「あなたが校長先生……」
「その通りです。遅くなってしまい本当に申し訳ありませんでした。 もっと早くお伺いすべきだったのですが、他にもお伺いしなければならないお宅もあったのでここまで遅くなってしまいました。こちら、お渡し忘れていた入学案内等です」
「ありがとうございます。それで、えっと……このポケモン達は?」
「こちらは我が校が入学者にお渡ししているポケモンです。 緑色のネコのポケモンがくさねこポケモンのニャオハさん、口を開けている赤いポケモンはほのおわにポケモンのホゲータさん、そして水色の髪の白いポケモンがこがもポケモンのクワッスさんです」
クラベルの紹介と同時に三匹は揃って鳴き声を上げる。そして、クラベルと共にいた少女は三匹に対して優しい笑みを浮かべてからユウとネモに視線を向けた。
「初めまして! 私はアオイ、同じ学校の生徒としてこれからよろしくね!」
「うん、こちらこそ! ほら、ユウも!」
「え……あ、よろしく……」
「あははっ、緊張し過ぎ! そういえば、お家を訪ねてまわるのはアオイのとこで終わりですか?」
「はい、そうなのですが……」
「……何かありましたか?」
ユウが不安そうに聞くとクラベルは心配そうな顔で頷く。
「はい。実は……先程、海の方から大きな音が聞こえたのです。まるで、何か巨大な物が落ちてきたかのような……」
「キョダイナ……ソレ、タブンココロアタリガアルシ」
「おお、そうなのですか?」
「シャリガトバサレタトキ、ウエカラナニカオチテキタンダシ。スグニトバサレテチャントハミエナカッタケド、ムラサキノトアカイノダッタシ。ナンカミタコトナイヤツダッタシ」
「紫色と赤色ですか。似た色合いであれば、 グレンアルマやソウブレイズがいますが、どちらも炎タイプの上に巨大という程の大きさではありませんからね」
「ナンカモットミタコトナイヤツダッタシ」
「そうですか……」
シャリタツの言葉にクラベルが眼鏡を直しながら答えていると、アオイはこっそりネモに話しかける。
「シャリタツって初めて見るポケモンなんだけど、あそこまで喋るポケモンなの?」
「うーん……たぶんこの子が特別なんだと思うよ。さて、学校にも行かないといけないけど、その巨大ポケモンも気になるなあ」
「メズラシイポケモンノカノウセイガアルカラダシ?」
「それもあるけど、強そうだなと思って」
「強そう……?」
「そう! だって大きいポケモンってもう進化し終えていたり進化しないけど強かったりするから是非お手合わせ願いたいんだ」
わくわくした様子でネモが言い、ユウ達がポカンとする中、 クラベルは目鏡の鼻当てを指で押さえながらやれやれといった様子でため息をつく。
「私も近隣の安全確認のために行く必要があると思いますが、あくまでも安全確認のためなので、バトルは自衛の手段として考えてください。良いですね?」
「はーい……でも、ユウとアオイはどうしますか? このまま学校へ向かってもらうのは少し危ないですよね。この辺りの野生はレベルが低いとは言え、ユウはバトルが苦手みたいですから」
「私もそんなに自信はないです……」
「そうですね……ならば、お二人にも同行して頂きましょう。ネモさんも優れたトレーナーですし、私もそこそこレベルが高いポケモンを手持ちに入れていますからこの辺りの野生のポケモンに遅れを取る事はないでしょう」
「それじゃあそれで決まりですね。みんな、改めてよろしくね」
ネモの言葉にユウ達は頷いていたが、ふとユウは何かを思いついた顔をすると、入学案内などが入った袋を持って急ぎ足でキッチンへと向かった。そして数分後、クラベルとアオイが不思議そうな顔をし、ネモとホムラが揃って苦笑いを浮かべる中、ユウは呆れ顔のシャリタツを頭に載せて少し大きなバスケットを手に持って現れた。
「お待たせしました」
「いえ、構いませんが……そのバスケットは?」
「あ、急ぎで作ったサンドイッチを入れた物です」
「サンドイッチを?」
アオイが首を傾げると、ユウは微笑みながら頷いた。
「うん……僕、緊張したり不安だったりすると何か作りたくなっちゃって、 今も落ちつくために人数分のサンドイッチを作ってたんだ」
「ほんの数分でこの人数分をですか!?」
「ユウ、オドロククライテバヤクサギョウシテタシ。タダ、アジハホショウスルカラ、コノケンガオワッタラモドッテキテタベルシ」
「そうですね。それでは参りましょうか」
クラベルの言葉に全員が頷いた後、ユウ達は玄関を開け、シャリタツの案内に従って歩き始めた。