Empty 短編集 作:音門ヤイバ
今回から何話かかけての短編を書こうと思います。
それでは、本編をどうぞ!
夜の裏路地に足音が響き渡る。
走っているのは少年だ。息も絶え絶えになっているが、走る足は止まらない。
「いたぞ!」
“ッ!”
追いかけてくるのは黒いローブの男たち。彼らは、どこまでも追いかけてくる。
それは、少年が見てしまったからであり、彼らにとってそれは許されないからだ。
追い詰められた少年が最後に見たのは、夜空の黒だった。
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少年、夢宮想太が“それ”を見たのは偶然だった。
人の様な獣の様な中途半端な生き物。近くのものを廃れさせながら、ゆっくりと歩いており、その周りには黒いローブを着た人型が何人も立っていた。
「何だ、あれ。」
建物の影に隠れながら様子を伺う。しかし、何なのだろうか。用事で遅くなったとはいえ、いつもと同じ帰り道。あんな非日常が入り込む隙間はなかったはずだ。
偶然見かけて気になって観察してみたが、おかしな雰囲気を漂わせていて、気づかれたらやばいと、本能が警鐘を鳴らしていた。
(ゆっくり下がって音を立てなきゃ見つからないはず)
そう思い裏路地から抜け出そうとした時だった。
急にこちらに獣が振り向いた。それに驚き身を引いてしまった。それが始まりだったのだ。
“バキッ”
身を引いたせいで近くにあった看板に当たって大きな音を出してしまった。
「誰だ!出てこい。」
そう言いながら近づいてくる黒ローブの男。
(ここにいたら不味い。逃げなければ)
近づいてきた男に隠れていた看板を押し倒し、全力で走る。走る。走る。
追いかけてくるの足音は聞こえるが、後ろを振り返る余裕もなく、ただただ全力で走る。しかし、裏路地の土地勘はなかったために、行き止まりへと出てしまった。
そして至るは冒頭の悲劇。哀れな少年は、捕まった挙句気絶させられてしまった。
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ふと目が覚めると視界に入ってきたのは“白”だった。それが、最後に見た光景とあまりにも乖離していたため、状況が飲み込めない。
「ここは、どこだ?」
捕まったことは覚えている。しかし、ここは檻でもなければ、自分は縛られていない。
「まさか、死後の世界とかか?」
独り言に答えるものはいない。そのためまず周りを確認する。そうしてみるとどことなく病院の様だった。
“ガチャリ”
そんな音がしてドアが開き入ってきたのは、薄い茶色のコートを着た男だった。
「目が覚めたみたいで何よりだ。自分が誰か、気絶する直前何をしていたか、覚えているかい?」
男が胡散臭そうな笑顔でそう聞いてくる。
「覚えていますが、ここは何処ですか。」
質問に答えるとその男は、笑顔のまま言う
「良かった。裏路地で気絶している君を見つけた時はどうなることかと思ったけれど、大丈夫そうで良かった。」
男がそう言ったあと一拍おき、思い出したかの様に
「自己紹介がまだだったね。私は警視庁欠落者対策本部の岡本だ。よろしく」
そう言いながらお辞儀をする岡本。その発言に対して答えながら気になったことも質問する。
「初めまして岡本さん。〇〇です。助けていただきありがとうございました。一つ質問があるんですが、欠落者って何ですか?」
自分の容態やこの場所のことを聞くよりも先に聞きなれないその言葉に反応してしまった。
「やはりそれが気になるのか。」
そう言って岡本は続ける、
「君を襲ったであろう怪物。それが欠落者さ」
それを聞いた時に思い出した寒気は、あの光景を夢でないと言うことを思い知らせることとなった。