まるやまっ!   作:わらしべいべー

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【前回のあらすじ!】
・ざわ…ざわ…ざわ…
・ディザスターコンビ爆誕!!
・紗夜ちゃん の 依存度が 上がった!





ろぜりあ!

 

 

 

 

 

 私がー、華麗にライブ会場に参上!!

 

 今日は紗夜ちゃんのバンドユニットのライブ日だぜ!今日という日が楽しみすぎて夜6時間しか眠れなかったぜ!超健康的だぜ!

 朝もとうもろこしを頬張りながら全力で自転車をこいできたので、体力的にもバッチリである!後は紗夜ちゃんのライブを全力オタ芸ダンスで応援するだけだ!この日の為にSPACEでめちゃんこ練習したのだからな!

 

 プログラムを見るに、どうやら紗夜ちゃんは最後の方にやるみたいだ!ふふ、首を長くして待とうではないか!

 買ったポップコーンを頬張りながら、ライブ会場に向かう。ん、おいし!

 

 お、あれ紗夜ちゃんかな?ベンチに座ってぼうっとしてる。やっぱライブ前で緊張してるのかね?

 それよりもライブ衣装かっくいいー!いつも以上にイケメン度が上がっておりますな!53万くらいありそう!

 

「紗夜ちゃーん!」

 

「丸山さん…ってその服は…」

 

「ふふん!見たまえ!これが私の最高傑作!サイリウムアーマー vol.3.5!凄いでしょー!」

 

「とんでもないですね。一体何本ついているんですかそれ…」

 

「えーと、150本くらい?」

 

「どこからそんな費用が…」

 

「ふふふ!これで紗夜ちゃんを応援するのに事欠くこと無しというわけだ!トランザム!」

 

「あの、取り敢えず電源だけ切ってください。眩し過ぎます」

 

 む、そう言うなら仕方なし。

 ふふふ、実はこのサイリウムアーマー、なんと電源ケーブルが繋がってるのでスイッチ一つで全てのサイリウムを消せるのだ! ほいカチッと。

 

「その能力をもっと別のところに活かせないのですか…?」

 

「ふふふ、私はこのサイリウムアーマーを紗夜ちゃんの為だけに作り上げたんだぜ!これ以上の活かし口がどこにあるのだ!」

 

「そ、そうですか…。ありがとうございます…」

 

 あ、照れてる。可愛いー。

 

「…ってそれよりも!ライブ前だけど良いの?こんなとこいて」

 

「はい、まだ時間はありますし、本番前に少し気分転換をしようかなと」

 

「ほむほむ。それで〜ライブの自信の程は?百点満点で!」

 

「私個人であるなら80程でしょうか。出来るところは全てやり尽くしたので後は丸山さんがいつも言っている通り、練習通りに楽しめれば良いかと」

 

 おー!なんかすごい自信あるみたい。心なしか少しドヤ顔だ。可愛い。

 今回は紗夜ちゃんも一際力を入れてるみたいだし、こりゃ応援のしがいがあるね!

 

「それにしても今回はメンバーに対して何も言わないんだねー。前のユニットメンバーには結構ボロクソに言ってたのに。流石の私も引いたぜアレは。ま、それだけ今回のメンバーは自信アリってこと?」

 

「はい、私が考えうる限りでは最高です。かつての私が考えた理想そのものですから」

 

「なら期待大だね!くぅー!超楽しみだ!」

 

「…まぁ、丸山さんが気にいるかと言われれば首を傾げますが…」

 

「ん?なんか言った?」

 

「いえ、それよりもそろそろ時間です。早くしないと席を取られますよ」

 

「あっ、ホントだ!やっばい!」

 

「行ってらっしゃい」

 

「…あっ!ちょっと待って!」

 

「?」

 

「はぐーっ!」

 

「!!!!??」

 

 丸山秘伝!必殺!あやちゃんはぐ!!

