氷川さん所のゆるふわなお姉ちゃん   作:雪月-dox-

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幼馴染

学校も終わり今日も今日とてCiRCLEでバイトをする。受付から機器チェックに飲み物や軽食の提供に調理と慌ただしく働き続けロビーの清掃を終えて漸く一息付ける…と思い受付カウンターの席に座ると、出入り口からギャル風の少女がベースケースを背負ったまま此方の様子を伺っていた。ウェーブの掛った明るい茶髪を後頭部で結ったポニーテールにナチュラルメイクで整えた綺麗な顔の少女。その少女とばっちりと目と目が合ったから笑顔で軽く手を振ると意を決した様子で入って来る

 

 

「いらっしゃいませ。予約の方でしょうか?」

 

「えっと…これの練習がしたいんですけど…どうすればいいのか分からなくて」

 

 

意外と普通に会話が出来る所を見ると根は真面目な人なのかもしれない。イヤリングにウサギの顔が逆さに付いてるのはびっくりしたけど…

 

 

「ベースの練習ですね。それでしたら防音室と音響機器を貸し出す事が出来ます、使用時間に応じて料金が発生しますので…何時間のご利用でしょうか?」

 

「ん-…2時間、かな。久しぶりに触るから機器の使い方もお願いしても良いですか?」

 

「分かりました。では、此方に苗字をお願いします」

 

 

こくりと頷いては一枚の紙とボールペンを渡し、空いている防音室の鍵を持つ。まりなさんに少し受付を離れると伝えれば他の子が丁度入る時間なので対応が終わり次第上がって良いと言われてた

 

 

♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪

 

 

「此処が防音室です。基本的にはお一人様でのご利用になりますね」

 

「意外と広いんですね」

 

 

今井さんを地下の防音室に案内しては重いドアを身体で開けては照明を点ける。部屋に入っては念の為に機器のチェックをする。うん、不具合は起きてない

 

 

「あの、もしかしてだけど…貴女が夕凪さん?」

 

「ふぇ…?あ、はい。夕凪ですけど…?」

 

 

今井さんが私の顔をじっと見た後に確認する様に私の名前を呼ぶ。こくりと頷いた後に名札を見るけど苗字しか書かれていないしお互いに初対面のはず…だよね?

 

 

「やっぱり!ヒナに似てるなぁーって思ったんだ♪あ、アタシは今井リサ!改めてよろしく!」

 

「日菜ちゃんに?えっと…羽丘学園?」

 

「そうそう♪アタシのクラスメイトなんだけど…大体は夕凪さんの話が多いかな?」

 

「ふふ、日菜ちゃんらしい…私は氷川夕凪。夕凪って呼んでね」

 

 

にこりと頬を緩めてはそのまま機器の説明を終える。ゆっくりお話しをするにしてもタイムカードを押してからじゃないと…何かあった場合は内線電話で受付に言ってね?と最後に締めくくり部屋を出ようとすると

 

 

「ねぇ…夕凪。その、ベースって弾ける…?」

 

「ベース?ん-…触った事はあるけど?」

 

「ほんと!?お願い!アタシにベースを教えて!…昔は引いてたんだけど大分忘れちゃっててさ」

 

「基本しか教えられなくても良いなら…きっと少し練習すれば身体が思い出すよ♪…それじゃ、防音室じゃなくてスタジオを借りよっか?」

 

「ありがとー!…え?大丈夫なの?」

 

「うん、私もベース借りて来るしスタッフなら割引もされるし…部屋の割り振りは私が管理してるからね」

 

 

まりなさんにだけ話を通して置けば問題ないはずだし。折角だから珈琲も入れちゃおっと

 

 

♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪

 

 

「此処がスタジオだよー。音響機器の確認して来るからベースの準備をしててね」

 

「うん、オッケー☆」

 

「っ!?」

 

「夕凪!?」

 

 

スタジオに入り照明を点けた後にリサちゃんにそう伝えては機器の方に行こうと思い歩き出した瞬間、ガクンっと足が何かに引っかかり浮遊感が身体を包む、床が迫って来るの見て『あ…やばい』と思うも間に合わないと考え目を閉じて………ぐっと強い力で後ろに引っ張られる

