ゼノス編すでに攻略済み、別グループだがな
夢ではオラリオではないどこかの街が滅んで崩れ去っている、コンクリートと透き通る色とりどりのガラスがはめられたビルディング。
レンガ造りの木柱で支えられたオラリオの街よりも進んだ夜でも眠らない街、だった街。
夢から覚めるといつも混乱する……どちらが夢なのだろうか、と。
オラリオに居る自分が夢なのか、それとも荒廃した街に居るのが夢なのか、それともどちらも夢なのかもしれない。
ただどちらの僕にも変わらないものがある、あの白い衣に纏われた
憧れる様な強さも、次から次へと訪れる新たな出会いも、不安を吹き飛ばし前を向かせるその在り方も……怒りを滾らせて立ち上がる姿も。その優しい手から零れ落ちる命への慟哭も、立ちふさがる絶望も……見てきて、見てきたからこそ追いつきたいと願い、冒険者になろうと思った。
お爺ちゃんは普段から英雄を語ったけど、オラリオに行くのは反対してくれた、お父さんもお母さんも危ないことはしないようにと心配してくれた。
伯母さんとおじさんは英雄になるならとお姉ちゃんと一緒に死にかけるような訓練してくれた。
その上で口をそろえて言われた『才能がない』という言葉。
その言葉に笑みを浮かべたのは僕ともう一人だけ、僕の追う
ただ立ち上がり、立ち向かった人。
不意に翻す様に角に消えた白い服の一片、その一片で走馬灯のように思い流れて、思わず駆け出してお姉ちゃんに肩を掴まれ止められる。
「いきなり駆けだそうとしてどうしたのよ」
「夢の人が──」
お姉ちゃんは僕の言葉にゆっくりと首を横に振るい、団長に早く先に行くように促す。
「いや、その扱いはひどくないっ?!ベル君の言ってた夢の人っぽいのを120階位で見たんだけど」
「あぁ、そっちの意味じゃないわよ。とりあえず説明は後でしてあげるから先を急ぎましょう。あれは魂を見て仕込まれた罠だから」
背中を押して道を変えてギルドからガネーシャ・ファミリアへと進路を変更する。
しばらく歩き、人混みが途切れ、人の姿がまばらになり始めてからお姉ちゃんは口を開く。
「ベルの見る夢の人って私も知ってるのよ。名前は言えない顔も描けないけどね……その辺はそういった呪いを受けていると思ってちょうだい。ディアンケヒト・ファミリアにいる聖女やその弟子に頼んでも無理よ?それに打ち勝っている奴にも解けないって太鼓判を押されてるからね」
「それは具体的には?」
お姉ちゃんが呪われてるだなんて聞いて肝を冷やしたけど、団長は言葉短くその呪いの内容を聞こうとしていた。
「その人の事を記録することが出来ないっていうものよ……言葉はおろか、文書にも絵にも。■■■よりも先に死ぬことで記憶しておくことしかできない。そしてそんな真似を進んでしようなんて■■■は許さないわ」
俯き語られるそれは、お姉ちゃんがお姉ちゃんになる軌跡を語られるようだった。
僕にわかるのは、『覚えるために先に死んだわけではない』結果的に先に死ぬことになった。
それなのに……悲観も哀愁も憤怒も怨嗟も憎悪も欠片も感じられずにそれを誇りにしているように感じられた。
僕も同じなら、同じだとするならこんなにも胸を締め付けるような悲しみばかりが溢れだしてくるのに。
「なるほど?(え?つまりどゆこと?)罠だとわかったのは?」
「私が糸を生み出せるのは知ってるわよね?」
お姉ちゃんは指先から見える太さの糸を出してうねらせ、二本三本と生み出して弾くようにしてはるか上空、バベルの方へと飛ばしてしまう。
「あぁ、知ってる。教えてもらってるしね。それで織物を作って色々なファミリアへと売ってお金を得ているとも聞いているな」
顎に指を這わせ糸の行方を見ながら数週間ほど前の事を思い出す様に、その時に見せられた純白の布地を思い描く。
