パソコンの電源を入れ、ヘッドホンを被る。
すぐにNFOのログイン画面を立ち上げた。
別の画面では、OSの起動と同時に音楽アプリが立ち上がっている。作曲済みの曲をランダム再生に設定し、再生ボタンをクリック。
流れ始めた音楽をBGMに、IDとパスワードを入力する。
キャラクターを選択し、ログインを完了した。
全身を覆う黒いクロークに、尖った魔術師の帽子。目元以外を黒布で隠したキャラクターが、私のアバターだ。
その自キャラでログインし、革靴の音を響かせながら待合場所へ向かう。すると、すでに二人の姿があった。
RinRinさんと、そのフレンドの聖堕天使あこさんだ。
『お待たせしました。Nagiです』
『あ!りんりん!ナギさん来たよー!』
『こんばんは。私達も今来た所なので気にしないで(´▽`)』
そう言って笑うRinRinさんに感謝のエモートを送りながら、今回のクエストについて聞いてみる。
舞台は、かつて発展を続けていた王国。
しかし王に忠義を誓っていた者の離反をきっかけに、様々な災厄に見舞われていったらしい。
結果として王国は滅び、国王の強い無念を利用した“何者か”がアンデッドの軍勢を率いて他国へ侵攻しようとしている。
それを阻止するのが今回のクエストだ。
出現するのはアンデッド系や悪魔系モンスター。それに加えて、騎士系の敵も出てくるらしい。
実はマルチプレイは今回が初めてだ。
なので二人の職業を聞いてみることにした。
RinRinさんは大賢者。ヒーラー担当。
あこさんは魔術師。私と同じDPSだけど、広範囲攻撃型のビルドらしい。
……んー。
これ、タンクが必要かな。
何回かやってみて無理そうなら、私がタンクキャラを出そう。
『ナギさんはルーンナイト?』
『はい。ビルドの構成はバッファーじゃなくてDPSなので……タンクが必要そうに感じたら私が出しますね?』
『た、タンクも出来るの!?』
『その時はお願いします(´・ω・`)高難易度だけど大丈夫ですか?』
『ルーンナイトよりは弱いですけど、十分できますよ』
RinRinさんが少し心配そうな声を出すので、「大丈夫ですよ」と返す。
装備的にも問題ないはずだし……えっと、バフポーションも用意しておこう。
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
導入クエストをクリアすると、新しいMAPへと転送された。
視界に広がったのは、崩壊し廃墟と化した中世の街並みだった。
見渡す限り瓦礫の山。あちこちで炎が燃え上がり、街全体が火の海のようになっている。
その荒廃したMAPの中心に、私達三人は立っていた。
『作り込みが凄いですね(;´・ω・)』
『うん……なんか怖くなって来ちゃった』
『火に触れても大丈夫なのでしょうか……』
それぞれ感想を言い合いながら、中心に立っているNPCに話しかける。
すると、ウェーブ制の大型クエストが表示された。
どうやらモンスターが波状攻撃を仕掛けてくるタイプのクエストらしい。
出現した敵をすべて倒すと次のウェーブへ進み、段階的に敵が強くなっていく仕組みのようだ。
『それでは始めますね!』
『うん!あこのパワーでドーン!バーン!ってやっちゃう!』
『あこさんは私に構わず魔法を撃っちゃって下さい。RinRinさんも、あこさんの回復優先で』
『えぇ!?当たっちゃうよ!?』
NFOには FF(フレンドリーファイア) があり、一部の攻撃は味方にも当たってしまう仕様だ。
けれど敵の群れに突撃する以上、それを気にしていたらあこさんが魔法を撃てなくなってしまう。
それにルーンナイトはDPSの中でも魔法耐性が高い職業だ。
直撃さえしなければ、多少の巻き込みなら問題ないはず……!
