僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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 初めて、小説としての二次創作に挑戦します。
 原作漫画が最終盤に差し掛かってはまってしまい、これも運命ととらえて勢いで作ってしまおうと思った次第です。
 いきなり主人公が女体化しているというなかなかハードルが高いですが、「Plus Ultra」の精神で頑張りたいと思います。一応おおまかな流れは頭の中にあるのでなんとかそれを形にして完結させたいと思います。

 誤字・脱字等があり、お見苦しい点があるかもしれませんがご容赦お願いします。

4/1追記 話数表記、軽微の修正を行いました。
4/22追記 軽微の訂正を行いました。


第1話① 出会い(前編)

 「はあ……」

 緑谷出久、14歳。緑がかったくせ毛、そばかすが特徴の花も恥らう女子中学生は師走の寒空の下で溜め息を付きながら、家への帰り道を歩いていた。

「進路希望、なんて書こうかな……」

 世界総人口の()()()が『個性』と呼ばれる特殊な能力を持つ『超常社会』が成立してどれほどの年月が経ったであろうか。超常黎明期には排斥の対象であった個性も次第に受け入れられ、人々の生活と強く結びつき現在ではそれを前提とした職業すら存在している。

 

 『プロヒーロー』

 

 超常黎明期における治安維持活動を行った自警団(ヴィジランテ)が起源とされ、現在では災害救助や犯罪捜査などに不可欠な職業であり子供たちの憧れの的である。

 

「ヒーロー、諦めた訳じゃないしもちろん成りたいけど……」

 帰路を行く出久の目標も『プロヒーロー』である、が……。

 

『無個性』

 世界総人口の残り()()()はなんの特殊能力も持たないただの人である。しかもある研究によると世代を経るごとに個性を持つ人が増えており、若い世代の無個性者は限りなく少なくなっている。個性を前提とした世の中において、無個性者が肩身の狭い思いをするのは自然なことであった。

「口には出さないけど母さんは心配しているだろうし、かっちゃんは、……心配はしないけどまあイヤがるしバカにするだろうなあ……」

 優れた個性を持ち、日々訓練を行っているプロヒーローでさえ、時には命を落とす危険がある。女子であり、無個性でもある出久がプロヒーローを目指すのは心配性の母・引子にとっては心臓が幾つあっても足りないだろう。出久は自身の無謀とも言える夢を応援してくれる引子に感謝と申し訳無さ、2つの想いを抱えていた。

 出久が思い浮かべるもう1人。金髪赤目で威圧的でありながら整った容姿、『爆破』という優れた個性、さらには中学校で学年トップクラスの成績を修める学力。天から二物も三物も与えられた存在。出久の保育園からの幼馴染のかっちゃんこと爆豪勝己である。

「……そんなに仲悪くないはずだったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう……」

 出久の言うように幼い頃、具体的には一般的に個性が発現する4歳頃までは悪くない関係だった。ガキ大将気質の勝己が他の友達を引き連れ、引っ込み思案な出久もそれに着いていくという感じだった。しかし、出久が無個性とわかってからはそれは大きく変わった。変わってしまった。ことあるごとに出久のことを木偶の坊を略した「デク」と呼んで蔑み、強個性の爆破で脅され時には大怪我をしない程度に浴びせられる。中学に上がってからは直接手を出すことはほとんどなくなったが、「クソブス」、「クソカス」、「クソナード」などデク以外の蔑称で呼ぶことが多くなった。しかし、ヒーローを目指している勝己はみみっちい、もとい用心深い性格のためいじめと判断されにくい状況でしかこのようなことをしなかったので教師たちから咎められることはあまりなかった。

「僕も頑固だよなあ、あんなこと言われてるのに未だに学校に通えているんだから……」

 そのような状況で他の生徒から孤立はしていたものの出久は不登校になることなく、()()()()()()()()()()は比較的平穏な学校生活を送れていた。

「……うん、3年に上がるまでまだ時間はあるから、また今度考えよう……」

 独り言を呟きながら、母の待つ家へと足を早めた。

 

 

 

