得意属性の問題でバーンには負け越し成績になる
お姉ちゃんは父母の追放した状況を知っている、ロキ・フレイヤ両名がお姉ちゃんから好かれる理由がねぇ
アイズが少年を助け、そして逃げられ呆然としているところをベートに目撃されて抱腹絶倒している中、耳元にぼそりと呟かれる。
「ゼロ点、無駄が多すぎ、感情に振り回されすぎ、常に冷静さを頭の隅に置きな。強くなりたいなら三日後にダンジョンの入り口まで来な」
言いたいことだけ言われて頭をポンポンと優しく叩かれて、見渡すが二人の姿は見当たらない。
「くっくっく、愉快なもんも見たしとっとと戻るぞ」
一頻り笑うとベートはアイズとティオナ二人を連れ戻すために先導しながらも時折後ろをちらりと振り向き確認しながらもフィン達が待つ本隊へと合流する。
合流すれば、リヴェリアに二人して抱きしめられ安堵された。
その隈の残った目元を見て、二人してばつの悪い思いをする。三日後について行く気だったためにどうしても罪悪感を覚えてしまう。
レフィーヤがワンワンと泣いてアイズに抱き着き、ティオネがティオナに拳骨を落として「なんですぐ振り解いて戻ってこなかったか」なんてことを聞かれながらアイズたちは再び地上を目指して歩いて行く。
心配してくれる【ロキ・ファミリア】の皆に軽く頭を下げて謝罪しながらティオネに言われた「なんで」について考えていた。
見せられた技術に興味を持ったのも事実、何よりも二人の強さに追いつきたいと思った。
それとは別に、ミノタウロスの血で真っ赤に染め上げられながらも真っすぐに突き刺さるような違う赤い双眸を思い起こす。
深く覗き込むように映る
地中に開く大穴。ダンジョンの入り口を塞ぐ『蓋』として建設された摩天楼施設『バベル』。
このバベル、つまりダンジョンを中心にしてオラリオは今もなお栄え続けている。
薄暮が迫る街は迷宮から帰ってくる冒険者で溢れ、彼らの生還を祝いもてなす酒場の賑わいに満ちていた。
「やっと帰ってきたぁ……」
都市北部、北の目抜き通りから外れた街路沿い、周囲の建物と比べ群を抜いて高い、長大な館が建っていた。
【ロキ・ファミリア】
「あー……お肉たくさん頬張りたーい」
「私は早くシャワーを浴びたいわね」
「あはは……」
ティオナ姉妹たちの言葉にレフィーヤが苦笑し、昨日食べた不思議な食事を思い出す。
練られた魚介類を包んで蒸した物や、卵を溶かした透明なスープ、極東のオマンジュウとやらを大きくして餡の代わりにお肉なんかの入ったもの、ウーロン茶と呼んでいたコーヒーとは違う黒いお茶。
マーボーとかいう白くてもろいものが入ったとても辛いのに次々と食べてしまった二人に用意された食事。
どこか懐かしくて、嬉しかった、ファミリアの食堂で皆と食事をするのとはまた違った顔を合わせた……お父さんとお母さんが一緒に居た時感じていたもの。
ティオナが言うには私はその時笑顔だったらしい。
気が付けば拠点の正面門の前、古い先輩であるノアールとバーラが門番をしていて、フィンが声をかけると中に大きく声をかけながら門を開いて迎えてくれる。
「今帰った、門を開けてくれ」
「まったく後輩が偉くなりやがって。おぉい!遠征組の御帰りだぁ!!」
ノアールの言葉に笑いながらフィンを筆頭に門を潜り敷地内に足を踏み入れた。
「──おっかえりぃいいいいいいっ!」
いきなり私たちの入門を見計らっていたかのように、館の方から走り寄ってくる影があった。
朱色の髪を揺らす胸のない彼女は男性陣には目もくれず、私たち女性陣のもとへまっしぐらに進んでくる。
「みんな無事やったか―っ!?うおーっ!寂しかったー!」
両手を突き出し飛びついてくる彼女を、ひょい、ひょい、ひょい、と私、ティオナ、ティオネがすんなり回避し、最後尾のレフィーヤはとばっちりの様に抱きつかれ押し倒された。
「え!?ちょ、きゃあー!」
「ロキ、今回の遠征での犠牲はとりあえずはなしだ。到着階層も増やせなかったけどね。詳細は追って報告させてもらうよ」
「んんぅー……了解や。おかえりぃ、フィン」
レフィーヤを押し倒したままレフィーヤの体を堪能しながらロキは顔を上げ、にへらっと笑いかける。
「あぁ。ただいま、ロキ」
「ロキ―、レフィーヤが困ってるから離れてくんなーい?」
「おおっと、すまんレフィーヤ。感極まって、ついなぁ」
「い、いえ……」
「ところで……グフフ、ちょっとおっぱい大きゅうなった?」
「な、なってませんっ!?」