 

 

「大丈夫!?」

 

「う、うん…ありがと」

 

 

あまり離れて無かったからかリサちゃんが私の身体を抱き締める様に支えてくれたおかげで床に衝突せずに済んだみたい…自分で自分の足を引っかけるなんて…ぅー…

 

 

カシャッカシャカシャカシャ

 

 

「「え?」」

 

「リサ、いくら夕凪が可愛いからって…積極的なのね」

 

 

気が付いたら頬を染めた友希那ちゃんと何処かしょんぼりしてる紗夜ちゃんが並んで立ってた。二人揃ってシャッター音を鳴らすスマートフォンを片手に…

 

 

「あ、紗夜ちゃん」

 

「ゆ、友希那!?」

 

 

リサちゃんが慌て私から離れてると頬を染めて懸命に友希那ちゃんに何か話してるけど…どうしたんだろう?

 

 

「ん-っと…紗夜ちゃん、お帰り♪」

 

「姉さん、少しは恥じらいをですね…」

 

「び、微動だにしてない…恥ずかしがってるの私だけ?」

 

「夕凪はどこか抜けてるのよ」

 

 

何だか皆の視線が温かい…なんでだろう?あ、リサちゃんだけ違うけど

 

 

♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪

 

 

「私は氷川紗夜、ご存じかもしれませんが夕凪の妹です。それと湊さんからスカウトされたギタリストでもあります」

 

「アタシは今井リサ。友希那の幼馴染だよ♪…夕凪とはさっき会ったばかりだからね!」

 

「…えぇ、分かってます」

 

「え?今の間はなに…?」

 

「湊友希那よ。バンドメンバーを集めてるわ、夕凪入りなさい。紗夜が居るんだからいいでしょ?」

 

「んー…ごめんね」

 

 

其々自己紹介をしている最中に流れる様に勧誘されるけどそれを断ると友希那ちゃんはため息を吐いては私に近寄って来る。隣に立ってるリサちゃんが『え?え??』と困惑気味に声を出してるけど友希那ちゃんは止まる事無く私の瞳を覗き込む様に顔を近づけて

 

 

 

「じゃ…にゃーんちゃん、じゃないわ。黒いドレスを着てくれないかしら?」

 

「???」

 

「……」

 

「えっと…あの時の見てた…?」

 

「えぇ、見てたわ。だから着て」

 

「あ、あはは…そうなんだ…」

 

 

以前透子ちゃんから試着して欲しいと頼まれた衣装があって…確か、着たままロビーに向かったしその時に見られてのかな?でも、にゃーんちゃん…?あ!猫耳!

 

 

「…友希那ちゃんが着る?」

 

「私はいいわ。夕凪の方が似合うし、愛で…ごほん。近くで見たいの」

 

「…猫耳だけでいい?」

 

「駄目よ」

 

 

むむ…これは断れない奴だ!だって、紗夜ちゃんが期待する様に見てるしリサちゃんは状況が呑み込めていない…つまり、止めてくれる人は居ない!…別に隠すものでもないんだけどね

 

 

「もー…仕方がないな。飲み物も用意するから待っててね?」

 

「ありがとう」

 

 

うきうきな友希那ちゃんに苦笑いし乍らスタジオを出れば今度は転ばない様に更衣室に入る。2回目だけど問題なく一人で着る事が出来て一安心…紗夜ちゃんの珈琲と友希那ちゃんのはちみつティーを淹れてっと、珈琲を出したら大量の砂糖を入れてたから苦いのが苦手なのは把握済み

 

 

「うん。透子ちゃんは凄い…」

 

 

改めて姿見鏡に映る自分の姿を見て軽くポーズを取る。本当に可愛い衣装だと思う細部まで作り込まれており後に送られたものだけど小さい翼?が背中に付けれるらしい…これに黒猫耳のカチューシャを付けて

 

 

「よし、戻ろっと」

 

 

♪♬♫♫♬♪♬♫♫♬♪

 

 

