「はい、出来ました。どうぞ召し上がってください」
十数分後、ユウは食堂のテーブルの上に皿などを置き始めた。皿の上には出来立てのイモモチやおむすびが載せられており、その出来映えにコウキとヒカリは目を輝かせた。
「おお、これはスゴいな! イモモチ、本当に作った事ないんだよな?」
「はい。レシピはさっき教えてもらったばかりですけど、そんなに複雑な工程はありませんでしたから。ただ、当時の材料は流石に揃えられませんでしたし、焼き加減とかまでは再現出来ていないと思いますけど……」
「いえ、作ってもらえただけでも嬉しいです。それじゃあいただきますね」
「はい」
コウキとヒカリ、そしてネモ達は手を合わせながらいただきますと口にすると、それぞれイモモチやおむすびを食べ始めた。
「……美味い! なんか本当にあの頃の自分に戻ったみたいだ!」
「この味……この味ですよ! ユウさん、しっかり味を再現出来ています!」
「それならよかった。ネモ達はどう?」
「うん、本当に美味しいよ。これをコウキさん達が当時食べて頑張ってたんだと思うとなんだかスゴいよね」
「体験型の歴史の授業を受けてる気分だよね」
「事実、私達の目の前にいらっしゃるのは当時を生きてきた方達のようですからね。さて……先程、ユウさんが調理をしていらっしゃった間に多少事情を伺いましたが、あなたは本当に伝説のポケモンであるアルセウスなのですか?」
クラベルの問いかけに対してアルセウスは頷く。
「今はこうして人間の姿をしていますけどね。さて、先程のバトルはお見事でした。なので、勝利の際のご褒美としていた貴方に関するヒントをお話ししましょう」
「良いんですか?」
「ええ。あと一歩というところまで追い詰めていましたからサービスです。さて、その前に幾つかお話をしておく事がありますが、ユウの身に起きている幾つかの変化、これはテラスタルと同じ現象が常に起きているからで、その眼でポケモンのテラスタイプを看破出来るのもそのためです」
「そういえば、ユウの目が前に見た時とちょっと変わってるなと思ってたけど、そんな能力を手に入れてたんだな」
「けど、それって結構ヤバイんじゃない? バトルで有効な能力なのは良いとしても、常にテラスタルしてるような物ってユウの身体が耐えられなくなって早死にしちゃいそうだけど……」
「その点については心配ありませんよ。ユウの身体は少々特殊ですから」
「と、特殊?」
「はい。まだ詳細は話せませんが、ユウの肉体は普通の人間とは異なる点があり、それによって常時テラスタルをしていても肉体や寿命に悪影響は出ないどころか常人を超えた筋力や体力、自然治癒力などを得る事が出来ます。そしてそれには私やミュウ、ミュウツーも関わっていますし、貴方のご両親も当然知っています。もっとも、忘れさせるつもりはありませんが」
アルセウスの声は穏やかだったが氷のように冷たく、ユウやコウキを除いた全員が戦慄した。
「忘れさせないって……ユウのお父様達、ユウに対して何かとんでもない事をしてたんじゃないの?」
「そう、なのかな……僕から見れば本当に優しい二人だったよ。叱る時はちゃんと叱ってくれてたし……」
「ふむ……ユウさん、聞きそびれていたのですが、ご両親は何をなさっているのですか?」
「父さんはポケモンについて、特に伝説のポケモンについての研究をしているようで、母さんは各地の民話などを集めてそれを元にした創作物を書いたり民話集を作ったりしているようでした。といっても、二人ともどこかに所属しているわけじゃなくて、依頼を受けて仕事をするフリーのような物みたいです」
「そうでしたね。さて、この件についてはひとまず置いておいて、次はさいきょうの証を持ったポケモン達についてお話をしましょうか。皆さん、準備はよろしいですか?」
ユウ達は静かに頷く。そしてアルセウスはユウ達を見回してから話を始めた。