好色な親父のようなゲスな笑みを浮かべるロキに、レフィーヤは胸をかき抱きながら顔を真っ赤にしてロキを突き飛ばし高速で後退る様に距離を取る。
いつもと変わらない風景、いつもと同じロキのセクハラを見ながら私とティオナは「何かが違う」と感じてしまっていた。
『やっぱり
あの時吐かれた何気ない言葉の意味がじくじくと不明瞭な領域から浸食するように浸透して来る。
言い表しようが難しい違和感。
「アイズも、お帰りぃ!」
自分の家に帰ってきたと、誰もが疲労に滲む表情を自然と緩める中、二人だけが小さな棘が刺さるような感覚に一末の不安を胸中に抱いていた。
「ただいま、ロキ……」
おもむろに顔を向けてくるロキに、私もはっきりと口にする。
どこか嬉しそうにニコニコと笑窪を作るロキ。
居残り組の団員達が遠征組の持ち帰った荷物を受け取り運搬していく中、すれ違いざまに「おかえりなさい」とにこやかに出迎えの言葉を送られ、私たちは館の中へと入る。
手の空いているものから入浴を済ませろと指示され、暗黙の内に私やティオナ達に一番手を譲られる。
何かと優遇されている後ろめたさが少なからずあるが、浴室も効率よく使用しなければ回らないのでありがたく甘えさせてもらう。
一度自室に戻り愛剣と防具を外して、改めて自分の部屋を見てみる。
ミニマリストとは違う必要最低限のものしか置かれていない部屋、クローゼットにはロキや他の皆に勧められた服なども入っているが……それでも年相応の女性の部屋というにはあまりにも殺風景な部屋だった。
どこか他人事のように自分の部屋を眺めていると、ティオナが勢いよく扉を開けて開口一番お風呂に誘われていく。
「お風呂行くよー!アイズ―!」
脱衣所で改めてしげしげとみられ、服の事への言及。
「……アイズの服ってさぁ、結構大胆だよね」
「着ないと舌を嚙み千切る、ってロキが言うから……」
ティオナの言及にアイズは脱衣を進めながら、脅迫されたことを話す。
主神が面倒なこだわりを持っていると苦労するというのが、【ファミリア】の通則だ。
「レフィーヤ、とっとと脱ぎなさい。後がつかえるわよ」
「あ、はい……」
全く出し惜しみせず裸体になるティオネに対して、レフィーヤは遅々と服を脱いでいく。
一緒にお風呂に入った際のイェンレンもアマゾネスの例に漏れず早々に脱いでいたのが思い出される……湯船に浮かぶ褐色のメロン二つをティオナが羨ましそうに見ていたのをよく覚えている。
恥じらいのないアマゾネスと極力肌を晒さないようにするエルフの、種族としての性の違いが如実に現れる脱衣場。
「アイズさぁ、何か落ち込んでる?」
「……うん、ちょっと……」
ティオナに投げかけられた疑問に原因が思い当たり、素直に口にする。
「ゼロ点……って言われたの」
「あー……あたしもねぇ『力任せにするな、力の流れくらい読め』って注意されたんだぁ。力の流れって何さぁっ!?」
それとは別に助けた相手に悲鳴をあげられ全力疾走で逃走されたことには少し落ち込んでいた。
ミノタウロスを八つ裂きにした自分はそんなに恐ろしかったのだろうか、一撃でマ石を砕き灰にしていられたのならまた違ったのだろうか。
そう考えると少しだけ、本当に少しだけ、悲しくなる。
比喩抜きで真っ赤になっていた少年の顔、ともすれば戦慄に打ち抜かれているような表情が、瞼の裏から離れない。
私がその立場に立った時、恐怖はしないのだろうか。
私はその光景を想像して、身震いする。
何度も血に染まったような錯覚を洗い流す様に、手を拭い、身体を洗い、流れていく熱湯を眺める。
「……むむむっ」
「なに唸ってるのよ」
「この水みたいに力の流れとかいうのが見れたらなぁって……」
そんな訳の分からない言葉を返しながらティオナは拳を握ったり開いたりしていたと思えば、再び唸り声を上げ始める。
胸に視線が向けられ、外される。
「レフィーヤの裏切者ぉ……」
「ええっ!?むしろアイズさんもティオナさんも何があったんですかっ!?本っ当に心配したんですからね!!」
ティオネとレフィーヤには私たちが誘拐されたと説明されていた。
だから私達が無事なのか、酷い事をされていないか、とても心配だったと語る。
帰る途中にもリヴェリアやガレスからも声をかけられ確認されたが、酷い事はされていないと、むしろ何をどうすればそういう結果になるのかわからない技術を見せられたと話している。