 ちょっと前に読んだメンタルケアの本で人肌は安心作用があるって知った!紗夜ちゃん表には出してないけど結構緊張してるみたいだし、ここは彩ちゃんえぬぁじーを供給さしてあげようではないか!

 

「うりうり〜」

 

「ま、ままままままま丸山さん…!?」

 

 そしてそこからの超上目遣い!これで相手のハートもイチコロ!…って本に書いてあった!

 紗夜ちゃんと至近距離で目が合う。

 

「ライブ、頑張ってね」

 

 よし!これでおっけー!

 後はライブを楽しむだけですな!さぁ、いざライブの観客席へ!

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 ───はっ!?

 し、しまった。驚き過ぎて一瞬意識を失っていたわ…。

 まさか急に抱きついてくるなんて…。いえ、丸山さんなりの応援なんでしょうけど、本当に急にはやめてほしい。心臓に悪い。命に悪い。

 ……正直もう少しああされたかったなんて思わなくもないけれど…。

 

「何をしているの、紗夜」

 

「…! 湊さん…。い、いえ、友人が来ていたので、少し話し込んでいました」

 

「…そう。…なら楽屋に戻るわよ。最後の音合わせをするわ」

 

「…分かりました」

 

 湊さんは良くも悪くも前しか見ない人だ。

 その姿は私たちバンドメンバーの目指す先を切り開いてくれるものだ。私たちRoseliaのメンバーは湊さんの背中を追ったから今こうして集い、バンドメンバーになっている。

 丸山さんとはまた別のカリスマ。どちらも音で私を惹きつけた。性格はまるで真逆だというのに、こういうところは似通っている。不思議な縁だった。

 

 しかしメンバーとの仲が良好と言えないのもそのカリスマが原因だろうと考えている。

 私たちはお互いを知ろうとしていないのだ。いや、知ろうとしない湊さんの背中をみんな見ているから、それが余計なものだと感じてしまっている。

 本当に音楽以外を、上以外を見ていないバンド。それが今のRoseliaだ。

 

 …以前までならこんなことは気にすらしなかっただろう。

 だけど、今の私にはそれがいつか致命的な欠点になってしまうのではないかと、そう思えてならなかった。

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

「いやー!超楽しかった!久々の生ライブ!」

 

 少し拙いバンドもあったけど、それも含めてのガールズバンドだよね!いやぁ、あの青さ。前世での学生時代を思い出すぜ…。

 グラウンドに耕した大根畑、ラップ大会になったラジオ体操、町内大戦争になった体育祭、販促アニメみたいな展開になったコマ遊び…今でも鮮明に思い出せるぜ!今度こころちゃんに言ってやってみようかな!

 

「それに、結構面白いバンドもあったんだよね!」

 

 あのAfterglowってバンドなんてパワーが凄かったね!他と比べてもめちゃんこ上手かったし!こう、最初の草むらの短パン小僧とジムリーダーくらいパワー差があった!いやー、良かった!

 

 んで、肝心の紗夜ちゃんとこのRoseliaだけど、結論から言うとべらぼうに上手かった。

 個々の技量はあの歳では考えられないくらいには高くて、純粋に上手い。会場も結構に盛り上がっていた。ほ、本当に高校生ですか貴女たち…?何より最高にテンション上がったのが途中の紗夜ちゃんのスーパーアドリブ!あれは凄かった!超興奮したよ!紗夜ちゃんの良いところ全部出てたね!おかげで私のオタ芸ゲージも最大値になったよ!

 

 …けど、なんていうのかなぁ。楽が無いんだよね。みんな演奏中、何かに追い詰められたみたいな顔してた。前の紗夜ちゃんみたいに。

 要するに、奏者が全然楽しそうじゃなかった。水の中をもがいてるみたいに苦しそうなバンド。それがRoseliaの印象。そりゃ紗夜ちゃんがぼやくわけだよ。まぁでもああいうのって時間が解決してくれたりするらしいし、なんとかなるでしょ!