「ただいま〜」

「おかえりなさい、出久。夕ご飯までまだ時間あるから先にお風呂に入ってきなさい」

「は~い」

 

「そういえば、出久に郵便が届いていたわよ」

「郵便? 僕宛に? 誰から?」

 食後にそう言われて出久は首を傾げた。出久に郵便物を送るような友人は、身近にはもちろん遠方にもいないし、学校関係だとよほどの重要事項でない限り教室で配布することがほとんどである。そんなことを考えながら郵便物を受け取ると目を見開き、普段の彼女ならしない乱暴な手付きで封を開けた。

「ど、どうしたの出久?そんなに慌てて……」

 そんな引子の様子も目にくれず、郵便の中身を先程と異なる震える手付きで取り出し、入っていた書類を目を皿のようにして読んでいた。

「あ、あの、出久?」

 鬼気迫る表情の出久に若干引きながらも声をかけると、ようやく出久が口を開いた。

「……当たった……」

「え?」

「参加人数限定のオールマイト展のチケット! 当たったの!」

「え!? 本当!?」

 そう言って引子に持っていた書類を見せた。確かに出久が応募していたオールマイト展の限定チケット兼その当選を知らせる内容の通知だった。どうしても行きたいと言うので、約一ヶ月応募券付きのオールマイトコラボカレールーを買い続けることに引子も協力した。週三、四日カレーという日々は結構キツかったが、それが報われたとあって引子も嬉しそうな表情を浮かべた。ちなみに、買ったカレールーはまだ5箱ほど残っていた。

「良かったわね出久!」

「うん、ありがとうお母さん!」

「ふふふ、どういたしまして。それにしても……、思っているよりも日付に余裕ないのね。それに場所も結構遠いし……」

「そうなんだよね、だから放課後じゃなくて休みの日に行くよ。よ〜し、それまで復習しなくちゃ!」

「復習って、学校の勉強じゃないんだから…あら? 出久、このチケットって……」

 チケットに記載されていた()()()()に気付いた引子が出久に声をかけるが、既に自分の世界に入っており全く聞いていなかった。

(まあ、いいか。いざとなったら勝己君を誘うだろうから大丈夫でしょ)

 

 出久は喜びと復習のために気付いていなかった。記載されていた『ペアチケット』という文字に……。

 

 

 

「ペアチケット〜〜〜〜〜!? なんで〜〜〜〜〜!?」

 

 オールマイト展の限定招待チケット(正確にはスマホ入力用招待コードの記載された書類。スマホで専用サイトにアクセスし、招待コードを入力し画面を掲示することで入場できる。)が届いてから1ヶ月後の土曜日午後1時。日常生活を過ごす中であれよあれよという間に期限間近になり焦った出久はチケット内容を再確認せずに目的地に向かった。そして、会場付近に着いたところでチケットを確認、先程の絶叫である。

 

「なんでペアチケットなの!? 僕みたいなヒーローオタクに一緒に見に行ってくれる人なんている訳ないでしょ!? 嫌がらせなの!? 運営はバカなの!?」

 

 出久はチケットの文面に軽くパニックを起こし、多くのヒーローオタクの怒りを買う、かつ自分にも大ダメージを与える暴言を吐いていた。実際のところ別にペアチケットで1人だけ入場しても大丈夫なのだが、そんなものを使ったことがない出久がわかるはずもなく、1人頭を抱えていた。

 

「あ~もう! こんなことなら無理でもかっちゃんにお願いすれば良かった〜〜〜!」

 

 今現在の勝己との関係性では万が一、いや億が一にも有り得ないことだが、そう思わずにはいられない程出久は(勝手に)追い詰められていた。

 

「誰かその辺にいる人に頼めないかな!? ああ!? でもそれじゃあ○○活って思われちゃう!? ど、どうしよう!?」

 

 いよいよテンパって訳の分からないことを言っていると、『弱り目に祟り目』、急な突風で手に持っていたチケットが飛ばされてしまった。

 

「ああ!? 僕の一ヶ月の努力が〜!? 待って〜!?」

 

