ウソ予告から始まるのは間違っているだろうか   作:ししお

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アイズの過去?カズトたちは知らん、でも心がひび割れているのはわかる
これやってて弱小とか大丈夫?大問題だ


第四話「赤怪人、街を駆ける」

 アイズ達がミノタウロスの咆哮を聞いたのは第五階層という表層も表層、まだまだ駆け出しの初心者が来るような場所で聞こえてはならない雄叫び。

 悪辣な異常事態(イレギュラー)を起こすことが多い迷宮(ダンジョン)と言えどもここまで悪辣が過ぎる事態は常識外の出来事。

 どこかの誰かが人為的に起こしたと考えた方がしっくりと来るような出来事に直面していた。

 駆けつけた時にはミノタウロスは拳を振り上げる姿、その目標はすでに逃げ疲れたのか壁にもたれ恐怖からか尻もちをついた血を流したままの白髪の少年が呆然と振り上げられた拳を眺めていた。

 

「(間に合えっ!!)」

 

 デスぺレートを振るうがマ石を切ればこの後の惨事は起きなかった。これも理由があるがあるスキルが原因で何度もミノタウロスの身体を獲物が通過する。

 そして動き出すとき少年には銀閃が何度も通過したように見えただろう。

 ミノタウロスの断末魔と血飛沫が動き出そうしていた方向にぶちまけられた、その時まで。

 少年は怪物の血塗れになり呆然とアイズを見上げ、アイズもその姿になんと声をかけていいのか思考がぐるぐると頭の中を回っていた。

 そうして出てきた一言は「大丈夫……ですか?……」でその返答は脱兎のごとく駆けだす赤い物体と「ほわああぁぁぁぁぁっっっ!!??」という女の子のような悲鳴だった。

 

「……」

 

「……」

 

 振り返るといつの間にか追いついてきた三人と目が合い、その姿を盗み見ていたベートが腹を抱えて噴出していた。

 

 

 

 牛の怪物に代わって現れたのは、女神様と見紛うような少女だった。

 青色の軽装に包まれた細身の体、鎧から伸びるしなやかな肢体は眩しいくらい美しい。

 繊細な身体のパーツの中で自己主張する胸のふくらみを抑え込む、エンブレム入りの銀の胸当てと、同じ色の紋章の手甲、サーベル。地に向けられた剣の先端からは血が滴っている。

 腰までまっすぐ伸びる金髪は、いかなる黄金財宝にも負けない輝きを湛えていて、女性から見ても華奢な体の上に、いたいけな女の子のような童顔がちょこんと乗っている。

 僕を見下ろす瞳の色は、金色。

 

「(……ぁ)」

 

 レベルⅠで駆け出しの冒険者である僕でも、目の前の人物が誰だかわかってしまった。

【ロキ・ファミリア】に所属する第一級冒険者、アイズ・ヴァレンシュタイン。

 一目見た時から感じる胸の高鳴り、金色の瞳に吸い込まれるように意識がアイズさんの顔から離せない。

 きっとこれは所詮一目惚れ。

 だから、この胸に渦巻く一末の不安は気のせい、きのせいなんだ。

 吸い込まれるほどに透き通りきった瞳をどこかで見たことがあるような気がして、不安がしこりのようにのこる。

 感謝の言葉あを告げなければならないのに、恥ずかしさと言いようのない焦燥感に舌がうまく動かずに両腕の痛みも忘れ、力の抜けていた両足を動かして駆けだしてしまう。

 ミノタウロスの拳を複数回に渡り受け止めた右腕は完全に折れてぷらんと垂れ下がり、足を進めるたびに振り子のように振り回される。

 左腕も二の腕の肉がえぐれて筋肉繊維がところどころ千切れて飛び出ているせいで、とても動かせる状態ではない。

 そして全身ミノタウロスの血を被り真っ赤に染まっていて目の良い者でなければわからないかもしれないが、首筋、背中、脚部にもそれぞれ決して軽くはない怪我を負ったまま街中を走り、ギルドへと突撃する。

 髪の毛にカハクが掴まったまま。

 髪も、服もミノタウロスの赤黒い血に染まり、全身から新しい血を流しながら、ルベライトのような右目と柘榴石のような左目を輝かせ、インコのような泣き声を響かせるベルが街中を走る。

 その日、『赤怪人』なる怪人物の目撃証言が多数上がることになった。

 

 

 

「エイナさぁあああああああああああんっ!」

 

「「「ん?」」」

 

