ハイタッチを終えてスグリがヤンヤンマをボールにしまい、ユウが腕の中のイーブイを下ろした後、ユウはにこりと笑った。
「やったね、スグリ君。ネモとシュリの二人に勝っちゃうなんて本当にスゴいよ」
「いや、ユウのおかげだ。ユウのサポートが無かったらオロオロするだけだったからな。ヤンヤンマだって頑張ってくれたし、おれなんてまだまだだ」
「ううん、そんな事ないよ。スグリ君が諦めなかったからそれにヤンヤンマも応えてくれた。あくまでも頑張ったのは二人で、僕はこうしたら良いんじゃないかというのを口に出しただけ。だから、本当にスゴいのは二人だよ」
「いや、ユウだってスゴいべ。ネモさんだってそう思うだろ?」
スグリがネモに視線を向けると、ネモはシュリを肩に乗せながら俯いていた。
「ネモさん……負けたのがやっぱり悔しかったのかな……」
「いや、あれはたぶんちょっと違うかな」
「え?」
スグリが首を傾げていたその時、ネモは勢いよく顔を上げると同時に目を輝かせながらユウに近づき、スグリが驚く中でユウを強く抱き締めた。
「え……ネ、ネモ……!?」
「ユウ! 今のはほんっとうにスゴかった! もう感動しちゃったよ!」
「え、え? く、悔しくて俯いてたんじゃないのか……?」
「ネモはたしかに悔しさも感じるけど、それ以上に勝っても負けても楽しさを感じる子だから。というかネモ、嬉しいけど流石に恥ずかしいから!」
「あ、ごめんごめん」
そう言いながらネモはユウから離れると、恥ずかしさで顔を赤くするユウを見ながら笑みを浮かべた。
「さっきのユウの作戦があまりにも予想してなかった物だったから、感動してつい抱き締めちゃったよ」
「まったくもう……まあでも、あれはヤンヤンマの技構成次第では出来ない物だったから、正直ラッキーではあったよ」
「そういう時ってあるよね。バトル中に突然新しいやり方を思いつく時だってあるし、そういう事があるからやっぱりバトルって楽しいなと思うよ」
「バトルが楽しい……」
スグリは呟くように言った後、ユウとネモを見ながら笑みを浮かべた。
「んだな。おれもバトルは楽しいって思う」
「だよねだよね! もちろん、勝てた方が楽しいし、負けた時は悔しいけど、やっぱりバトルって楽しいなと思うよ。特に今回みたいに予想してなかった戦い方を見た時はね。さっきのはシャドーボールを使って地面に穴を空ける事でハイドロポンプを避けて、その後に地面を通じてむしのさざめきを当ててきたって感じだよね?」
「うん。動きを封じられているならこういう方法があると思ったんだ。うまく行くかは正直賭けではあったけどね」
「ソノカケニカッタカラコソノショウリダシ。ソレハマチガイナイシ」
「うん、ありがとう。とりあえずシュリ達の回復をしてあげないと……」
その時、ユウ達を強い光が照らし、それに驚いたユウ達が顔を向けると、そこにはカメラを構えたサザレと静かに立つゼイユ、そしてハルトやアオイの姿があった。
「え?」
「い、いつの間にか人がいっぱいいたべ……ねーちゃん、みんなっていつからいたんだ?」
「ユウがバトルに参加し始めた辺りからよ。ぞろぞろと来たからあたしも驚いたけど、観客が増えるのは悪い事じゃないから一緒に観てたのよ」
「そうなんですね。ハルト君達はどうしてサザレさんと?」
「オリエンテーリングを終わらせて公民館に戻ったらブライア先生が待ってて、それでユウ達を待ちながら話をしていたらサザレさんが通りがかってユウ達の事を知っているようだったから話をしていたんだ」
「そしたらバトルをしているような音が聞こえてきたから見に来たらユウ君達がバトルをしてたから本当に驚いたよ。でも、ネモもシュリも嬉しそうだったし、私達もホッとしたなぁ」
「正確にはサポートをしていただけだけどね」
ユウが頬をかきながら言うと、サザレはクスクス笑った。
「それだけでもスゴいと思うよ」
「私も同感だ。さて、それでは戻るとしようか」
ブライアの言葉に全員が頷いた後、ユウ達は再び公民館に向けて歩き始めた。