「わ、わやじゃ……ねーちゃんに勝っちまった!」
「あ、あたしがこんな簡単に……!?」
スグリが驚き、ゼイユが信じられないといった表情を浮かべる中、ハルトはマフィティフを軽く撫でた。
「お疲れ様、マフィティフ。ゆっくり休んでね」
マフィティフがそれに応えるように吠えた後、ハルトはマフィティフをボールに戻した。そして夕雨達が近づくと、ハルトはゼイユを見ながら声をかけた。
「僕達の勝ちだ。約束通り、ユウに謝ってもらうよ」
「……わかったわよ。負けたのは事実だし、約束を突っぱねる程子供でもないから。ユウ……だっけ? 弱そうだとか大した理由も無さそうだとか言って悪かったわ」
「いえ、ハルト君が言っていたように僕自身にも非はあった事ですから。それより……さっきのチャデスは大丈夫ですか? 一応、オボンやオレン、きずぐすりなんかは多めに持ってますし、もしバトルでお腹が空いてるようならサンドイッチでよければすぐに作りますよ?」
「あんた……怒ってないの? 少なくとも、あんたの友達は怒ってるみたいだけど」
ゼイユが驚く中、ユウは微笑む。
「別に怒りませんよ。ハルト君達が怒ってくれただけで十分ですし、さっきも言ったようにバトルをしないと決めた一件についてはあくまでも僕に非があって、弱そうだと思われるのだって僕自身がそういう印象しか与えられないのが悪いだけですから。本当はもっと頼りがいがあるようになるべきなんですけどね」
「あんた……」
ゼイユが呆れたように言うと、ネモは苦笑いを浮かべた。
「ユウってこういうところあるんだよね。誇れるところは多いのにそれ全部を自分の良いところとして捉えないし、自分よりも他人の心配をしちゃうんだ」
「……なるほど。だから、何を言われても怒らないし、むしろハルト達が怒ってたわけね。はあ……なんだか毒気を抜かれた気分だわ。余所者なんてキタカミに入れてやるもんかって思ってたあたしがバカみたい」
「ねーちゃん、余所者にキタカミの土を味合わせてやるって言ってたからな。だから、バトルを申し込んでたんだけど、ねーちゃんが負けるなんて思わなかった。にへへ……驚いた」
「ハルト君もそうだけど、ネモやアオイちゃんだって本当に頑張り屋さんだからね。アオイちゃんは僕よりも後にポケモンを持ったのにどんどんジムチャレンジをこなしてるし、ネモも最年少でチャンピオンクラスになる程スゴい上にしっかりと努力をしてるからとっても尊敬出来て、ハルト君も強さに胡座をかかずにいつもポケモン達の事を考えてる優しい人なんだ。正直、僕なんかにはもったいないくらいの友達でライバルでクラスメート達だよ。もちろん、クロス君やライラさんだってそう。だから、ゼイユさんやスグリ君とも仲良くしていきたいな」
「ユウ……」
ネモ達が嬉しそうに、しかしどこか複雑そうな顔をする中、ゼイユは何かを察したようにため息をつき、そのまま後ろを向いた。
「とりあえず公民館に行きましょ。話の続きならそこで聞くから」
ユウ達は頷いた後、ゼイユとスグリの後に続いて歩き出し、木の陰に立っていたミュウツーも静かにその後を追った。