「あ、おはよー♪」
「おはようございます。今日もバイトですか?」
「うん、休日は人手が無いから」
何時もの用に受付業務をしていると黒髪に一本入った赤メッシュが特徴的な少女、美竹蘭ちゃんが来店した。彼女はAfterglowと言う幼馴染で作られたバンドのギターとボーカルを担当してる子で素直じゃないけど優しい子なんだよ
「大変そうですね」
「ふふ、確かに大変だけど…色んな音が聞けるから私は好きだよ。はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
そっと蘭ちゃんの座るカウンターに珈琲を淹れたマグカップを置くと嬉しそうに口を付ける
「…うん、美味しい」
「ありがとー♪」
くすりと笑うと顔を背けられたけど照れ隠しなのを知って居ると可愛い仕草だよね
「…あの」
「なーに?」
「先輩の演奏、久しぶりに聞きたいなって」
「ん-…大丈夫だけど他の皆はまだ来ないの?」
「まだ時間はあるので大丈夫ですよ」
「そう?じゃあ、Afterglowの皆が集まるまでスタジオで弾こうかな♪」
確かに時間を確認すればAfterglowが予約していた時間はまだみたい、それなら先にチェックも兼ねてスタジオを使わせてもらおう
「でも、まずは飲んでからね?」
「はい、勿論です」
蘭ちゃんが珈琲を飲み終わるまで二人で最近の事や音楽について話した。月ノ森の授業の内容とか教えたら驚いてばかりだったけど…でも、確かに茶道や花道が一つの授業としてあるのは珍しいかも?
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「っと、これで大丈夫…」
スタジオで一通りチェックを終えてはキーボードの前に座る。鍵盤に指を滑らせて軽く慣らしマイクの位置を調節する。すぅ…っと息を吸い込み流れる様に指を動かして行く
「~♪~♫」
蘭ちゃんからのリクエストは特に無かったので切ない曲を演奏する事にした。詞を紡ぎギターを抜いたリズム隊の音を奏でる…私の音を表現し届ける為に鍵盤を弾き続ける。最後のフレーズをロングトーンで終えて息を吐けば拍手が聞こえた
「綺麗な歌声…あれ…ひまりちゃん、大丈夫?」
「うぅ…ぐすっ、練習しに来たのに泣いてる私がいるぅ…」
「よしよ~し、泣けちゃうぐらい良い歌だったね~、でも…泣き過ぎだと思うな~」
「感動して泣いてるのに!?」
「…相変わらず凄い」
「夕凪さんらしいって言うか…アタシ達にはちょっと難しい曲だな。でも、切なさの中に熱い想いがある歌だったな」
びくっ!と肩を跳ねさせて蘭ちゃんの方を見ればAfterglowのメンバーが全員揃っており、巴ちゃんは嬉しそうに笑い、何故かひまりちゃんが泣いておりそれをつぐちゃんが心配してモカちゃんがからかっていた。時間を確認すれば予約の時間が迫っており、慌てて席から立ち上がる。集中し過ぎて見てなかったよ…
「ご、ごめんねー!時間が…」
「気にしないで下さい!私達もそっと入って来ちゃったし…」
「そうですよ!アタシ達も良い刺激貰えましたし、蘭がお願いしたんですよね?」
「ちょっと、巴。あたしがごねたみたいに…」
「ふふ、久しぶりに聞きたいってお願いされたから頑張っちゃった♪」
「夕凪さんまで!?」
「うふふ、それじゃ…練習頑張ってねー♪」
最後にそう言って蘭ちゃんを撫でてスタジオから出る。後ろの方から笑い声と蘭ちゃんの怒る声が聞こえるけど、照れ隠しだから大丈夫♪
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「休憩するか、流石に詰め過ぎた…」
巴の声に皆が頷き休憩スペースに集まる、夕凪さんが用意してくれた珈琲と差し入れのミネラルウォーターで喉を潤していると
「ん-…」
「どうしたの?ひまりちゃん?」
唸り始めるひまりにつぐみが首を傾げてあたし達の視線が集まる…けど、あの表情はきっとどうでも良い事を考えてる顔だ
「夕凪さんって何処に通ってるんだろう?」
「さぁ?あたしも授業の内容しか聞いた事ないけど…何でそんな事気にしてるの?」
「えー?気にならない?こう、オーラ?雰囲気がお嬢様と言うかなんて言えばいいのかな?」
「ん~…お嬢様ーと言うよりはモカちゃんみたいなのんびり~?」
「後、とっても優しいよね」
ひまりの言葉に首を傾げ乍らモカが続き最後につぐみが付け加えた、一応のんびり屋の自覚はあるみたい。でも、モカみたいに大食いなのかな?それはそれで意外な一面で済みそうだけど
「まぁ、言いたい事は分かるけどなー。因みに月ノ森に通ってるらしいぞ?」
「そうなんだ…確かすっごい名門の学校だよね?」
「ほうほうー。トモちん物知り~」
「つ、月ノ森って…本当のお嬢様…」
「いや、日菜先輩のお姉さんなんだからそんなに変わらないでしょ」
答えは意外にも巴から出て来た。そう考えると姉妹揃ってバラバラの学校に進学してるって凄い
