その日の夜、ユウは公民館の外に一人で立っていた。
「ふう、なんだか眠れなくて起きてきちゃったけど、やっぱりキタカミの里の風は気持ちが良いなぁ。ゼイユさんとスグリ君との出会いもあったし、林間学校に来て良かったな」
ユウの表情はとても穏やかであり、静かな公民館近辺の風景をそのまま眺めていた。そしてユウの口から小さく欠伸が漏れたその時だった。
「ぽに……」
「……え?」
近くから小さな声が聞こえ、ユウは辺りを見回す。そして山がある方へ視線を向けると、そこには大きな顔をした小柄なモノが立っていた。
「き、君は……」
「ぽにお……」
ユウが少し驚いた様子で見る中、それはゆらゆらと揺れながら近づいた。そしてユウとの距離があと少しというところまで縮まったその時だった。
「あれ、ユウ?」
「え……あ、ネモ」
ユウを見つけて嬉しそうな顔をしながらネモが近づくと、近づいてきたモノは
「あっ、ちょっと……!」
「あれ……もしかしてちょっと間が悪かったかな?」
「あはは……僕は大丈夫だけど、あの子からしたらそうかもね。ネモも眠れなくて来たの?」
「うん。はあ……風が気持ちいい」
就寝前だった事で寝間着姿で髪を下ろしていたネモの姿にユウは照れた様子で顔を赤くした。
「キ、キタカミって良いところだよね」
「うん……夕ご飯もあっさりしてたけどとっても美味しかったし、スゴくのんびりとしたところだから気持ちも穏やかになるし、本当に老後はこういうところに住みたいかも。その時は……ユウも一緒だったら良いな」
「う、うん……そう、だね……」
ユウが顔を真っ赤にして答える中、ネモは吹いてくる風で軽くなびく自分の髪をチラリと見てからユウに視線を向けた。
「……ねえ、ユウ」
「な、なに……?」
「やっぱり私やハルトがライバルなのってプレッシャーだったりする?」
「え?」
「ハルトとも話したんだけど、カラフシティの件ってユウが私やハルトの隣に胸を張って並べるような強さが欲しいと思ってたから起きたんでしょ? だから、私達がライバルじゃなかったらユウは今でもシュリと一緒に何の気兼ねもなくバトルを楽しめてたんじゃ──」
「そんな事ないよ!」
ユウの声にネモは驚く。
「ユウ……」
「僕は二人がライバルで本当に良かったと思ってる! 二人の強さは憧れでもあったし目標でもあった! だから、これからもライバルでいて欲しいと思ってるよ!」
「……そっか。ふふ、そう言ってくれて嬉しいし、とっても安心出来たよ。ハルトもきっとそう言うと思う」
「ネモ……」
ネモが安心した様子で笑い、ユウも笑みを浮かべていたその時、ザリッという音が聞こえ、ユウとネモは揃ってそちらに視線を向けた。すると、そこには想像していなかった光景が広がっていた。
「えっ……ぼ、僕と……!」
「わ、私……!?」
緑色のじんべえ姿で立つ自分達の姿にユウとネモは目を丸くした。