完全な真っ白キャンパスのようで、光沢のある白のみで構築された一反。
村のみんなが着ていたような麻のごわつきもなく、少ない回数だけどきめ細やかな絹よりもすべらかなお姉ちゃん自慢の布地。
僕の服もお姉ちゃんの手作りの物、下手な刃物くらいじゃ傷つくこともない。
「彼の防具を作ったのは私を含んだ『私達の総決済』。そうか、そうでないか、わからないわけがないでしょ」
そういってにやりと笑いながら顔を上げるお姉ちゃん。
顔を上げたお姉ちゃんと一緒に視線を戻せばもう巨大な象の仮面をつけた人の像で作られた独特過ぎるファミリアのホームが見えてきた。
僕も一度訪れたことがあるけども、相変わらずその股間前に門番として立っている人には尊敬と共に憐憫を覚える。
「お、坊主。無事にファミリアに入れたのか、風の噂で色々なファミリアに赴いたけど追い返されたって聞いてて心配してたんだぜ」
「ハシャーナさん、ありがとうございます。無事にヘスティア・ファミリアに入れました」
はにかみながら象の仮面をつけた屈強な肉体を誇示している男性へと挨拶をして、頭の上に乗っているままのカハクを見て納得したように頷いて道を開けてくれる。
「冒険者になって早々にテイムとはな。テイマーを売りにしてるうちのファミリアでも珍しいもんだぜ。でも相性ってもんもあるから過信しないようにな」
カラカラと笑いながら団長とも挨拶を済ませてアイ・アム・ガネーシャの股間を通ってガネーシャ・ファミリア内に足を踏み入れる。
「何でこんな入り口にしたのかしらねぇ……悪趣味すぎるわ」
「女の人の股間でも嫌よ。男性は喜ぶかも知んないけど」
そんなトンでも会話を聞かされて団長と共に叫び声をあげる。
「「いや、僕(俺)もそんなの嫌だよ!?」」
なお神様たちはこの入り口を笑って潜るそうだ。
「俺がガネーシャだ!」
そんな叫び声と共に半裸の男性が象の仮面をつけて筋肉を誇示するポーズを取る。
「俺が!俺たちがガネーシャだ!」
更に叫び声をあげて僕達の前にやってくる、これが民衆の味方という善神の代表であるガネーシャ様である。
「(大丈夫なのかなぁ……?)」
テイミングされたモンスターなどの登録を統括しており、また街中の自警団として街での見回りをしている姿をちょくちょく見かけられる。
ギルドとも提携しているようで換金しているときに誰かしらを見かける、仮面で誰かわからないけど。
「うむ、君が報告されていたベル・クラネルだな。俺はガネーシャだ、よろしくな」
「うちの主神はこんな感じで
そんな紹介にパオンと一鳴きして静かになる神ガネーシャ様。
紹介をしてくれた人は黒髪に黒目で団長に似た彫りの浅いなんというか、顔の平たい感じの人だった。
エンリさんはそんな感じはしないんだけど。
「んじゃ軽い講習しておくぞ。
「えっと……はい。割と普通?なんですね?」
それに説明してくれる人は頷いてくれる。
「それは当然なんだ。普通に過ごせるようにするためのもんだからな。なのでマナーだとかはマスターである君がきっちり教える様にってことだ。案外これが出来ずに問題起こして再補習受ける奴も居るからな。そういう時は容赦なくしょっ引くから下手な抵抗はせんようにな」
かちゃかちゃといつの間にかカハクに何かしらの名札のようなものを装着させる。
魔法のアイテムなのかサイズは最初は大きいと思っていたのにみるみる内に問題ないサイズに変わっていく。
「こいつはタグでな。悪いことをしたらガネーシャ・ファミリアに知らせられるからな」
以上で講習は終わりだと告げられる。
ただ最後にヴィクトルの業魔艦に寄ってみろって言われた。
