七夕祭りが終わり残す大きなイベントは夏祭りのみ、そうなると夏休みの終わりが見え始める。昨日収録した動画と音源の編集を自室でしていた。カーテンも閉め切って強過ぎる日差しをシャットアウトしクーラーの効いた部屋で一息入れ様と思いアイスコーヒーを口に含み飲み込もうとした瞬間…
バンッ!!
「お姉ーちゃん!!」
「っっ?!ごほっ!!」
音も無く突然開け放たれるドア!同時に大声を出して飛び込んで来る日菜ちゃんミサイル!…それを見て盛大に咽た私はアイスコーヒーを噴き出してしまった。…日菜ちゃんに向かって
「…るん♪」
「きゃああ!?タオル!タオル!?」
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「ごめんね。思いっきり噴き掛けちゃって…」
「気にして無いから大丈夫!寧ろご褒美!」
「…??」
「あ、PCとかには掛かってないのー?」
あの後大慌てで日菜ちゃんをシャワーに入れ、床を拭いた。PC本体を含めて周辺機器にも掛かって無かったので一安心…ノックはしてね!絶対!
「それで、どんな用事だったの?」
「あ!そうだった!お姉ーちゃん!ライブ行こ!」
「うん、いいよー?何のライブ?」
ライブに行くこと自体は別に問題無いけど何のライブなのか気になって聞いてみるときょとん?とした後に首を傾げる日菜ちゃん。…?
「あたし達のライブだよ!今日の夜!」
「えっ!?そうなの?」
「うん!だから今から行こ!」
そんなに呑気にしていいのかな?と聞こうと思い時計を見れば11時12分を指していた。まだ間に合うよね?
「準備とかリハーサルとか大丈夫なの?あ、私は始まるまで何処かで時間を潰すから気にしなくていいからね?」
「ん-?お姉ーちゃんも出るんだよ?ライブ」
「…???」
ふふん♪と胸を張る日菜ちゃんを瞬きを数回して見つめる。え?私も出る…?ライブ?
「えーっと…それは色んな人に迷惑が掛かっちゃうし日菜ちゃんが一人で決めて良い事じゃ…」
「はい!これ!」
そう言って私にスマートフォンを差し出して来る日菜ちゃん、画面を見れば誰かと通話中になってる
「もしもし…?」
「こんにちは、夕凪さん」
「プロデューサーさん…?」
電話の相手はパスパレのプロデューサーさんだった、なんだか嫌な予感が…
「申し訳ございません。私からもお願い出来ないでしょうか?実は今回のパスパレのライブはゲストが途中で登場する予定になって居たのですが、急遽参加出来ないと言う連絡が入り代わりの人を探しているのですが見つからない状態です。…そこで、パスパレのコーチである夕凪さんにゲスト役としてライブをお願いしたいのです」
「え、えぇ…でも、一般人の私が出ても盛り上がらない様な気がしますが…」
「普通ならそうなのですが…夕凪さん、最近エゴサをした事はありますか?」
エゴサ、自身や自社を検索エンジンで調べ他人からの評価や意見を調べる事。彩ちゃんが趣味にしている事で私は怖くてあまりしてない事だったりする
「えっと…あまり、してないです」
「…実は夕凪さんの弾いてみたの動画やRoseliaでの活動がガールズバンド界で有名になって来ています。Roselia自体が実力派バンドとして人気があり注目されていると言うのもありますがそれを差し控えても夕凪さんが建てたTritehederaに所属しておりその責任者の歌も演奏技術も良いと言った風に業界に広まっています。以前に『来たら嬉しいゲスト』と言うアンケート調査をした所、少なくない量の票を夕凪さんは獲得しているのでガールズバンドファンにも貴女は認知されつつあります。ですので今回のライブに参加しても盛り上がりが下がる事は無いです。それと日菜ちゃん以外のメンバーも参加してくれると喜ぶと思います」
プロデューサーさんの話しを聞いてはちらりと日菜ちゃんを見る。私をキラキラした目で見つめて来るので思わず苦笑いしながら小さく頷い
「…分かりました。参加します」
「ありがとうございます。それではお待ちしてます」
日菜ちゃんにスマートフォンを返すと同時に嬉しそうに私に飛び付いて来たので慌ててキャッチする。じゅ、準備しないとだから離れてー!?