 ダンジョンの運営管理する『ギルド』の受付窓口嬢、エイナ・チュールは片手に持った小冊子から顔を上げた。

【ヘスティア・ファミリア】団長におさまっているサトル・スズキ=ラ・カルネはまだダンジョンに潜っているはずの若い団員なベルの叫び声に報告していたプニットモエさんと共に駆け込んでくるベルを見る。

 多くの冒険者達がダンジョンにもぐっている昼下がり、受付役として暇を持て余していたエイナは、自分の名を呼ぶ声の主をすぐに察する。

 

「(今日も無事だったんだ)」

 

 自身が担当しただけあってその身を案じているエイナは、少年―――ベル・クラネルの安否を確認して頬を緩ませる。

 

「ほほぉ、アオハルの気配?」

 

 そんな様子を目敏く見つけたプニットモエは相手をみようと突撃して来るお相手に目を凝らす。

 背丈は決して高いとも言えず、少年らしさを残したままの冒険者がサトルによってアイアンクローをされてぶら下がっていた。

 

清潔(クリーン)……まず身だしなみはきちんとしようか、ベル君」

 

 魔術師(マジックユーザー)とはいえ、片手で2tを軽々持ち上げるような筋力で締め上げられてベルの頭は腕の痛みを忘れるほどにミシミシと悲鳴を上げていた。

 

「す、すみませんでしたあああああっ!団長ぅううううっ!」

 

「ベ、ベルくぅうううん!?」

 

「プニットモエさん、また後で」

 

 そのまま引きずりながら片手で挨拶してギルドから出ようとする背中に声がかけられる。

 

「ほいほい、ベル君だっけ?に起きたことも一緒にと、登録は【ガネーシャ・ファミリア】に通すようにね」

 

「ア、アイ―――――!?」

 

魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)沈黙(サイレンス)

 

 まだしゃべろうとするベルを魔法で黙らせてそのままギルドから出ていく姿をエイナは呆気にとられたまま見送るしかできず、姿が見えなくなってからようやく上司であるプニットモエを見る。

 

「え?え?」

 

 ギルド内で魔法を使ったこともそうだが、そんなエイナを横目にてきぱきと指示を飛ばして【ガネーシャ・ファミリア】のニシキを呼ぶように部下を走らせ、深層と表層でイレギュラーがあった旨を皆に軽く知らせ、担当冒険者が帰ってきたら詳しく聞いておくように言い含めていた。

 そんなプニットモエも不思議にうつるものだが、周りは平然と受け止めている事実に唖然としながら声をかける。

 

「えっと……さっきの人は?」

 

「ん~?僕の担当してる冒険者で、サトル君、妻帯者だから横恋慕しちゃダメだよ」

 

「しませんっ!!」

 

 揶揄いの言葉に顔を赤くして即答するエイナにカラカラと笑いながら次に来るであろう質問に先んじて答えることで封殺する。

 

「暗黒期の英雄の一人、【ヘスティア・ファミリア】の団長、渾名は【千の使い手(サウザンド・マスター)】【死の呼び手(コール・オブ・デス)】【愛妻家(ラブ・パートナー)】とか色々あるね。新入りのベル君とパーティーを組んでないのはレベル(強さ)が違いすぎるから、イレギュラーはベル君が【呪い】と【出血】を受けた上で両腕が動いてなかったからだねぇ。あ、レベルはランクアップしてないから1だよ、ちなみに貴族で爵位は伯爵位」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。情報が多すぎます……」

 

 一息に説明されて整理するために頭を押さえるが、ベルのことも混じっていて整理するのに思考がうまくまとめられない。

 普段であれば聡明なエルフの血を半分受け継いでいることもあって頭の回転は速いのだが、次から次へと情報が流し込まれる。

 

「名前からわかる様に(本当は違うけど)極東出身で~、僕も同じ都市に住んでたんだよ。千の使い手(サウザンド・マスター)の渾名通り魔法が千個ちょっと使えてね?便利な魔法も色々と使えるんだよ。さっき使ってたのもその一部だーねー」

 

 書類を持ってバタバタし始めたギルド職員はいつものプニットモエギルド長の説明による情報の津波に浚われているエイナに憐憫の目を向けていた。

 

 

 

 迷宮都市オラリオ、『ダンジョン』と通称される地下迷宮の上に築き上げられた巨大都市。

 都市、ひいてはダンジョンを管理する『ギルド』を中核にして栄えるこの都市は、ヒューマンも含めるあらゆる種族の異人(デミ・ヒューマン)が生活を営んでいるが、七年前の暗黒期からモンスターではないリザードマンが近くの沼地に村を作っている。

