モブなので恋愛よりドラゴン育成したいです ~どハマりしたゲームの世界に転生したので、赤ちゃん白竜を育ててみる。するとヒロインが「かわいい!」と近付いてきて……~   作:メソポ・たみあ

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第39話 とっておき

 

 ワアアアアアッ!という歓声と共に、双方は駆け出した。

 

 中でも動きが速かったのはスピカである。

 

「きゅーん!」

 

 先手必勝!

 と〔コメット・アタック〕を発動し、眩い閃光と共に彼女は突撃する。

 

『おおーっと、最初に仕掛けたのはスピカ選手だ! 光のように速い攻撃! これは避けられない!』

 

 ミスミが解説してくれる。

 

 その言葉通り、攻撃はアース・ドラゴンの背中に直撃。

 

 しかし――

 

「ブオオォォ……」

 

 防御力に秀でる彼には有効なダメージとならず、逆に尻尾を振って反撃。

 

 辛うじてスピカはそれを回避した。

 

『ふぅ~む、どうやらスピカちゃんのレベルはアース・ドラゴンに大きく劣っているようじゃの?』

 

 続けて解説するデイヴィス学園長。

 

 まあ、今の攻防を見ればすぐ気付きますよね……。

 

「やっぱり弱点属性以外の攻撃じゃ通用しないか……!」

 

 ――歯痒い。

 

 でも――まだ(・・)だ。

 まだだよ、スピカ。

 

 仕掛けるチャンスを待つんだ。

 

 その時は、いずれ必ずやって来る。

 

 ドラゴン同士が戦いを始めるのに少し遅れて、ロゼとマシューの剣がキインッ!と噛み合う。

 

「見くびらないことね、マシュー! あなたの剣の腕じゃ私には勝てないわよ!」

 

「……ああ、そうだな。知っているとも」

 

「――なん……!?」

 

「勝てないからどうした? 負けなければいいだけの話だろう?」

 

 刃と刃が鍔迫り合う中、マシューは口の両端を吊り上げた。

 

「負けないよう時間さえ稼げば、アース・ドラゴンがあのクソチビを始末して加勢に来る。それでゲームセットだ」

 

「あなた……! それでも誇り高い騎士!? 本当に貴族の端くれなの!?」

 

「勿論! 少なくともお前よりは、アリッサム家当主に近い立場だなぁ!」

 

 ――まるでおちょくるような防御一辺倒。

 

 たまに踏み込んで攻撃するような素振りこそ取るが、あくまで見せかけ。

 

 自分は戦っていますよというパフォーマンスだ。

 

『ロゼ選手、マシュー選手の防御を切り崩せなーい! 攻めあぐねているー!』

 

『おおう、ベイベー……こいつはとんだ茶番だぜ……』

 

『……』

 

 マシューの意図に気付いたのか、険しい表情を見せるコボルト村長とデイヴィス学園長。

 

 一方その頃――ドラゴン同士の戦いには、変化が見え始めていた。

 

「きゅーんッ!」

 

「ブオオォォォッ!」

 

 果敢に攻撃を繰り出し合う両者。

 

 しかしスピカの攻撃はダメージが通らず、アース・ドラゴンの攻撃は素早く回避するスピカに当たらない。

 

 速度優勢と防御優勢の、まさしく一進一退。

 

 そんな予断を許さない状況下で、先にしびれを切らしたのは――アース・ドラゴンだった。

 

「オオォォ……!」

 

 唸るような咆哮と同時に、アース・ドラゴンの尻尾の先端が肥大化。

 

 まるで巨大ハンマーのような形状となる。

 

 きた――!

 このタイミングを待ってたんだ!

 

「きゅきゅーんッ!!!」

 

 スピカはアース・ドラゴンの動きを見極め、回避に集中。

 

 次の瞬間――

 

「ブゥオオオオォォォッ!!!」

 

 アース・ドラゴンは上空へ飛び上がり――スピカ目掛け、ハンマー化した尻尾を全力で振り下ろした。

 

 アース・ドラゴン種がもっとも得意とする技であり、一撃必殺の威力を誇る〔ハンマー・テイル〕である。

 

「きゅぅーんッ!」

 

 直撃すれば致命傷は必至。

 

 だが攻撃を読んでいた彼女は素早く動き、回避に成功。

 

 けれど――

 

ズドオオオォォンッッッ!!!

 

「きゅう……っ!?」

 

 振り下ろされた尻尾が地面を叩き割り――その衝撃で飛び散った石つぶてが、スピカを襲った。

 

 ダメージを負った彼女は、力なく地面へと落ちる。

 

「――ッ! スピカ!」

 

 彼女の小さな身体は、一時ピクリとも動かなくなる。

 

 しかし動けないのは、アース・ドラゴンも一緒だった。

 

「ブオオォ……!」

 

 肥大化した尻尾が地面にめり込み、抜けなくなっているのだ。

 

 〔ハンマー・テイル〕は強力無比な技だが、その分隙が非常に大きい。

 

 当たらなければ終わりという諸刃の剣なのだ。

 

 ――俺がスピカに伝えていた作戦は、この技を誘発させて隙を突くこと。

 

 そして今、その隙が生まれた。

 

 この戦い――先に動いた方が勝つ。

 

「スピカ……! 立て、立つんだ!」

 

 立つんだ――。

 立ってくれ――。

 

 キミなら立ち上がれる――。

 

 だって――ロゼのために、あんなに頑張ってきたんだから!

 

「…………きゅーん……!」

 

 白色の鱗に覆われた小さな身体が、ゆっくりと起き上がる。

 

 負ける、もんか……!

 そんな強い想いを、足と翼に込めて。

 

 そして――彼女は翼をはためかせ、宙へと舞い上がった。

 

「きゅーんッ!!!」

 

 スピカの白い翼が、真っ赤に燃え上がる。

 

 不死鳥を思わせる灼熱の炎をまとい、彼女は天高くから滑空。

 

 彼女の新しい技――〔クリムゾン・ウイング〕だ。

 

 

「いっけえええええええッ!」

 

 

 この瞬間のために取っておいた、スピカの新必殺技(とっておき)

 

 その一撃は、アース・ドラゴンの脇腹へと直撃した。

 

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