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「ほら、来ると言ったでしょ?」
「ほ、本当に来た!」
「ユウナさん!こっちです!」
日菜ちゃんに連れられてライブ会場に着くとパスパレの皆に出迎えられた。あれ?麻弥ちゃんは…あ、設備の方で何かやってる
「あたしに任せてって言ったじゃん♪」
「あはは…割と強引だったけど。ちゃんと自分の意志で来たよ」
「それを聞けて安心したわ」
千聖ちゃんに頷いて見せると安心した様子で笑ってくれた。楽しいライブにしようねー♪
「ユウナさんと一緒にライブが出来るなんて感激です!」
「そうだね!それじゃ、リハーサルを再開しよ!あ、夕凪ちゃんは裏の方で準備してね!」
「はーい♪日菜ちゃんも行こっ」
「うん♪」
彩ちゃんに言われた通り私は舞台裏に向かう、一緒に歩いてた日菜ちゃんは途中から走り出し私より先に更衣室に…流石に急いでるよね。そう思って私も追い掛ける様に更衣室に入ると着替えを終えた日菜ちゃんが見慣れた衣装を持っていた。…着替えるの早い!?
「じゃーん!お姉ーちゃんの衣装はこれ!」
「…ゑ?ま、待って日菜ちゃん。これって…」
渡された衣装を手に取ると以前透子ちゃんに貰った猫衣装。しっかり猫耳カチューシャ+知らない翼も付いてる
「日菜ちゃん?流石にこれはパスパレのイメージに合わないと言うか…」
「大丈夫だよ!お姉ーちゃんはパスパレと言うよりはRoseliaのイメージがあるから!」
絶対これを着た私を自慢したいだけだよね?…ほ、本当に着るの?文化祭なら何も考えずに着るけどパスパレのライブで…?と、言うかこの衣装からRoseliaがイメージされるの!?
「…い、一回聞いてみようか?多分駄目だと思うなー」
「ん-…聞いて来る!」
そう言って飛び出して行く日菜ちゃんの背を見送りNGが出る事を願いつつ、ロッカーに荷物を置いて待って居ると満面の笑みで日菜ちゃんが帰って来た。プロヂューサーさんはOKを出したみたい。は、恥ずかしいなぁ…
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「お、お待たせー…」
「わぁ…夕凪ちゃんすっごく可愛い!」
衣装に着替えてリハーサル中の彩ちゃん達と合流すると皆の視線が集まる。って、こら!日菜ちゃんも千聖ちゃんも写真を撮らないの!
「こほん。最初の1曲目の演奏が終わった後に夕凪さんには中央から登場して貰います。その後は夕凪さんを含め演奏を…此方が演奏する曲になります。短い時間で確認させてしまう様でもう分けありません…」
「ありがとうございます。…うん、全部弾けるし歌詞も覚えてるから大丈夫です」
プロデューサーさんから受け取った演奏楽曲一覧を見て小さく頷いて見せる
「それと…夕凪さんから何かやりたい事はございますか?」
「私のやりたい事…?」
「はい、ゲストを目立たせるのも必要な事ですので。…例えばボーカルに集中し彩ちゃんとデュエットで歌を歌うとか…どうでしょうか?」
「えっと…彩ちゃんはどう?」
「私は夕凪ちゃんと歌ってみたいな!…その、折角来てくれたからさ♪えへへ…」
照れながら笑う彩ちゃんに私も笑いながら頷いて『最近渡した曲…出来るかな?』と聞くと皆から『勿論!』と返って来た、ふふ♪楽しみ…♪
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
盛り上がり始めるライブ会場、多くの人がパスパレのライブを楽しみにしている様子をこっそりと見る。深く深呼吸して落ち着こうとするとちょんちょんっと肩を触られ振り返れば千聖ちゃんが立っていた
「夕凪…?大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。…けど、やっぱり初めてだから緊張するかも」
ライブハウス以上に人が来るライブを私は経験した事が無い。ましてや演奏する側になるなんて考えた事も無かったから…二人を苦しめるかもしれないと心の何処かでそう考えている私が居るからずっとライブは避けて来ていた。そう思っていると優しく右手を握られびくりと身体を跳ねさせてしまう
「…きっと楽しいわ、緊張何て吹き飛ぶぐらい♪だから、そんな顔をしちゃダメよ?」
「千聖ちゃん…うん♪そうだね!」
私の隣に立って笑う千聖ちゃんに頬を緩め、パスパレの皆と合流する。
「それでは皆さん。準備の方をお願いします。…気張って行きましょう」
「「「「「はい!」」」」」
「は、はい!」
来場開始から30分後、ライブ開始の時間が迫って来た。プロデューサーさんの声にみんなが声を上げ私も慌てて返事をする。ぅ…変に上ずった声が…そっか、Roseliaの皆も初めてのライブの時はこんな気持ちだったんだね