「俺も違いはよくわからねぇんだがな、モンスターの中にはアクマと呼ばれるタイプが居てな……そっちはヴィクトルの爺さんのところの装置に収納できるんだとよ」
「私そのモンスターじゃなくてアクマってタイプだよ。地霊だよ」
「地霊ってのは?聞いた感じだと地面に関係する妖精とかそんな感じか?」
「えっとねぇ───」
説明が長くなるけども要約すると、鬼の一種で群体に属するものでカハクは首吊り自殺者が樹木に吸われて誕生するとかなんとか。
え?幽霊みたいなもの?というか───
「カハクは……なんで自殺を?あ!言いたくなかったら言わなくてもいい───」
「メシア教っていうところに掴まった女の子の一人でね。ズキューンされてバキューンされてピーーーになって■■■を続けられて▲▲▲▲▲なのに人間のままな意識があってね?だから人間のままである為に同じような子たちと〇〇を選んだの」
つい出てしまった言葉に男の人も止めようとして間に合わなくて、カハクから出てきた言葉は伏字にするような言葉にするのも憚れるような内容だった。
それを聞いていた周りの人たちも思わず足を止めて、聞き入りそして後悔しながらドン引きしていた。
「何でそんなことに……」
僕はカハクを抱きしめて涙を流していた。
「そんなの、今なら良くわかるわよ。『正義の為に』だとか、お題目掲げた瞬間に目的のために手段を選ばなくなるからよ。特に失敗が続けばね(失敗させ続けたのって最後に助けに来てくれた人たちだと思うけど)」
「あー……アストレア・ファミリアも一回の失敗で潰れちまってるしなぁ。市民の方からは復活の声もぼちぼち聞いたりするんだよな」
頭が痛いと指でこめかみを抑える男の人から出てきた聞いたことのないファミリアの名前。
何でも正義をかかげ、
そして話を聞いてる間も涙を流していたんだけど、ズビシと小さな手でチョップがおでこに叩き込まれる。
「私は同情なんてされたくないの。同情されるために話したわけじゃない、ただベルとの契約の関係上聞かれたことには嘘偽りなく答えるようになってるのよ。聞かれなきゃ答えないけどね」
初めに会った時の様に腰に拳を当てて鼻に指を突き付けて怒ってるように見えるのに口元は笑ってる。
「私達の過去を否定するっていうことはね、私達の今を否定するっていう事、私達の
そう言って僕のほっぺたに抱き着いてくるカハク。
話が一段落するといつの間にか別の部屋に行っていたお姉ちゃんと団長とガネーシャ様が戻ってきたんだけど……
「ぱおん……ぱおん……」
なんだかガネーシャ様が、思考放棄した感じで「ぱおん」しか言ってない。
「あー……ニシキさん。とりあえずこちらの抱えてた問題の一つは解消、詳しいことは『豊穣の女主人』で話すんで今晩顔出してください。ぷにさんも呼びますから……」
団長も色々何かしらを聞いたみたいで頭を押さえてる。
何があったのかわからないけど。
「え、えっとお姉ちゃんがごめんなさい?」
「わたしを問題児みたいにするんじゃないの……今回は否定できないんだけど」
メシア教 出展:真・女神転生シリーズ
基本的な教えはこちらの世界のキリスト教に近く、キリスト教から分派した極々小さな派閥だった
天使を崇拝し、天使を通して唯一神を崇め、終末に対する救世主が現れて自分たちを救ってくれるのだと信じている人たちが信仰している
問題はアクマとして天使が存在している世界だった、ただそれがその世界におけるメシア教の行く末を決めた
天使は自分たちを絶対的な正義に置き、自分たちメシアン以外を邪教徒、異端者と呼び排斥し、自身の行為は正しい、メシア教に教化することは正しいと洗脳を始めた
他アクマと勝つことが目的となりその過程における強きものを揃えるという手段を、人を改造することで補完した……最終的には