スタジオのドアを開けた瞬間に3人の視線が集まる。リサちゃんは驚き紗夜ちゃんはスマートフォンを構えてるし、友希那ちゃんはスススッっと近寄って来ると流れる様に私を撫で始める

 

 

「ふふ…にゃーんちゃん…♪」

 

「んっ…見るだけじゃなかった?」

 

「可愛いわ。とっても」

 

「ありがとう?」

 

 

ナデナデ、ナデナデ、ナデナデ

 

 

撫でる事は多くても撫でられる事は少なくなったなぁ…何て思いつつ撫でられ続けると段々心地良くなって来た…

 

 

ナデナデ、ナデナデ、ナデナデ

 

 

はふ…眠くなって来ちゃった…

 

 

「友希那!ストップ!ストップ!!」

 

「はっ…!」

 

「ん……」

 

 

リサちゃんが友希那ちゃんを止める声を聞いて閉じかけた瞼を開けると目の前に友希那ちゃんの顔、寄り掛かって意識を手放してたみたい…離れようとすると友希那ちゃんが『ぁ…』と寂しそうな声がしたけど、流石に寝ちゃうのは不味い

 

 

「姉さん、疲れてるのですか?」

 

「ん-…今日は大変だったから…」

 

「確かに可愛い…じゃなくて、夕凪は猫じゃないからね?」

 

「ふぅ…取り合えず、満足したわ。目的を果たしましょう」

 

 

リサちゃんに抱えられ乍らソファに座らされてると友希那ちゃんは紗夜ちゃんと何か話し込んでるみたい

 

 

「私としては技術も大事ですが、湊さんとの相性も大切だと考えてます。…今井さんを誘うのではダメなんですか?」

 

「リサは…いえ、そうね。いい加減しっかりと話すべきよね」

 

 

そう言って何処かそわそわしてるリサちゃんに友希那ちゃんが近寄って行く

 

 

「単刀直入に言うわ。リサ、もう一度ベースを…弾く気はないかしら?私と…私達とFUTURE WORLD FES.を目指して貰えないかしら?」

 

「友希那…でも、アタシ。ベース止めちゃった事あるし…」

 

「知ってるわ。でも、リサにはリサの事情があってベースを止めただけ…その事を責めようなんて微塵も思って居ないわ。…それに私も気付かされたから」

 

 

そう言った友希那ちゃんと一瞬だけ目が合った気がした

 

 

「これは私の我が儘よ。だけど、お願い…リサ。私とバンドを組んで」

 

「…もー…『お願い』はズルいよぉ~。断れる訳ないじゃん☆でも、今は本当に弾けないから覚悟してよ?」

 

「…っ!えぇ!ありがとう、リサ」

 

 

心から嬉しそうに笑う友希那ちゃんと迷いが晴れてスッキリしたリサちゃん…よかった♪

 

 

「友希那にお願いされるのすっごい久しぶりだね」

 

「…えぇ、今までごめんなさい。貴女を遠ざけていたのは事実だから…」

 

「良いよ、こうやって友希那から来てくれたし…嬉しい。よし!後二人?見つけるまでに弾けるようにならないと!」

 

 

むんっ!と気合を入れるリサちゃんに同調する様に頷く皆

 

 

「私も協力させて貰います。メンバー集めの方も声を掛けてみましょう」

 

「私も参加できない分、手伝うよ。何でも言ってね♪」

 

 

そう言ってソファから立ち上がるとリサちゃんと友希那ちゃんが紗夜ちゃんに何かアイコンタクトしてる。紗夜ちゃんは静かに頷くと

 

 

「それじゃ…友希那だけズルいしアタシにも撫でさせて!」

 

「にゃーんちゃん…♪」

 

「今度は寝ても大丈夫です。私が膝枕しますし湊さんは今井さんの指導に入りますから」

 

 

立ち上がると同時にソファに押し返され三人に囲まれると優しい手つきと慣れた手つきが頭や肩に触れるってお腹と脇腹はダメだって!猫ちゃんの気持ちが少しだけ分かるかも…?後、暫くは着ない様にしないと




友希那=猫は愛でるもの
紗夜=姉は愛でるもの
リサ=可愛いは愛でるもの
夕凪=愛でらえるもの


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