無手でモンスターから生きたままマ石を気付かれずに抜き去る技術、フィンもその言葉には半信半疑だったが、飛ぶ斬撃、跳弾する斬撃だというものを見せられていたらしい。
それらを学べたなら、私はもっと……そう考えて、頭を振るう。
強くなれるのか、それとも
ロキの乱入もレフィーヤの悲鳴も努めて無視して浴室から出て着替えを優先させた。
「酷いですよぉ……」
「ごめんごめん、あたし達もロキの相手するの面倒臭くてさぁ」
長方形の長い食卓がいくつも並ぶ大食堂。
身体を洗い一度自分の部屋に戻った後、アイズ達は夕餉を取っていた。
食事に箸をつける前にフィンから居なかった時のことを話してほしい、そう同席されティオネが嬉しそうにしていたが話を進めていくと顔を顰め始める。
「え……と、力ばかりで技が未熟だって握り方から見せられて……」
「布を剣に見立てて試合?したんだけどこっちの武器がぬるぬる捌かれてポンポン頭を布で叩かれたんだよー?」
事実としてアイズは発展スキルとして『剣術』を持っているがそのランクはIと最低限のもの、あの二人には『力任せの素人剣術の真似事』と言われてしまった。
様々な冒険者から色々と教えられ訓練をつけてもらっていたが、長い事威力が出ることばかりにかまけていて綺麗な切り方だとか巧い振るい方だとか力強い足運びだとか考えたこともなかった。
『腋は締める、身体を傾けるな、刃筋を真っすぐに振るえ、股を開くな、腕で振るうな腰で振るえ』
幾つも繰り返される訂正の言葉。
『視線を流すな相手を常に真正面に見ろ、体重移動を刃先に乗せろ、親指に力を籠めるな踵で蹴れ』
窮屈というよりも全く実感の沸かない、今までとは真逆に感じる術理を言葉で叩き込まれた。
そんな報告を聞いてフィンの顔は呆気にとられたように、思案顔になる。
「彼らは一体何がしたいんだ……」
「後は……素振りをするなら、『筋トレじゃないんだから回数よりも時間をかけろ』って」
「なんかねー、組み手するならるるぶ?でもやってろってー。なんかねぇすごくゆっくりとした動きで、でもすっごく綺麗だった!」
一度その琉々舞を見せられたが一つ一つの動きが極まった物ばかりで、普通の動きの様にように感じられるのに引き込まれるように魅せられた踊りの様に剣が交差していく様は、ティナが言うようにただただ綺麗だと感じられた。
アイズたちでもやってみようとやっているところを映像として残せるアイテムで撮ってもらったのだが、二人のものに比べれば酷く、バタバタと振り回して暴れているように映っていた。
「それとね。フィン、あたしからも聞きたいんだ」
ティオナはアイズを守る様に抱きしめてフィンに質問を投げかけた、その言葉にフィンは思案していた事から思考を持ち上げらさせてティオナをまっすぐと見る。
「なんだい?」
「フィンはさ……ううん、【ロキ・ファミリア】はアイズをどうしたいの?」
イェンレンからティオナに聞かれた質問の答えがティオナにはわからなかったから、フィンに聞いてみた。
『人の幸せを願うには中途半端、気にかけ心配をしながら剣を持たせる、女らしい格好をさせながら女の所作を教えもしない、剣を持ちながら我武者羅に振り回すだけ、その道の危うさを説くでもなくその道に堕とすでもない。なんとなくでもしたい事をわかってるお前さんとはあの子は違う、あの子に何をさせたいんだい?お前さんのところは。
この質問の答えは物語の分岐点。
アイズの未来をどう考えているのか、そこに差し込まれた言葉は
「しっかりと幹部になって、【ロキ・ファミリア】の支えになってくれると嬉しい、とは思っているよ」
発展スキル
ステータスと同じようにS・A・B・C・D・E・F・G・H・Iと十の等級が存在し、レベルアップ時に取得条件を満たしていれば複数ある中から取得することが出来る追加ステータス
幸運や剣術、狩人、精癒、毒耐性といった様々なものが存在している
が、剣術などの様に取得しているからと術理を得る、といったものではなく、なぜか威力が上がる、命中させやすくなる、取得経験値が増えると目に見える物もあれば、なんともふわっとしたものもよくある
この作品のアイズ、ティオナはリアルスキル:剣術SSSを見せてもらったようなもん
映像に映して自分の振り方を見直したりするのはスポーツでもよくあるトレーニングの一つ、イメージした動きと実際の動きの違いをしっかりと見直すのに使われる
似たもので鏡の前でダンスをする事で動きを把握するものがある