も寝付きにくいくらい!でもこれってとっても良いことよね!だって楽しいもの!
「〜♪」
「あれ、こころん何だか楽しそうだね?良いことあった?」
そう話しかけてくれたのはバンドメンバーのはぐみ!今日も大好きなコロッケを頬張ってるわね!
「それはもう!とっても良いことよ!だって学校でとっても良いお友達ができたんだから!」
「へぇ!どんな人なの?」
「彩はね、とっても楽しくて愉快なのよ!それにとっても純粋!どんな時だって笑って走り抜けるのよ!今日だって風紀委員の人と一緒に沢山遊んだんだから!」
「彩って…もしかして丸山先輩?」
「そうよ!はぐみは彩のこと知っているの?」
「うん、花咲川じゃ有名人だよあの先輩。この前も昼休みに教室の窓の縁飛びながら先生から逃げてたって聞いたし」
「まぁ!そんなこともできるのね!今度部活でやってもらおうかしら!テーマは重力ね!」
「あれ、丸山先輩って天文部に入ってるの?」
「ええ!少し前に元気に入部届を出しに来たわ!」
「…大丈夫ですかその先輩。その…こころの遊びに付き合って」
あっ!美咲!
相変わらず私のことを心配してくれてるのね!それなら大丈夫よ!
「ええ!彩は私のいる時はいつも部室に来てくれて、一緒に沢山遊んでくれるのよ!この前も一緒にすっごくおっきな木星のケーキを作ったんだから!」
「マジ…?こころのノリについていけるって同じ人とは思えないわ…」
「そ、その…遊ぶのも良いですけど、程々にしてね。一応ライブも近いし…」
「あ、そうね…。暫く彩とは遊べないわね…」
「ライブが終わるまでの間だよこころん!その後うんと遊ぼう!」
「ええ、ええ!!そうね!!」
そうね!ライブが終わったらまた沢山遊べるわ!あっ!そうだわ!また明日彩にライブのチケット渡さなきゃ!折角のライブだもの。彩も来て欲しいわ!
「そういえばさっきから薫くん静かだね。そろそろ練習始めるのに。…おーい!薫くーん?」
本当ね。いつもなら儚いを付属して話に入ってくるのに…。よく見たら携帯で何か聞いてるわね。イヤフォンを刺してるから私たちの声が聞こえないのかしら?
「薫くん?」
「………ん、ああ、すまない。少し集中していたよ」
「珍しいね。次の役の台本?」
「いや、音楽を聴いていたのさ。これを聴くと不思議と気分が落ち着くからね」
「へぇ…、って『くいーん』じゃん。薫くんも聞いてるんだね!」
「くいーん?」
「この動画のチャンネル名。基本的に曲を投稿してるんだけど、これが滅茶苦茶上手いんだよね!」
「ああ、特にこの曲はとても儚い。まるで草原の中ぽつりと建つ一軒家。その窓に吹き抜けるそよ風のよう……ああ、儚い」
「ああ、『ひとりぐらし』でしょ?良いよねその曲!なんというか、こう安心しちゃう歌詞と声色だよね!実家にいる安心感みたいな!」
「ああ、それも適切だね。最近は彼女の曲を毎日聴いてしまっているよ。彼女の歌には不思議な魅力がある…。女王の歌声に当てられ心を狂わせる私…ああ、儚い」
「むぅ…」
そんなに楽しそうに話されたら、私気になっちゃうわ!
「薫!私にも聞かせてちょうだい!!」
「ああ、構わないよ。…じゃあこころが聞いている間に私は楽器の準備をしてくるよ」
「了解!」
そんな会話をよそに薫の携帯を受けとった私は早速イヤフォンをつけて再生ボタンを押す。
………とても良い歌だわ。
落ち着いていて、それでもその中に強さみたいなものがある。何より楽しそうに歌ってるわ。はぐみが安心するっていうのも分かる…。
それに、何だかこの歌を聴いているととっても眠くなってくる…。ゆっくりな歌だからかしら?頭がぼうっとして、うまく考えられない感覚。…不思議だけど…全然悪い気分はしないわ…。それに…どこかでこの声を聞いたことが……ある気が………
あ、なにかひかって───
「こころ!」
「…あえ?」
「もう練習始めるよ。早く準備!」
「あ、あら?ごめんなさいね。ちょっとぼうっとしてたみたいで…」
「ふふ、こころも彼女の曲の虜になってしまっていたようだね。良ければ後で他の曲も聴いてみると良い。どれも素晴らしいものばかりだからね」
「ええ、そうするわ!ありがとう薫!」
私は薫に携帯を返す。
…よく分からないけど、何だかさっきよりも元気が出た気がするわ!これなら今日の練習も絶好調にできそう!