『全部避けますから大丈夫ですよ』
『……分かりました。失敗した時はその時で考えましょう!』
『ありがとう、RinRinさん。それじゃ……いつでも大丈夫だよ』
『はい!では、開始します!』
クエスト開始のコールと同時に、正面から複数のモンスターが出現した。
まずは小手調べだ。
私のビルドは、武器が使い捨てになることが多い。
そのため店売りの中から魔法攻撃力の高い武器を、常に十本ほどストックしている。
クロークの下からアタックナイフを取り出す。
ウォークライを発動し、敵のヘイトを集めると、そのまま迎え撃つように距離を詰めた。
全身に赤い光を纏い、火属性の突撃魔法を発動する。
一直線に走るAOE攻撃。
ルーンナイトを正攻法で育てるなら、普通は取得する余裕のないスキルだ。
けれど私のビルドは違う。
突撃魔法と 魔法剣 を多用する、完全な攻撃特化型だ。
その代わり、DPSでありながらヒーラー的な役割を担う構成は捨てているのだけど……。
『え!?魔法剣!?……あ!だからDPS寄りなんですね(≧▽≦)』
『すごーい! 一本道が出来たよ!』
『どうやら、そこまで固くないみたいです。この調子でどんどん狩っていきましょうか』
『『はい!』』
♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪
敵の集団に突撃しては走り抜け、再び突撃する。
気が付けば、すでに八本目のアタックナイフが砕けていた。
けれど、目当てのアイテムがなかなかドロップしない。
クエストも最終段階に突入している。
……落ちる確率が、かなり低いのかな?
『中々落ちませんね(;´∀`)』
『敵も強くなって来てるよー……何回も当てないと倒せない!』
『んー……でも、ドロップ報告はありますし……( ;∀;)』
『まだクリアしていないので、終わってから調べてみましょう。……あ、きっとあれから落ちるんじゃないですか?』
RinRinさんを励ましていると、周囲のモブが一斉に消えた。
次の瞬間、中央に一体のボスが出現する。
長剣を持った人型。
だが全身に黒い靄が掛かっていて、細かい姿まではよく分からない。
それを見て、二人も気合を入れたようにバフを掛け直す。
私も耐久値の尽きたナイフを捨て、メイン武器の太刀を装備した。
『先に仕掛けます。追加のモブが出てこないかだけ気を付けて下さい!』
『はい!』
『Nagiさんも気を付けて! レベル表示が「?」になってるので、最低でも十レベルは上のボスです!』
RinRinさんの忠告を聞きながら、魔法剣を発動する。
そのまま突撃。
太刀を下段から振り抜こうとした瞬間――嫌な予感が走った。
すぐにエモートを挟み、攻撃行動をキャンセルする。
同時に、足元にAOEが展開された。
慌ててサイドステップで飛び退く。
『Nagiさん! 大丈夫ですか!?』
『大丈夫です。攻撃スキルに反応するのでしょうか……っ!』
完全にヘイトを溜めたのか、ボスはこちらに向かって距離を詰めてくる。
私は再び魔法剣を発動した。……やはり、AOEが展開される。
ギリギリのラインに身体を滑り込ませ、無理矢理光属性の一撃を叩き込む。
次の瞬間、衝撃で互いに弾き飛ばされるように距離が開いた。
同時に、RinRinさんから回復魔法が飛んでくる。
遠くでは、あこさんの魔法が次々とボスに命中していた。
けれどHPが多いのか、耐性が高いのか……ダメージがあまり通っていない。
『ぜ、全然効いてないよ……!?』
『あ、あこちゃん! 下がって!』
攻撃を当て続けたせいか、ヘイトがあこさんへ移る。ボスが突撃した瞬間、横からスタン属性の突撃を叩き込んだ。
ボスが硬直する。
三秒のスタン。その隙に、RinRinさんがあこさんを自分の隣に引き寄せるスキルを使っているのを確認する。私はスキルを使わない通常攻撃でヘイトを稼ぎ続ける。
『あこさん! ヘイトを抑えるスキルを併用して攻撃してみて下さい!』
『う、うん!ありがとう、りんりん……!』
『ほっ……中々厄介なボスですね』
どうにも攻撃が通らない。ギミックがあるようにも見えないし……。
んー……試してみよっと。
ジョブチェンジのUIを開き、聖騎士へ切り替える。
次の瞬間、全身が棘だらけの無骨な鎧に変わった。
大盾と大槍を構え、ボスへ挑発を叩き込む。
同時にトグルスキルを全て発動。
バフポーションも使用する。
聖騎士は高耐久・高耐性。
さらに、受けたダメージの一部を倍率付きで相手に返す カウンター型タンク が最大の強みだ。
『わわ!?ナギさんがとげとげに!』
『聖騎士……なるほど……!』
そんな会話をしながらも、二人からバフが飛んでくる。
感謝しつつ、振り下ろされる長剣を正面から盾で受け止めた。
貫通ダメージでHPが削られる。
けれど――
うん、カウンターダメージがしっかり入っている!
