夕食後、ユウ達はグラウンドに立っていた。
「はいっ! という事で、夜の特訓を始めるよ!」
「眠る前の良い運動にはなると思うけど、どうして今なの?」
「本当は朝になってからにしようと思ったけど、ユウがレムルスとバトルしてるのを思い出したらワクワクしちゃって! だから、少しだけ付き合ってくれると嬉しいな」
「まあ気持ちはわかるけどね。それで、どんな風に……」
「あ、それならちょっと相談にも乗ってもらっても良いか?」
クロスに視線が集中する。
「どうしたの?」
「いやさ、難しいのはわかってんだけど、岩タイプで統一したパーティにしようと思ってるんだ」
「クロスさんもでしたか。私も氷タイプに統一しようかと思っていたんです」
「ライラさんも?」
「はい。ユウさん達にはバランス面からブースターをおすすめされたのですが、キタカミでニューラをゲットしたのもあり、氷タイプで統一してゆきの天気をより活かすのも良いかと思ったのです。なので、イーブイもグレイシアにしようかと思っていて……せっかくアドバイスを頂いていたのに本当に申し訳ありません」
「ううん、大丈夫! でも、そっかぁ……タイプの統一は本当に難しいからなぁ」
ネモが腕を組む。
「ジムリーダーの人達や四天王、後はスター団のボス辺りがタイプを統一してるけど、弱点も同じになりやすかったりして苦労はするみたいなんだよね。ただ、天気を主体にして戦う場合なんかは統一してる方がやりやすい時はあるし、中にはバランスよくよりもタイプを統一した方がやりやすいって人もいるかな」
「トウイツスルニシテモソレナリノツヨミトヨワミガアルッテコトダシ。タダ、ジムリーダーニカンシテハ、キリフダヲテラスタルデジブンノタントウタイプニカエテルカラジュントウイツパーティッテカンジスルシ」
「あはは、まあね。さて、さっきも二人が言ってたけど、クロスが岩でライラさんが氷の統一だったね。それで、恩恵を受けられる天気がクロスがすなあらしで、ライラさんがゆきだからそれぞれすながくれとゆきがくれの特性を持っているポケモンを手持ちに入れたいね」
「すながくれにゆきがくれ……どっちも回避率を上げる特性だよね?」
「ダシ。タダ、テンキヲカエラレタラソレモナクナルシ、ヒッチュウワザヲモッテイルポケモンニタイシテハフリニナルカラカシンハデキナイシ。コジンテキニハヤラレルマエニヤルノセイシンデすなかきヤゆきかきデガンガンセメタイシ」
「素早さを高める特性だね。たしかになー……それも手だし、タイプ統一から離れるけど、クロスにスナヘビをゲットしてもらうのはどう? すなはきがあるから、それを利用してすなあらしにするのも面白いよ?」
「タシカニダシ」
ネモの言葉にシュリが頷き、盛り上がりを見せる二人の姿にユウ達が苦笑いをしていたその時だった。
「楽しそうなのはよろしいですが、そろそろ就寝時間なのではありませんか?」
ユウ達が視線を向けると、そこにはハッサクの姿があった。
「ハッサク先生……」
「イイトコニキタシ、ハッサク。ナヤメルセイトノソウダンニノッテホシイシ」
「ほう、相談ですか。もちろんでございますですよ。それで、相談というのは?」
「それが……」
ユウが代表して話すと、ハッサクは大きく頷いた。
「なるほど。たしかにタイプを統一するとそれ相応の苦労はあります。ですが、戦術を考える上で楽しいのも間違いありませんから、他のタイプを持っているポケモンや覚えさせる技でカバーするのが良いと小生は思います。まあ、小生の場合は事情があってドラゴンタイプを専門にしているわけですが」
「事情……ですか?」
「……古郷がドラゴンタイプに縁のある場所だったというだけですよ。では、小生はそろそろ行きます。皆さんも旅の疲れが残っているでしょうから早く部屋に戻って下さいね?」
ハッサクが去っていくと、ネモは小さく息をついた。
「先生に言われた以上、このまま特訓するのもよくないし、それぞれの部屋に戻ろうか。わざわざ集まってもらったのにごめんね」
「ううん、大丈夫。それにしても……ハッサク先生の表情、どこか暗い感じだったね」
「アマリハナシタクナサソウデハアッタシ。ダカラ、ムリヤリキカナイヨウニハスルシ」
「だな。みんな、相談に乗ってくれてありがとな」
「ありがとうございました。それでは、おやすみなさい」
クロスとライラの言葉に頷き、ユウ達がそれぞれの部屋に戻る中、ハルトはユウに話しかけた。
「ユウ、ちょっと良い?」
「うん、どうしたの?」
「ボウルタウンの時になんだか懐かしい感じがするって言ったけど、実は他の時も感じてはいたんだ」
「ソウナンダシ?」
「うん。他の街やスター団のアジト、ヌシ達のすみかにキタカミ……そのどこでも懐かしさを感じていた。でも、このグリーンアップルアカデミーでは感じていなかった。となると、ここだけは本当に初めてなのかもしれない」
「ここだけが初めて……そしてハルト君は別の世界から来た可能性がある。という事はもしかして……」
ハルトは静かに頷く。
「……うん、僕は別の世界で同じようなアカデミーに通っていて、同じような経験をしてきたのかもしれない。覚えてはいないんだけどね」
「ハルト君……」
「とりあえず部屋に戻ろう。この件についてはネモ達も交えて話したいしね」
「ダシ」
「だね」
ユウ達は自分達の部屋に戻るために再び歩き始める。その中でハルトの表情は暗かった。