「まずはこのすなあらしをどうにかしないとね……」
「にほんばれヲツカッタトコロデマタウワガキサレルシ。ダカラ、ソレイガイノホウホウデすなあらしヲケサナイトダシ」
「いや、消さなくても良いよ。消すのは最終手段でこの状態で勝つのを目標にしたいんだ」
「ワカッタシ。サア、ヤッタルシ!」
「うん! ホムラ、だいもんじ!」
「グォウ!」
ホムラはだいもんじを吐き出す。しかし、だいもんじはガブリアスの横を通り抜けていき、ドラゴン使いの女性は大きなため息をついた。
「……どうやら自棄になったようですね。ガブリアス、終わらせなさい。ドラゴンクロー!」
「グァ!」
すなあらしの中でガブリアスは走り出す。そしてネモ達が息を飲む中、ガブリアスのドラゴンクローがホムラに迫る。
「愚か者よ、潔く散りなさい!」
「散りません! ホムラ、ドラゴンクローを受け止めて!」
「グォ!」
ホムラはガブリアスのドラゴンクローを受け止めた。受け止めた際の衝撃とダメージでホムラの顔は一瞬歪む。しかし、すぐに真剣な表情を浮かべると、ユウは嬉しそうに頷いてから右手を前に突き出した。
「ホムラ、行くよ! りゅうのはどう!」
「テラスタルパワーゼンカイデフキトバシタルシ!」
「グォーッ!」
ホムラは空気を震わせながら吠えると、目の前のガブリアスに向けてりゅうのはどうを放ち、ガブリアスはりゅうのはどうに包まれた。
「ガブリアス!」
ドラゴン使いの女性の声が響く中、ガブリアスはだらりとなる。そしてホムラが手を放すと、ガブリアスはそのまま倒れていき、弱々しい鳴き声を出しながら目を回した。
「そんなバカな……」
「僕達の勝ちです」
「サア、サッサトカエルシ!」
ユウの頭の上でシュリがヒレで指しながら言っていると、ドラゴン使いの女性は悔しそうな顔でガブリアスをモンスターボールの中にしまった。
「あり得ません……こんな子供に私が負けるなど……!」
「コドモダカラトイッテアマクミテタノガワルインダシ。ハッサク、ナンカイッタルシ!」
「……そうですね」
ハッサクはゆっくり近づくと、ドラゴン使いの女性に話しかけた。
「小生はなんと言われようとも長になる気はありません」
「一族がどうなっても良いのですか……!?」
「知りません! 一族の血を残していくのも必要でしょうが、小生は未来に芽吹く才能達を見届けたい。ぶっちゃけそっちの方が面白そうではないですか!」
「……話になりませんね。その豪胆さがあれば竜の意志を継ぐのに相応しいというのに……」
ドラゴン使いの女性はハッサクに背を向ける。
「私は諦めません。何度でも説得をしに参ります」
「ええ、来なさい! 根比べは得意ですから! それに、以前父の体調が悪いと手紙を寄越してきましたが、それも小生を説得するための嘘八百の方便なのでしょう!」
その言葉にドラゴン使いの女性はハッサクに対して怒りの視線を向けた。そして歯をギリッと鳴らしてから再び背を向けると、そのまま歩き去っていった。
「ハッサク先生、本当に良かったんですか?」
「ええ、構いませんですよ」
「でも、さっきの人の様子を見る限りだと体調不良自体は本当かもしれませんよ?」
「カノウセイハゼロデハナイシ。イマノオコッタカンジモウソガバレタカラトイウヨリハドウシテワカッテクレナイノカッテカンジガシタシ」
「つまり、長になれという件よりも一度顔を見せに来いというのが彼女らの本音という事ですか……」
「たぶん。ハッサク先生、過去のわだかまりがあってご実家に帰りたくない気持ちも自分のみ血を勝手に決められたくないという気持ちもあると思います。でも、本当にお父さんが体調不良だった場合、意地を張り続けてもう会えなくなる事だってあると思います。だから、ほんの数分程度でも良いのでお父さんに会ってあげても良いんじゃないですか?」
ユウの言葉にハッサクは真剣な表情を浮かべる。そして諦めたように深く息をつくと、ユウの肩に手を置いた。
「わかりました。親族からの頼み事だったら絶対に聞く気はありませんが、可愛い生徒の頼みとあれば聞く事にしましょう。素晴らしい成長も見せてもらいましたからね」
「ハッサク先生、ありがとうございます」
「いえいえ。さて、ユウ君達にはお礼を差し上げないといけませんね」
ハッサクはスーツのポケットから小さな巾着袋を取りだし、ユウにそれを渡した。
「これは?」
「テラピースと呼ばれる物が入っています。テラピースとはテラスタルしたポケモンが倒れた際に砕けたテラスタルジュエルが稀に結晶化して出来る物で、これを一定数集めてチャンプルタウンの宝食堂に持っていくと、テラスタイプを変える特別な料理を作ってもらえますよ」
「テラスタイプを変えられる!?」
「フム……ソレハナカナカユウエキナジョウホウダシ」
シュリがうんうんと頷いていると、ハッサクは巾着袋を指差した。
「ここに入っているのはドラゴンのテラピースで作ってもらうために必要な数が既に入っています。ただ、宝食堂の女将さんが認めた相手でないと作ってもらえないようなのですぐにというのは難しいと思います」
「そうですか……わかりました、ありがとうございます」
「いえいえ。そしてもう一つ、ユウ君達の実力を認め、ある技をシュリ君に伝授しましょう」
「アルワザ……ナンダシ?」
ハッサクは軽く目を閉じた後、深く息をついてから目を開けた。
「ドラゴンタイプにおいて最強と言える技、りゅうせいぐんです」