数分後、ユウ達はユウの自宅に着いており、腹拵えのために庭のテラスを使って休憩をしていた。そんな中、ミライドンと赤いポケモンは先程までの姿から戻っており、ネモは少し残念そうに見ていた。
「うーん……さっきまでの強そうな姿から変わっちゃったね。 ねえ、ハルト。またあの姿にはなれないの?」
「なれるとは思うけど、すぐには難しいと思うよ。うっすらと覚えている事だけど、ミライドンはバトルに関してトラウマがあるみたいで、それが原因で中々変われないみたいなんだ」
「それだけ酷い目に遭ったわけだよね。 トラウマ……一体何があったんだろう?」
「よっぽど強い相手がいたとか? シャリタツ、ミライドンともう一匹から話は聞けない?」
「ヤッテミルケド……」
シャリタツは自信無さげに答え、ミライドン達に話しかけた。
「ニヒキトモ、カコノコトハハナセルシ?」
「アギャ……」
「ギャス……」
「ミライドンハオボエテナイ、アカイノハハナスノガコワイミタイダシ」
「アギャ、アギャス!」
「……アカイノジャナクテ、コライドンッテイウミタイダシ」
シャリタツがため息混じりに言う中、クラベルは興味深そうな顔をする。
「未来と古来、ですか……因みに、ミライドンさんもご自身の事やハルトさんの事、そして手持ちポケモンとバトルの事以外は覚えていらっしゃらないという事ですか?」
「キュウス……」
「ソウミタイダシ。クラベル、ナニカココロアタリハナイシ?」
シャリタツからの問いかけにクラベルは首を横に振る。
「今のところは……ただ、別の地方で似たような事例があるかもしれないので、少し調べてみますね」
「わざわざすみません……」
「いえ、構いませんよ。さて……そろそろアカデミーへ向かいたいので、その前に一度ユウさんの保護者の方にご挨拶をしたいのですが……」
「父さん達ならしばらく帰ってきませんよ」
「え、どういう事?」
ネモが不思議そうに聞くと、ユウは寂しげに答えた。
「二人とも別の地方に出張に行ってるからいないんだよ。昨日まではいたんだけど、急な出張が入ってね。だから、今は僕とホムラの二人だけだったんだ」
「なんとそうでしたか......それではご挨拶はまた近い内にという事にしましょうか」
「わかりました。二人にも連絡はしておきますね」
「はい、よろしくお願いします。では、そろそろ──」
そう言いながらクラベルが立ち上がろうとしたその時だった。
「あ、いた!」
少々怒りを含んだ声が聞こえ、ユウ達は視線を向ける。 そこにはアカデミーの秋仕様の制服を着た片目をメッシュの入った長い前髪で隠した男子生徒がいた。
「あれは2-Gのペパー……だよね?」
「そのようですが……ペパーさん、私達に何か用事でしたか?」
「ゲッ、校長に生徒会長!? アイツらに気を取られて気づかなかったぜ……」
「アイツらってもしかして……」
ユウが不安そうな顔でミライドンとコライドンを見ると、ペパーは 静かな怒りを湛えた表情で二匹を見ながら頷いた。
「そうだよ。ソイツの存在が俺にとってはありえないし、イライラの元なんだよ」
「なんでそんなにイライラしてるの?」
「……おい、そこのお前」
「ちょっと無視!?」
「な、なに……かな?」
ユウがビクビクする中、ペパーはモンスターボールを手に取りながら口を開いた。
「お前がソイツらを扱いきれるか俺が確かめてやるよ」