 飛んでいくチケットを追いかけるがなかなか追いつかない。見失ってしまうかもしれない。出久がそう思いかけたところでようやく風がおさまった。走りながら飛んでいった先を見るとチケットはスーツ姿の男性の足元で止まっており、ちょうど男性が拾い上げたところで出久は追いついた。

 

「……ぜえ、……拾って、……はあ、……くれて、……」

「落ち着いて、息が整ってからで大丈夫だから……」

 

 20メートル近く走り続けて出久は息も絶え絶えだった。男性に促されて、手を膝につけながら深呼吸を続けてなんとか息を整えてから、改めて話しかけた。

 

「拾ってくれてありがとうございます、助かりました」

「いや、君が必死でこちらに向かって走ってくるから何事かと思ってね。お役に立ててなによりだよ」

「あはは、見られていたんですか。……恥ずかしいです……」

 

 無我夢中で気が付かなかったが、あの全力疾走をこの男性以外にも見られていたと思うと、出久は今更ながら恥ずかしさで顔を真っ赤にした。

 

「それにしても…、オールマイト展の限定チケット。当選するなんて君はなかなか幸運の持ち主だね」

「え!? わかるんですか!?」

「あ、失礼。中身を見てしまって。私も彼の大ファンでね、是非とも見に行きたくて応募していたんだが、結局当たらなくてね……」

「そうだったんですか!?僕も一ヶ月コラボ商品を買い続けてようやく当た、った、んです……」

 

 予想外の話題で見知らぬ人とも会話ができていて出久は軽く感動していたが、相手を見て何か気付いた。その表情の変化を男性は不思議に感じて話しかけた。

 

「あの、私の顔に何か?」

「え〜と、違っていたらすみませんが、……プロヒーローのサー・ナイトアイですよね? 以前オールマイトのサイドキックをしていた……」

「!?」

「そうですよね!? やっぱり! 凄い! 僕ヒーローと会話しちゃってる!」

 

 プロヒーロー、サー・ナイトアイ。

 サイドキックを取らない主義だったオールマイトが唯一人採用した人物だった。オールマイトのファンを公言し、熱烈なラブコールにオールマイトが折れる形でサイドキックとなり、約4年半前に解消されるまで共に働いていた。しかし、サイドキック解消の理由は謎であり、現在でも明らかになっていない。

 

「……仕方ない。君の言うとおり、私はサー・ナイトアイだ。それにしても……、サー・ナイトアイがオールマイトのサイドキックをしていたことは多くの人が知っている、だが、私をサー・ナイトアイとして認識できる一般人はそれほどいないと思うが……」

「あ、あの、以前放送されたオールマイト特集の番組に写っていて、それに『月刊ヒーローJP』のオールマイト特集で一緒に紹介されていたので……」

 

 サー・ナイトアイは少々驚いた。番組に写っていたと言ってもなるべく目立たないシーンを放送するよう依頼していたし、雑誌にしても同様だ。サー・ナイトアイの個性や事務所の方針上、目立たずに行動することが重要なのでなるべく自身の姿を公にしないよう心がけていた。サラリーマン風の姿も目立たないための手段の一つであり、昼間のビル街に紛れ込めば、彼をヒーローと思うものはほとんどいないだろう。自分の正体を見破った少女にサー・ナイトアイが思考を巡らせていると当の少女が神妙な面持ちで話を続けた。

 

「あ、すみません。お仕事の邪魔しちゃって」

「いや、今は警察へ報告書を提出してちょうど時間が空いていたところでね。そこで、未練がましくオールマイト展の会場近くへ来てしまったということさ」

「つまり、……サボっていたと」

「………………」

「ああ!? すみません! つい思ったことを口に!?」

「…いや、あながち間違っていないよ。それより、これを。これから見に行くんだろう? せっかく当選したんだ、ゆっくり楽しんでくるといい。私はそろそろ本当に事務所に戻らなければいけないのでね。それでは、これで失礼する」

 

 そう言って拾ったチケットを渡し、事務所へ戻ろうと踵を返したサー・ナイトアイ。出久はチケットを受け取るが、サー・ナイトアイの表情を思い浮かべ、普段の彼女なら言わないことを言った。

