モブなので恋愛よりドラゴン育成したいです ~どハマりしたゲームの世界に転生したので、赤ちゃん白竜を育ててみる。するとヒロインが「かわいい!」と近付いてきて……~ 作:メソポ・たみあ
「きゅわ~っ! きゅわ~っ!」
「――――ギュワッ!」
「ギュワアッ――ギュワアアッ!」
「「「ギュワッ! ギュワッ! ギュワッ!!!」」」
――遥か遠方から聞こえてくる、甲高い鳴き声たち。
同時に徐々に近づいてくる、バサッバサッという無数の翼音。
「きゅーん!?」
「……! これは……!」
「間違いない……”ワイバーンの群れ”だ!」
俺たちが確信を得た頃には――既に『ハンプール』の上空を、大量のワイバーンが覆い尽くしていた。
その数は10や20などではない。
100、200、いやもっと――
とても数え切れないほどの、成長したワイバーンの大軍。
その様相はまさに圧巻。
もし今とは違うタイミングでこの光景に出くわしたならば、間違いなく死を覚悟しただろう。
そんな絶景をディルクや衛兵たちも目撃し、茫然と空を見上げる。
「な、なんだこれは……!?」
「げ、迎撃! 迎撃準備!」
「! 待ってくれ、攻撃しちゃダメだ!」
ワイバーンたちへ弓矢を射ろうとした衛兵を俺は押し留める。
彼らはまるで狐につままれたような表情だが、
「し、しかし……!」
「いいから見ててくれ!」
「きゅわっ! きゅわ~っ!」
「「「ギュワアアアァァァッ!!!」」」
フレンがなにやら合図を送ると――ワイバーンの大軍が一斉にドラゴン・タートルへと襲い掛かった。
「フシュウゥ!? フシュワアアァ!」
瞬く間に取り囲まれる巨体。
その様子は、さながら大型甲虫へ総攻撃を仕掛ける蟻の軍勢のようだ。
「こ、これは……一体なにが起こっているんですの!?」
「……フレンが”皆”を呼んだんだ」
「え……?」
「ワイバーンは本来群れで活動する生き物だ。仲間の危機に対して、群れが一丸となって応戦する習性がある。特に子供の危機には凄く敏感なんだ」
「で、でもフレンは”はぐれ卵”から……」
「関係ないよ。彼らにとって重要なのは、”まだちゃんと生きている”ことなんだから」
本来であれば、巣から落ちた卵やヒナが助かることはない。
仮に”はぐれ卵”のように無事な個体が残っていたとしても、誰かに拾われて育てられなければ確実に死んでしまう。
ワイバーンにとって、これは運も生命力も強い個体だけを生き残らせて群れを強くしようという、一種の生存本能。
だからこそ”生き残っていること”が重要なのだ。
生き残っているならば、ワイバーンはワイバーンを仲間と見做す。
フレンはこの習性を利用して、街周辺に生息する大人のワイバーンたちに助けを求めたのだ。
――ここまではわかる。
彼らの習性についても知っていた。
だけど――
「これは……ダンプリじゃ見たことなかったな……」
俺だってワイバーンは育てたことがある。
勿論、ダンプリの中で。
でもワイバーンが使える技の中に、味方の大軍を呼び寄せるなんてモノは存在しなかった。
当たり前だわな。
だってこんなのチートじゃないか!
「一体育てれば数百体の味方を呼び出して使えます」なんて、そんなの容易にゲームバランスが崩壊するに決まってる!
数の暴力でゴリ押し――からのクソゲー化待ったなし。
実装できるはずもない。
だから俺も知らなかったよ。
でもこの世界はダンプリと全く同じじゃないワケで……こんなこともできるってことらしい。
本当に、驚かされてばかりだな。
「フシュワアアアァァァッ!」
ワイバーンたちの猛攻撃を受けるドラゴン・タートルは、徐々に追い詰められていく。
一体一体の攻撃は大した威力がなくとも、恐ろしい早さでダメージが蓄積。
それにワイバーンの先天属性は〔風〕だ。
〔水〕属性であるドラゴン・タートルが彼らの攻撃を受け続けるのは、ガリガリと音を立てて体力を削られるようなもののはず。
その証拠に、彼は街に突っ込んで来た時より明らかに戦意が低下している。
あと一手あれば――
「きゅわぁっ!」
そう思った時、ドラゴン・タートルの頭上にフレンの姿が。
彼は両腕をパタパタと動かし――自分の周囲に風の流れを作る。
それはまるで竜巻のように激しいうねりを見せ――
「きゅわあああぁぁぁ――ッ!」
勢いよく滑空し、荒れ狂う竜巻となってドラゴン・タートルの額に突撃した。
――〔トルネード・ストライク〕。
ワイバーンが習得する、最初の〔風〕属性の技だ。
「フシュウゥ……!」
ほんの僅かに後ずさりするドラゴン・タートル。
大ダメージ――を負った様子はない。
いくらフレンが弱点属性の〔風〕の技を急所に叩き込んだとしても、両者のレベルは隔絶たる差がある。
せいぜい「微妙に痛い」くらいのダメージだろう。
だがどうやら、まだ赤ちゃんの格下ワイバーンに一撃をお見舞いされたのは――”メンタル”に響いたようだ。
「フシュゥ……」
ドラゴン・タートルは頭・両手足・尻尾を甲羅の中へと引き込む。
そして完全なる護身状態――所謂”引きこもりモード”となった。
……こうなれば、もう暴れ出す危険はないだろう。
こうして――ドラゴン・タートルは、どうにか制圧されたのだった。