『このままカウンターダメージで削っていきます!』
『はい!(≧▽≦)』
『ふっふっふ……!堕天使の祝福を与えん!! ナギナギ頑張って!』
槍を仕舞い、両手に盾を構える。
二人からバフを受け取りながら、ボスの攻撃を受け止め、受け流す。
焦らず、着実にHPを削りながら様子を伺った。
残りゲージが 30% に到達した瞬間――
行動パターンが変わった。
黒い靄が晴れ、ボスの正体が姿を現す。
それは 黒い騎士 だった。
次の瞬間。
「AAAAAsssssssssssaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!」
空間が震えるほどのエコーが掛かった咆哮が響き渡る。同時に、途轍もない速度で長剣の連撃が盾を震わせる。
私は自発防御スキルを発動し、それらを必死に捌き続ける。
長剣が盾に叩きつけられるたび、激しい火花が散る。衝撃で足が地面にめり込み、ノックバックで押し込まれていく。
次の刺突。
盾を斜めに構え、刃を横へ逸らす。
そのまま シールドバッシュ。
横腹を殴りつけると、確かなダメージが入った。
……なるほど。
さっきの黒い靄が耐性を与えていたのか。
そして今は、暴走状態。
再び激しくぶつかり合う。
黒い騎士と棘の重戦士。
火花が散り、衝撃の余波で地面に蜘蛛の巣のようなひびが走る。
『わぁ……!わぁぁ!!凄いよ、りんりん!』
『う、うん……!Nagiさん……かっこいい……!』
RinRinさん達は、私の邪魔にならないよう距離を取っている。
それでも、欲しいタイミングで回復が飛んでくる。
本当に助かっている。
……かっこいい?
それなら、もう少しだけ かっこいい所 を見せちゃおうかな。ダメージが通るなら、ここで一気に畳み掛けられる。
私はジョブチェンジUIを開いた。
突撃と同時に チェンジ。
棘の鎧が光に包まれ、インベントリへと収納される。
代わりに現れたのは、真っ白な着物。
手には、ルーンナイトで使っていた太刀。
翡翠色の長髪を靡かせながら、さらに加速する。振り下ろされる黒い騎士の長剣。
それを――
強くかち上げた。
体勢を崩した黒い騎士へ踏み込む。がら空きになった胴へ、淡く光る太刀を一閃。
黒い騎士はゆっくりと膝をつき――
そのまま、頭から 金色の粒子 となって消えていった。
『後悔に囚われし同志を救済して下さりありがとうございます……』
クエストクリアのSEと共に、声が響く。
つまり――
『か、勝てました……』
『ナギさんかっこいいー!! 最後のなになにー!?』
『あのタイミングでジョブを侍に変えたんですね……見てる側も楽しめました……( ;∀;)(≧▽≦)』
『ありがとうございます。そう言って貰えると私も嬉しいです』
『あと、ナギさんすっごく綺麗! 女性キャラだった!』
『キャラクリも作り込んでるんですね……可愛い(´▽`)』
感謝のエモートを送りながら、RinRinさんが欲しがっていた素材アイテムをトレードで渡す。
すると、RinRinさんからは太刀の強化素材が送られてきた。
あこさんにも、これから必要になりそうな素材と、このクエスト限定ドロップの衣類アイテムを送る。
三人でほっこりしながら、いつもの場所に戻ると――
『ねぇねぇ! あこ、オフ会やりたい!』
『オフ会……ですか?』
『うん! ……だめ、かな?』
んー……。
オフ会ってどうなんだろう。危なかったりするって聞くし……。
返信を迷っていると――
『私は大丈夫ですよ!(^_-)-☆丁度NFOとコラボしてるカフェがあるので行ってみたいです……(≧▽≦)』
『やった! ナギさんはどうですか?』
『……分かりました。私だけ断ってしまうのも、あこさんを悲しませてしまいそうなので。参加します』
『やったー!』
