「なーるほど、そんな事があったんだね」
ナンジャモが納得顔で頷く。そして爽やかな風が吹き抜ける野原に置かれたテーブルを囲みながらハルトやメロコがサンドイッチをむしゃむしゃ食べるミュウを見る中でネモは少し頬を膨らませながらユウの制服を強く掴んでいた。
「あ、あの……ネモ? そんなに強く掴んだらシワになっちゃうんだけど……」
「……だって、掴んでおかないとまたどこかに行っちゃうし……」
「ど、どこにも行かないよ……さっきのはミュウのテレポートが理由だったし」
「けど、さっきのネモ氏の狼狽え方はスゴかったよ? すぐにハルト氏達に連絡して協力を呼び掛けてはいたけど、声を震わせてて今にも泣き出しそうだったからね」
「うん、あれは本当に驚いたよね」
「グループキャスターが起動したと思ったらネモはスゴく泣きそうだったし、本当に焦ってたのかペパーにも繋いでたからね」
ハルトとアオイが頷き合っていると、それを聞いていたネモは軽く顔を赤くした。
「だって……私から手が離れた瞬間にいなくなったから、なんで手を離しちゃったのかとかユウが危険な目に遭ってたらどうしようとか色々考えちゃったんだもん……」
「僕達もビックリしたけど、ネモは本当にビックリしただろうね。ネモ、心配してくれてありがとう。それと……本当にゴメン」
「……もういなくならないでね。今度いなくなったら怒るから」
「わかった。さてと、ミュウが手持ちに加わって、ミュウツーが僕を鍛えてくれる事になったけど、ナンジャモさんはやっぱりミュウとミュウツーを配信のネタにしたいですか?」
ユウの問いかけに対してナンジャモは微笑みながら首を横に振る。
「いいや、止めとくよ。カントー地方の珍しいポケモンを配信に出せばバズり間違いないし、ストリーマーとしてここまでのネタを逃すのは実に惜しいよ。けど、そんな事をしたらミュウ達を狙う良くない奴らが来るのは想像に難くないからね」
「たしかに……ミュウツーとミュウだったらそういう人達は簡単に追い払えそうだけど、騒ぎになっちゃうと色々大変だよね……」
「そうだな。さて、これからユウを鍛えていくわけだが……ネモ、といったか。お前はこの地方における頂点に位置するトレーナーの一人である。それは間違いないか?」
「うん。私もチャンピオンランクの一人だからね」
「そうか……ならば、ユウがチャンピオンランクになったその時にこそ話をしてやろう。欲を言えば、チャンピオンランクの中でも頂点にまで登り詰めてほしいが、そこまでは流石に求められんからな」
「あはは……それは僕も難しいかな。さてと、そろそろミュウを捕まえないとね」
そう言いながらユウがミュウに視線を向けると、ミュウは食べかすを口に付けながら首を傾げた。
「ミュ?」
「ミュウ、改めて聞くけど、君をゲットしても良いかな?」
「ミュ!」
「うん、ありがとう。それじゃあ……」
ユウがモンスターボールを取り出すと、ミュウはスイッチを自分から押した。そして、ミュウはモンスターボールの中に吸い込まれていき、三回ほど揺れると、モンスターボールからは小さな光が漏れた。
「ミュウ、ゲット。ニックネームは……どうしようかな?」
「ミュウハセイベツフメイダシ。ダカラ、オスメスカンケイナイナマエガヨサソウダシ」
「そうだよね。それなら……クララの時と同じでちょっと保留にさせてもらおうかな。ちょっと申し訳ないけどね」
「別に構わんだろう。さてユウ、お前をチャンピオンランクにまで上げるための最初の試練を言い渡そう」
「あ、うん。なに? ミュウツー」
ユウ達の視線が集中する中、ミュウツーは静かに口を開いた。
「手持ちポケモンが一匹でも勝利を掴む。それが今回の試練だ」