 

「それに上手なのには変わりなかったよね!紗夜ちゃんが自信満々に言うだけはあった!超楽しかったよ!」

 

「…なんでそれを私のとこに来てまで言うんだい」

 

 向かいの席にいる詩船おばちゃんはため息側にそう言う。

 いーじゃん!紗夜ちゃんもRoseliaの反省会みたいなのに行って会えないんだからさ!今すぐに会える手頃な相手が詩船おばちゃんくらいしかいないの!どうせ今日はこの時間誰もいないんでしょ?だったら私の話くらい付き合ってよ!

 

「全く、勝手にしな。…ほら王手だよ」

 

「ん、あ!?あれれれ!?さっきまで勝ってたのに!?」

 

「ふん、詰めが甘いんだよあんたは。そんなんじゃ一生私には勝てないよ」

 

「ぐぐぐ!おのれぇ!歳しか食ってない癖に!」

 

「叩きのめし足りなかったようだね…!そろそろあんたは目上に対する態度を改めな!」

 

「嫌!兎に角もう一回だ!もう一回!」

 

「はぁ…、いいけど丸山、あんた動画の収録に来たんじゃ無いのかい?ここももうすぐ閉めるよ」

 

「ゲッ!そうだった!ちょっと個室の音響借りるね!」

 

 後はドラム収録した後統合して、データインからの投稿だけだからね!既に私の黄金コンボは成立しているのだ!

 さぁ、いざ弾きに行かん!!ワハハハハ!!

 

「…全く、本当楽しそうに生きてるねぇ。少し羨ましいよ」

 

「詩船おばちゃんも自由に生きれば良いじゃん!…って、そんなご老体じゃもう無理か!ごめんね無理言って!」

 

「あ?」

 

「ヒェッ、ゴメンナサイ」

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 Roselia初のライブが終わった。

 結果はまぁ上々と言ったところである。概ね練習通りの成果が出せたと言って良いだろう。友希那の求めるものとはまだ程遠いが、確実に大きな一歩になったと確信していた。

 今はライブの反省会も終えて、幼馴染であるリサと帰宅するための電車を待っている最中だ。

 

「今日の初ライブ、うまく行ったね!友希那!」

 

「当然よ、私たちはこんなところで失敗は許されないわ」

 

「もう、折角ライブも上手く行ったんだから、少しくらい喜んだら?」

 

「リサ、私たちが目指しているのは頂点よ。こんなところで一喜一憂してるようでは頂には届かないわ」

 

「そっか、なら次に向けて頑張らないとね!」

 

 湊友希那が目指すのは飽くまでフェスに出場して優勝すること。彼女はそれ以外の道筋をただの過程だとしか認識していなかった。

 

「そういえば、今日は紗夜の調子が滅茶苦茶良かったよね!本番ミスゼロ!最高のアドリブも入れてくれたし、今回のMVPだね!」

 

「……そうね」

 

 紗夜のアドリブは結果的にライブを予想していた以上に盛り上げてくれた。…しかし、腑に落ちないところもある。

 

「けど…、少し紗夜らしくなかったわ。結果的には上手く行ったけど、あそこは決してアドリブを入れる必要性があるところじゃなかったわ。安定した結果を求める紗夜が態々あんなリスクを犯してまでアドリブをしたのかしら?」

 

「…言われてみればそうかも。さっき紗夜は『みんなとのライブで気分が昂ったから』なんて言ってたけど、よく考えたら違和感あるかな…」

 

 幸運にもあのアドリブは彼女の音楽性から外れたものではなく、飽くまで正確無比な紗夜自身の音楽の延長線で生み出されたものだった。ならばこれは紗夜自身の音楽の進化と言えるだろう。それはきっとRoseliaを更なる高みに押し上げてくれることに違いはなかった。

 