「あこが言ってたんだよ。最近バンドを始めたらしくてさ、此処に来る機会が多くなって仲良くなったらしいだ。後…あこと良くネットゲームで遊んでるな」
「えぇ!?ネットゲーム?意外…」
「あたし達といっこしか違わないから~…他にも色んな趣味とかありそうだよねー?あこちんとトモちんのツインドラムが実現しそうですなぁー」
「うん、そうだね♪」
「ああ、いつかはあことツインドラムで演奏したいなとは思ってるよ」
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「おはよう。夕凪、スタジオは空いてるかしら?」
「お疲れ様です。姉さん」
「お姉ーちゃん!やっほー♪」
「日菜ちゃん!?」
受付業務に励んでいると飛び込んで来る日菜ちゃんミサイルを慌てて抱き止める。『えへへ~。るんっ♪』と言い乍らじゃれ付いて来る日菜ちゃんを羨ましそうに見つめつつ自制してる紗夜ちゃん。その紗夜ちゃんの後ろにはリサちゃんや燐子ちゃんにあこちゃんも居る
「日菜、そろそろ離れないさい」
「えぇー。おねーちゃんだって抱き着きたいくせに~」
「…日菜?」
「あははー…はーい…」
間を開けて紗夜ちゃんがもう一度、日菜ちゃんを呼べば渋々と離れて行く
「ふぅ…スタジオは何時もの場所が空いてるよー♪日菜ちゃんは防音室?」
「分かったわ。…ねぇ、夕凪…最近貴女の歌を聞いていないわ」
「え?ん-…確かに友希那ちゃんの前で歌ったのはいつだろう?」
「思い出せないぐらい前と言う事よ」
そう言って顔をずいっと近付けて来る友希那ちゃんに顔を少し引いて
「そ、そう…かも?」
「そうよ。歌、歌わないのかしら?」
私が引いた分だけ更に距離を詰めて来る友希那ちゃん。綺麗な顔が私の視界いっぱいに広がる
「え、えーっと…聞きたいならいつでも…?」
「なら、今からが良いわ」
そう言うと何故か更に近付いて来る。距離的には吐息が掛かる程に…
「湊さん?どさくさに紛れて何してるのですか?」
「友希那ー…皆の前でそれはダメだよ…」
「ぶー!はーなーれーてぇーー!」
「りんりん~…見えないよー!」
「あこちゃんは…だめ…」
あこちゃんの目をしっかりと手で塞ぎつつ頬を染める燐子ちゃんとリサ、紗夜ちゃん、日菜ちゃんに掴まれ後ろに引っ張られる友希那ちゃんが『ぁ…』て寂しそうに離れて行くのを眺めては私もほっと一息
「うん、それじゃ…紗夜ちゃん、日菜ちゃんお願いしてもいい?」
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
友希那ちゃんのお願いを聞いて折角だからと蘭ちゃん達も呼び意外と大所帯になったスタジオでキーボードと音響等の調整をする。紗夜ちゃん達もギターのチューニングを済ませマイクの感度も問題無い…よし!
「なんだか、わくわくするね?」
「えぇ…そうね。私も楽しみだわ」
「ねぇねぇ!おねーちゃん!りんりん!…ナギ姉達楽しそうだね!」
「うん…そうだね…とっても楽しそう」
「そうだなぁ…よし。あこ!アタシ達も後でドラムを叩くぞ!」
「うんっ!」
友希那ちゃん達が微笑ましそうに眺め
「蘭~?どうしたのー?」
「夕凪さんがあんなに楽しそうにしてるの初めて見たかもって、思っただけ」
「でも、蘭ちゃんが歌ってるの見てる時もあんな感じだよ?」
「うんうんっ、蘭は何時も気が付いていないけど…」
「ちょ、それ初耳だよ!?」
Afterglowの皆はわいわいと会話をしている
「そろそろはじめるよー♪『sister's noise』」
マイクを使ってそう言えば一瞬で静寂がスタジオを包む…紗夜ちゃんと日菜ちゃんにアイコンタクトを送ると同時に始まるツインギターとキーボードの速いテンポの伴奏、そして出だしのサビを私が紡ぎ、日菜ちゃんのコーラスが加わる
『誰よりも近くにいた その声は聴こえなくて…』
(sister's noise… I find it out…)
『刻み続けていた時の中で やっと君に逢えたからっ!』
〈sister's noise 捜し続ける…彷徨う心の場所を!〉
(sorrow of your heart… I shoot it down…)
〈『重ね合った この想いは誰にも壊せないから…!!』〉
サビの途中で紗夜ちゃんに引き継ぎ、最後の詞で声を重ねる。丁寧な紗夜ちゃんの演奏と私と同じでギターの音を増やして演奏する日菜ちゃん、その二人を繋ぎ止め輝かせる様に鍵盤に指を滑らせる。そのままAメロを私が担当しBメロを紗夜ちゃんにお願いする
『街は密やかに 君を隠してた 辿り着いた場所 蘇るあの記憶』
『繰り返されてた 真実は遠く 君のその痛み 気づけないまま…』
〈あの日託したその夢が 私を切り裂いても〉
〈何よりも大切な 希望だけ信じ貫いてっ!〉
サビへと繋がる詞でアレンジを加えて盛り上げて行く…視線を動かせば楽しそうにギターを弾く二人と驚く皆の表情が少しだけ見えた
