モブなので恋愛よりドラゴン育成したいです ~どハマりしたゲームの世界に転生したので、赤ちゃん白竜を育ててみる。するとヒロインが「かわいい!」と近付いてきて……~   作:メソポ・たみあ

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第72話 ハンプール・エクスプレス

 

「いいお天気ですねぇ、じいさまや」

 

「そうだなぁ、ばあさまや」

 

「うふふふ」

 

「ほっほっほ」

 

 ――『オレンジ・ロック・キャニオン』に最も近い街、『ハンプール』。

 

 街の規模は決して大きくないが、街道に続く街として多くの商人たちが訪れ、賑わいを見せる場所。

 

 また荒野と青空という景観から観光地としても人気があり、そののどかな雰囲気から特にお年寄りに人気だ。

 

「やっぱりこの街はいいですねぇ。都会の喧騒から離れるには、『ハンプール』に来るのが一番。ねぇじいさまや」

 

「そうだなぁ、ばあさまや。こういう場所でゆっくり過ごして、しがらみに囚われず穏やかな時間を過ごしてこその老後だとも」

 

「うふふふ」

 

「ほっほっほ」

 

 お揃いの花柄(アロハ)シャツを着こみ、なんとも平和なひと時を漫喫する老夫婦。

 

 実にまったりとして幸せである。

 

 しかし――

 

「た……大変だ――――ッ!!!」

 

 のどかな時間が流れていた『ハンプール』に、そんな叫びが木霊する。

 

「あら……? どうしたんでしょうね、じいさまや」

 

「なぁに、気にすることはないよ、ばあさまや。きっとまたジャッカロープが人参泥棒をしでかして――」

 

 

「ド、ドラゴンだぁ――ッ! ドラゴン・タートルが、この街に向かって来てるぞぉ――ッ!!!」

 

 

  ▼

 

 

「いやあああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

「フシュワアアアァァァッ!」

 

 もの凄い速さで逃げるディルクやアルベナ一行。

 

 そして怒髪天となって彼らを追い駆けるドラゴン・タートル。

 

 まさに死の追い駆けっこだ。

 

 唯一ディルクたちにとって幸いなのは、ドラゴン・タートルの移動速度があまり速くないことだろう。

 

 とはいえ、油断すればあっという間に追い付かれるが。

 

 ディルクは顔を真っ青にしながら、

 

「貴様ァ、どういうことだ! 立場を教え込ませれば言うことを聞くんじゃなかったのか!?」

 

「こ、こんなはずじゃあ……! あっしだってこんなこと初めてでさぁ!」

 

「あ、あ、あんた早くなんとかしなさいよ! 調教師(テイマー)でしょうが!」

 

「そ、そんなこと言われてもぉ……!」

 

「チィッ、この役立たずが!」

 

 堪忍袋の緒が切れたディルクは、腰から剣を抜く。

 

 そして無情にもジャンの足を斬りつけた。

 

「いっ、だァ……!?」

 

「フシュワアァァッ!」

 

 足を斬られて動けなくなったジャンに、ドラゴン・タートルが襲い来る。

 

 そして――巨大な頭部で、思い切り彼をぶっ飛ばした。

 

「うわらばあああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

 ズガンッ!というとても鈍い音を奏で、姿が見えなくなるほど遥か彼方に飛んでいったジャンの身体。

 

 きっと重傷だろう。

 

「フシュウウゥゥ……」

 

 鞭を打った張本人を突き飛ばしたことで、一時冷静さを取り戻したドラゴン・タートル。

 

 巨体の進撃が、ようやく止まる。

 

「と……止まったか!?」

 

「ハァ……ハァ……。お、脅かすんじゃないわよこのクソドラゴン! あんた絶対タダじゃ済まさないから! パパに言いつけてべっ甲細工にしてやる!」

 

 ほっと一安心し、鬱憤を晴らすためにすかさず罵声を浴びせるアルベナ。

 

 ――が、それがいけなかった。

 

「…………ギロリ」

 

「「あ」」

 

「フシュワアアアァァァッ!」

 

「いやあああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

「なにをしてるんだアルベナあああぁぁぁッ!」

 

 再びドラゴン・タートルを怒らせたことにより、死の追い駆けっこ再開。

 

 しかも今度の狙いは明確にディルクとアルベナの二人になった。

 

「ク、クソォ……! こうなったら、やはり衛兵が守る『ハンプール』に逃げ込むしかないか……!」

 

 もはや万事休すとなったディルクは、街まで逃げ込むことを画策。

 

 街を守る兵士たちにこいつを押し付けてしまおう――。

 そういう魂胆だった。

 

 被害も出るだろうが、たかが小さな街一つ。

 

 フェルスト家とビュッセル商会の権力を使えば、言い訳はなんとでもなる。

 

 街の住人? 建物?

 

 そんなの、どうなろうと知ったことか……!

 

 そう思っていたディルクだったのだが――

 

 

「そこまでだ! 残念だったな!」

 

 

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