「準備OKだよ、こころ」
「ええ!」
幸せいっぱいの気分で、ぎゅっとマイクを携える。
「さぁ!ハロー、ハッピーワールド!出動よ!!」
●●●
「紗夜ちゃん、そこの調律間違えてるよー」
「…本当ね、ありがとう」
「紗夜ちゃん。この曲さ、こんな感じのコンセプトで行きたいんだけど、もうちょっとイントロ増やした方が良いかな?」
「…私は今のままでも十分だと思いますが、そのコンセプト通りにするのならギターをもう少し強調させても良いかもしれません」
「おけ!ちょっとやってみる!」
「あ、紗夜ちゃん。この前のライブの話だけど、そこのオーナーが紗夜ちゃんのギター聞きたいって言ってたから、今度行こうね」
「…どこのライブハウスですか?チラシをよく見ていなかったので」
「SPACE」
「…そこガールズバンドの聖地とか言われてる場所ですよね。利用するには厳しい審査が必要だと聞いたのですが、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だって!気前の良いおばちゃんが1人いるだけだよ!」
「……丸山さんの大丈夫はアテにならないんですよね…」
「………あの、丸山さん」
「んー、なに?」
「その…どうして私をライブに誘ったのですか?」
「いや、このライブ1人じゃ出れないんだよね。だから誰か相方が必要だったってだけ」
「それならば、私でなくても良かったはずです。特にこのSPACEなら即興でバンドを組んでも問題ないフリーのギタリストもいると思いますし、丸山さんもすぐに適応できると…」
「あー、それ無理」
「え?」
「何回かやってみたんだけど、先に組んでる人が潰れちゃうのよね。オーナー曰く私が強すぎるんだって。おかげであのライブハウスじゃだーれも私に近づいてこない。ていうか知ってる人は皆んなライブハウス来なくなっちゃったから、今の面子はそもそも私がいること知らない」
「………なら、尚更…」
「だけど紗夜ちゃんは違う」
「え?」
「紗夜ちゃんだけはね、潰れなかったの。多分何回も打ちのめされてたと思うんだけど、その度に立って私に向かい合ってくれた。だから私の今の相方は紗夜ちゃんしかいないよ」
「……そう、なんでしょうか」
「そうだよ!だって前までは私の音楽聞いてるだけだったのに、今じゃ一緒に演奏してるじゃん!これは大いなる進歩だよ!」
「…」
「紗夜ちゃんはいつもいっぱい頑張ってるって私がよく知ってるから。そんな頑張り屋の紗夜ちゃんだから選んだんだよ」
目の前の彼女が優しく笑いかけてくれる。私だけに見せてくれる笑顔で。それだけで膨大な多幸感と優越感が心に満ちた。
ああ、彼女は私の努力を、頑張りを肯定してくれる。かつては妹から逃げようとしただけの拙い手段が、何をしても無駄だと言われてならなかった積み重ねが、ようやく実を結び始めたのだと実感した。
そうね、そうよね。どれだけ彼女に魅せられる人が出てきても、この時間だけは、この笑顔だけは、私のものよね。だから、もう少しだけ、彼女の隣に…
「ライブ、絶対成功させようね」
「……ええ」
彼女の優しさを肌で感じながら、その瞳に映る光を私はしっかりと目に焼き付けた。
彩ちゃん「メンタルケアをするには優しく長所を肯定してあげる、って本に書いてあった!これでヨシ!」
紗夜「丸山さんハァハァ…」
惑星バンジー:星の気分になってみようというテーマで彩が即興で思いついた部活動という名の遊び。やり方は簡単、惑星を模した風船の中に入ってバンジージャンプするだけ!さぁ皆んなもやってみよう!レッツバンジー!
にわかなので、キャラのエミュができてるかちょっと心配な今日この頃…