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「一曲目ありがとうございました!続いて二曲目!の前にーーーー!」
元気な彩ちゃんの声を聞き乍ら再び深呼吸をしては中央出口の前に立つ。そろそろ、だよね?視線を泳がせるとプロデューサーさんと目が合う、小さく親指を立てるプロデューサーさんに頷くと
「今回のスペシャルゲスト!!私の友達で日菜ちゃんのお姉さん!!氷川夕凪ちゃんです!!」
地響きする程の歓声に包まれる会場、開かれたドアから勢い良く飛び出すと満員の会場にパスパレメンバーの色に輝く大量のペンライトが視界を埋め尽くした
「やっほー♪」
「やっほー♪夕凪ちゃん!」
見よう見まねで日菜ちゃんがやっていたみたいに手を振りながらそう言うと会場からやまびこの様に返って来る、隣に居る彩ちゃんも一緒に言ってくれて安心したよ…。セッティングされた私のキーボードの前に立って再び手を振ると再び歓声が起きる
「それじゃ!二曲目いっくよー!!『パスパレボリューションず☆』!!」
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「次は最後の曲!新しい曲だからしっかり聞いてねー!夕凪ちゃん!」
「うん!」
トークタイムを挟んで8曲目の演奏を終えてラストの9曲目。彩ちゃんの隣にマイクを持って並ぶと心地良いい歓声が響く
「「W:Wonder tale!」」
…
…
…
「みんなー!最後まで聞いてくれてありがとー!!」
皆で大きく手を振りながら大歓声とアンコールの声を受けながら舞台袖に戻るとプロデューサーさんが人数分のミネラルウォーターを両手に抱えて立っていた
「皆さん、お疲れ様です」
全力を出し切ったライブにぐったりし乍らパイプ椅子に腰を掛ける、興奮で感じなかっただけでかなり疲れていたみたい
「お姉ーちゃん、また上手くなってる♪」
「本当ですよ。彩さんとサビの部分を歌ってた時震えちゃいました!」
「ふふ、ありがと…♪」
日菜ちゃんと麻弥ちゃんが嬉しそうに笑い、私も照れながら頬を緩めているとプロデューサーさんが戻って来た
「アンコールを一曲だけお願いします。皆さん」
「はい!!」
彩ちゃんの元気な声に皆が頷き再び舞台へと舞い戻る。舞台の明かりはまだ消えている、その間にアンコール用のポジションに着き、皆の様子を確認する。…うん、始めるよ!
『君へ』
アンコールの曲は私がメインボーカルで彩ちゃんはハーモニーに専念する事になって居る。と言うのもこの歌はパスパレの歌では無く私が私に作った歌だから彩ちゃんだと喉を傷めてしまうから…マイクに声が入ると同時に舞台は薄く明るくなって行く
『この世界の小さな場所で…君の姿を見つけたあの日…』
『風を受けて笑っていたね …私の心が染まっていった』
せつないバラード調の歌い出し、今までにない静かなメロディーが会場を満たして行く
「『どれだけ近くにいたって…想いが伝わるわけじゃないね』」
『どれだけ離れても』
「『この思い変わらないよ…』」
Bメロの最後をハーモニーで終えると同時に息を吸い込み、想いを込めて声をマイクにぶつける
『運命とか永遠とか 壊してでも側にいる』
『明日よりも今、大好きだよ…!』
大切な人に伝える様にどんな事があっても側にいたいと伝える様に
『終わりなんて来ない だからもっと…美しさも素敵さもなくていいから!』
『狂おしいほどに愛させて…!』
「『あの日の言葉忘れない 忘れられない君へ…!』」
「『届いて欲しい…』」
サビの最後を彩ちゃんと声を重ね手を差し出す…歌はまだ続く
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
「うわぁぁん!夕凪ちゃーん!!」
「え!?えぇ!?ど、どうしたの!?」
アンコールを終えて舞台袖に戻ると彩ちゃんが泣き乍ら飛び付いて来る。驚いて抱き止めつつ皆を見ると何処か涙ぐんでいた
「え、えっと…何か失敗しちゃった…?」
「いいえ、失敗はしてないわ。ただ、分かって居たけど貴女の歌唱力で歌われると詞に感化されやすくなるって所かしら」
今思い返せば会場も熱が冷めるというよりはしんみりしていたと言うか…せ、選曲間違えた…?
「大丈夫です、ライブは大成功ですよ。SNSでは会場以上に盛り上がっているみたいですから」
プロデューサーさんの言葉にほっと一安心。…私も後でSNSとか見て見ようかな?
彩=アンコールの途中で声が震えてた
紗夜=リサから連絡が入りライブに気が付く
友希那=次はRoseliaのライブに出す決意
千聖=何となく察してる
夕凪=SNSで日菜に抱き着かれてる所をめちゃめちゃ拡散された
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