ポケットモンスター~偽竜の司令官~   作:九戸政景

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第三百十五話

「コウキとヒカリは既に読んでいると思いますが、昔話には色々な物があります。海や川で捕まえたポケモンを食べた後の骨を綺麗に洗って丁寧に水の中へ送ると肉体をつけて戻ってくるというのもあればあるポケモンは革を脱ぎ来してポケモンと人間の姿を入れ換えているというものもあります」

「本当に色々な昔話があるのですね」

「はい。その図書館はミオシティという街にあるんですが、そこから船を使って行く事が出来る島も幾つかあるんですよ」

「ゲンさんと出会ったこうてつじまもその一つだな。そこでもらったタマゴから孵ったポケモンも今では俺達の大切な仲間なんだ」

「そのポケモンも気になるけどまずは昔話だね。それで、ユウのヒントになる昔話ってどんなのなの?」

 

 

 ネモの問いかけに対してアルセウスは静かに答える。

 

 

「それは人間とポケモンの関係についての昔話です。その昔、人間と結婚したポケモンがおり、ポケモンと結婚した人間がいました。現代に生きるあなた方にとっては不思議な事に聞こえるかもしれませんが、人間もポケモンもその頃は同じであったので普通の事だったという昔話です」

「人間同士、ポケモン同士じゃなく人間とポケモンが……」

「オーガポンモマエハニンゲントイッショダッタミタイダシ、オーガポンタチモソウイウカンケイダッタカモシレナイシ」

「だとしたら、よりともっこ達は気に病むだろうね。でも、それがヒントって事は……」

「もしかして……ユウ君のお父さんかお母さんのどちらかが本当はポケモンって事!?」

 

 

 アオイの言葉を聞き、ネモはハッとする。

 

 

「そういえば、メタモンみたいにへんしん出来るポケモンはいるし、ゾロアに至っては私とユウが体験したようにその人そっくりに化けられる……! それに、ゾロア達は別にさいきょうの証持ちじゃないのにイタズラしたくなって寄ってきたみたいだし、本当はユウの中にあるポケモンの気配に寄せられた可能性があるのかも……!?」

「トウジハホントウニキニナラナカッタトオモウケド、ゲンダイダトヒトメガキニナルダロウカラニンゲンニバケラレルホウガツゴウガイイシ」

「それなら隠すのもわかるけど、もし本当にそうだとしたら僕は人間寄りの人間とポケモンのハーフって事になるよね……」

「ポケモンノチヲヒイテルナラテラスタルジョウタイニナルノモナットクダシ」

「そうだけど……なんだかすぐには飲み込めないっていうか……」

 

 

 ユウの顔色が悪くなり、軽く俯き始めるとネモは心配そうな顔をした。

 

 

「……大丈夫? なんだかスゴく具合が悪そうだよ?」

「大丈夫だけど……ゴメン、やっぱりすぐには飲み込めないや。ちょっと後片付けをしてくるね」

「うん。でも、無理はしないでね。食器洗いくらいなら僕達も手伝えるから」

「ありがとう。それじゃあ行ってくるね」

 

 

 食べ終わった食器を纏めると、ユウはそのまま洗い場へと消えていく。その姿をネモ達が心配そうに見る中、アルセウスは静かに立ち上がった。

 

 

「では、私はそろそろ行きます。先程のヒントについては自由に解釈してください。いずれ真実はわかるはずですから」

「わかった。そういえば、コウキさん達はどうしますか? シンに頼めばすぐに帰る事が出来ますけど……」

「それならちょっとした小旅行みたいな感じでもう少しいてみようかな。ユウの事も気になるし」

「それならばお部屋はご用意しますので特別講師を引き受けていただけませんか? 他の地方の方、それもチャンピオンとコンテストクイーンとなればお話を聞きたいという生徒もいるはずなので」

「はい、もちろんです。ヒカリ、みんなの力になれるように頑張ろうな」

「はい。アタシの経験や知識が生徒の皆さんの力になるように努力しますね」

「ありがとうございます。さて、ユウさんについてですが……」

 

 

 クラベルは周りを見回すと静かな声で言う。

 

 

「この件はひとまずここにいる人達だけの秘密にしましょう。そしてネモさんやハルトさんにはユウさんのメンタルケアもお願いします。ネモさんは共に旅をする仲間で、ハルトさんはルームメートですから」

「もちろんです」

「ユウの事が心配なのはみんな同じですし、シュリにもこの件についてはお願いするつもりです」

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 クラベルの言葉にネモ達が頷いていると、アルセウスは満足そうに頷いた。

 

 

「ユウもよき人々に出会えたようですね。それと……ネモ、でしたか」

「え? う、うん……」

「貴女がユウに対してより強い想いを抱いているようですが、ユウの事を異性として好きなのですよね?」

「それは……まあ……」

 

 

 ネモが照れながら答える中、アルセウスはクスクス笑う。

 

 

「ふふ、とても良い事です。そんな貴女だからこそお願いします。どうか彼の事を見放すような事はしないであげてください」

「アルセウス……」

「先日、ユウが力に溺れた際も貴女達は見放すような事はしなかったようですが、真実を知った際のショックはより大きいはずです。その時、シャリタツと同様に彼の傍により近くにいるのは貴女だと思います。なので、お願いします。どうか真実が明らかになったり彼がまた心を闇に囚われたりしても見放すような事はしないであげてほしいのです」

 

 

 アルセウスが頭を下げると、ネモはその姿を見てから静かに頷いた。

 

 

「もちろん。それだけ私にとってユウは大切な存在だからね」

「ありがとうございます。因みにですが、将来貴女がユウと夫婦になった場合、その愛の結晶をその身に宿す事は問題なく出来ますよ。肉体自体は特殊ですが、遺伝子情報などに問題はありませんから」

「あ、愛の結晶って……!」

「ふふ、ではそろそろ失礼します。皆さん、またどこかでお会いしましょう」

 

 

 アルセウスは音もなく消え、その場にはネモ達が残された。

 

 

「とても不思議な体験でしたね」

「たしかに……それに、またって言っていたし、いずれまたどこかで会うつもりなんだろうね」

「そうだね。よし……だいたいの話は終わったし、まずはユウのところに行こう。大丈夫とは言ってたけど、やっぱり手伝いたいし」

「だな。よし、それじゃあ行こうぜ」

 

 

 ネモ達が洗い場へと向かう中、クラベルはレホールとコウキ達に視線を向けた。

 

 

「さて、コウキさんとヒカリさんはまずはご家族にこの件について連絡をしてください。突然の事でご家族も驚かれるとは思いますが」

「そうだと思います」

「レホール先生は仕事に戻ってください。そろそろ授業の時間でしたよね?」

「そうだな。では、私達も一度失礼するとしよう」

 

 

 そしてコウキ達とレホールが食堂を出ていくと、クラベルは不安そうな顔をした。

 

 

「ユウさんの件もそうですが、ヌンクの件もやはり気になります。ヌンク、貴方に一体何があったのですか……」

 

 

 誰もいなくなった食堂にクラベルの声が響いたが、それに答える者は誰もいなかった。

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