長所と短所は表裏一体、俺は常にそう思っている、実際そうだ。
「凪砂くーん!おはよ!」
「ん?あぁ、おはよ」
いつものように上原さ…じゃなくて、歩夢さんが俺に挨拶をしてきた。
あの日の一件以来俺達は少しだけ以前より距離が近くなった気がする。
周りからは、あの二人仲良かったっけ?付き合ってる?みたいなしょうもない噂が流れているが、俺達は付き合ってなどいない。
「凪砂君、今日の放課後って予定入ってる?」
「いや別に、入ってはないよ」
そう言うと歩夢さんは、パッと笑顔になってこう言った。
「それなら良かった!放課後さ、私と侑ちゃんと凪砂君で遊びに行きたいなって思ってたの」
と、言うのだが、俺には一つだけ気になる事があった。
「侑ってあの、同好会にいる高咲さん?」
「うん!そうだ…よ……!私…幼…み…で、とっても…い…子なの!」
あれ…?今一瞬だけ歩夢さんの声が聞こえなかった気が…それになんか少し視界が悪い気がすんのは気のせいかな…
「凪砂君…凪砂君?聞こえてる?」
「え、ああ、うん!ごめん聞こえてるよ!」
「良かった、今目がどこ見てるのか分からなかったから聞こえてないかと思っちゃった。」
「え?」
俺は思わず、声を出してしまった。確かに先程から視界があまりよく見えていないし所々歩夢さんの声が途切れて聞こえる。
「え?って凪砂君私が話してる時どこか分からない場所を見つめてたけど…もしかして体調悪いの?」
「え、あ、あぁ…少し頭が痛い気が…ごめん!俺やっぱ帰るよ!その…高咲…さん?だっけ?また今度会えたら会わせて!じゃあ、俺は先に帰るね!」
「あ、待って!凪砂君!…って行っちゃった…どうしたのかな…急に…」
俺はそのまま走って歩夢さんの前から去った。
にしても、さっきのアレ…なんだったんだ…急に歩夢さんの声が聞こえなくなった…それに、視界もぼんやりして見える…。
「……もしかして、昨日食った物のせいかな…」
俺は昨日食べたものを思い出しながら帰路にたっていたのだが、思いつく物が何一つなかった。
とりあえず帰って寝よう…きっと寝れば、治る…きっと大丈夫…
「あれ…結城さん?どうしたのですか?」
「君は…一年生の三船さん…か…?」
突如朦朧とする視界の中、聞き覚えのある一人の女性の声が聞こえた。
「三船…さん…ちょっと体調悪くてね…」
「?…結城さん?どこ見てるのですか…?私はここですよ(もしかして結城さん…)」
「あれれ…やっぱり体調悪くて見にくいのかな…じゃ、じゃあ俺は帰るよ…!またな!」
「え、ちょっと、結城さん!待ちなさい!」
突如俺は呼び止められた
「結城さん…私の声は…え…す…か?」
「え?」
さっきの歩夢さんに話しかけられた時より聞こえにくくなっていた。
三船さんの声が途切れ途切れでしか聞こえない…。
「(間違いない…結城さんは私の声が聞き取れてない…それに意識も薄いはず…ここで1人帰らせるのは非常に危険…どうしましょう…私はこれからやることがあるし…)」
「っ……体が…それに声が…音が聞こえにくい…」
「結城さん!しっかりしてください!」
ダメだ…体が言うことを聞かない…三船さんがなにか俺に言ってるように見えるけど…正直何を言ってるかあまり聞き取れてない……
「結城さん!救急車呼びますね!それまでは意識をしっかり持って下さい!!」
「三船…さん…」
ダメだ……これ以上はホントに……意識が……
俺は少しずつ肉体から意識が離れていくのを感じた。
だけど、ここで意識を手放したら…
「結城さん!!!だめ!諦めないでくださいっ!!」
……くそ……何とか救急車が来るまで…来るまで……そうか…あれを使えば…!
日本の救急の電話が入ってから現地に辿り着くまでの時間は約八分、なら、その分の時間を俺が早くすれば…なんとかなるはずだ……
…ま、その後の事の安全は保証は出来ないけど……やるしかないよな…
「……!」
俺は八分だけ時間を飛ばした。
すると……
「患者さんはどちらですか!」
三船さんの五倍ほど大きな声の男の人の声が聞こえた。
…良かった…何とかなったみたいだ…ただ…代償はそれなりにやっぱ付き物だ…等価交換とはこの事…か…。
俺はそのまま救急車の中に運ばれて、病院へ搬送された。
「ヴっ…がはっ…!」
時間を飛ばしたあと、俺の体に直ぐに異変が起きた。
体のあちこちが痛いし、何よりの証拠が何かを吐き出した後に、俺の口の中は鉄の味が残った。
そして俺はそのまま肉体から意識が切り離された。
__________栞子
気付いたら私は、結城さんと一緒の救急車に乗っていた。
自分で呼んだのは覚えているが、何故か異常に現場に到着するのが早い気がする。
結城さんと話すと何故か不思議と時間が過ぎるのが異常に速い気がする。 以前、私が結城さんを注意した時、言いたいことを言い終えた直後には結城さんの姿がもう、私の前から無くなっていたことがあった。
彼には、何か普通の人とは違う何かがあるのでは?と考えてしまう時がある。
だけど、結城さんは、普段は普通の生徒で何も特筆した何かがあるようにはとても見えない。
それと同時に、何を考えているか全く表情からも発する言葉からも伝わってないし全く分からない。
普通人間は、人と話す声のトーンで人の気持ちをある程度は理解することが出来る。 しかしながら、結城さんにはそれが全くと言っていいほど感じられない。
常に一定の声のトーンと表情。私が生徒会に入ってからはよく見かけるようになったですが、一度も極端に表情を変えてるのを見た事がない。
妥協して、愛想笑いに近い笑顔をするくらいしか見た事がない。
「いつも一緒にいる、歩夢さんなら何か知ってるかもしれないですね…」
私はそう思い、先程の事を歩夢さんにチャットアプリでメッセージを送った。メッセージに既読はすぐにつき返信が返ってきた。
内容は
「凪砂君が運ばれたって、ほんとに大丈夫なの?私もすぐにその病院に向かうね!」と、結城さんの心配するメッセージだった。
それにしても、どうして歩夢さんだけには結城さんは心を開いているのでしょうか…、そこも疑問です…。
普通科で同じクラスだから?それとも偶然席が近いから仕方なく…?
私の中で沢山の憶測が脳内をかけ回っていた。
すると、診察室から医者が出てきて、結城さんの容態を話してくれた。
幸い命に別状は今のところの段階だと無いらしい。
しかし、何故ああいう状態になったのかは原因不明なので、経過観察との事
そして、歩夢さんも到着したみたいで、連絡が来てた。
「凪砂君大丈夫だった?変な病気とかではない?」
と、やっぱり心配の連絡だった。
そして、いざ会ってみると
「栞子ちゃん!凪砂君は…凪砂君は…」
「だ、大丈夫です!お、落ち着いてください歩夢さん」
物凄い心配した顔で、結城さんの容態の事を聞いてきた。
先程医者に言われた事を言うと少しだけ安心したのか、歩夢さんは
「よかった…命に別状はなくて……」
と、安堵のため息をしていた。
ほんとに…何も無ければ…良いのですが……
ねむい