「ふう、そこそこ歩いたかな。ミカヅチ、大丈夫? 苦しかったり具合悪かったりしない?」
ハッコウシティを出発してから十数分後、ユウが問いかけると、ミカヅチはにこにこ笑いながら答えた。
「ピッチュ!」
「ダイジョウブ、トイッテルシ。ムシロオオヨロコビダシ」
「あははっ、たしかにかなりはしゃいでるもんね。ミカヅチ、ユウの背中は落ち着くでしょ?」
「ピチュ! ピチュピチュ、ピッチュ!」
「ウン、ゼッタイニダレニモユズリタクナイクライオチツクシ、コンナニオチツクトコロガアルナンテオモワナカッタヨ、トイッテルシ」
「そっか。それじゃあシュリの作戦は大成功だったんだね」
ユウの言葉にシュリは頭の上で胸を張る。
「エッヘンダシ。モットシュリヲホメテモイインダシ?」
「うん、これはいっぱい褒めても良いと思うよ。まあこれから問題が出てくるとすれば、ミカヅチがユウの背中から離れなくなる事かな」
「ナクハナイシ。リーフモシンカスルマエハカタノウエニノッテシアワセソウニシテタカラ、ソノウチニユウハシュリタチデギュウギュウニナルシ」
「それはちょっと困るような……でも、好かれるのは嬉しいな。これまでは両親以外から好かれるなんて事はなかったし、こうして人からもポケモンからも気にかけてもらったり気に入ってもらえたりするのは本当に幸せだよ」
「ミュウツーガイウニハユウハツワモノニスカレルヨウダシ。ツマリ、ユウヲカラカッテキタヤツラハドウシヨウモナイジャクシャトイウコトニナルシ」
「その言い方は流石に……でも、さいきょうの証持ちのみんなはユウが大好きで、ヌシポケモンやヌシの子供のシュリ、そしてハルトや先生達もユウの事は気に入ってるから、ユウにはそういう人達を惹き付ける何かがあるのは本当なんだろうね」
ネモがユウを見ながら言う中、シュリはニヤニヤしながらネモに話しかけた。
「ソレハネモダッテイッショダシ? セイトカイチョウデチャンピオンランクダカラツワモノナノハマチガイナクテ、ユウノコトヲキニイッテルドコロカイセイトシテスキナノモマチガイナイカラシ」
「え?」
「ちょっと、シュリ!」
「モウイイカゲンオモイヲツタエアウシ、フタリトモ。コノママナニモイワズダトキカイヲツクラズジマイニナルシ」
「伝え合うって……え、それじゃあ……」
ネモが驚く中、ユウは顔を少し赤くしながら頷いた。
「うん……こういう経験がないからまだ断言は出来ないけど、ネモに対して抱いているこのドキドキと温かさは恋心なんだと思う。初めて出会った時からネモの事は可愛い女の子だと思ってたし、美味しそうにご飯を食べてくれる姿やバトル中の楽しそうな笑顔は大好きで、ずっと見ていたいと思うから」
「ユウ……」
「でも、僕の今の実力や精神面じゃネモとは釣り合わないと思ってる。ハッコウシティでも言ったけど、ネモの隣にいてネモが僕をライバルだと胸を張って言える程でもない。だから、ちゃんとした告白は今は出来ないよ」
「ソレジャアイツスルンダシ? アーダコーダイッテテモショウガナイシ、ネモダッテイツマデモマテナイシ?」
「あはは……まあ、いつって予め言っておいてもらえたら、私も心の準備が出来るから助かるかな」
ネモが少し照れながら言うと、ユウは深呼吸をしてから真剣な表情で答えた。
「同じチャンピオンランクになった時、僕が自信を持ってネモのライバルで同じレベルのトレーナーなんだと言えるようになったその時にネモに対して正面から好きだって伝えるよ。だから、もう少し待ってて。長くは待たせないようにするから」
「……うん、楽しみに待ってるね」
照れながらも嬉しそうに笑うネモがユウの手をしっかりと握り、シュリとミカヅチが頷き合っていたその時、ユウ達の近くの土が大きく盛り上がった。そして、そこにユウ達の視線が集中すると、そこからはつぶらな瞳をした赤いポケモンが姿を現した。