「行くよ、アカツキ!」
「やるよ、ニャース!」
「やるべ、グライガー!」
「力を見せてやりなさい、キュウコン!」
四人がそれぞれのポケモンを繰り出すと、イイネイヌは雄叫びを上げ、首から伸びる紫色の鎖を振り回し始めた。
「アレハ……ぶんまわすダシ!」
「たしか味方もろともダメージを与える技だよね。アカツキ、みんなに当たらないように受け止めて!」
「ワギア!」
アカツキは前に進み出ると、振るわれた鎖を受け止めた。すると、鎖は紫色の光を放ち出し、それがアカツキにも宿ると同時にアカツキの表情は苦しそうな物に変わった。
「グルウ……!」
「アカツキ!?」
「コレハモウドクジョウタイダシ! ぶんまわすニハツイカノコウカハナイカラ、コレガイイネイヌノトクセイッポイシ!」
「名付けるならどくのくさりってとこかな。だったら、それには気を付けないとね! ニャース、うそなき!」
「ニャ、ニャ……!」
ニャースが顔を覆いながらシクシク泣き始めるとイイネイヌは困った様子を見せ、それを見たシュリはヒレでガッツポーズをした。
「ヨシダシ! スグリ、ゼイユ、ガンガクイクシ!」
「言われなくても! グライガー、つばめがえし!」
「キュウコン、じんつうりき」
「グライガ!」
「コーン!」
二匹の攻撃が当たるとイイネイヌは呻き、ネモは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「やった! よーし、なら私達も行くよ! ゾ……じゃなかった、ニャース! うらみつらみ!」
「ニャ、ニャー……!」
ニャースの足元に禍々しいエネルギーが集まると、それはイイネイヌの足元から勢い良く吹き出した。
「ヌン……!」
「……ヘンダシ」
「変ってなにが? イイネイヌの様子が変って事?」
「チガウシ。ガラルニャースニカギラズニャースハソンナワザハオボエナイシ。ソモソモうらみつらみナンテイウワザハキイタコトガナイシ」
「え……?」
「ソレニ、ネモハサッキナニカイイマチガエソウニナッタシ。ダカラ、アノニャースハモシカシテ……」
シュリがネモに視線を送ると、ネモはそれに気づいた様子でウインクをしてからいたずらっ子のような笑みを浮かべて人差し指を自分の口の前まで動かした。
「内緒、だよ」
「マアソレナラソレデモベツニ……ユウ、ナーニヲボーットシテルシ?」
「……あ、ゴメン。内緒ってやるネモの姿が可愛いなと思ったらつい見惚れちゃって……」
「そ、そんなに可愛かったかな……でも、ありがと」
「どういたしまして」
ネモとユウが笑い合い、シュリがため息をついていると、それを見ていたスグリは大きく首を横に振った。
「いやいや! 今はそんな事してる場合じゃないべ!? いや、だいぶ微笑ましかったけど!」
「そうよ! 見惚れるなら昨夜のあたしのじんべえ姿にするべきでしょ!」
「ねーちゃんも何言ってるべ!?」
スグリがわけがわからないといった顔をする中、イイネイヌはユウ達の様子に対してどうしたら良いかわからない様子を見せた。
「ヌ、ヌン……?」
「……イイネイヌ、ウチノイロボケトレーナータチトカゼイユノコトハキニシナイデイイシ。ユウタチモサッサトバトルニモドルシ」
「……っと、そうだね」
「さて、ここからもガンガン行くよ!」
ネモの言葉に対して応えるようにポケモン達は鳴き声を上げ、イイネイヌもそれに負けじと鳴き声を上げる中、誰もいない桃沢商店に飾られた桃の置物は静かに揺れた。