ゼイユとスグリの家を出発してから十数分後、ユウ達はキタカミセンターに到着した。そして場内に響き渡る祭囃子と賑やかな人の声、そして漂う出店の食べ物の香りにユウ達は笑みを浮かべる。
「とても賑やかだね。なんだかこっちまで元気になるみたい」
「うん! こういう雰囲気、私はとっても大好き! 早速盛り上がろう!」
「モリアガルノハイイケド、ハメヲハズシスギタラダメダシ。ボウインボウショクハカラダニワルイシ」
「シュリにしては珍しいね。シュリだったら屋台の食べ物を全部食べるまで帰らないって言うかと思ったのに」
「ソンナノハトウゼンダシ。ナンナラニシュウサンシュウシテモイイクライダシ。サア、トットトイクシ!」
ユウの頭の上でシュリが前方をヒレで指し示していると、クロスは呆れたように首を横に振った。
「さっきまで暴飲暴食は良くないって言ってたのはどの口なんだか……」
「ふふ。ですが気持ちはわかりますし、せっかくのお祭りをめいっぱい楽しみましょう」
「そうだね。さて、まずは何から見ていこうか?」
「色々あるから迷うね……あ、あそこにりんご飴の屋台があるよ」
「りんごと言えば……ポケモンの中にカジッチュっているよね。キタカミにもカジッチュはいるの?」
ユウの問いかけにスグリは微笑みながら頷く。
「ああ、いる。それでともっこプラザのとこによくいるんだけど、キタカミ名産のみついりりんごを与えると、アップリューやタルップルとは違った進化をするんだ」
「違った進化!? どんな進化をするの!?」
「カミッチュっていうポケモンになるわ。ちょうどそこに売っているりんご飴のような……って、そこに何かいない?」
「え? あ、あれはカジッチュだべ。でも、なんであんなところに?」
明るい道の脇の暗闇からカジッチュは羨ましそうな視線を向けており、その顔はどこか寂しげだった。
「カジ……」
「あのカジッチュ、なんだか寂しそう……」
「出ていけば混じる事が出来るってわかってるけど、出ていくのは怖いって感じだね。声をかけてあげたいけど……」
「私達が行ってもたぶん怖がらせちゃうよね……」
「でも、放っておけないよ……」
「そうだけど、どうするってのよ?」
ユウ達がカジッチュを見ながら迷っていたその時、スグリはゆっくりカジッチュに近づいた。
「スグリ君?」
「……大丈夫。おれに任せてくれ」
ユウ達が見守る中、スグリはカジッチュの傍に行くと、怯えるカジッチュの視線を浴びながら優しく笑いかけた。
「大丈夫だ、カジッチュ。おれはお前の敵じゃないべ」
「カジ……」
「明るいところに出ていくのって確かに怖いよな。おれだってそうだ。いつもねーちゃんの影に隠れてるばかりで他の人に関わるのが怖くて自分から話しかけるなんてまったく出来なかった」
「カジ……」
「でも、それじゃダメなのはわかってる。だから、おれと一緒に明るいとこまで来ないか? あっちにいる友達もそうだけど、おれはお前を歓迎する。折角のオモテ祭りを一緒に楽しもう?」
スグリの問いかけに対してカジッチュは何も答えずにスグリをジッと見つめた。そしてしばらく見つめ合った後、カジッチュはスグリに近づき、差し出した手に乗った。
「カジ……」
「信じてくれてありがとう、カジッチュ。これからは友達で仲間だ」
「カジ!」
カジッチュが嬉しそうに答えると、ユウ達は揃って近づいた。
「どうやらカジッチュと仲良くなれたみたいだね」
「うん」
「それで? そのままゲットするつもりなの?」
「カジッチュがそれでも良いならゲットしたいけど……カジッチュ、良いか?」
「カジ! カジカジカッジ!」
「モチロン! キミトイッショガイイ! トイッテルシ」
シュリの通訳を聞き、スグリは嬉しそうに微笑み、モンスターボールを取り出した。
「わかった。それじゃあ改めてよろしくな、カジッチュ」
「カジ!」
カジッチュが答えた後、スグリはカジッチュにモンスターボールを軽くぶつけた。そしてカジッチュがボールに収まった後、スイッチを押してカジッチュをボールから出した。
「これでよし。それじゃあ折角だからみんなでりんご飴さ食べよう」
「うん。さて、新しい友達も増えた事だし、改めてこのお祭りを楽しもう」
ユウの言葉に全員が頷いた後、ユウ達は楽しそうに笑いながら再び歩き始めた。