夜、ユウ達はセルクルタウンの近くの野原で野宿をしていた。空には星が瞬き、四人が椅子に座って談笑する中で焚き火が煌々と輝いていた。
「はあ……本当に勝ててよかったよ。最悪ヒメグマに全員倒されるところだったし……」
「あまいかおりで回避率を下げた上で高い攻撃力を活かしてくるわけだからね。おまけに本当はれんぞくぎりも持っていたみたいだし、あのひらめきがなかったらホムラでもそのまま倒されていたかもしれないよ?」
「れんぞくぎり……カエデさんが言うにはただ使う分には威力が弱いけど、その名前の通り、連続で使う事で威力が少しずつ上がる虫タイプの技だったよね?」
「そうだね。カエデさんはれんぞくぎりが特に決め手にはならなかったから、今回はみだれひっかきにしたって言ってたけど、虫タイプが弱点の子だと本当にキツかっただろうね」
「クサタイプ アクタイプ、エスパータイプガソレニアタルシ。タダ、れんぞくぎりハマエニネモガヤッテキタヨウニフダンハヨワイワザデモイリョクガアガッタジョウタイデツカエルノニガイトウスルケド、ソレデモキメテニハナラナイノカダシ?」
シュリの問いかけにネモは少々話し辛そうな表情で答えた。
「うーん……これはあまり言わない方が良いのかもしれないけど、本当は決め手にならなかったというよりは、使うのを躊躇ったというのが正しいのかもね」
「躊躇った?」
「うん。ジムリーダーって言ってみれば挑戦者がリーグに挑むだけの実力があるか試したりトレーナーを導くのが仕事みたいなところがあって、ジムリーダーも負け続けちゃあまり良くないけど、強すぎても挑戦者が心を折られすぎて挑戦者が増えなくなるんだ。だから、手加減というか挑戦者に合わせた感じにするようにトップが言ってるみたいなんだよね」
「それじゃれんぞくぎりを使わなかったのも……」
「そういう事なのかもね。でも、勝ちは勝ちだし、本当にれんぞくぎりよりもみだれひっかきの方が良いと思ったからかもしれないから何とも言えないかな」
「そっか……」
「シンソウハカエデノミシル、ダシ。トコロデ、ハルトトアオイハアレカラドウシテタンダシ? サッキマデハジムセンノコトバカリデキキソビレテタシ」
シュリが聞くと、ハルトは少し困ったような顔で答えた。
「うーん、そうだなぁ。どこから話せば良いかな。まずアカデミーを出発した後、ミライドンとコライドンに乗せてもらってすぐにセルクルタウンに来たんだ。でも、ジム戦はまだ早いかもってアオイちゃんが言い始めて、それならペパーの手伝いに行こうかって事になって、教えてもらった場所に向かったんだよ」
「そしたら、私達よりも大きな岩が何個も何個も転がってきて、コライドン達がいなかったら本当に怪我してたかもしれなかったよ」
「そっか……たしかに岩がぶつかったら大怪我するもんね。ところで例のヌシってやっぱりオトシドリだったの?」
「そうなんだけど、思った以上に大きいから後から追いついてきたペパーもすごく驚いてたよ」
「結果的に倒せたし、ひでんスパイスを使ったサンドイッチもごちそうになったよ」
「ひでんスパイスを使ったサンドイッチ……いいなぁ、今からでも採りに行けるかな?」
羨ましそうにユウが言う中、ハルトは頷きながら答えた。
「たぶんあると思うよ。ただ、オトシドリも回復してるとは思うから、そこは注意した方が良いかもね」
「ヌシとのバトルかぁ……うん、それはすごくワクワクする! オトシドリってどのくらい強かったの?」
「僕は基本的にバトルには参加しなかったけど、アオイちゃんとペパーの二人がかりでようやくって感じだったし、岩タイプの技も使うから厄介だったね」
「ツカマエナカッタンダシ?」
「すぐにいなくなっちゃったしね。それで、ペパーと別れた後、もう一つ行ってきたところがあったんだけど、そこでも色々な事があったなぁ」
「うん、そうだったね」
「もう一つのところ?」
ユウが首を傾げる中、ハルトは少し哀しげな顔で答えた。
「スター団あく組、チームセギンのアジトだよ」