「……という事があったんです」
ユウが話を終えると、ゼイユとスグリは揃ってユウに対して驚いた顔を向けた。
「あんたに力に溺れた時があったなんて……」
「会ってからまだそんなに経ってないけど、そんなイメージが無かったから驚いたべ……」
「私達だってそうだよ。その時のユウは圧倒的な力を手にしたからこそそれを振りかざして楽しそうにしてたし、いつものユウと違って怖いと思ったよ」
「……あの時はこれまで持ってなかった強さを手に入れられたと思って嬉しかったんだ。これでようやくネモとハルト君の横に胸を張って並べるって。でも、結局その強さ自体はポケモン達の物で、僕の物じゃないからその考えは間違いだったんだけどね。トップチャンピオンのオモダカさんにも勝てなかったし……」
「まあ負けたからこそ目が覚めたんだろうしね。そうじゃなかったらもっと酷くなってただろうし」
「うん。だから、僕はもうバトルは出来ない。今の僕の心の弱さだとまた何かのきっかけに暴走する可能性があるから」
ユウが哀しそうに、そして悔しそうに言っていると、スグリが静かに手を上げた。
「それじゃあポケモン達はどうするんだ……?」
「別に逃がすとかはしないよ。バトルはしないけど、ポケモン達が特訓をしたいって言うならそれを見守るし、仲間になってくれた以上は最後までお世話をするよ。バトル好きな子達からすれば不満だろうけど」
「ユウの手持ちはユウの優しさや料理の味が気に入っているからそこまで不満は出ないと思うけど、バトルをしたいって思うポケモンは少なからずいるだろうね」
「うん。だから、僕は別の面でポケモン達を支えて、バトルに関してはシュリに一任出来たらって思ってるんだ。今はすっかり怒らせちゃってるから話を聞いてくれるかはわからないけど」
「シュリってたしか……」
「そう。ユウの手持ちの内の一匹であるシャリタツの名前で、ポケモンでありながらバトルの指示が出来るくらい頭が良くてポケモンやバトルの事についても知識が深い子だよ」
それを聞き、ゼイユとスグリが驚く中、ブライアは興味深そうな顔をした。
「クラベル先生やジニア先生から話を聞いてまさかと思っていたが本当にいるようだね。自分でもバトルが出来る上に指示も出せるなんて実に興味深いよ」
「滅多にいないですからね。これを頼みたいっていうのもあるし、早くシュリと仲直りしないと……」
「私達だってユウとシュリが一緒にいないとなんだか変な感じがするし、そうしてもらえると嬉しいな」
ネモの言葉にハルト達が頷き、ユウが自信なさげな顔をしていたその時、広間には大皿いっぱいに盛られた焼き餅を持った管理人と里の住人が入ってきた。
「皆さん、お待たせしました。このキタカミの里の名物、きのみを練りこんで作ったキタカミもちです。まだまだあるのでいっぱい食べてくださいね」
それを聞いたミカヅチとシンが歓喜の声を上げた後、ユウ達は管理人達を交えながらしばらく楽しい時間を過ごした。