「い、いつの間に紛れ込んでたんだ……?」
「まったく気付きませんでしたあ。スグリさん、キタカミにもイーブイは生息しているんですかあ?」
「い、いえ……野生では見た事がないです。だから本当に驚いてます」
「うーむ、これは不思議ですねえ。うん? よく見たら前足のところに何か印のような物があるような……?」
「これ……さいきょうの証だ。それじゃあ君もホムラやシンと同じなんだね」
ユウがイーブイの顎を優しく撫でると、イーブイは気持ち良さそうに目を細め、スグリはクスリと笑ってからバスケットの中のタマゴに視線を移した。
「それにしても、このタマゴはなんだべ? 鬼さまは何か知ってるか?」
『それならジニア先生がこっそり置いていたよ。黙ってて欲しそうにしていたから言わなかったけど、正直それどころじゃなくなってしまったねえ』
「あはは、そうですねえ。本当はピクニックをしているとこういう事も起きるという説明に使って、その後はお二人のどちらかにお渡ししようと思っていたんですが、興味をこのイーブイに奪われる形になってしまいましたあ」
「本当にいきなりでしたからね。イーブイ、良かったら君も一緒にピクニックする? こうして出会ったのも何かの縁だから」
『うん! こっちに来たら楽しそうな事に出会える気がしてたから是非参加したいな! とっても美味しそうな香りもするしね!』
「うん、わかった。それじゃあイーブイも参加するとして、とりあえず次の看板の事についても話そうか。スグリ君、次の看板ってどこにあるの?」
ユウの問いかけに対してスグリはユウの目を見ながら答える。
「二つ目はキタカミセンターにあるべ。鬼が山の南東にある施設で今夜やるオモテ祭りの会場になってるんだ」
『ああ、あそこかい。オモテ祭りは本当に賑やかで楽しそうにしてる人ばかりだから良い催しだと思うよ』
「え? 鬼さま、オモテ祭りを観に来てるのか!?」
『こっそりね。今夜も参加は出来ないけれど観に行くつもりだよ。あの楽しげな雰囲気は本当に良い物だからねえ』
「そっかぁ……それにしても、ユウは本当にスゴいんだな。後天的とはいえポケモン達とも会話が出来て、さいきょうの証持ちや伝説のポケモンに好かれる上に色々な人からも慕われてる。まるで物語の主人公みたいだし、特別な存在って感じがするなぁ」
スグリが羨ましそうに言うと、ユウは微笑みながら首を横に振る。
「僕は特別なんかじゃないよ。ちょっと色々な縁には恵まれてるけど、ただそれだけで至って平凡な一トレーナーに過ぎないよ。まあ……大切な人の特別にはなりたいしそれだけで十分だけどね」
「大切な人ってネモさんか?」
「……うん、まあね。それに、スグリ君だって特別な存在なんだよ?」
「え?」
スグリが不思議そうにすると、ジニアはうんうんと頷いた。
「そうですねえ。特別と一言で言っても色々な特別があります。家族という特別や恋人という特別、それに相棒という特別や友達という特別もあります。そのどれもがその人がいるからこそ出来た関係であり、他の人では代用出来ません。同じような関係は出来てもまったく同じ関係というのは無いんです。ですので、スグリさんも特別な存在なんですよ。世界にたった一人しかいない特別な存在なんです」
「おれが特別……」
「もちろん、ユウさんもそうですからね?」
「はい。まあそういう考えもあるくらい程度に考えておいて良いと思うよ」
「う、うん……」
「よし、次の看板に行くために今はしっかりと英気を養おう」
その言葉にスグリ達は頷き、一行はピクニックを再開した。そしてユウ達が楽しげにする中でスグリはボーッとした様子を見せていた。