ドドドドッッッッ……!
激しい足音が迫ってくる――それが目覚まし代わりになっている朝。
目を開けてすぐ、スマホで時間を確認するのもすっかり日課。ベッドから降りて、枕を背後に移動させたら、再び仰向けに倒れ込み、背中と頭に当たる柔らかさを確認する。そうして起き上がり、ドアに目を向けた瞬間――足音はもう、すぐそこまで来ていた。
「お姉ーーちゃーん! おはよーーーっ!!」
バンッ!!!
ドアが蹴破られる勢いで開き、そのまま翡翠色のミサイルが飛び込んでくる。私は反射的に受け止めると、勢いを吸収するようにそのままベッドに倒れ込み、抱きついてきたその子――日菜ちゃんの頭を撫でながら、ちょっと苦笑した。
「おはよう、日菜ちゃん。……でも、3分だけね?」
「ん~、うんっ!」
すんすん、くんくん、るんっ♪ るんっ♪
私の腰にしっかりしがみついたまま、胸元に顔を埋めて匂いを嗅ぐ日菜ちゃん。ほんのり変な気分になるけれど、これもいつもの、私たちの朝の風景。
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
私の名前は、氷川 夕凪(ひかわ ゆうな)。
氷川 紗夜と日菜――あの二人の姉で、学年は一緒。でも、身長は私が一番低くて、よく妹と間違われる。けれど、胸は……反比例気味に育ってて。視線がちょっと痛い日もあるけど、きっと気のせい。……多分。
私たちは三つ子で、小学校まではずっと一緒。でも、中学からは別々の学校。
紗夜ちゃんは花咲川女子、日菜ちゃんは羽丘女子、そして私は――月ノ森女子学園に通ってる。
最初は寂しかったけど、今では一人の時間も楽しめるようになった。……時々ふと、寂しくなるけど。可愛い後輩ちゃんもいるし、大丈夫だよ♪
あ、そうそう。こないだ楽器屋さんで長居しちゃって帰りが遅くなった時があって。家に着いたら、玄関で紗夜ちゃんと日菜ちゃんが揃って靴を履いてて、紗夜ちゃんはスマホ片手に何か焦ってて。
「どこか行くの?」って聞いたら――
――バシンッ!
「姉さんは急に居なくなる癖を直して」
って、紗夜ちゃんにチョップされて、日菜ちゃんには「いなくなっちゃうと思った……」って泣かれちゃって、そのまま痕が残るくらいの全力ハグ。
ふらふらしちゃう癖は……うん、できるだけ直すから。だからその手をわきわきしながら近づけるのはやめてー!?あっ、ちょ、ちょっと……!
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「む~~~……」
「日菜ちゃん?」
「お姉ちゃん、今別のこと考えてた」
回想に耽って撫でる手が止まっていたせいで、日菜ちゃんがじと目で睨んでくる。不満げな顔がまた可愛いけど……冷や汗ものだ。
「これは、延長だね! にっこにこ~」
「え、でも……時間が……」
「むぅー……(ぷくぅ)」
頬を膨らませたまま、がっちりとしがみついた日菜ちゃんを振りほどくのはちょっと心が痛い。どうしようかと考えていると――
「いい加減にしなさい」
「アイタッ!」
「さ、紗夜ちゃん!」
背後から現れたもう一人の翡翠色――氷川 紗夜。
きりっとした顔に、ちょっとだけ呆れたような表情を浮かべながら私を見て、
「姉さん、あまり日菜を甘やかさないで。……そして、あなたも姉さんから離れなさい。まったく、朝から騒々しいというか……羨……いえ、騒々しいわ」
「結構強めに叩いたよ、痛いよぉ……おねーちゃん……」
「刺激が弱いと、あなた止まらないでしょ」
後頭部を押さえる日菜ちゃんと、それに肩をすくめる紗夜ちゃん。ぽろっと漏れた本音に、思わずくすっと笑ったら、睨まれちゃった。
私は日菜ちゃんからそっと離れ、二人の手をぎゅっと握る。
「二人とも、おはよう。朝ごはん、作っちゃうね」
そう言って微笑みながら部屋を出ると――
そっぽを向きながらもついてくる紗夜ちゃんと、目をキラキラさせる日菜ちゃん。
今日もにぎやかに、元気にいこう!