 そして治安を任されているのが【ガネーシャ・ファミリア】【元アストレア・ファミリア】の面々がギルドから依頼されて調査を委任される事が多い。

 逆に他のファミリアが調べていたことがある場合は無関係な神同伴で質問されることもある程度には強権を持つことが出来る。

 それにより闇派閥の生き残りを暴き出し、【イシュタル・ファミリア】【ソーマ・ファミリア】の何人かが更迭されている。

 一応二大ファミリアと呼称される【ロキ・ファミリア】【フレイア・ファミリア】が存在しているが三大クエストの失敗による団員の大量死亡による弱体を狙ったハイエナ行為による追放からの最強の座を掠め取った。

 程度が大雑把なオラリオに対する説明になるだろうか。

 様々な種族で溢れかえる大通りを縫うようにベル君を引き摺って行く。

 ドワーフ、エルフ、ノーム、獣人、パルゥム、ヒューマン、市民のたたずまいをした人たちもいれば物騒な装備で固めた人達もいる。

 

「(いや、こいつら冒険者なのにこの時間に何してんだ。まだ昼下がりだぞ?何かしらの理由があるならわかるけど……エンブレム覚えておくか)」

 

 メインストリートを出ていかにもというな細い裏道を通り、幾度も角を曲がると背中に届いていたざわめきが途絶えた頃、袋小路にたどり着く。

 目の前の建物は元々は全能の神を崇める為に建てられた、修繕された教会だった。

 なぜかベル君のお姉さんには不評なのだが、どうも理由を聞くと彼女の母親がよく来ていた教会で叔母が大切にしていたのだとか。

 なのでそんなところに住むのがなんとも言えないとのこと。

 ついでにもとあった女神像がマーファ神像に変えられてる辺りだったりするんだろうか。

 とりあえず修繕した二階が男部屋、地下が女部屋となっている、中の教会そのままになってるのは応接兼孤児院を招いた勉強部屋として使われている。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい……ってベル君ひどい怪我ですね。そこで横になってください、すぐに治しますから」

 

 教会に帰れば子供たちへの勉強会が終わったのだろう片づけをしているエンリが出迎えてくれて、ベル君の傷を見るなり治療を始める。

 ただその治療は無言で、あっという間に終わってしまう。

 神聖魔法のこの世界での特異なところで、魔法名を口にしなくても効果を出すということだろう。

 その特徴から沈黙していても、猿轡などを噛まされていようとも使用ができるという強みがある。

 

「ところでその子は?」

 

 そう言って指を指すのはベル君の頭の上に乗った小さな小さな女の子、比喩ではなく物理的にとても小さい、掌に乗るような大きさの女の子の事を聞く。

 

「モンスターの一種だと思うけど、ベル君の慌てぶりもあってぷにっと萌えさん以外には気付かれてなくてよかったよ。一応テイマーっていうモンスターを従える人もいるから明日は一緒に【ガネーシャ・ファミリア】にいくぞ」

 

「えっと今日じゃないんです?あ、喋れる」

 

 それからカハクの事を聞き、ダンジョンであった謎のモンスター、特徴を聞くに今まで報告されているモンスターならフォーモリアが近いがおそらくバフォメットではないだろうかと予想する。

 

「とりあえず今日は、ヘスティア様にステータス更新してもらってしっかり休みなさい」

 

 

 




ミノタウロス 出展:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
リヴィラに下りる途中で出会うことになるレベルの強敵、レベル2の冒険者でも当りどころが悪ければ一撃でザクロのように粉砕されかねないパワータイプのモンスター
強制停止(リストレイト)咆哮(ハウル)も所持している
これよりも弱いシルバーバックの防御力ですら初期武器ではお話になりません
……ごめん、これを突発事故でレベル1ソロで出会って絶望しないとか、ただの狂人にしか映らない
主な生息域は17~15階層
万全な準備を整えてワンチャン?
通用する武器、攻撃を避けれる回避力、ヘルスを削りきるまで保つタフネス……初心者に求めるもんじゃない



ベル・クラネル レベル:1
力:I 77→I 82
耐久:G 234→G 289
器用:H 146→H 152
敏捷:G 268→F 301
魔力:I 12→H 198
物理耐性:I
〈魔法〉【】
〈スキル〉
憧憬一都(リアリス・フレーゼ)
・早熟する
・願望が続く限り効果持続
・願望の丈により効果向上
・使役枠1/6
└【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)
 ・早熟する
 ・懸想が続く限り効果持続
 ・懸想の丈により効果向上
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