『自分らしく生きること 何よりも伝えたくて…!』
(sister's noise… I find it out…)
『生まれ続ける哀しみの痛み その意味を刻むならっ!』
〈sister's voice いま届けるよ 涙さえ能力にしてっ! 〉
(sorrow of your heart… I shoot it down…)
〈繋がり合う 強さだけが全てを打ち抜いていくっ!〉
サビが再び過ぎた後に日菜ちゃんが丁寧な演奏に切り替わり紗夜ちゃんが激しくアレンジを加えた演奏が始まる。ツインギターだけの間奏が終ると二人のギターが止まる…同時に私のキーボードとボーカル、日菜ちゃんのコーラスだけのパートになる
『自分らしく生きること…何よりも伝えたくてっ…! 』
(sister's noise… I find it out…)
『生まれ続ける 哀しみの痛み… 』
〈『その意味を刻むなら…!!』〉
最後の詩で再び声を重ねると同時に紗夜ちゃんと日菜ちゃんが演奏に加わりラストのサビに突入する
『誰よりも近くにいた その声は聴こえなくて!』
(sister's noise… I find it out…)
『刻み続けていた時の中で やっと君に逢えたからっ!』
〈sister's noise 捜し続ける 彷徨う心の場所をっ! 〉
(sorrow of your heart… I shoot it down…)
〈『感じ合った 同じ笑顔 必ず守ってみせる…もう!誰にも壊せないから…!!』〉
三人の音をまとめ一体感をより強め最後の詞を紗夜ちゃんと二人でロングトーンで終わらせ、日菜ちゃんがギターで余韻を残しつつ音を止める
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
彼女の歌を聞いたのは偶然だった、キーボードの腕前も文句の付け所が無い位に高いのもあり直ぐにスカウトし断られたのは今でもよく覚えている。そこから何度も誘うもその都度断られ続けた。本当は何か理由があってセッションが出来ないのかと思ったけど…
「ふふ…ちゃんとセッション出来るじゃない」
「ナギ姉も紗夜さんもひなちんもかっこいい…!」
「アタシ達も負けて居られないね…♪」
「はい…!」
初めて聞いた夕凪のバンドとしての歌声…私にはまだ出せない表現力と引き込まれる様な魅力。私はまだ上に行ける…!
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
隣で嬉しそうに頬を緩める友希那さんをチラ見し乍らあたしも感動していた
「…凄い」
「うん…さっきのとは大違い」
「あぁ…よし!練習、再開しようぜ!っと、その前に少しだけあこと遊ばせてくれ」
「おぉ~…トモちんに火が付いた。これはとことん付き合わないとだねぇー?」
「ぅぅ…あたしもがんばりゅ!!」
ひまりだけが何故かまた、泣いていたけど…あたし達の歌でもこのぐらい感動を伝えられる様に頑張ろう…!
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
椅子から立ち上がると3人でハイタッチをして皆の場所に戻る。ひまりちゃんが泣いてる事に驚いていると蘭ちゃんが首を左右に振るのが見えた、気にしないでって事みたい。頷いている間に友希那ちゃんが近付いて来る
「流石ね。私もやっているけど…まだ、貴女には勝てないわ」
「ふふ、大丈夫。友希那ちゃんも出来る様になるよー♪」
歌に感情を乗せ、誰かに届け…感動させる。ボーカルとしては必要な事…だから、きっと出来るよ
「あ、そうだ…友希那ちゃん。さっきの曲なんだけど…友希那ちゃんに歌って欲しいな」
「…?それは貴女の曲でしょ?」
「うん、だから…私の我が儘。…ダメ、かな?」
そう言うと友希那ちゃんは首を横に振り私を見つめる
「アレンジは加えさせて貰うわ。それでも良いなら…」
「うんっ♪」
「ふふ…大切にするわ、夕凪」
大切そうに私から譜面を受け取り頬を緩める友希那ちゃんに此方も頬を緩めて居ると背後から抱き締められて
「お姉ーちゃん!またやろーよ♪るんっ♪ってしたけど今度はもっと人が居る場所で!あ…!文化祭とか!」
「日菜…姉さんは別の学校なのだから文化祭に来れても出演者には…」
「そこは…色々と手回ししてさー♪絶対!るるるぅんっ♪ってするよー!」
わいわいと文化祭の話になり、皆で盛り上がった。そう言えば…私のクラス、文芸祭は何をするんだろう…?
友希那=その日の内にアレンジし暗記した
紗夜、日菜=その日の夜姉の部屋に押し掛けた
燐子=音源欲しい
夕凪=出し物が気になってる
Afterglow=にゃーんちゃんさんと衝突回避
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