『よかったね、あこちゃん( *´艸`)それでは時間と場所を決めましょうか』
RinRinさんの提案でコラボカフェで待ち合わせて一緒にグッズを買いに行く事になった。あ、そうだ
『RinRinさん、私だと判りやすいように当日はこのキャップを被って行きますね』
そう伝えてはNFOに登場する少女のキャラクターが被っている猫耳付きの真っ白なキャップの写真をメッセージでRinRinさんに送ると
『…!?…Nagiさん!この帽子は…』
『どうしたの、りんりん?』
『コラボカフェなら被っていても違和感がないですし、自作なので目立つと思いまして』
『実際に見た方が良いと思うからそれまで秘密です( *´艸`)』
『え~!ずるい!…でも、わくわくが増えた!』
『時間も遅いのでこの辺で止めて置きますね、当日を楽しみにしてます』
『今日はありがとうございました(^_-)-☆また遊びましょう!』
『ナギさん!またねー!』
二人に挨拶を済ませるとNFOからログアウトする。ふぅ…結構時間が掛かっちゃった…時間を確認すれば日を跨ぎそうになってる。PCの電源を切れば椅子から立ち上がり身体を解す為に軽く柔軟体操をして、はふ…と欠伸を漏らしてはベッドに潜り込むと
二人に挨拶を済ませると、私はNFOからログアウトした。
ふぅ……結構時間が掛かっちゃった。
時計を確認すると、もう日付が変わりそうな時間になっている。PCの電源を落とし、椅子から立ち上がる。
凝った身体をほぐすように軽く柔軟体操をして、はふ……と小さく欠伸を漏らした。
そのままベッドへ潜り込むと――
「あれ? 紗夜ちゃん?」
「え、っと……声を掛けづらかったので……その……」
ベッドには紗夜ちゃんがいた。ベッドの中から顔を覗かせ、少し恥ずかしそうに目を逸らしている。
その表情が可愛くて、思わず頬が緩む。
私はそのまま、ぎゅーっと紗夜ちゃんの頭を胸へ抱き寄せた。
「いいよー。私も寒かったし……♪」
「んっ……お姉ちゃんの音、落ち着きます」
「……なんか照れちゃうね」
「ふふ……あまり甘え過ぎちゃうと日菜に怒られそうですね」
「昨日一日中居たから大丈夫じゃないかな……?」
紗夜ちゃんの頭を撫でながらそう言うと、彼女が上目遣いでこちらを見つめてくる。
……あれ?
少しだけ、拗ねてる?
「……なら、こんな事しても良いですよね? お姉ちゃん」
「ふぇ……?」
紗夜ちゃんの目が、どこか妖しく光った気がした。
「すぅ……すぅ……」
「ふふっ……♪」
寝息を立てている姉さんを眺めていると、自然と頬が緩んでしまう。
日菜はアロマオイル作りに集中し過ぎて、机で寝落ちしていました。
なので、ちゃんとベッドに戻しておきましたし……
明日は三人で寝るのも良いかもしれません。
「おやすみなさい、お姉ちゃん」
――ちなみに
翌朝、姉さんがつーんっ、という態度になってしまったので。
少しやり過ぎたと反省しました。
……自重しなければ。
〇AOと〇LOを掛け合わせ作者のやった事のあるMMOを組み合わせたキメラオンラインゲーム(聖杯戦争じゃないです)
RinRin=今度から色々な場所に連れて行こうと考えてる
聖堕天使あこ=癒し
日菜=実は覗いてる(満足)るんっ♪るんっ♪
紗夜=二人っきりの時はお姉ちゃん呼び
夕凪=ハンバーガーで許した
説明しよう!
日菜ちゃんミサイル:半径3m以内に紗夜か夕凪を匂いと勘で感知すると発射される。命中率は100%(今のところ)
UA7000突破、お気に入り150件突破、総評価300p突破しました。感謝感激です!
感想及び評価ありがとうございます。誤字報告、大変助かっております。
▼▼▼
活動報告 リクエスト箱
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=295397&uid=311928