部屋に戻った後、ユウは毛布を軽く丸め、その上にシュリを静かに置いた。
「これでよし。そういえばコウキさん達は今日はパルデアの名所を色々巡るんですよね? どこに行くかは決めましたか?」
「それがまだなんだ……帰る前にはお土産として名産品や銘菓を買いたいとは思ってるんだけどさ」
「銘菓みたいなのはないですけど、アカデミーの近くにあるセルクルタウンにムクロジっていうとても美味しいお菓子屋さんがありますよ。オーナーのカエデさんがジムリーダーもやっているのでコウキさん達が来たって聞いたらバトルしたいって言うかもしれませんね」
「バトルと言えば……ハッコウジムのジムリーダーのナンジャモさんがコウキさん達がここにいるのを聞き付けてきてもおかしくな──」
その時、部屋のドアがノックされた。
「あ、はーい。どうぞー」
「失礼します」
ドアを開けながらクラベルが入ってくると、その後ろからナンジャモが顔を出した。
「おはこんハロチャオー! アカデミーの皆の者達、ひっさしぶりー!」
「ナンジャモさん。あ、あの……今はシュリが眠ってるのでもう少し静かにしてもらえると……」
「おっと、ごめんごめん。画面の前の皆の者ー、すこーしだけ聞きづらくなるけど我慢してくれるとボクは嬉しいぞー」
「もしかしてコウキさん達がここにいる事を聞いて配信を?」
「そっのとおりー。他所の地方のチャンピオンなんて中々会えないからね。画面の前の皆の者も興味津々みたいなんだけど、少しだけ配信に出てもらっても良いかな?」
コウキとヒカリは顔を見合わせると、笑みを浮かべながら頷き合った。
「まあ望まれてるならそれに応えてこそだよな」
「そうですね。それに、パルデアの人にもシンオウやヒスイの事を知ってもらいたいですし、ここはお邪魔しましょうか」
「ありがとー。それじゃあシュリ氏の事もあるし場所を移そうか。校長先生、どこか使っても良い教室はありますか?」
「はい、ご案内しますね。それと、私の事をまたジェントルさんと呼んでもらっても大丈夫ですよ?」
「その節は不肖ナンジャモが本当にご迷惑をおかけしました……」
「ふふ、私も楽しんでおりましたのでお気になさらなくても大丈夫ですよ。では参りましょうか」
その言葉に頷くと、コウキとヒカリを連れてナンジャモとクラベルは出ていき、ペパーとボタンも入り口に近づいた。
「んじゃ、俺もそろそろ行くぜ。お前達、またヌシのとこでな!」
「う、ウチもそろそろ……みんな、またスター団のアジトで」
ペパーとボタンが揃って部屋を出ていくと、クロスはシュリを見ながら微笑んだ。
「俺達もシュリが起きるまでどっか行ってるかな。ハルト、アオイ、バトルの特訓に付き合ってくれねぇか?」
「うん、良いよ。アオイちゃんはどう?」
「私ももちろん良いよ。クロス君とライラさんとのバトル、楽しみ!」
「私もです。それではユウさん、ネモさん、また後で」
ハルトとアオイを連れてクロスとライラが出ていくと、ユウは何かを思い付いた様子でベッドの枕元にいたモモワロウをシュリの横に置き、上から別の毛布をかけた。
「これでモモワロウも寒くないかな」
「ユウ、なんだかシュリもモモワロウのお父さんみたい」
「そう……かな。父さん達も僕が小さかった頃はこんな風にしてくれたのかな?」
「そうだと思う。小さい頃のユウ、可愛かっただろうなぁ」
「ネモだって小さい頃も今も可愛いと思ってるよ。昔の写真とかってあるの?」
「うん、家にあるはずだよ。ユウは?」
ユウは頷く。
「あると思う。今度家に帰ったら探してみるね」
「それじゃあ私も。それにしても、ユウがお父さんなら私がお母さんかな」
「え?」
「……なーんてね。ふふっ、なんか自分で言ってて恥ずかしくなっちゃった」
「でも、それだったら僕も嬉しい……かも」
「ユウ……」
二人は見つめ合うと、その顔はゆっくりと近づいていった。そして唇と唇が触れあおうとしたその時だった。
「ウウン……」
シュリから声が聞こえ、二人はハッとするとすぐに顔を離した。
「あ、あはは……なんだか恥ずかしいね」
「う、うん……でも、いつかは恥ずかしさを感じずに出来るようになりたいね」
「そうだね。よし、シュリが起きるまでりゅうせいぐんの扱い方について話そうか」
「うん」
二人はベッドの端に座ると、話を始めた。そして二人が小声で楽しそうに話す中、シュリは軽く目を開けて二人を見ると小さいため息をつき、再び眠り始めた。