ヤンヤンマやウパーといったポケモン達が穏やかな表情で過ごす中をユウ達が歩く事数分、公民館の前に着くとドアがゆっくりと開き、一人の老人が出てきた。
「ん……スグリにゼイユ、しっかりお客様をお出迎えしてきたようだな」
「……バトルを申し込んだ上に負けてたけどな」
「ちょっ、スグ!」
「やっぱり、か……まあそれは想定していたから別に良い。さて、林間学校に参加なさる皆さん、キタカミの里にようこそ! 私はこの公民館の管理人。林間学校の間、皆さんのお世話をさせていただきます。よろしくお願いします」
管理人が微笑みながら言った後、ユウ達は管理人に挨拶をした。そして管理人の後に続いて公民館に入った後、ユウ達が広間に入ると、管理人はユウ達を見回してからニコリと笑った。
「長旅でお疲れでしょうし、何かお出ししましょう。少々待っていてくださいな。ゼイユ、スグリ、皆さんのお相手をしっかりとするんだぞ?」
「う、うん……」
「わかってるわよ」
ゼイユとスグリがそれぞれ返事をし、管理人が出ていくと、ゼイユは大きくため息をついた。
「はあー……一々言われなくたって話し相手くらいするってのよ」
「それはたしかに……で、でも何を話せば良いんだべか……」
「そうねぇ……あ、スゴく話しづらい事だと思うけど、ユウがバトルをしないって決めたきっかけについても良い? 事情を知らなかったとはいえ、色々言っちゃったから知っておきたいのよ」
「はい、別に良いですよ。まず始まりは──」
その時、ユウの腰のモンスターボールの一つが独りでに開き、中からミュウのシンが飛び出してきた。
「ミュ!」
「わっ……!」
「ビックリした……ちょっと、あんた! いきなら驚かすんじゃないわよ!」
「ミュミュミュ」
シンは口元に手を当てながら可笑しそうに笑うと、ユウのモンスターボールの一つに手を触れた。
「あ、こら!」
「ミュ!」
シンがスイッチを押すと、中からピカチュウのミカヅチが飛び出した。その突然の事にユウ達が呆けていると、二匹は頷き合った後にそれぞれユウの肩にぶら下がった。
「ピカ!」
「ミュ!」
「まったく……君達は本当に背中とか肩にぶら下がるのが好きだよね」
ユウが仕方ないといった顔をし、ネモ達がまたかといった様子で苦笑いを浮かべていると、ブライアとゼイユ達はポカーンとしていた。
「そのポケモンは……カントー地方で伝説のポケモンと言われているミュウじゃないか。ユウ、どうして君が持っているんだ?」
「旅の途中で出会って仲間にしたんです。シンはこのミカヅチと一番仲が良いみたいで、こんな風に一緒にぶら下がってる事が多いんです」
「伝説のポケモンが仲間……」
「あんた、思っていたよりも規格外なのね」
「そんな事──」
『規格外なのは間違いないじゃない』
「え?」
ユウが驚きながらシンを見ると、シンは軽く宙に浮かんでから目を瞑り、ユウに額を軽くぶつけた。そしてユウが驚いている間にシンは額を離すと、再び肩にぶら下がり、ミカヅチは不思議そうに首を傾げた。
『ユウ、どうしたの? シンが何かしたの?』
「あ……え、えっ……?」
「ユウ、どうしたの?」
ネモが代表して聞く中、ユウは目を見開いて驚きながらミカヅチに話しかけた。
「……ミカヅチ、もしかして今のって君の声なの?」