 

「あの! ……一緒に見に行きませんか!?」

「……今、なんと?」

「その、これペアチケットなんで、誰かもう1人いないといけなくて。サー・ナイトアイさんがよろしければ、その、どうですか?」

 

 自分でもとんでもないことを言っているとわかっているのか、出久は緊張した面持ちでサー・ナイトアイの返事を待った。ヒーローとしてのサー・ナイトアイを知っていても、本人の人となりを知らない状況で誘うのはやはり普通では有り得ない。聞かれたサー・ナイトアイ自身も困惑して、出久へ聞き返した。

 

「見知らぬ男性にそのようなことを言うのはいささか不用心だと思う。それに、ペアチケットは必ずしも2人でなければ入れないというものではない。」

「え!? ペアチケットなのに1人で入ってもいいんですか!? あ、いや、そうじゃなくてですね、その、サー・ナイトアイさんが是非とも行きたいと言っていたので。ペアチケットなのに1人で入るのもやっぱりもったいないですから。それに……」

「それに?」

「オールマイト展に行きたくてコラボ商品をわざわざ買う人に悪い人はいないと思うので、その、サー・ナイトアイさんはいい人だと思うので、大丈夫かなと思いまして……」

「………………」

 

 出久はそう言い終えて、サー・ナイトアイの返答を待った。彼の言うことはもっともだと思ったが、それでもそうせずにはいられなかった。そのまま、返答を待っていたが、何も言わないサー・ナイトアイに再び声を掛けようと思ったが彼の様子を見て動きを止めた。口元を手で覆っているが、その様子はまるで……。

 

「(笑ってる?)あの、サー・ナイトアイさん?」

「……いや、すまない。君の言うことがおかしくてね。」

「……? おかしなこと?あ、もしかしてサー・ナイトアイさんをいい人って言ったことですか!? あれは、え〜と、サー・ナイトアイさんが悪い人に見えるということではなくて、そもそもヒーローに悪い人がいる訳ではなく……」

「……面白いというべきだったね……」

「へ?」

「いや、なんでもない。それより今の話、ご一緒させてもらっていいかな?」

「!? いいんですか!?」

「せっかく誘ってくれたんだ、応じない方が失礼だからね」

「あの、でも、お仕事大丈夫ですか?」

「ああ、それなら……、少々待っていてくれ」

 

 そう言ってスマホを取り出しどこかへ電話をかける。数コールで繋がったようでそのまま話をする。

「サー・ナイトアイだ。バブルガール、センチピーダーは今いるかな? ……そうか、いや、今外に出ているが急遽寄るところが出来てね、戻り時間が遅れる。……そうだな、たぶん夜7時くらいになると思う。センチピーダーにはそのように伝えてくれ。君の予定はどうなっている? ……、ああ、ミリオとパトロールか。ならパトロールが終わり次第、ミリオはそのまま帰して大丈夫だ。君も報告書を作り終えたら帰宅して構わない。……ああ、もし何かあれば連絡を。コールしても取らない場合は、ショートメールで。……では、そのように頼む」

「うわあ……凄いなあ……」

 

 電話をかけながらテキパキと指示を出すサー・ナイトアイに、トップヒーローの仕事の一端を感じた出久は感嘆の声を漏らした。……やっていることはサボるための口実作りなのだが。

 

「これで問題なし。さて、……どうかしたかね?」

「いや、そのテキパキと指示していてかっこいいなと思いまして……」

「……大したことではないよ。やっているのはサボるための口実作りさ」

「あ、あははは。それじゃあ行きましょうか。あ、僕緑谷出久と言います! その、よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしく、緑谷君。私のことはサー、もしくはナイトアイと呼んでくれ」

 




 はい、のっけから展開が違いますね。書いている間に脳内イメージからどんどん膨らんでいって前後編に分けることになっちゃいました。
 名前は出ているのにまだまだオールマイトやかっちゃんは出てきませんが、気長に待っていただけたらと思います。

 感想、評価いただけたら大変励みになりますので、よろしくお願い致します♪
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