「さあ、どんどん行くよ! シュリ、上に向けてハイドロポンプ!」
「リョウカイダシ!」
返事をすると、シュリは空を見上げてハイドロポンプを放った。そして吐き出された水がシュリやヤンヤンマに降り注ぐ中、スグリはわけがわからないといった表情を浮かべた。
「な、なんだ……何が狙いなのかまったくわからねぇ……」
「このハイドロポンプ……まるで雨のようだな……」
ユウは顎に手を当てていたが、やがて何かに気付いた様子でハッとした。
「まさか……!」
「ユウ? どうしたんだ?」
「スグリ君! すぐにヤンヤンマの事をどうにかしないと……!」
「ザンネンダケド、モウオソイシ」
その言葉と同時にヤンヤンマは徐々に高度を下げ、やがてそのまま地面に降りると、ブルブルと体を震わせ始めた。
「ヤンヤンマ!?」
「やっぱり……!」
「ユウ、一体何が起きてんだ!?」
「……擬似的に素早さを下げられたんだよ。今のハイドロポンプとヤンヤンマの特徴を利用されて……!」
「ヤンヤンマの特徴……?」
ヤンヤンマの様子を気にしながら聞くスグリに対してユウが答える。
「ヤンヤンマは羽を高速ではためかせる事で空中で停止したり自由自在に飛ぶ事が出来る。だから、ネモ達はハイドロポンプを雨のようにする事で羽に水分を含ませたり身体を冷やさせたりしてヤンヤンマが飛べないようにしたんだよ。虫タイプは寒さに弱い子が多いって聞くし、羽をはためかせる事で体温も徐々に逃げていく上に扇がれて冷風を浴びる事にもなるしね」
「そんな事まで……それじゃあこのままだと攻撃を受け続けるだけって事か?」
「うん……だから、こうなったら機動力は考えずにシュリの攻撃をいなしながら戦う方が良いと思う。シュリは動き回って戦うタイプではないし、機動力を無くしてきたのも動き回られるのが厄介だったからだろうから」
「そうだよな……」
スグリが悔しそうな顔をする中、ネモはニッと笑った。
「どうやらここまでみたいだね。それじゃあそろそろ終わりにしようか! シュリ、ハイドロポンプ!」
「ショウチシタシ!」
返事をしたシュリがハイドロポンプを吐き出したその時、ユウは目を見開きながらスグリに声をかけた。
「スグリ君! ヤンヤンマに地面に技を使うように言って!」
「え? わ、わかった! ヤンヤンマ、地面にシャドーボールだ!」
「ヤ、ヤンマ……!」
ヤンヤンマがシャドーボールを地面に放つと、その場には土煙が舞い、それが晴れた頃にはヤンヤンマの姿は消えていた。
「え!?」
「スガタガキエタシ……イッタイドコニキエタシ……!?」
「スグリ君! 今だ!」
「ヤンヤンマ! むしのさざめき!」
「ヤンマ!」
ヤンヤンマの声が聞こえると同時にシュリの足元が揺れ始め、シュリが困惑しているとシュリは途端に苦しみ始めた。
「グッ、グアァーッ……!」
「シュ、シュリ!?」
ネモが驚く中でシュリはそのまま倒れこみ、静かに目を回し始めた。
「バ、バタンキュー……ダシ」
「シュリ……」
ネモが呆然とする中、ユウとスグリはお互いに向き合った。そしてどちらともなく手を軽く上げると、笑みを浮かべながらハイタッチを交わした。