夕暮れ時、軽い腹拵えを済ませたユウ達はスグリとゼイユの後に続いて長い道を歩いていた。
「二人とも本当にありがとう。今夜のお祭り用の衣装を全員分用意してもらっちゃって」
「気にしなくて良いわよ。同年代の子がいっぱい来るって聞いてあんた達が来る数日前にウチのじーちゃん達がはりきってじんべえやらお面やらまで用意してただけだから。まあブライア先生からあんた達の背丈なんかも聞いてたからサイズはちゃんと合ってるはずだし、せっかくだからオモテ祭りも一緒に行ってきなさいって言われてるからしっかりと案内もするわ」
「言われててもユウ達じゃなかったら一緒に行こうなんて思わなかったくせに」
イーブイを抱き抱えたスグリの言葉に対してゼイユは頷きながら答える。
「そりゃそうでしょ。こっちとしては余所者にキタカミの土を踏まれたくないと思ってたから第一印象が結構悪くなってたのになんだかんだで受け入れてくれたんだもの。スグも含めてどこに出しても恥ずかしくない程に仕上げてあげるわ!」
「うん、期待してるね! でも、一つだけお願いするならバトルがしやすいようにしてほしいな。服が変わると気分も変わるし、また違った感じでバトルが出来そうだしね!」
「あんたはいい加減バトルの事から離れなさい! ユウ、あんたなんとかして落ち着かせなさい!」
「え? う、うーん……それじゃあ……」
ユウは一瞬迷いを見せた後にネモの後ろに回り、そのままネモを静かに抱き締めた。
「……え?」
「あ、落ち着いた?」
「落ち着いたというか……え?」
「ユウ……ドウシテイキナリネモヲダキシメタンダシ?」
シュリが呆れながら聞くと、ユウは照れ臭そうに答えた。
「前にハグは人を落ち着かせる効果があるって本で読んだからね。自分からするのは恥ずかしいけど、ネモが落ち着いてくれるなら良いかなと思って」
「え、いや……落ち着く事は落ち着くけど……その……」
「ユウ……」
「あはは……」
「これは何と言いますか……」
「これ、マジなんだよな……」
ハルトとクロスが呆れたような顔をし、アオイとライラが苦笑していると、ユウは顔を赤くしているネモを抱き締めたままで不思議そうに周りを見回した。
「え、どうしたの?」
「ユウ……ハグニヨルリラックスコウカガアルノハマチガイナイシ。ダカラ、バトルネツニウカサレテルネモニスルノハマアマチガイデハナイシ」
「うんうん」
「タダ、ソレハダレデモイイワケデハナイシ。キライナアイテヤキョウミノナイアイテカラサレタラケンオカンヲオボエ、リラックスドコロカストレスヲカンジルコトニモツナガルシ」
「うんうん……」
「スクナクトモ、コウイヲイダイテイルアイテジャナイトリラックスコウカハエラレナイシ。ソシテ、ネモガユウニコウイヲイダイテイルノハユウモシッテイルコトダケド、ココマデノコトヲシゼンニデキテココマデノコウカヲエラレルノハオタガイノアイショウガサイコウノラブラブジャナイトアリエナインダシ。チナミニ、ヒトマエデスキンシップヲトルノハソノアイテガジブンノモノダトマワリニアピールシテルトイウドクセンヨクノアラワレナンダシ。ツマリ、イマノユウハラブラブナノヲマワリニミセツケタウエニネモヲジブンノモノダトマワリニアピールシテルコトニナルンダシ」
「うんう……え!?」
驚いた後、ユウは顔を赤くしながらネモから体を離した。
「ご、ごめん! だ、だいぶ恥ずかしがらせちゃったよね!?」
「あはは……まあ恥ずかしさはあったけど、スゴく落ち着いたし嬉しかったよ。おかげで二つ目の看板の時のユウの気持ちもわかった……かな」
「ネモ……」
「だから……えいっ!」
ネモがユウの手を握ると、ユウは更に顔を赤くしながら驚いた。
「ネ、ネモ!?」
「お返しだよ! ふふっ、どう? これで少しはさっきのわたしのきもちもわかったんじゃない?」
「そ、それは……うん……」
ユウが俯く中、スグリは感心したように頷いた。
「これが都会流……やっぱ都会って色々進んでるんだなぁ」
「スグ、絶対に違うと思うわよ。とりあえずさっさと行くわよ」
ゼイユの言葉に全員が頷いた後、再び歩き始める中でユウとネモはお互いに幸せそうな顔をしながら手を繋ぎ続けていた。