 ただ、友希那の中には言い表しようの無い不安があった。

 紗夜があのアドリブを決めたあの瞬間、友希那は思わず紗夜の方を振り向いた。

 その時の紗夜の顔は見たことないくらいに楽しそうな笑顔で、そしてその瞳に黒い光のようなものが見えたような気がした。一瞬のことだったから、きっと気のせいかもしれない。ライブが終わった後の紗夜もいつも通りだった。だがそれでも、言い表しようのない不安が背中を伝う感覚がした。

 

「…悪い風に変わらないと良いけれどね」

 

 嫌な考えを振り切る。今重要なのはRoseliaの成長。それで十分ではないか。

 そう思い、一先ず今後の練習スケジュールを確認しようと携帯を見る。すると見知った通知表示があった。

 

(あら、新作が出てるわね)

 

 それはいつも見ている娯楽動画アプリの通知だった。友希那自身はあまりこの手のサイトは利用しないのだが、最近は気になるチャンネルができたので、よく使うようになった。

 

「あ、それ『くいーん』じゃん!新作出たの!?」

 

「そうみたいね」

 

 音楽系動画投稿者『くいーん』。

 主に自作の曲を投稿している作曲家兼歌い手だ。チャンネル開設半年にも満たないにも関わらず、既に登録者は50万に届こうとしており、熱狂的なファンもいる。しかし、動画には声と楽器の音しかない上、年齢や個人情報に始まり、個人なのか集団なのかも一切不明。他のSNSもしていないので、分かっていることは歌い手の性別が女性だということだけ。しかしそれもまた『くいーん』の魅力を引き上げる要因となっている。

 最大の長所はその技量の高さだろう。声色的には高校生ぐらいと噂されているが、だとすれば相当の練習量を重ねている。まるで惹きつけられるような魅力を持つ彼女の歌に友希那は密かな憧れにも似た感情を持っていた。

 珍しく気分を昂らせながら、イヤフォンを耳に挿して再生ボタンを押す。

 

「…良い曲ね」

 

 ギター、ベース、ピアノ、ドラムを使用したバンド調の曲。奇しくもRoseliaと同じ構成だった。

 非常に完成度が高い曲だ。プロが演奏していると言われても遜色ない程に。一つ一つの楽器の音が研ぎ澄まされていて、それでいて美しく統合されている。友希那の目指す理想の一つに近かった。

 

(それに、彼女の歌を聴いていると不思議と力が抜ける…。安心する…とでも言えば良いのかしら…)

 

 曲が終わり、ゆっくりとイヤフォンを抜く。清々しい聴了感が全身を巡る。

 しかしふと、電車の電光時刻表を見ると乗ろうとしていた電車の文字が消えてしまっていた。

 

 …どうやら曲を聞いてる間に電車を乗り損ねてしまったらしい。

 

「あちゃー…、曲聞いてる間に電車行っちゃったみたい…」

 

「…リサも聞いていたの?」

 

「いやー…、つい聞き入っちゃうんだよねー『くいーん』の曲って」

 

「…少しわかるわ。彼女の歌には不思議な魅力がある」

 

「だよねー!中毒性があるっていうか、聞いても全然飽きないよね!」

 

 久々にリサと話題が合って、口元が緩む。

 どうせ次の電車が来るのはまだ先だ。だからもう少しだけ彼女の曲を聞こう。

 そう思い、友希那は再びイヤフォンを耳につけて再生ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 






転生彩ちゃんのヒミツ②:前世では一人暮らしだったので意外と料理ができるぞ!最近は対紗夜決戦兵器、フライドポテトを作る練習しているぞ!これで不味い時は誤魔化す気だ!ズル賢い!

サイリウムアーマー:大量のサイリウムを所狭しとツナギにつけた彩特製応援グッズだ!スイッチ一つで電源のオンオフができて、イルミネーションみたいな光り方のバリエーションも多彩にあるぞ!これなら推しにも一発で見つけてもらえる素晴らしいメリットのある優れ物だ!


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